冒涜的なヒーロー   作:月ノ蛇

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三連休なので初投稿です。

もう少しでやくざ編をかけるのでめっちゃ楽しみ。探索者らしく自己中に書きたいと思います。最近、なんか探索者らしいことがなかったのでここで頑張りたい!!ヒロインを助けるためにやくざぶっ潰そうぜ!!


新学期は憂鬱だよねってこと

新学期。それは学生の心を蝕むイベント。誰もがあと1週間は夏休みでもいいと考えることだろう。

特段、太陽に影響があるわけでもないため新学期から3日ほど飛ばす。

その間に爆豪と緑谷の喧嘩があったらしいが太陽には関係ない。そのせいでその緑谷は3日、爆豪は4日の謹慎処分を受けていた。受ける。

 

 

 

そして、緑谷の謹慎が解けた日の早朝。太陽はえげつないレベルでイライラしていた。

 

「クソがっ!!!なんだよ、あの選択肢はよォ!!!何が生きちゃいけねェだ!!勝手に俺に助けられて勝手に生きればいいんだよ!!!本当にさァ!!どこでフラグ取り忘れたか知らんけど、バッドエンドだからって即死級の敵を出さなくていいじゃん!!!!なんだよ!!即死の攻撃を2回攻撃するわそれが3体いるわで本当腹立つんだけどォォォォ!!!!!ニャルでももっと……ニャルならやるわ、死ねよニャル!!!*1アァ!もうイライラする!!!二度とやるかこんなクソゲー!!!!!!」

 

太陽は荒れに荒れていた。机の上には何本もの栄養ドリンク。『bad end』とデカデカと映し出されているモニター。頭部が見るも無惨に破壊されたマネキン。

太陽が徹夜でやっていたゲームは『幸せになるために』というギャルゲー、と言うよりギャルゲーの皮を被ったRPG。ヒロインは1人しかおらずギャルゲーなのかすら怪しい。

現代に生きる主人公が何かの縁なのか1人の少女と出会う。その少女と関わりを持って異質な出来事に立ち向かうというシナリオ。なのだが、このゲーム。1つのハードウェアで一度しか遊べず。二周目をするには別のハードウェアを用意する必要がある。しかも、ノーパソとかでもプレイできると言うわけでもなく、このゲームをプレイするにはそこそこの50万以上するPCを用意しないといけない。データ容量が頭おかしいほどあるためだ。セーブ機能もなく一度選択した分岐は二度とやり直せない。また、ヒロインとのフラグを回収しきらないとほぼほぼバッドエンドに行ってしまう。攻略情報も利用規約によって出すことができず、プレイ動画も存在しない。ネット上では『無理ゲー』やら『ヒロイン助けられない』とか『このゲーム作ったやつの頭の中を見てみたい』とかボロクソに言われている。未だにハッピーエンドに行った猛者はいない。

太陽はそのレビューを見たことで気になってプレイするも結果は残党にバッドエンド。何が足りなかったのか全くと言っていいほど分からない。TRPGのように主人公を好き勝手作れる機能を極限まで使って戦えるし探索もできる主人公を作ったのだが即死級の生物に呆気ないほど簡単に殺された。

クトゥルフ神話TRPGでもこんなのはない……いや普通にあった。何故かラスボスで神格が登場して呆気ないほど簡単に世界終焉エンドに入ったり近づくたびに魔術だが何かでダメージを受けるボスキャラもいた。そしてヒロインが救えないかもしれなくなると全力で足掻いた。KPにありとあらゆる選択肢を伝えるも無駄足らしくシナリオは簡単に終了した。その度、イライラで物を壊してしまいそうになっていた。全部悪いのは何もできなかった自分とそのPC(プレイキャラクター)と思い、自分を戒めていたこともあった。だがそれでも耐えられず別のPLに鬼畜シナリオを回して愉悦に浸ることでイライラを収めていたっけ。太陽は少しだけ前のことを思い出す。

 

「ふーッ、ふーッ。……学校行くか」

 

現在時刻は8:30。ガッツリ遅刻だった。

 

 

 

「俺と戦ってみ「おっくれました〜!!!!」よう…」

 

太陽は教室の扉をバゴンッと開ける。当然だが教室内の視線を全て集めることになる。なんか、誰かが喋っているのを遮る形での入室だったが太陽は気にしない。太陽はなんとなく教室を見渡すと今日は何故かクラスメイトと教師以外に人物がいた。教壇の上で元気よく右手をあげている人。彼が何かを言っていたのだろう。ギギギギと油の刺さっていないブリキのように太陽の方に首を向ける。太陽は不思議そうにその目を見る。コテンと首を傾げるのも忘れない。

 

「あ〜!!太陽くんだ〜!!」

「……は、ねじれ先輩!?」

 

3年生であるはずの波動ねじれがその場にいた。ついでに2人のおそらく3年であろう生徒もいる。1人は今にも崩れて消え去りそうな顔色が悪い人と何故が目に黒目しかない1人だけ目のデザインが違う人。

 

「ねぇねぇ!?遅刻!?なんで遅刻したの!?」

「寝てた。先生、すみません。遅刻しました!!」

「そうか、座れ」

 

太陽は言われた通り席に着こうとする。しかし、波動が背後から掴み掛かってきたため移動できない。波動の顔を見ると不思議そうな顔で見返される。太陽は再度席に行こうと力を込める。何故かびくともしない。もう一度波動の顔を見る。不思議そうな顔で見返される。

そんなコントのような状況の中、漸くブリキのように固まっていた人が立ち直る。

 

「よぉーし!!めっちゃ俺の頑張りを邪魔された気がするけどいいや!!!もう一回言うよ!!俺と戦ってみよう!!」

「「「「……え、えぇ〜〜!?!?!?」」」」

「みんないいリアクションありがとう!!!」

 

 

 

体育館γ。そこに太陽たちA組が集まっていた。太陽は移動する最中に自己紹介をしてもらいその3人のきた理由を知る。目のデザインが違うのが通形ミリオ、今にも消えそうなほど暗いのが天喰環、そして波動ねじれ。その3人はビッグ3と呼ばれる雄英生のトップに君臨する人たちらしい。今回はインターンについて説明するためにやってきたそうだ。

だからと言って模擬戦をする理由はないと思うのだが、透形が言うには実際にビッグ3の自分たちとA組の力の差を理解した方が手っ取り早いそうだ。

 

「で、俺はなんでここなんだ?」

「だって、これは力の差を知る戦いだからだよ。太陽がやったらミリオに勝つかいいとこまで行っちゃうでしょ?」

「まぁ、勝ちに行くけど」

「それじゃダメらしくてね。だから太陽くんを抜くの」

「へ〜。まぁ、そんなことは置いといて。ねじれ先輩、離してくれない?」

「やだ!!」

「そっか。なら仕方ないね。透と響香がえげつない形相で睨んでるけど」

「大丈夫。あの子たちもこのあとミリオに撃沈させられるし」

「そっか〜」

 

太陽は緑谷たちに手を振る。

 

「がんばえ〜」

 

実に無気力だった。葉隠と耳郎、ついでに峰田から怨嗟が溢れ出る。前者と後者では怨嗟の内容は違うが関係ないだろう。太陽はそんなことに気付きもしていなかった。

 

「「「よろしく、お願いしまーっす!!!」」」

 

その掛け声で通形ミリオvsヒーロー科1年A組の模擬戦が始まる。

かっこよく始まったもののその数秒後にはA組女子の悲鳴が響く。

 

ハラリと通形の服が落ちる(・・・)。通形の体をすり抜けるように服は地面に落ち、大切な股間部分をがっつり露出する。

 

「失礼失礼、調整が難しくてね」

 

いそいそと服を拾う。その隙を逃すわけがなく緑谷が先制キックを通形の顔面にお見舞いする。〝個性〟を十全に使ったキック、その辺の岩すら砕くキックのはずだが通形には効いた様子がない。

それもその筈、通形の〝個性〟の効果なのかキックはスルリと顔面を通り抜けたのだ。

 

「いきなり顔面かよ」

 

通形からは感心したような呆れたような言葉が漏れる。その瞬間、テープやビーム、酸が通形の顔面に飛ぶ。しかし、それでもなお攻撃は全てすり抜ける。故に通形の背後の地形は先ほどまでの平らな状態など跡形もなく消え去ってしまう。

 

「いないっ!?」

 

その場所にすでに通形の姿はない。飯田や緑谷はその崩れ去った地形に目を凝らす。

通形の声は意外な場所から聞こえてくる。

 

「まずは遠距離持ちだよね!!」

「後ろ!?」

 

地面から飛び出すように現れる。耳郎は咄嗟に〝個性〟をぶつけようと耳朶のイヤホンジャックを向けるもその時間すら与えずに通形は遠距離持ちを制圧していく。

 

「すり抜けとかその辺?」

「せいか〜い。トーカっていうらしいよ」

「空間でもすり抜けたのか?」

「空間?違うよ!地面をすり抜けたんだって。なんか地面の中で解くとぶっ飛ばされるらしいよ!不思議だね!!」

「バグかな?てかこんなの勝てるわけないね」

「え〜?勝てるでしょ」

「俺は勝てるよ。当たり前じゃん。みんなは勝てないよね」

 

そんな風に呑気に話している間にも遠距離攻撃持ちは全員制圧されてしまった。その時間、約5秒。

通形は自分に当たる攻撃を全て透過させ、自分の攻撃は全てぶつけるというくっそ理不尽みたいな攻撃をしていた。

残るは前衛のみ。麗日や切島は何処か腰が引けている。そんな中、緑谷は1人じっと通形の〝個性〟を考察する。

 

「何かカラクリがあるはず!!『すり抜け』の応用でワープしているか、『ワープ』の応用ですり抜けてるのか。どちらにしろ、相手の攻撃はこっちに当たる。ならカウンターを狙えば当たるはず」

「探ってみな!」

 

通形は地面に沈んでいく。頭までスポンと沈んだ時、緑谷の背後に出現する。全裸の通形は緑谷に向けて手を伸ばす。

 

「ここっ!!」

 

緑谷はそれを予測していたのか通形の元へとキックを繰り出す。

一瞬、通形が固まったものの即座に動き出す。緑谷のキックに合わせるようにして手を伸ばす。緑谷のキックは綺麗にすり抜ける。

 

「だが、必殺!!!ブラインドタッチ目潰し!!!」

 

通形は指を緑谷に目に向けて突き刺す。目にぶつかる瞬間に緑谷の体をすり抜けたためダメージはないものの、目に異物が混入したという感覚は拭いきれず目を瞑ってしまう。

それを逃さず通形はもう一方の拳を緑谷の鳩尾に打ち込む。

 

「あ〜!!あいつ目潰ししやがった。汚ねえ」

「あれは必殺技だよ?太陽くんだって持ってるでしょ?」

「まぁ、あれほど卑怯じゃないけど……」

 

太陽は極論、勝つために神格を召喚すればいいと考えている。汚い、目潰しよりも汚いのではないか?

また、呪文の中には相手の視力を奪い去るものもあるため、被害のないあれより汚いのではないか?

 

通形は緑谷を倒すとすぐに他のクラスメイトの元へと移動する。そして鳩尾に一撃ずつ喰らわせると全員を撃破する。

通形ミリオvsヒーロー科1年A組の模擬戦は通形ミリオの完勝で終結する。

 

「とまぁ、こんな感じかな!」

 

服を着直した通形がグロテスクになったA組面々に話しかける。

 

「どう?俺の〝個性〟強かった?」

「強すぎッス!」

「すり抜けるしワープするし!轟みたいなハイブリットですか!?それとも夢見みたいないろんなものを兼ね備えてるんですか!?」

 

先ほどまで死屍累々だったものが息を吹き返したように質問や非難の嵐をし出す。

 

「いいや、一つ!『透過』なんだよね!!ワープみたいなのはその応用さ!」

 

通形は自分の〝個性〟の説明を始める。

空気や地面というありとあらゆるものを通り抜ける〝個性〟。先ほど波動が言っていた通り地面や壁といった質量のあるところで〝個性〟を解除すると弾かれるように質量のない空気といったところに飛ばされる。

これだけ聞けば強い〝個性〟だと感じるものの、全てを透過するため肺に空気は取り込めず、網膜は光を透過し何も見えない。勿論音も透過するため何も聞こえない。透過する部分は任意で変えるため壁を通り抜けるにも結構な工程がいる。

それをここまで強くしたのは通形の努力の結晶と言えるだろう。

 

「この〝個性〟で上をいくには遅れだけは取ってはいけなかった!!そのために『予測』が必要だった!!そしてその予測を可能にするためには経験!!経験則から予測を立てる!!」

 

通形は一拍置いてA組面々に思いを伝える。

 

「インターンはとても恐ろしい。時には人の死にも立ち会う。でも怖い思いも辛い思いも学校では手に入らない一線級の経験!!だからこそ、怖くてもした方がいいと思うよ!!インターン!!」

 

通形は伝えたいことを伝え終わると太陽に向けて指を指す。

 

「そこの君!!時間もあるし俺と模擬戦しないか?君だけやってないからね!」

「そうだよ!!夢見だけやってないのずるい!!」

「轟は仮免持ってないからいいけどさ!夢見は持ってるじゃん!!」

「え〜、でもねじれ先輩にやるなって言われてるし」

「それもだぞ!!なんでお前があんなに可愛い先輩に可愛がられてるんだよ!!一回、オイラたちと同じく苦しめ!!」

「そうだそうだ!!夢見だけずるい!!」

 

あまり乗り気ではないのだがA組の面々からの大ブーイングのせいでやらないといけない雰囲気になってしまう。相澤先生や轟は絶対に太陽に顔を合わせないため関わりたくないらしい。

 

「………いいですよ。やればいいんだろ!!やってやらぁ!!」

 

太陽は波動の拘束を振り解いて通形と向かい合う。

 

「その粋だ!さあ、1発で沈まないでくれよ!?」

 

既にクラスメイトは壁際に捌けており戦いの準備は整った。

 

「よし、じゃあ。始め!!」

 

相澤先生の合図で模擬戦は始まった。

初手は先ほどと同じように通形の服がずり落ちる。

 

「あ、そういや。魔術系ってすり抜けるんかな!?気になるわ!!」

 

太陽はそう叫ぶと目をキラキラさせながら呪文を唱える。

通形は遠距離を潰した時と同じように地面に落ちると太陽の背後に飛び出す。

 

「敵の目の前でやるとかやられるよ!?」

 

通形の腹パンが太陽にぶつかる。

 

「「あっ!!」」

 

クラスメイトの誰かが叫んだ。その腹パンの威力を知っているものだろう。体を鍛えている緑谷ですら1発で沈んだ拳。鍛えているようには見えない太陽が喰らったらどうなるかは一目瞭然だろう。

 

「《ヨグ=ソトースの拳(ヨグパン)》」

 

太陽は腹パンによって受ける息苦しさも痛みも何もないかのように呪文を完成させる。

そして通形へ不可視の拳をぶつける。

 

「っ!?」

 

何かを感じ取ったのか通形はすぐさま〝個性〟をつかって回避をする。《ヨグ=ソトースの拳》は通形の体をすり抜け背後にあった岩場を粉々に砕く。

 

「ありゃ、すり抜けちゃうか〜」

 

太陽はその光景をまじまじと見て考察する。通形はその破壊力をみて少しだけ距離を取る。

 

「んじゃこっち、《ニョグタのわしづかみ》」

 

太陽は右手を前に出して握りしめる動作をする。

その瞬間、通形は胸を抑えて蹲る。心臓を直接握りしめられている感覚に陥ってしまう。顔は真っ青になり呻き声が上がる。

 

「あれ、こっちは効くんか。んー、判定はなんだろ。直接効果を及ぼすやつか間接的に及ぼすやつかとか?《ヨグ=ソトースの拳(ヨグパン)》は避けようと思えば避けれる…目に見えたら避けれると思うから透過が効いて《ニョグタのわしづかみ》は心臓に直でダメージ与えるから透過が効かないのかもしれんな」

 

太陽は右手を握りしめながら左手を顎に当てて考察をする。

その間も通形は呻き声をあげて苦しんでいる。とうとう、波動やクラスメイトが心配して近づいてくる。

 

「あ、やっべ。忘れてた。《治癒》」

 

太陽は漸く右手を開いて呪文を終える。急いで近づいて通形に向けて《治癒》を唱える。数秒後、顔色が元に戻り通形は立ち上がることができた。

 

「し、死ぬかと思った!」

「ごめんなさい。呪文使ってたの忘れてました」

「大丈夫!!今、めっちゃ元気に溢れてるから!!ところで何をしたの?」

 

太陽は素直に今使った呪文の説明をする。

 

「ん〜と。今のは《ニョグタのわしづかみ》っていって、効果は相手の心臓をわしづかんでダメージを与えます」

「えっぐ!?」

「なにそれ!?」

「いやぁ、《ヨグ=ソトースの拳(ヨグパン)》効かなかったから試しに使ったら意外にも効いちゃって」

 

太陽はタハハと頭を掻く。

 

「後遺症とかはないの!?」

「ないよ。魔術的な攻撃だし、心臓に手の跡がついたりとかはない。《治癒》も使ったから完全回復さ」

「はいは〜い!!《治癒》ってなに!?気になる気になる」

「それ、俺も聞きたかった!!」

 

興味津々な波動の質問が飛ぶ。それに乗っかってクラスメイトも質問してくる。

 

「あ〜、簡単に言えばありとあらゆる怪我、病気を治せる」

「は!?チートじゃん!!」

「何それ!?リカバリーガールより強くない!?」

「なんでもって、不治の病も!?」

「そりゃあ、俺が怪我とか病気って考えたものは全部治るよ。あ、死体は治せないから!!ボロボロの死体を元通りにすることは可能だけど生き返らないから!!」

「それでも強えよ!瀕死だったら治るんだろ!?」

「そろそろ戻るぞ」

 

興奮し切ったクラスメイトを止めるのは相澤先生の言葉。全員がピタリと止まりいそいそと戻る準備をする。

誰も相澤先生に怒られたくないのだろう。

漸くみんなの質問攻めから解放された太陽はホッとため息をつく。

 

 

そして夕方、授業が全て終わり生徒は寮へと戻っていた。

太陽は共同スペースに同じタイトルの分厚い本を5冊置く。

 

「なにこれ?」

「俺の〝個性〟について気になるとか前に言ってたじゃん。これ読めば大半わかる本」

 

太陽は一番上の一冊を取る。

本には『クトゥルフ神話TRPG』と書かれている。

 

「俺の〝個性〟、『クトゥルフ神話』ってのは架空の神話。まぁ、厳密には別世界にある神話なんだけどね。別世界にはそれをTRPGっていうゲームしたものがあるんだよ。俺の〝個性〟が言ってる。それがそのルールブックでそれ読めばだいたいわかるよ」

 

太陽はその本をポイっと共同スペースのソファに座っている切島に投げる。続々と葉隠や八百万といった共同スペースにいる人がテーブルの上の本を手に取っていく。

 

「借りていっていいから。いつか返せばいいよ」

「なぁ、ペラペラ捲ったんだけどよ。この白紙部分はなんだ!?」

 

切島が指すのは本来神話生物や呪文が載っているページ。そこは丸々全て白紙になっている。他のページはちゃんと文字が書かれているのにだ。

太陽はそれに対してなんでもないように答える。

 

「あ〜それね。本来は呪文とか神話生物が載ってるんだけど……現実に存在するから見たらなんか悪影響がありそうだから外してる。死ぬ覚悟があるならそれも載ってる本渡すけど?」

「……そんなやばいん?」

「やばいよ。神だし。死ぬよ」

「神ってもっと神々しくて綺麗なもんじゃないのか?」

「うん、まぁ。普通そう思うよね。この本に載ってるのは玉蟲色の汚ねえ粘液みたいなやつとか、禍々しい触手がいっぱいのやつとか、見たら精神に悪影響を与えるものが大半だから……」

「うげ、それは見なくていいわ」

「夢見さん、このキャラクターシートってなんですの?」

 

八百万は本の最後のページのキャラクターシートを指す。太陽はそれを見て「あぁ、その説明もするか」と話し出す。

 

「キャラシはこのTRPGを遊ぶ上でのキャラクター。自分で好きなように作れるんだよ」

 

太陽はキャラシといくつかのダイスを取り出して実際に作りながら説明をする。

10分ほどでなんとなくだがキャラシが完成する。

 

「まぁ、こんな感じ。技能とかは職業に合わせたりするのが一番いいよ。どうせ、クトゥルフ神話TRPGする機会は一生ないから覚えなくてもいいけどね。なんてったって、この世界には実際に神やら神話生物がいてやれないからね」

「はいは〜い!!太陽もキャラシ持ってるの?クトゥルフ神話に関することだし」

 

葉隠はそう質問する。

太陽は数秒考え込む。そして、徐に掌を上に向ける。

 

「《キャラシ:男子高校生》」

 

呟くと掌の上には一枚の羊皮紙が出現する。

 

「うお、出せた!?」

「なんであんたが一番驚いてるのさ」

「だって、出せると思わなかったし」

 

太陽はその羊皮紙を隅々まで観察する。

そして一言呟く。

 

「《キャラシ出力》」

 

すると太陽の体が発光する。部屋全体を照らすほどの強い光。太陽の姿などその光に包まれて見えなくなってしまう。

3秒経っただろうか。光が徐々に収束していきついには光が晴れる。そして太陽のいた場所には全くの別人が立っている。

シャベルを肩に担いだ人物。160もない身長にどこか女性的な見た目。真っ赤なマフラーをつけている人物はシャベルさえ携えていなければ女子高生といってもそのまま通じるだろう。

 

「うわ、成れた!!」

「太、陽?」

「よっしゃ〜!!俺が作ったキャラシ使えるじゃねぇか!!最高かよ!!あぁ……《出力解除》」

 

彼?が一言呟くとその姿は溶けるように消えていく。そして元の太陽の姿に戻っていた。

 

「なにそれ!?新技!?」

「そう!!やってみたらできるもんだなぁ。ありがとう透!!」

 

太陽はいつもより明るい笑顔で喜んでいた。それは新しい玩具を貰った子供の様。

ふと、プルルルと誰かの携帯が鳴る。その音に気がつき誰もが自分のスマホを手に取ってしまう。

 

「俺だわ。ちょっと出てくる」

 

太陽はスマホを取り出し、共同スペースから離れていく。

共同スペースに残った人たちは太陽の残したルルブをもう一度手に取って読み始める。これを読めばもっと太陽について知ることができると考えてのことだった。

 

その日、太陽が共同スペースに戻ってくることはなかった。

*1
唐突な流れ弾がニャルを襲う




なお、ゲームの内容はほとんど作者が回ったシナリオにあったものである。ラスボスはニャルとシュブとヨグでした。

太陽の使うキャラシは全て作者が持っているキャラシになりそうです。今話で出てきたキャラシの立ち絵はまぁ、お察しください。シャベルは先が尖っているやつです。

ここからは余談
うちの卓のハウスルールだと戦闘技能の重ねがけ、武道とかの重ね崖ができるのでエグいダメージが出ます。シャベルだとめっちゃ上振れれば100ダメは出ます。

《シャベル》+《琉球古武術》+《シャベル術(シャベル専用の武道。名前なんでどうでもいい)》+《マーシャルアーツ(体を最適に動かす用。なんか通ったので使ってる)》

シャベルのダメージが刺したりするので1d10+db、殴るので1d6+dbになり、ガスライトの特徴表でダメージに+1d2、dbが1d6。
全部1クリしたらうちではダメージ4倍なので…
(1d10+1d2)*256+1d6
最大値が出れば3078ダメージ。やばかったわ。極論こんなに出るのか………重ねがけってやっぱやべぇ。
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