TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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第二十五話 vsフレイム&アクア①

「これからどうするの?」

 

 

 エリザの口から疑問が放たれる。それはそうだろう。暴走していた悟は正気に戻り、チェシャ猫は彼の指揮下に入ったが、状況は非常に不味いものだ。

 チェシャ猫との戦闘の余波で、黒兎が展開した結界魔法は破壊されている。

 

 

 時間もそれなりに経過している。急いでこの場を離れなければ、異常を察知した『連盟』から魔法少女が派遣される可能性もある。

 迅速な離脱が三人の共通認識であった。

 

 

「黒兎! 早く転移魔法を――」

「――情報部の予測通りでしたね」

 

 

 エリザの言葉を遮るように、一人の少女の声がする。悟とエリザの二人には聞き覚えがあった。その場にいた全員の視線が、声のした方へ向く。

 そこにいたのは青色のドレスの少女――魔法少女のアクアであった。トレードマークである眼鏡の奥から、冷たい視線を向けてきている。

 

 

「アクア。早いよ~」

「貴女が遅いだけでしょう……」

 

 

 アクアの後ろから別の魔法少女が現れた。エリザの鮮血を連想させる赤とは違い、燃えるような赤色のドレスに身を包んだ少女――フレイムだった。

 フレイムはアクアに唇を尖らせながら文句を言うが、彼女は呆れるだけでまともに取り合おうとはしなかった。

 

 

「『連盟』からの魔法少女が二人……」

 

 

 悟は現在の状況を整理する。相手の戦力はほぼ万全な状態の魔法少女が二人に、それぞれの契約妖精が二体。

 対して悟達の方は、黒兎とエリザが満身創痍。悟の魔力も枯渇寸前に近い。恐らく正気を失っていた時にハンプティ・ダンプティとチェシャ猫を召喚した際に、大幅に消費してしまったのだろう。

 

 

 このまま戦闘に突入すれば悟達の敗北は確定だが、新たに手に入れた鬼札がある。それは悟に従属したばかりのチェシャ猫の存在だ。

 

 

 単独でエリザと黒兎のタッグに勝利を収めかけていたチェシャ猫。その体には損傷は全く見られず、アクアとフレイムの両者を相手取っても勝機はある。

 最悪の場合、黒兎が転移魔法を発動する隙を作ることができればそれでいい。

 

 

 悟のその考えを察したのか、チェシャ猫は軽い地響きを鳴らしながら、悟達を庇えるように正面に移動した。

 刺繍されたボタンで作られた無機質な目。それに敵対者の姿を捉え、牽制をする。

 

 

「なるほど……これが未確認の魔力反応の内の一つですか。一つ足りないですが『魔女』エリザに――黒アリス」

 

 

 アクアの視線がチェシャ猫の影に隠れた悟を捕捉する。その時に彼女に浮かんだ表情は筆舌に尽くしがたいものであった。努めて無表情を維持しようとしているが、口角が少しだけ上がっていた。その些細な変化に気づけたのは、長い間一緒にいるフレイムだけだ。

 

 

「意中の相手に会えたからって、そう興奮するなよ」

「べ、別にそんな訳じゃありません! ただ私は『連盟』に所属する魔法少女としての務めを果たそうと――」

「はいはい、わかりました」

「絶対に分かってないですよね……!」

 

 

 漫才じみたやり取りを続けていたアクアはわざとらしく咳払いをして、緩んでしまった空気を仕切り直す。

 

 

「『魔女』エリザ、黒アリス。貴女達を拘束させて頂きます」

「――アクア。黒兎の排除も忘れないでね」

「――分かりましたよ、ウンディーネ」

 

 

 アクアの肩に人型の水の塊が姿を現す。女性のような声の持ち主は、アクアの契約妖精であるウンディーネ。

 『連盟』側に『魔女』として認定を受けている悟とエリザを捕える為に、アクアとフレイムがそれぞれ魔法を行使しようとする。

 

 

「ちっ……! どうすんのよ、アリス! 黒兎!」

「――エリザさん。僕を信じてくれますか?」

「……ああ、分かったよ!」

 

 

 エリザは打開策を求めて、残りの二名に悲痛に似た声で質問を投げた。それに悟は自分を信じてくれるように頼む。

 エリザは『ブラッド・パルペー』を発動させて、深紅の鎌を構えた。油断なく、アクアとフレイムを見据える。

 

 

「……チェシャ猫、行ける?」

「Nyaaaa!」

 

 

 悟の呼びかけに、チェシャ猫は元気よく鳴き声を上げた。それを合図に両者は動いた。

 

 

「――『アクア・ソード』」

「――『フレイム・ランス』」

 

 

 アクアは魔力を水に変換させて剣の状態にする。フレイムは自身の魔力を炎の槍の形に変化させた。二人はそれぞれの武器を片手に突撃してくる。

 

 

「Nyaaaa!」

 

 

 チェシャ猫は飛びかかる。空中でチェシャ猫の前足と、水の剣、炎の槍がぶつかり合う。相手側の攻撃の重さに、アクアとフレイムは苦悶の表情を浮かべた。

 

 

(何て威力なんでしょう……! 二人がかりで押し負けそうになるとは! このままでは押し潰される……! なら――)

 

 

「――フレイム!」

「あいよ!」

 

 

 アクアの意図を察したフレイムは大声で返事をした。チェシャ猫の攻撃で吹っ飛ばされるのを利用して、二人は距離を稼いだ。

 一撃で戦況を変えられる魔法を使う為に必要な距離を。

 

 

「――『フレイム・テンペスト』!」

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