TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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第四十九話 日常に潜む違和感

『――本日○☓市に出現した魔獣による被害は、周辺の建物のみ。負傷者は少数、死傷者はゼロ。この魔獣を討伐したのは、『魔法少女』の黒アリスであり――』

 

 

 悟は先ほど倒した魔獣による被害状況を確認したく、父親から譲ってもらった中古のパソコンで、ネットニュースを閲覧していた。

 情報が更新されるまで、約一時間程あった為、魔法少女に関連したサイトを見ていた。

 

 

「よかった……被害もそんなに大きくなくて」

 

 

 悟は安堵の息を吐いた。本当であれば自分の目で確認したいと考えていた。

 しかし悟自身『連盟』に所属していない『魔法少女』である為、正体がバレたくない悟は魔獣を倒すと足早に撤退した。

 

 

 『魔法少女』黒アリス。ここ数ヶ月の間に現れた魔法少女。悪意ある未登録の魔法少女が分類される『魔女』の烙印を与えられることない、稀有な例であった。

 魔獣を見返りなく倒して、颯爽と去っていく小さな英雄。可愛らしい容姿や、無敗の強さを誇るギャップが人気となっていた。

 

 

 『連盟』側は黒アリスの活躍には感謝こそ述べているが、表向きには『保護』という対応をとっている。毎回逃しているが。

 

 

 それもそのはず。黒アリスの正体は男子中学生である悟であるからだ。自分自身の社会的名誉や尊厳を守る為に、捕まる訳にはいかないからだ。

 

 

 調べたいことが済み、心の中にあった懸念が解消された悟は、パソコンの電源を落として椅子の背もたれに寄りかかった。

 

 

「うーん……」

「どうかしたんだな、悟?」

「それがね……さっきの被害状況を調べるついでに、黒アリスのことについて調べてみたんだけど、どのサイトも黒アリスのことを『魔法少女』として紹介しているんだ」

「ん? 悟は魔法少女なんだな」

「いや、そういう意味じゃなくてね。僕って、『連盟』には所属していないよね。『保護』に来る『連盟』の魔法少女とも戦闘になったこともある。普通に考えたら、黒アリスは『魔女』指定は一発のはずだよ。ここ最近は気にしないようにしてたけど……」

 

 

 悟の抱く『違和感』。一般人に危害を加えていないとはいえ、黒アリスは『連盟』が規定している『魔女』の条件を満たしていたはずだ。悟の記憶が正しければの話だが。

 

 

 自分の記憶が正確なものであることを確認する為に、悟は空いた時間があれば、黒アリスに関連した情報のあるサイトを巡回して情報を集めていた。

 目に入る情報は悟の記憶とほぼ相違はなかった。黒アリスが『魔女』ではなく、『魔法少女』であるということを。

 

 

 その『違和感』の正体を探る為に、悟は黒兎にあることを尋ねる。

 

 

「黒兎はこの前のこと……エリザが誰かの洗脳を受けて暴走した時のことを覚えてる?」

「もちろんだな……エリザを止める為に、悟と吾輩で尽力したんだな……。それがどうかしたんだな?」

「それがね……ネット上にはなかったんだよ。エリザが暴走した事件について……。それだけじゃない、過去存在していた『魔女』エリザに関する情報全てが綺麗になくなっていたんだ」

「それって……!?」

「……うん。僕達を含めて、世界中を対象にした魔法が行使されてるみたい。それも、記憶や認識を改ざんする類のね。この様子だと、僕や黒兎もある程度の影響下にあると考えるのが自然かな。それでエリザ――柏崎さんも例外じゃない」

 

 

 エリザの変身前の姿は、悟と同じ中学校に通う少女だった。名前は柏崎利恵。例の一件の後、彼女の正体を偶然とはいえ知ってしまった悟は、登校した際に彼女に話をしに行った。『魔女』エリザとして活動していた時期の記憶があるか、どうかについて。もちろん最悪の可能性を考慮して、あくまでも世間話の体を装って。

 その悪い予感は当たってしまう。彼女の返答はこうであった。

 

 

『『魔女』エリザ……? そんな『魔女』いたかな……?』

 

 

 エリザ本人が覚えていなかった。むしろ碌に交流がない相手から、突然話しかけられた利恵の反応は、何を言っているのか分からないというものであった。

 動揺を悟られないように、その時は上手く誤魔化したが、悟が受けたショックは非常に大きいものだった。

 魔法少女になってから、黒兎以外で初めて心を許せる仲間であったのだから。

 

 

 そして先ほどの会話で、悟と黒兎も大なり小なり記憶改ざんの魔法の影響を受けていることが分かる。

 悟は打開策を探る為に、必死に記憶を思い返した。その結果、最近の記憶の中に『違和感』を解消する為のヒントがあったのだ。

 

 

『――まだ私の魔法の効果を説明してなかったよね? 私の魔法『狂った帽子屋』。それはね……人々の認識を狂わせるの。応用で記憶の改ざんもできるんだ。今日起きたことはいい感じに調整といたから』

 

 

 微かな記憶の残滓が呼び起こされる。

 先の発言をしたのは、『帽子屋』と名乗った悟の妹――久留美の姿を騙る、使い魔。

 世界規模の情報改変を為した、魔法の担い手であり、悟達が向き合わなければならない問題の一つであった。

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