TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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第五十一話 一人の少女が『魔女』に堕ちるまで①

「――ねえ、私と契約しませんか?」

「――はい?」

 

 少女は間抜けな声を洩らした。

 有栖川悟が黒兎と契約して黒アリスとなるより、三年前。友人と別れて、通学路を歩く一人の少女の元に、一体の■■が現れた。

 それは小さい黒猫であった。艶々とした毛並みが夕日に照らされて、どこか不気味に感じられた。

 喋る猫という常識ではありえない存在。少女は一つの可能性に思い至る。妖精からの魔法少女にならないかという誘いであると、その少女は思った。

 

 

 今でこそ滅多にないが、『連盟』に加入していない妖精が好き勝手に契約をして、未登録の魔法少女ひいては『魔女』を大量に生み出してしまい、社会問題に発展したことがあった。

 少女は詳しくは知らないが、授業で軽く聞いた内容では、『連盟』側の魔法少女や職員達の尽力があったという。小学生の知識ではその程度しか持ち得ていなかった。

 

 

 ――魔法少女。超常ならざる力をふるい、華麗に魔獣を倒す英雄。世間的――特に年若い少女達に人気であり、人々の彼女達に対する認識は、アイドルと遜色ない。

 この少女も例外ではなく、日々テレビのニュースに流れる魔法少女の勇姿に憧れていた。自分もそんな英雄の仲間入りができる。期待で少女の胸は満たされていた。

 

 

「……ねえ、私もかっこいい魔法少女になれるかな?」

 

 

 小学六年生という、まだ幼い少女には分からなかった。この時の判断がどれだけ軽率で、愚かであったかを。

 

 

「――もちろんですよ。かっこよくなれますよ? ただし、それが魔法少女であるという保証はありませんけど」

 

 

 少女の返答に満足そうに■■は頷き、ここに一つの契約が完了した。後に■■■■■という名で、数多の悲劇を繰り返す『魔女』の無垢なる原点であった。

 

 

 

 

「はあ……はあ……今日も無事に魔獣を倒せた……」

「お疲れ様でした。いやはやなんとも見事戦いぶりでしたよ」

「……ありがとうね、ビル」「いえいえメフィストの努力があっての勝利です。私がしたのは、貴女に力を与えただけですよ」

 

 

 時は少し流れて、半年が経過した頃。少女は未登録ではあったが魔法少女として、日々魔獣退治に精を出していた。

 その過程で『連盟』の魔法少女に接触してしまうこともあったが、契約■■の黒猫――ビルが機転を利かすことで無用な戦闘は回避できており、紙一重で『魔女』認定を免れていた。

 

 

 その日も魔獣を何とか倒し、『連盟』の魔法少女からの追跡を振り切り、人気のない路地裏で息を整えていた。

 

 

 少女に宿った魔法は、対象を操る力。込める魔力の多さによって、操れる数や持続時間が増減する。少女はこの魔法がコンプレックスであった。

 碌な攻撃手段を持ちえない少女には、無理をして一体の魔獣を操り、別の魔獣にけしかける。そんな手段しかとれなかった。

 魔獣同士を共食いさせる様は、お世話にも魔法少女らしい魔法とは言えず、より少女の正気を削った。

 

 

 それに加えて、親や友人にも魔法少女になったことは告げていなかった。もしも伝えていれば、当然辞めるように言われてしまうからだ。

 『連盟』に所属している魔法少女ですら、命を落とす者も存在するのに、未登録の自分がそうならない保証はない。

 

 

 命を失う可能性に恐怖を抱き、全てを忘れて日常に戻りたいと思ったことは何度もあった。その度にビルの「頑張りましょう」という励ましの言葉と、人知れず世の中の平和を守っているという誇りで、己を奮い立たせてきた少女。

 

 

苦しいながらも、少女は信じていた。いつの日か魔獣を根絶させて、人々の顔には悲しみの表情が浮かぶことはなくなるであろうと。

 

 

 孤独な少女の味方は契約■■のビル一人だけ。そんな状況が変化したのは、同じような境遇の魔法少女と出会ったことがきっかけであった。

 

 

「――良い起爆剤になりそうです。少々物足りなかったんですよね。悲劇を演出して立派な『魔女』になってくれませんと。妖精共に好き勝手されるのも、不愉快ですからね。頑張ってくださいよ、メフィスト?」

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