TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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第七十三話 一方の妖精達

 仮称『魔女』アリスによる一連の『連盟』の支部襲撃事件。警戒を強める『連盟』側だが、その成果は出ておらず、被害は拡大する一方で妖精達はその現状に大きな危機感を抱いていた。

 人目を避けて、妖精のみの緊急会議をする程度には。

 

 

「くそっ! 襲撃を受けた支部にいた妖精達とは、まだ連絡は取れないのか!」

「そうですね。その妖精の主人である魔法少女との契約も強制的に解除されているみたいです。しかも別の妖精と契約できないように、ご丁寧な置き土産までついてますよ」

 

 

 妖精達の魔法によって作られた異空間。そこで行われている会議では終始、怒号が飛び交っている。

 

 

 『連盟』は魔獣の早期発見に討伐、一般人の保護を目的とした組織である。

 それはある意味で正しく、ある意味で間違っている。『連盟』に所属する人間にとっては、先ほど述べた理念は間違いなく本物ではある。

 しかし妖精という種族には関係ない話である。自分達が住まう世界を存続させる為に必要となる資源――『エネルギー』。魔獣を倒した際でなければ、回収できないそれは彼らにとって命に次いで重要なものではある。だが最近日本においてその回収作業が滞っていた。

 

 

 『魔女』アリスの対処に大量の人員を割かれて、挙句の果てには同胞は消失し契約が二度と不可能になるお荷物が増えているだけだ。

 日夜発生していた魔獣も、『魔女』アリスの使い魔と思わしきトランプ兵がどこからともなく現れては先に討伐されてしまい、『エネルギー』が碌に回収できていない。

 

 

 幸い海外の方までは手が回っていないようで、『エネルギー』の回収ノルマは一応達成されているが、いずれは日本の支部全てが『魔女』アリスに物理的に解体されればば、次の標的は海外に移るだろう。

 単独犯と侮ることなかれ。『魔女』アリスの率いるトランプ兵達の一体一体の強さは、中堅以上の魔法少女に匹敵している。

 それが半端な攻撃では時間稼ぎにもならない程の再生能力も有しており、数の暴力で今まで襲撃を受けてきた『連盟』の支部は、抵抗虚しく敗れてきた。

 

 

 更にその支部にいた魔法少女と契約しているはずの妖精の姿は一体も発見されておらず、音信不通だ。それだけではない。彼らの故郷である『夢幻の国』とも一切の連絡が取れない状況になっていた。

 転移魔法を使い、直接帰還しに行った妖精も帰って来ず、事の詳細は一切不明。

 

 

 あくまでも人間に対して魔獣討伐に力を貸す程度の立場にいる妖精達は、『エネルギー』や魔獣発生に関する事実は全く共有していない。

 

 

 『エネルギー』の独占に加えて、安全圏にいて直接魔獣を倒す危険を冒さない為に取られていた今までの方針。

 それのせいで種族の存亡を左右する事態に、自分達だけで挑まなければならないのだが、聡い妖精は一つの可能性に思い至っていた。

 

 

「――『夢幻の国』との連絡が取れない件も、『魔女』アリスが一枚噛んでるのではないのか?」

「いや……『魔女』アリスの魔法は使い魔の召喚、使役。異空間に存在する我々の領域に侵入するには、別の妖精の協力が不可欠だ。そんな己の故郷を滅ぼすことに手助けをする破滅主義者などいるはずも――」

「おめでたいお前の頭はもう忘れたのか。『魔女』アリスの契約妖精である黒色の兎。『あのような妖精がいた記憶がない』というのは、我らの共通認識になっている。しかし現に『魔女』アリスはその兎と契約をしている。『夢幻の国』の異常も、『魔女』アリスが原因の可能性はある」

 

 

 また別の妖精が発言を続ける。

 

 

「それだけではない。『魔女』アリスに関してはまだ謎はある。我々の内、何体から『魔女』アリスに既視感を覚える。という報告があった。それを踏まえて『連盟』のデータベースも洗ってみたが、『魔女』アリスに関する情報は全くない。不自然な程にね。――まるで、訳の分からない何者かに脳味噌を弄られたかのようだよ」

 

 

 保有している記憶と、契約者の記憶との齟齬。自身が持つ情報が、『連盟』の膨大な情報が記録されているデータベースと一致しない事実。

 原因不明の攻撃とも言えない現象もあり、妖精達は『魔女』アリスに対して後手の対応が続くことになる。

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