TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス 作:廃棄工場長
「黒兎、次行くよ!」
「了解したんだな!」
――『虚構の国の女王』が展開されてから、三分が経過した頃。アリスが次に訪れたのは、『連盟』の本部であった。
ここには『魔法少女ランキング』トップが複数所属しており、今回の襲撃作戦では一番の難所になると予想していた。
現にその予想は間違っておらず、他の支部を迅速に二つ壊滅状態に追いやったアリスが訪れた時点では、魔法少女側に脱落者がいるようには見えなかった。
(流石に本部っていった所かな? 強化されているとはいえ、トランプ兵や所詮本体の劣化に過ぎない卵人間じゃあ分が悪いよね……)
転移による『門』を潜った先にアリスの目に映ったのは、アリスによって召喚された異形の軍勢相手に無双している光景であった。正確に言えば、あまりの数の多さや再生能力に手を焼いているようだが、十分に拮抗状態を作り出していた。
このまま順当に行けば、彼女達が『虚構の国の女王』の限界時間まで耐えることは難しくないだろう。
(……そうなると、僕は困るんだけどね)
「ジャバウォック、蹂躙して!」
「■■■■ッ!」
アリスは異形の竜に命令を下す。戦線を維持する為に戦闘をこなしながら、全体に指揮を飛ばす魔法少女に当たりをつけて、ジャバウォックに強襲させた。
「な――」
「何を呆けているの!? 早く体勢を立て直しなさ――」
突如として現れた強大な魔力反応を持つジャバウォックに、『連盟』側の魔法少女は一瞬だけ集中力が削がれてしまった。
しかし本部に常駐しているだけあって、リーダーらしき人物を含めて数名の魔法少女がすぐに魔法をジャバウォックに発動しようとした。
だが、それを許すジャバウォックではなかった。『虚構の国の女王』の能力強化の恩恵は、全ての使い魔が対象となる。むろんジャバウォックも例外ではない。
純粋な戦闘能力は一番強力で、元から保有している再生能力。そこに強化値が『強化召喚』の比ではないハートの女王の加護を受けたジャバウォックは、まさに生ける厄災と化している。
「■■■■ッ!」
魔法少女達が反撃する隙を与えずに、巨体を活かした突進攻撃を繰り出すジャバウォック。その攻撃により、リーダーらしき魔法少女を含めた数名がダメージの許容範囲を超えて、強制的に変身が解除される。
その出来事がきっかけとなり、ギリギリのバランスで保っていた戦線が崩壊する。
「嘘、嘘……! こんな所でまだ――」
「この数は無理――」
中核となっていた者が倒れてしまえば、後の魔法少女達はいくら修羅場を潜っていようと、この状況では烏合の衆に過ぎない。一人、また一人と。異形の軍勢に呑まれていく。
補足しておくと、『連盟』の魔法少女達は死にそうな雰囲気を醸し出しているが、彼女達がこの場所で命を落とすことは決してない。
あくまでも、『連盟』の本部及び支部を狙っている理由は、残存している妖精の殲滅である。障害として立ちはだかる故無力化はしているが、アリスは使い達に戦闘不能になった者達を隅の方へ退避させるように命令は与えている。
(だけど、傍から見たら完全な悪役だよね。今の僕って……)
何やら思い詰めている黒兎を相手に話すのは軽い内容である為、心の内に留めておくアリス。
(しかし思ったよりも肩透かしだったね。突けば脆いとはいえ、結構あっさりと攻略できたし。残りの展開時間は――)
――残り時間は三分三十秒。世界各地に散らばっている使い魔達の感覚を通して、アリスは戦況を把握する。
今回時点で大半の『連盟』関係施設は使い魔達が制圧し、非戦闘員の保護や妖精の駆除に移行していた。しかし一部の支部は劣勢ではあるが、未だに抵抗を続ける地域もあった。
その一つは、アリスが以前住んでいた街を管轄する支部である。
(これも運命の悪戯って奴なのかな……)
「――ジャバウォック。後はトランプ兵や卵人間達に任せよう。行くよ。黒兎、もう一回転移魔法をお願いできる?」
「……吾輩は構わないんだが、アリスは無理してないんだな?」
「問題ないよ。僕が魔法少女になった理由を忘れたの? それがもうすぐ叶うんだ。だから、僕はまだ戦えるから」
「アリス……」
まるで自分に言い聞かせるように話すアリスの姿に、黒兎はかける言葉を持ち合わせていなかった。