TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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第七十九話 『連盟』壊滅④

「――行け。ジャバウォック!」

「■■■■ッ!」

 

 

 アリスの命令に従い、ジャバウォックは鼓膜が破れそうになる程の大きさで鳴き声を上げて、邪魔者を始末せんと突撃攻撃を繰り出す。

 ジャバウォックの進路には、仲間であるはずのトランプ兵や卵人間が存在していたが構わずに踏み潰していく。

 

 

 仲間の犠牲を考慮しない突進に、アクアは急いで他の二人に告げる。

 

 

「フレイム! ダイヤモンド・ダスト! 来ますよ!?」

「早い――」

「――『ブリザード』」

 

 

 いの一番に反応したアクアは攻撃の進路上から退避できたが、機動力に優れないフレイムはジャバウォックの攻撃に晒されようとしていた。

 それをカバーするように、ダイヤモンド・ダストは得意とする魔法『ブリザード』を発動した。

 

 

 普段であれば、周囲の敵を蹴散らす為に用いるそれを、通路を凍らせる為に使用された。

 

 

「■■■■ッ!?」

 

 

 凄まじい速度で迫っていたジャバウォックが、突如として凍った床に足を取られて、僅かばかり減速する。

 その隙にダイヤモンド・ダストは呆然としていたフレイムの腕を掴んで、強制的にジャバウォックから距離を取らせる。

 

 

「あ、ありがとう……ダイヤモンド・ダスト」

「……別にお礼はいらない。後で一番高いパフェを奢ってくれるなら、それで構わない」

「うへぇ……あれ高いからお財布に優しくないんだよねぇ……」

「二人とも、気を緩めてる場合じゃありません」

「ごめんごめん……」

「この程度勝てば問題ない」

「簡単に言ってくれますね……」

 

 

 軽い雑談に興じていたフレイムとダイヤモンド・ダストを咎めるアクア。初撃を何とか躱した彼女達は、改めて前方に視線をやる。

 盛大に滑り明後日の方向にある壁を破壊しながら、ジャバウォックは頭をめり込ませていた。

 引き抜こうと藻掻いているが、それが完了されるまでに数十秒の時間を要するだろう。

 

 

 そしてそれだけの時間があれば、使い魔の使役を主とするアリスを撃ち倒すことも可能だ。

 周囲を固めるように配置されたトランプ兵や卵人間ぐらいは、今までの耐久戦と同じ要領で無効化すれば良い。

 

 

 研ぎ澄まされたアクアは瞬時に思考を巡らして、フレイムとダイヤモンド・ダストに目配せをする。アクアの意図を察した二人はすぐに行動を開始した。

 このように言葉を出さずに連携を取れるのも、日々の魔獣討伐の経験が活きているからだろう。

 

 

「――『ブリザード』!」

「――『フレイム・テンペスト』!」

 

 

 ダイヤモンド・ダストの魔法が、先ほどまでと同じ要領で使い魔達をその場に拘束する。しかし中には再生能力に任せて、無理矢理凍結による拘束から脱しようとしていた。

 

 

 そういった個体を狙って、制御された灼熱の熱風が通路を焼く。だがダイヤモンド・ダストによって凍らされたものは溶けることなく、使い魔達の動きを止め続けた。

 

 

 ――今ここに、アリスまでの道筋ができる。強力な使い魔に守護されている彼女は、この瞬間において見た目通りの少女に過ぎない。

 千載一遇の機会を得られたアクアは、限界まで魔力を放出して空を駆ける。

 

 

「行って! アクア!」

「行ってください! アクア!」

「言われなくても!」

 

 

 二人の期待を裏切ることがないように、アクアは飛んでいる間に魔法を使用した。

 

 

「――『ウォーター・ソード』」

 

 

 水に変換されたアクアの魔力が、長剣の形をとる。その切っ先がアリスを捉える。

 

 

「――『魔女』アリス! 覚悟!」

 

 

 その瞬間。アクアの脳裏には存在していないはずの記憶が過る。

 彼女が魔法少女に変身するよりも前の頃。一体の魔獣に襲われていた彼女は、一人の魔法少女に助けられた。その魔法少女は、目の前にいるアリスに良く似ていた。

 

 

 正体不明の記憶に僅かだが、アクアの剣筋を鈍らせる。最もそんな偶然がなかったとしても、アリスが敗れることはなかったが。

 

 

「――『虚構の国の女王・ジャバウォック』」

 

 

 アリスの足元の影から、既に召喚済みであるはずの異形の竜が姿を現した。

 

 

「■■■■ッ!」

「――は?」

 

 

 戸惑いを隠せないアクアに対して、二体目(?)のジャバウォックは大きく顎を開き、そんな彼女を喰らわんとした。

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