TS魔法少女は魔法少女を救いたい〜虚構の魔法少女アリス   作:廃棄工場長

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最終章 歪な魔法少女『閉幕』
第八十二話 『聖女』と呼ばれた少女のお話①


 地球とは全く異なる世界にて、その少女は生を受けました。名前をクレアと言います。

 彼女はとても優しい人物でした。幼い頃に両親を亡くして、村人達には煙たがられて、独り寂しく暮らすことを強要されたとしても。

 

 

 ある日クレアは、村の中央にある井戸にまで水を汲みにやって来ました。彼女が村に来た時は他の村人達に会うことはありません。

 何故なら腫れ物を触るか如く、好き好んで彼女に関わろうとする人物はいませんでした。

 

 

 しかしその日は違いました。道中で何かを囲んで甚振っている村人達の姿がありました。

 

 

「何をやっているんですか!?」

 

 

 持ち前の正義感に従い、クレアは村人達を押しのけて慌てて駆け寄りました。

 そこにいたのは、ボロボロの服を着た黒色の兎でありました。

 

 

 村人達にどういうことかを尋ねました。

 

 

「お前には関係がないだろう! まあ、もういい。気分が削がれた。そこで転がっている奴を連れて、さっさと向こうに行け」

 

 

 心底嫌そうな物を見るような目つきをした後、村人達は去って行きました。

 クレアはその黒色の兎を抱きかかえると、急いで自分の家の方に帰っていきました。

 

 

「……感謝するんだな」

 

 

 介抱を受けた彼――黒兎はクレアに感謝を告げました。黒兎にどういう経緯があったのかを尋ねました。

 

 

 この世界には『魔獣』と呼ばれる怪物がいました。ただの動物以上に凶暴な魔獣は、人間達の脅威でした。ただの人間では逆立ちしても勝てず、対抗できるのは一部の魔法使いだけです。

 

 

「……吾輩は魔獣ではなく、妖精という種族なんだな。ちょっとした用事があって、別の世界から転移魔法を使って来たんだな。ただ少しミスをしてしまったようで、意識を失っていたんだな」

 

 

 クレアが話を聞いた所、黒兎は気絶していた時に、村人達は喋る兎という奇怪な存在を、魔獣と思い込みストレスを発散していたようでした。

 更に話を聞いてみると、魔力? 魔法? のルールの違いのせいで、転移魔法が上手く機能せず、自分の世界に帰れないようです。

 

 

 それを聞いたクレアは、黒兎にある提案をしました。

 

 

「――ねえ、黒兎。その不具合? が解消されるまで私と一緒に住まない? ここなら村から離れているから、静かに過ごせると思うけど。どうかしら?」

「いや……それはクレアに迷惑がかかるんだな」

「別に気にしなくて良いよ。さっきの村の人達の反応から見て分かる通り、私も腫れ物扱いだから。私と貴女、似た者同士でちょうどいいんじゃない?」

「しかし……」

 

 

 クレアからの提案に黒兎は腕を組み、悩んでいました。けれど熟考した末に、黒兎は口をゆっくりと開きました。

 

 

「……よろしく頼むんだな」

「こちらこそ、よろしくね。黒兎」

 

 

 そうして一人の少女と、一体の妖精の暮らしが始まりました。

 

 

 

 

 その後黒兎と過ごしていく中で、クレアは自分にとてつもない魔法の才能があることを告げられました。

 その魔法の名は『封印術』。どれほど強大な相手であろうと、術者の体内に封じ込めることができるのです。

 

 

 クレアを疎ましく思っていた村人達の態度が変わったのは、この頃からでした。魔法の力に目覚めたクレアに、村周辺に出没する魔獣の討伐を押しつけるようになりました。

 

 

 クレアの魔法は規格外でした。どんな魔獣であろうとも、問答無用で体に取り込みます。戦闘の際には黒兎の補助もあり、彼女が傷を負うことはありません。

 しかし黒兎は心配せずにはいられません。

 

 

「クレア。無理をしていないんだな? 吾輩に何かできることはないんだな?」

「私は大丈夫だよ。それに私が魔獣を倒すのをサボったら、村の人達が困っちゃうでしょ?」

 

 

 クレアの善意はいつでも他者に向いていました。その相手がどれだけ彼女自身を都合のよい道具程度にしか思っていなくとも。

 

 

 そんな生活を送っていたクレアに、黒兎の他に新たな同居人ができました。黒猫の姿をした妖精――ビルでした。

 彼がこの世界にやって来たのも、黒兎と同じ理由のようです。

 黒兎とはまた違う性格で、ビルと黒兎は度々衝突することもありましたが、クレアにはその賑やかになった生活が大好きでした。

 

 

「こんな日がずっと続いたらいいのにな……」

「ん? クレア、何か言ったんだな?」

「ううん。別に」

 

 

 クレアが生まれて始めて抱いた細やかな願い。しかしそれが叶うことはなく、悲劇の幕が上がろうとしていました。

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