バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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主人公である和真君を差し置いて、優子さんは着々とヒーローポイントを重ねていきます。




S・B・F本戦・Bブロック②

和真の露骨過ぎる挑発に多少イラッとしつつも流石はAクラスの副官と言うべきか、和真の狙いを大まかにだか推察する。

 

優子(……挑発はともかく、能力の出し惜しみは明らかに不自然ね)

 

そもそも和真は格下相手でも手加減とかはあまり好まない。それどころか、むしろ必要以上にオーバーキルしたがる性格だ。そんな和真が自分の嗜好を無視してまでもランクアップ能力を出し惜しんでいる理由は…

 

優子(多分だけど……和真のランクアップ能力は代表のような隙の無い性能ではなく、一点特化で弱点のあるものじゃないかしら?もしそうなら決勝で代表と闘うまでは、そうそう能力を使おうとしないはず。だとすればそこに付け入る隙が-)

和真「のんびり付け入る隙探してる余裕あんのか?」

優子「っ!」 

 

能力は出し惜しみしつつもやはり慢心は一切無いようで、〈和真〉は息もつかせぬ多角的な猛攻で〈優子〉を追い詰めていく。向上したとはいえ操作技術では和真が一歩も2歩も上で、なおかつ点数もわずかにだが和真が勝る。それに加えて和真の並外れた反射神経による恐るべき対応力が、優子の勝率をよりいっそう引き下げている。

 

優子(やっぱりこのままじゃ勝ち目は無いわね…でも、()()はここで使うべきなの……?)

 

優子はまだ少し迷っていた。

確実とは言えないが勝機は、ある。勝ち筋の見える戦術は既に用意できた。しかしそのためには自身の持つ手札を全てさらけ出す必要がある。蒼介がいる以上自分が優勝できる可能性はゼロに等しいこの大会で、そこまでの大盤振る舞いをする必要があるのか?和真がランクアップを習得した以上、近い内にAクラスはFクラスと激突する運命にある。自身の切り札は今切らず、そのときまで温存しておく方が利口なのではないか?

 

優子(………………そんなわけないわよね、和真)

 

そこまで考えて優子は、その疑問を全否定し不敵に笑う。勝てるかどうかわからないからこの先の闘いまで取っておく?

 

 

笑止。

 

 

優子(今勝てないから次まで取っておく……?そんな甘ったれた考えじゃあ勝利は決して掴めない!“今”を全力で勝ちにいけないような奴に、“次”なんてもんは存在しないのよ!目の前に分厚い壁があって、それを突破しなければならないなら……迷う理由は、どこにも無い!)

 

覚悟を決めた〈優子〉はバックステップで〈和真〉との間合いを大幅に取る。血迷ったとしか思えないその行動に、流石の〈和真〉も攻撃を止め警戒する。

 

和真「……何のつもりだ優子?長物相手に間合いを開けることがどれだけ愚かしいか……わからねぇお前じゃねぇだろう」

優子「ご忠告どうも。でもおあいにく様、アタシの剣の射程はアンタよりずっと上なんだよね。

 

 

 

……『ギガント・セイバー』!」

和真「っ!?こいつは……オーバー・クロックか!」

 

眼も眩むような目映い光が〈優子〉ごとエクスカリバーを包み込む。やがて光が晴れると〈優子〉は召喚フィールドの端から端まで届くほどの巨大な、光輝く剣を握りしめていた。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  5714点

vs

 二年Aクラス 木下優子 228点』

 

 

和真「……確かに射程は半端無ぇな。だがよぉ優子、消費点数3000点はリスクでかすぎんだろ。代償に死にかかってちゃ世話ねぇぜ」

優子「アンタを倒しきれれば問題無いわ……よっ!」

和真「ぅおっ!?」

 

〈優子〉が力任せに薙いだ巨大な剣を〈和真〉はロンギヌスで受け止める。これほど巨大な剣相手では回避も受け流しも困難であると判断したのだろうが、いかにパワーに特化した召喚獣だろうと、いかに固有武器の性能が優れてようと、コストパフォーマンスを度外視した破壊力を秘めた“オーバークロック”に素の状態で立ち向かうなど無謀でしかない。完全に力負けした〈和真〉は吹き飛ばされて壁に激突し、あまりの衝撃にロンギヌスは遠くに弾き飛ばされてしまう。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  1232点

vs

 二年Aクラス 木下優子 228点』

 

 

加えて攻撃特化の弊害がここに来て露呈する。流石に以前ほど紙装甲ではないとはいえ耐久を蔑ろにしている〈和真〉は、まともに喰らった訳ではないのに瀕死一歩手前まで点数を削り取られてしまった。

 

優子「ホント固いわね固有武器……でも壊せなくったって取りこぼしちゃえば無いも同然でしょ!」

和真「ちぃっ……!」

 

拾わせる隙など当然与えない。

〈優子〉は光の剣を振り下ろす。得物を失い絶体絶命のこの状況に流石の和真も観念したのか、

 

 

 

 

 

和真「『レーザー・ウィング』!」

 

ランクアップ腕輪能力を発動させた。〈和真〉の背から生えた六枚の翼が収束し一つに束ねられ、振り降ろされた光の剣とぶつかり合う。破壊に特化した翼の威力は凄まじく、光の剣を跡形もなく消し飛ばした。しかし極限まで攻撃に特化した翼も耐えきれずに四散してしまい、痛み分けとなった。

 

優子「相討ち……!」

和真「チッ、マジでピーキー過ぎる性能だな俺の腕輪能力。……さて優子、これでお互い丸腰になったがお前の点数はもう風前の灯火……形勢逆転だな」

優子「………ええ、そうね。

 

 

 

 

 

 

そして形勢再逆転よ!」

 

おもむろに〈優子〉はエクスカリバーを納めていた鞘を掴み、剣のように握りしめた。

 

和真「鞘……だと?いくら固有武器だからって鞘なんざあくまで付属品じゃ…っ……エクスカリバーの、鞘……!」

優子「気づいたみたいね。そう、アタシの本当の固有武器は……この鞘よ」

 

補足すると、『アーサー王伝説』の聖剣エクスカリバーは二本ある。一本目のエクスカリバーは無名であったアーサー少年を「王たる人物」と示し、閃光を放つ能力が秘められた聖剣であったが、物語の序盤における一騎打ちで叩き折られてしまう。そして二本目のエクスカリバーは剣ではなく、剣を収める鞘の方に強い魔法の力が秘められていると明言されている。〈優子〉の固有武器『エクスカリバー』はどうやらの二本目のエクスカリバーに準拠しており、重要なのは剣自体ではなく鞘……すなわち固有武器特有の耐久性もこの鞘に備わっているようだ。

 

優子「槍を拾う隙は絶体与えないわ。……どう?流石のアンタでも、打つ手はないんじゃない?」

 

鞘を目の前に突きつけられた〈和真〉は、降参の意をを示すカのように両手を上げて…

 

和真「………ああ、そうだな。流石にこの状況をひっくり返すのは、いくら俺でも…

 

 

 

 

 

 

 

なんて言うと思ったか?」

 

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

  

十の砲身が展開し〈優子〉を取り囲んだ。かつて猛威を奮った〈和真〉の腕輪能力……『一斉砲撃(ガトリングカノン)』だ。

 

優子「……え…………?」

和真「悪いが形勢再々逆転だ。その様子だとソウスケも知らなかったようだが……ランクアップしたら元の腕輪能力が使えなくなるわけじゃねぇんだよ」

優子「……………ふぅ、アタシの負け…か」

 

砲身から発射された弾丸が、瞬く間に〈優子〉を蹴散らした。

 

 

《総合科目》

『二年Fクラス 柊和真  232点

vs

 二年Aクラス 木下優子 戦死』

 

 

綾倉「勝者、柊君!」

 

優子は死力は尽くした。

練った戦術も功を奏したと言えよう。

しかしそれでも勝てなかった。紙一重の差とはいえ、敗れたことに変わりは無い。優子が引き出した和真の手札がこの先誰かの役に立とうが、この場で敗北した優子が得たものは悔しさのみである。

 

優子「……やっぱり、悔しいなぁ」

和真「普段はともかく“戦闘”で俺に勝とうなんざ十年早ぇよ。……まぁ、想定より大分追い詰められちまったがな。ランクアップ能力はともかく、通常腕輪能力を使用可能なことはソウスケに隠しておきたかったっつうのに……」

優子「アンタこそアタシ相手に出し惜しみなんて十年早いってことよ。……頑張ってね、和真」

 

和真にしか聞こえない声量で激励してから、優子は観客席に移動する。

 

和真「………応援されて嬉しいっちゃ嬉しいけどよ、Aクラス副官サマとしちゃアウトだろ」

 

髪をガシガシと掻きながら呟いた和真のその言葉は、まず間違いなく照れ隠しであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーナメントはまだまだ続く。

次の対戦カードは三年Aクラスの名波建一vs一年の次席である志村泰山。次席とはいえ召喚獣を動かし始めたのはつい最近、二年以上の経験値を持つ三年生相手では分が悪いというのが下馬評だが…

 

 

《国語》

『一年Fクラス 志村泰山 396点

VS

 三年Aクラス 名波建一 戦死』

 

 

名波「ば…バカな……!?」

泰山「流石は三年生、思っていた以上に苦戦させられましたぁ」

綾倉「勝者、志村君!」

 

結果は真逆、泰山が名波を大差で下した。

和真と優子の激戦でヒートアップしていた会場の空気が泰山の不自然なほど圧倒的な実力に静まり返る中、蒼介は泰山の武器『蛇腹剣』に注目する。

蛇腹剣とは刀身に形態を変える機構を内蔵し、“剣”としての形態と“鞭”としての形態を使い分けられるようにした、実用性よりもロマンを追い求めた特殊な刀剣である。幾つかの節に分割された刀身の内部にワイヤーを仕込み、 ワイヤーを巻き上げれば刀身がピンと接続されて剣に、 緩めればワイヤーが伸びて鞭となる。

 

蒼介(刀剣の切れ味と鞭のしなやかさを併せ持つ……と言えば聞こえが良いが、はっきり言って玄人好み過ぎてこの上なく扱いにくい武器だ。志村が使いこなせていることも不自然だが、あんな武器が一年生の召喚獣に持たされることが不自然過ぎる。……だが何故だ?客観的に考えればあの一年生四人は明らかに怪しいが、私の視た限りあの四人からは悪意が感じられん……)

 

傍らで蒼介が思い悩む中、Bブロック第四試合が始まる。対戦カードは因縁のあるこの二人の闘いだ。

 

徹「ついに来たよ……アンタに借りを返すときがね」

小暮「ふふ、お手柔らかにお願いしますね大門君」

 

 

 

 

 




【注目選手データ⑪】

・二宮悠太(二年Aクラス)

〈召喚獣〉スピード型

〈武器〉コルセスカ

〈能力〉無し

〈成績〉
外国語……278点
国語……247点
数学……324点
理科……305点
社会……280点
保体……285点

総合科目……3153点



・沢渡晴香(二年Aクラス)

〈召喚獣〉パワー型

〈武器〉フランベンジェ

〈能力〉無し

〈成績〉
外国語……282点
国語……301点
数学……252点
理科……266点
社会……299点
保体……290点

総合科目……3090点
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