バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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Cブロック一回戦はこの1話で終わります。



S・B・F本戦・Cブロック①

優勝候補が多数所属する魔のCブロックの闘いが幕を開けた……が、一試合目(久保利光vs市原両次郎)と二試合目(姫路瑞希vs二宮悠太)は久保と姫路が対戦相手を秒殺して速攻で終わらせた。まあこれは仕方ない。3-Aの市原と2-Aの二宮はどちらも成績優秀ではあるが、別段それほど抜きん出ているわけではない。腕輪を持たない彼らでは、全教科腕輪持ちの二人に勝てる道理などありはしない。

そして第三試合目のムッツリーニvs工藤愛子、何かと因縁のあるこの二人の対戦だ。科目は会場の誰もが共通する得意教科・保健体育だと確信していた。

 

 

……が、

 

 

ムッツリーニ「………卑怯な……っ!」

愛子「え~?何のコト~?」

 

 

《数学》

『二年Fクラス 土屋康太  77点

vs

 二年Aクラス 工藤愛子 346点』

 

 

…………ご覧の通り、決定した科目はまさかの数学。こうなった経緯は何のことはない、愛子は一番得意な保健体育ではなくその次に得意な理科を希望、ムッツリーニは当然保健体育を希望したため科目はランダムで数学に決定したというだけの話だ。

 

ムッツリーニ「………おのれ工藤愛子、何故こんな姑息な真似をする……!保健体育で俺に負けるのが怖いのか?」

愛子「……ボクだって『保健体育は実践』というポリシーを掲げているから、理論派の君には負けたくないと思ってるよ」

ムッツリーニ「………だったら-」

愛子「でも……今の実力で君に勝てると思えるほど、ボクは自惚れてはいないよ。悔しいけどボクと君の間の差は大き過ぎる……でもねムッツリーニ君、仮メンバーとはいえボクだって『アクティブ』の一員なんだ。闘うからには勝ちたいし、勝つためには当然最善を尽くすよ……自分でもちょっとズルいとは思うけど、ゴメンね」

 

愛子は少し寂しそうに笑ってから、《愛子》を特攻させる。ムッツリーニの点数も以前と比べれば大分進歩したものの、約五倍の点数の〈愛子〉に叶うはずもなく瞬殺される。三試合連続のワンサイドゲームに観客も飽き始めないか心配になってくるほどマンネリな展開である。

 

ムッツリーニ「………俺の負け、か」

愛子「ムッツリーニ君……怒ってる?」

ムッツリーニ「………勝つために私情を捨てたお前に難癖を付けるほど、俺は無粋ではない(プイッ)」

 

やはり悔しいのか拗ねたように目を反らすムッツリーニに、微笑ましそうな笑顔を向ける愛子。その様子を見ていた愛子の友人達はさっさっとくっつけば良いのにと、思ったとか思ってないとか。

ふと、愛子は気になっていたことをムッツリーニに聞くことにする。

 

愛子「……そう言えばムッツリーニ君、この前大島先生が『土屋の奴………まさかここまでの点数を取るとは……!』って愕然としてたけど……今回の保健体育の点数、そんな良かったの?」

ムッツリーニ「………今回初めて900点を越えた」

愛子(挑まなくて良かった……。というかムッツリーニ君数学の十倍以上って……もう少し保健体育以外の教科も頑張ろうよ……)

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ第四試合……生徒会書記・宗方千莉vs生徒会長・鳳蒼介の闘いが始まる。千莉は先程の予選でも秀吉を圧倒した期待のルーキーではあるが、残念ながら大会の注目のほとんどは優勝候補筆頭の蒼介に集まっている。

容姿端麗、文武両道、さらに高校生とは思えない圧倒的なカリスマ性を持つ蒼介と比べれば、誰だって引き立て役のような扱いになるのは仕方がないことかもしれない。

……だが千莉はそれに何ら不満を持つことなく、ただただ不敵な笑みを浮かべていた。

 

蒼介「……随分と楽しそうじゃないか宗方」

千莉「無論。この孤立無援な中で貴殿を討ち取れば、拙者という存在は彼奴等の心に深く刻み込まれるでござろう」

蒼介「その意気や良し。その心意気に免じて、お前が得意としている社会科目を希望しよう」

 

そう言ってPDAを操作する蒼介を、千莉は目をつり上げて睨みつける。どうやら舐められてると判断したようだ。

 

千莉「……鳳殿。それは拙者に対する挑戦と見なすが、構わぬか?」

蒼介「構わんよ。下級生に対するハンデと思えば丁度良い」

 

千莉も社会科を選択していたためフィールドは社会科目に決定する。綾倉先生に手渡されたゴーグルを装着しながら、千莉はさらに目を不機嫌そうにつり上げる。

 

千莉「……あいわかった。貴殿がそこまで拙者を愚弄するならば、それ相応の報いを受けてもらうでござる。……試獣召喚(サモン)!」

 

隠しきれないほどの怒りを孕んだ呼びかけと共に幾何学模様が現れ、中心から召喚獣が喚び出される。大型ディスプレイに表示された点数を見て、会場の生徒の大半が驚愕のあまり我が目を疑う。社会科が得意だと豪語する千莉、その点数は…

 

 

 

 

 

《社会科》

『一年Cクラス 宗方千莉 701点』

 

 

『『『ハァァァァァッ!?』』』

 

まさかの700点オーバー(学年主任クラス)である。宗方千莉は公私共に武士らしく振る舞う若干痛々しい女子生徒であり、そしてその武士らしさは成績にも反映されている。古典と日本史とあと何故か地理の成績がずば抜けてよく、その一方で英語の成績が壊滅的といった、明久やムッツリーニや美波と同系統の、とてつもなくアンバランスな学力を保持している。

 

千莉「ふふふ、今さら後悔しても遅いでござるよ鳳殿。拙者を愚弄した罪、貴殿の敗北で-」

蒼介「試獣召喚」  

 

勝ち誇った表情でペラペラと喋る千莉の台詞を遮って、蒼介は召喚獣を呼び出す。そして蒼介はゆっくりと千莉を見据え、いつもの冷静沈着な顔ではっきりと告げる。

 

蒼介「宗方、先輩として一つ忠告しておく」

 

 

 

 

 

 

《社会科》

『一年Cクラス 宗方千莉 701点

vs

 二年Aクラス 鳳蒼介  714点』

 

 

千莉「ば、馬鹿な……!?」

蒼介「上には上がいることを、肝に命じておけ」

 

千莉が絶句したのも無理もない、表示された蒼介の点数は千莉のそれよりもさらに上だった。

しかし蒼介の点数が開示されても先程のようなざわつきはほとんど起こらなかった。何故なら会場にいる生徒の大半は既に理解している。……鳳蒼介の桁違いのスペックを。

 

千莉「ま、まさか拙者が社会科で遅れを取るとは……!しかし試験召喚戦争は点数だけで結果が決まるほど甘くはないでござる!」

 

〈千莉〉は太刀と脇差しを構えて〈蒼介〉に斬りかかる。しかし渾身の唐竹割りは草薙の剣にあっさりと受け止められ、力押しでは分が悪いと判断したのか二刀流の手数を活かした連続攻撃へと攻め手を変える。とても最近召喚獣を動かし始めたとは思えないような怒濤の攻めに、〈蒼介〉は防戦一方を強いられたように見える。

 

千莉「ふはははは!見たか鳳殿、これぞ二刀流の真骨頂!この怒濤の連続攻撃……さしもの貴殿でもどうすることもできまい!」

和真(やれやれ、ほんと劇場型は調子に乗り易いな。よく見ろや一年……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

そう……《千莉》の連続攻撃は確かに凄いが、《蒼介》には全て防がれているのだ。しかも不可解なことに、受け太刀した際の金属がぶつかり合う衝撃音すらまったく聴こえてこない。やがてそのことに気付いたのか、〈千莉〉は一旦間合いを取って警戒する。

 

千莉「何故だ……?何ゆえに我が剣は貴殿に届かぬ…!?いったい如何様な絡繰りが……」

蒼介「……水嶺流捌の型・夕凪。ありとあらゆる攻撃を受け流し、無効化する……水嶺流唯一の守りを主体とした型だ」

千莉「なっ!?水嶺流にそんな型が……!?」

蒼介「!……動きの鋭さは認めてやろう。操作技術もまだ一年生ということを考えれば恐るべき熟練度だ。……だが、その程度の剣では私には届かん」

千莉「っ!何をもう勝った気でいるのでござる!?貴殿とて防いでばかりでは拙者を討つことなどできぬ!」

 

プライドを刺激された千莉は語気を荒げて反論するが、それを聞いた蒼介は呆れたように溜め息をつく。

 

蒼介「二つ目の忠告だ、戦局と現状は常に把握しておけ。私の剣はもう……()()()()()()()()()()()()()()()()

千莉「は?世迷い言を…っ!?」

 

胡散臭げに召喚獣の視界を通して自らの点数を確認した千莉は、信じられないとばかりに愕然とする。

 

 

《社会科》

『一年Cクラス 宗方千莉  232点

vs

 二年Aクラス 鳳蒼介  714点』

 

 

千莉「馬鹿なっ!?いったい何時の間に!?」

蒼介「連続攻撃を受け流す合間を縫って、だ。ふむ……痛覚が繋がっていないことは、意外と不便なようだな」

千莉「お、おのれ……!」

 

悔しそうに歯噛みする千莉。斬られたことに気づけなかったなど侍の名折れと思っているのだろう。

 

蒼介(宗方よ、恥じることはない。死角を見切り、そこから斬り込む暗殺の技……漆の型・狭霧を()()()見切るなどカズマのような天性の直感でもなければ不可能だ。さて……

 

 

 

 

……終わらせよう)ヒィィィン…

詩織「!………」

和真(この独特の気配、それに草薙の剣を鞘に戻した……ソウスケの奴、勝負を決めるつもりだ)

千莉「ぐっ……うぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

 

“明鏡止水の境地”に入った蒼介の威圧感に気圧されたのか、〈千莉〉は何かを振り払うかのように脇差しと太刀を構えて特攻する。

 

千莉(脇差しと太刀で同時に斬る!鳳殿の剣術が如何に熟達してようとも、二方向からくる剣撃を同時に受け流せはしまい!)

 

それはあまりにも甘い希望的観測、仮に同時に切り込まれようとも蒼介ならばどうとでも対処できることは言うまでもない。そして何より…

 

 

《社会科》

『一年Cクラス 宗方千莉  戦死

vs

 二年Aクラス 鳳蒼介  714点』

 

 

綾倉「勝者、鳳君!」

千莉「……くぅ……無念……」

 

超集中状態の蒼介の間合いへ不用意に入るなど愚の骨頂、《千莉》の刃は《蒼介》に届くことなく、水嶺流拾の型・海角天涯により勝負は決した。

 

蒼介「如何なる場合でも自棄にならず冷静でいろ。……三つ目の忠告だ」

 

茫然とする千莉をその場に残し控えスペースへと歩きながら、蒼介は内心で一つの結論を出す。

 

蒼介(直接対峙し剣を交えてハッキリした。

 

 

やはりあの三人……少なくとも宗方は確実にシロだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・土屋康太(二年Fクラス)

〈召喚獣〉スピード型

〈武器〉小太刀二刀流

〈能力〉加速……消費30。スピードが急上昇する。

〈オーバークロック〉影分身……消費10点につき1体。自立行動し『加速』を使えば分身も加速するが、耐久は低い。

〈成績〉
外国語……78点
国語……76点
数学……77点
理科……85点
社会……84点
保体……904点

総合科目……1704点

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