バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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リンネ君の口調すごく書きづらい……。


S・B・F本戦・Aブロック④

梓「リンネ、三年生で勝ち残ってるのはウチとアンタだけやな。勝った方が準決勝に進むわけやけど……悔いの無いよう、真っ向勝負といこうやないか♪」

リンネ「ウサンくさいにもホドがあるよサエキ……」 

 

不気味なほど爽やかな笑顔で歯の浮くような台詞を言う梓だが、リンネには……と言うより彼女とあまり交流の無い一年生以外の全生徒には、「マラソン一緒に走ろう」以上に信用できない台詞に感じた。それを裏付けるかのように梓の利き腕には青銅の腕輪がはめられている。おまけに…

 

リンネ「ねえサエキ、そのウデワ……」

梓「ん?……ああ、さっき杏里に預けたコレがここにある理由?そら観客席まで行って回収したからに決まってるやん」

リンネ「いや、そうじゃなくて……『タイセンアイテがゼンリョクをダせないのはつまらない』とか言ってたよネ……?」

梓「は?何言うとんねん?真剣勝負の世界にそんな甘っちょろいこと持ち込むのはただの驕りやで?獅子博兎、ウチは全力を尽くしてアンタを倒すでリンネ」

リンネ(『シタのネもカワかぬうちに』ってこういうことなんだネ……)

 

少し前に自分が言ったことを完全に無かったことにしている始末である。彼女の言葉は安易に鵜呑みにしてはいけないのだ。もっとも、裏をかいてくることを警戒している相手には、平然と正攻法するパターンもある。梓の言葉を全く信用しなければいい……といった浅い考えでは確実に痛い目を見る。何故なら「絶対に信用しない」とは、「絶対に裏を欠いてくる」と信じているのと同義であるからだ。

 

選択された科目(当然総合科目)のフィールドが展開され、召喚獣視覚リンクシステム』を起動させる。

 

梓・リンネ「「試獣召喚(サモン)!」」

 

準備が整ったので召喚獣を喚び出す。〈梓〉の武器は干将・莫耶、〈リンネ〉の武器はウィリアムのクロスボウ……どちらも使い手が二人といない特別な武器である。

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 5218点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

『ろ、6000点オーバーだとぉ!?』

『佐伯も凄いがあの留学生パネェ……』

『まだ十歳なのに……』

    

リンネのとんでもない点数が会場の生徒達に小さくない動揺を与えるが、肝心の相対している梓はだからどうしたと言わんばかりに余裕の笑みを浮かべている。

 

梓「それでは、試合開始です!」

梓「よっしゃ、ほな始め-」

リンネ「オリャァアア(タダダダダ!)」

梓「っ、いきなり飛ばすなぁ…… (キキキキィンッ!)!」

 

〈リンネ〉は試合開始早々クロスボウを〈梓〉に向けて矢を連射する。〈梓〉も負けじと逆手持ちした干将と莫耶…そして足甲を自在に操り弾丸を打ち落としていく。さしもの固有武器と言えど矢の耐久力は並のようだ。

しかし〈リンネ〉は〈梓〉の周囲を円を描くような起動で回りながら追撃の矢を放っていく。〈梓〉は防戦一方になりながら、得意の並列思考を用いて状況を打開する策を練りながら〈リンネ〉の観察を行う。

 

梓(……さしものウチもこの猛攻全部は凌ぎきれん。このままずっと攻撃を続けられたら押しきられるやろな……。となるとウチのやることは一つ、接近戦に持ち込むしかあらへん。近づけさえすればウチの攻撃も届くし、なんやったら撃つ隙すら与えん。せやけどボウガン相手に不用意に突っ込めば狙い打ちされて蜂の巣やな。さてどないしよっかな~)

リンネ(のほほんとしてるのにガードがカタすぎる……このままじゃ……)

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 5041点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

遠距離からの一方的な射撃が〈梓〉はほんの少しずつ削っていくのに対し、〈リンネ〉はノーダメージ以前に攻撃をさせてすらいない。そんな誰がどうみても優勢の状況にもかかわらず、リンネは何故かか焦っている。その様子を目ざとく見つけた梓は、攻める気をなくし持久戦に持ち込む。

 

梓(……ん?なんや、何でか知らんけどウチをさっさと倒したがってるみたいやなぁ……そうとわかれば持久戦の時間や♪)

リンネ(明らかに引きノばしてる……ほんといいセイカクしてるよサエキは……!)

 

〈リンネ〉はさらに弾数を増やして果敢に攻めるが〈梓〉の守りも一切ひけを取らないため、しばらくお互い決め手がない膠着状態に陥ってしまう。

が、それは容易く破られる。

 

ガキンッ、カチカチ…

 

梓(ん?なんや、弾切れか?)

リンネ「くっ……リロード!」

 

弾切れを確認した〈リンネ〉はクロスボウの弦を外し、そして再びつけ直した。その光景を見届けた梓は先程の源太との試合の内容を思い返し、一つの答えを導き出した。

 

梓(なるほどなぁ……レギュレーションが違うからって、いくらなんでも遠距離武器は強すぎるとは思っとったけど……弾切れすると決定的な隙をさらすっちゅう弱点があったんか。前の試合でやたら通常弾と炸裂弾を切り替えとったけど、多分弾の種類変えたら弾数がリセットされる恩恵があんねんな。せやけどランクアップ能力使わな炸裂弾は使えんようやし、とりあえずここからの試合展開は見えたな……)

リンネ(サエキはまずマチガいなく、リロードのスキをネラッてトツゲキしてくる。ボクがするべきはリロードするマエにサエキをタオすか、リロードのとき向かってくるサエキにカウンターをキめることだネ。……タブン、このカケヒキにカった方がシアイをセイする……!)

 

拮抗した戦況で一度流れが傾けば、それをひっくり返すのは至難の技である。もしも相手が自滅してくれれば話は別だが、二人ともそんな凡ミスを犯すような半端者ではない。間違いなく次の攻防が勝敗を左右することをわかっているからこそ、二人とも迂闊には動けないでいた。しかし先に動くのは間違いなく、リロードまで耐えきろうとする〈梓〉ではなく、早々にけりをつけようとする〈リンネ〉だろう。

 

リンネ「いくよ、サエキ!」

梓「望むところや!」

 

覚悟を決めた〈リンネ〉はクロスボウを〈梓〉に…ではなく何故か天井に向けて数十発の矢を放った。〈梓〉や観客が怪訝に思う暇もなく、〈リンネ〉はクロスボウを〈梓〉に構え直して射撃を再開した。

 

梓「何がしたいんかわからんけど……そんな単調な攻撃がウチに通用するかい!」

 

キキキキキキィンッ!

 

〈梓〉は双剣と足甲を駆使して向かってくる矢を次々と打ち落としていく。しかし〈リンネ〉の狙いは別にあった。上空から先程〈リンネ〉が天井に放った筈の矢が急降下しながら〈梓〉に襲いかかる。

固有武器『ウィリアムのクロスボウ』は文月学園の武器と比べて特殊きわまりない武器である。一つ目は召喚獣の点数に比例するのは矢の攻撃力ではなく弾数であること…そしてもう一つは、文月学園製の固有武器のような強大な耐久性こそ持たないが、腕輪能力を使わずとも矢の弾道を設定できることである。

 

梓「なんてな、アンタの上からの攻撃やろ!」

 

どうやら梓はリンネの策を読んでいたらしい。干将で前方からの矢を捌きつつ、莫耶で上空からの攻撃に備える。

 

梓「アンタが無意味に天井に射撃なんてるわけないやろ!そんな雑なフェイクでウチを騙そうなんて-」

リンネ「わかってるよ、バレてることぐらい」

梓「-っ!?」

 

突如、上空から飛来する矢が〈梓〉と激突する直前に四方八方へと広がり、莫耶の迎撃が空振った直後に再び〈梓〉に向かって飛来した。

 

梓「ぅらぁあああっ!!!」

 

干将は全方からの矢を迎撃するので手一杯、莫耶を引き戻していては間に合わない。そのため〈梓〉は利き脚の足甲

を駆使した足捌きで迎撃した。しかし360度から迫りくる矢を全てに対応するには圧倒的に手数が足りず、ほとんどの矢が〈梓〉に直撃した。

 

 

 

《総合科目》

『三年Aクラス 佐伯梓 4038点

vs

 交換留学生 Linne Klein  6287点』

 

 

点差が一気に開くが梓にとってもう一つ痛いダメージがある。足甲はあくまで補助武器、その耐久力は固有武器はおろか一般的な召喚獣の武器にする劣る。こんな無茶苦茶な迎撃をすれば…

 

 

ピシピシピシッ…パキィンッ!!

 

 

当然耐えきれずに砕け散る。

 

梓「裏をかかれたのなんて何年ぶりやろ………やってくれるやないかこのガキ」

リンネ「にひー、ダテにスウェーデンのシホーとヨばれてるわけじゃないよ!」

 

 

 

 




この試合の勝敗の分かれ目は至ってシンプルです。ズバリ、近づくことができれば梓さんの勝ち、できなければリンネ君の勝ちです。 
何しろ遠距離特化と近距離特化の対決において、間合いの重要性が段違いですから。

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