バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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オリキャラの一人に超ド級の死亡フラグが建ちます。


オリジナル第三章終了

あの結末は二人にとっては不完全燃焼かもしれないが、何はともあれ決勝戦は引き分けという結果で幕を閉じることとなった。

そして閉会式もそのまま恙無く進む……ことはなかった。優勝トロフィーに関しては二人とも受け取ることを頑として辞退し、結局学園長室にでも飾っておくことになった(「わざわざ意匠をこらして作ったのに……」と綾倉先生がぼやいていたが、和真も蒼介も勝利に対してどこまでも潔癖なのでこればかりはしかたがない)。優勝者への副賞に関しては和真も蒼介もボンボンかつ物欲が稀薄なため二人で適当に分配した。

と、ここまでは割と円滑に進んだものの、流石に目玉である『常磐の腕輪』は適当に決める訳にはいかず揉めに揉めた。と言っても彼等は所有権の奪い合っているのではなく、むしろその逆-

 

 

和真「だから四の五の言わず貰えるもんは貰っとけって言ってるだろうが」

蒼介「そう思っているならお前が持っていけばよいだろう」

和真「いやいやお前な……ここで俺がホイホイ受け取ったりしたら、なんかお前のお情けで譲ってもらったみてぇな感じになるだろうが。んなもん願い下げだぜ」

蒼介「勿論私も御免被る」

和真「いいからゴチャゴチャ言わずはよ持ってけや。初期点数ならお前のが高かったんだし、ここは学力重視で-」

蒼介「そんなもの私が持っていく理由にはならん。……むしろ初期点数で勝っているのにもかかわらず、引き分けに持ち込まれた私が辞退すべきだろう」

和真「文月学園は実力主義だぜ?高い点数を取った奴がこういう場面で不利になるのはおかしいだろ」

蒼介「Fクラスは『学力が全てではない』という信念の下、学力で定められたヒエラルキーをひっくり返そうと行動してきた筈だ。エースであるお前がこういうときだけその謳い文句を持ち出すのは、いささか卑怯ではないか?」

 

 

あーだこーだあーだこーだ…

 

 

 

(((ガキかお前らはぁぁあああ!?)))

 

もっともらしい理屈を並べてあの手この手で腕輪を押し付け合う二人に、文月学園の生徒達の心は一つになった。しばしば感性がお子ちゃまと揶揄されている和真はともかく、完璧超人で通っている蒼介が負けじと張り合っているその光景は驚きを通り越してカルチャーショックであるだろう。

 

雄二「何くだらねぇ意地張ってんだお前は!?その腕輪をAクラスに持ってかれちゃならねぇって散々言っただろうが!」

和真「うるせぇんだよ腐れゴリラ!負け犬のテメェがしゃしゃり出てくんじゃねぇ!」

優子「和真はともかく、いったいどうしたのよ代表?いつも冷静沈着な代表らしくないわよ」

蒼介「すまないな木下。今後のことを考えればここは相手の顔を立てて、腕輪を受け取ることが合理的な判断であることは重々承知している。……だが許せ、私とて通したい意地がある」

 

このようにクラスメイトが口を挟んでも、まるでとりつく島もない。そんな二人に飛鳥は大きく溜め息をつきつつも、その光景を懐かしむように苦笑する。

 

飛鳥(二人のこんな意地の張り合いも随分久しぶりね……。高校生になったか見かけなかったからもう無くなったのかと思ってたけど……うん、全然そんなこと無かったわ。そう言えば蒼介も和真も、ここまで意地を張り合うのはお互いに対してだけね……)

 

蒼介は勿論和真も意地を張るメリットなどどこにもないことは理解している。もし向かい合っている相手が違ったのならば、よしんば揉めたとしてもどちらが腕輪を受け取るかという名目で争うだろう。

彼らがこのような意地の張り合いをする理由は、お互いが「こいつに勝ちたい」と思いつつ、その一方で異常なまでに勝ち方に拘っているからだ。対等と見なしている相手であるが故、求める勝ち方は完全勝利のみ。このような空しくしょっぱい勝利は相手にくれてやる……とお互いが思っているからこそこの不毛な争いは起きるのだ。以前の野球大会のように彼らだけの問題ではない場合は話は違っていたのだろうが、今回は突き詰めれば彼ら二人だけの問題なのでお互い一歩も譲らない。

しばらく平行線を辿ったのち、綾倉先生が折衷案を提案する。

 

綾倉「……それでは、分割して渡しましょうか」

和真「は?分割?」

蒼介「綾倉先生、どういうことですか?」

綾倉「こういうことです」

 

首を傾げる二人に綾倉先生は濃い緑色の腕輪を一つずつ手渡した。おそらくこれが優勝商品である『常磐の腕輪』なのだろうが…

 

和真「なんで二つあるんだよ?返答によってはここまでの押し付け合いが完全に時間の無駄になっちまうんだが」

綾倉「なんでも何も、『常磐の腕輪』は二つ揃って初めて効力を発揮できるものですから。以前あなた達はボンクラ(学園長)に頼まれて、合体召喚獣のテストに協力しましたよね?」

学園長「おいちょっと待ちな綾倉コラ、今ルビの振り方に物凄い悪意を感じたよ」

 

馬鹿にされていることを感じ取った学園長が噛みついてくるが、綾倉先生はこれをスルーして話を続ける。

 

綾倉「それを実用化したものがこの『常磐の腕輪』です。あっ、君達が協力したときのような子供がどうたらといった、公序良俗に反するようなシステムではないのでご安心を。私は能無しババア(学園長)のような愚はおかしませんとも」   

学園長「いい度胸だねこの腹黒糸目。そんなに減給&停職のコンボを喰らいのかい?」

 

馬鹿にされてると確信した学園長はこめかみにビキビキと青筋を走らせながらそう脅すが、綾倉先生にはやはり無視された。このとき学園長は本当に自分が文月学園のトップなのか自信をなくしそうだったとか。

 

和真「そりゃよかった。あのトチ狂った仕様のままだったら、多分どっかの美紀(バカ)がウザくなるからな」

蒼介「それで綾倉先生、具体的にはどのような仕様を変更したのですか?試しに使ってみようにも、生憎私も和真も既に戦死しているので」

綾倉「そうですね……防具は一新され得物は両者の武器を引き継ぎ、点数は二人の合計値でスペックはそれを参照に再設定されます。そして両方の腕輪能力、オーバークロック、ランクアップ能力を使えるようになりますね。

注意すべき点は操作権は両者にあるので、どちらが動かすか事前に決めておかないと使い物にならないことです」

和真「なるほど、二人から同時に違った命令を出されでもしたら、それを受けた召喚獣がどんな滑稽な行動をとるか大体予想できるな」

蒼介「ふむ……それ相応のリスクもあるが戦略の幅が広がりますね。……分けて持つのなら実践投入されるはしばし後になるでしょうが」

綾倉「そうなりますね……少し残念です」

和真「安心しな綾倉先生、近い内にこいつは揃うことになるからよ」

 

そう言ってから和真は蒼介に腕輪を突きつける。突きつけられた蒼介はやはりいつもの澄まし顔だが、心なしか楽しそうだなと観客席の飛鳥は感じた。

 

和真「俺達Fクラスは近々お前らAクラスに試験召喚戦争を申し込む。その戦争に負けた方がこの腕輪を差し出すってのはどうだ?」

蒼介「……望むところだ。私達の決着は、そのときまでしばし預けておくことにしよう」

 

 

 

そしてようやく表彰式が終了。そのまま閉会式へ移行し、過去際大規模の召喚戦争の祭典『S・B・F』は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

ヴー…ヴー…ヴー…

 

秀介「(ピッ…)もしもし守那、どうだった?」

『スマン秀介。宮阪桃里は回収できたが、そいつにとりついてた奴ともう一人の嬢ちゃんには逃げられちまった。おまけに二人はしばらく療養が必要なほど負傷しちまって、戦線復帰はしばらくできそうもないな』

秀介「そう、か……。高橋教諭や西村君に加えてお前まで派遣して、それでも取り逃がすとは……どうやら我らの敵は想定した以上に強大らしい。やはりすぐに『鳳翼の七雄』を召集する必要があるようだねぇ」

『そうみたいだな……。あの問題児共が集結するときは、他の四大企業との全面戦争するときだと思っとったが……いや、少なくとも“桐谷”がほぼクロであることを踏まえると間違っておらんのか』

秀介(問題児筆頭の君がそれを言うのかい……まぁ私も人のこと言えないから口には出はさないけど)

『それから秀介…………お前の実の娘が敵陣営にいることが確定した。その理由はお前の予想していた通り、あの嬢ちゃんに化けてやがった』

秀介「……………………………………そうか」

『…………秀介よ、お前なら俺に言われるまでもなくわかっているだろうが……

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

ブツ…ツー、ツー、ツー…

 

秀介(………………わかっているさ。

 

 

 

 

 

 

私が鳳家当主、鳳財閥会長、そしてて私の人生そのものに……ピリオドを打つときが来たようだ)

 

 

 

 

 

 

 

 




蒼介「オリジナル第三章が………ようやく終了したな」

和真「長過ぎんだよ!始まったの二月だぞ!?読者の何人かは愛想つかしたんじゃねぇか?」

蒼介「だろうな。しかしその一方で読み続けてくれている者や、新しく読み始めてくれた者がいることもまた事実。もとより、二次小説などそのようなものだろう」

和真「……それもそうだな。この小説は閲覧者が0にならねぇ限り、決して止まることはねぇ!」

蒼介「まあ次回からはまた番外編に移るのだがな。……第四章『ラプラスの悪魔編』はアドラメレク一派との最終決戦だ。無計画にばら蒔いた伏線を取りこぼさないためにも念入りにプロットを組まねばなるまい」

和真「身も蓋もない言い方をすれば、脚本が完成するまでの時間稼ぎに入るわけだな」

蒼介「もう少しオブラートに包まんか…………まあいい、そろそろ時間だ。差し支えなければ、これからも読んでくれると嬉しい」

和真「じゃあな~」



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