よく、アクション映画とかでは主人公がピンチの時、タイミングよく仲間が助けに来てくれたり、敵側に妨害があったりして逃げたりすることができる。
そりゃ当然だ。そんなふうに作ってるんだから。
だからこそ思う。なんで現実はこんなにも理不尽なんだって…
「…神様、ほんとにいるんなら…なんで大人しく逃げさせてくれないのかな…」
「ツクミ、なにか、うえでとんでるよ?」
自分の乗る機体の充電中に、俺はついさっき上空に現れた戦闘中の2機の機体を見上げながら呟く。
ステラの言う上で飛んでいる物体、片方はジンとは違う、おそらく隊長機であろうザフトの機体。というかマリューさんがそう叫んでるのが聞こえた。だがもう片方はモビルスーツですらなく、なんというか…丸いバーニアを4つ周りにくっつけてるような戦闘機だった。
戦っているということは、あの戦闘機はおそらく味方なんだろう…多分。だが正直言ってあまり期待はできない。それが何故か。
そもそも、圧倒的物量差を誇る地球連合軍に、なぜザフトが拮抗を保てているのか…?簡単な話、技術力が違うからだ。ザフトにはモビルスーツという人型の兵器があるのに対して、地球連合軍は今の今まで作ることができなかった。戦闘機を少し改造しただけの世代遅れの兵器しか持たない地球連合軍は正に数に物言わせてザフトと戦争をしている。
つまり何が言いたいか。
一機のモビルスーツに対し、一機の戦闘機では圧倒的不利であり、戦力、性能共にパイロットの腕だけでは決して埋めることの出来ない差があるのだ。
そもそもその人ですらも地球軍はザフトにほとんど敵わない訳だが。
だが、今手元にあるのは(おそらく)地球連合軍の新型モビルスーツ。しかも2機。その上今戦っている戦闘機を含めれば3機にもなる。この数の差を是非とも活かして戦いたいが、俺達は下手に動けない。
なぜなら…
「嘘だろッ!?またモビルスーツが来たのかよっ!?」
「そんな、どこに逃げればいいの!?」
ノイズの走るモニターの下端には恐怖で叫ぶキラ君の友人達がいる。オマケに周りには盾にもならない脆い倉庫のみ…今は俺達ストライク2機が一応盾のつもりで彼らの前に立っているが、今下手に動いてもし彼らに流れ弾などの被害がでては本末転倒である。
「どうする…?どうすればこの状況を切り抜けられる…?」
俺はまだ敵との距離がまだ少し空いており、自分が狙われていない状況のおかげで、ほんの少し冷静でいられた。
しかし、俺が悠長に考えている間に、キラ君は装備していたランチャーストライカーの主兵装、「アグニ」を構え、
「……いや…いやいやッ!?ちょっと待てそんなもんコロニー内でぶっ放したら」
躊躇なくキラ君は敵モビルスーツにぶっ放した。
調整が済んでない状態での射撃など当たるはずもなく、放たれた超高エネルギービームは敵の機体にはかすりもせず、よりにもよってそのままコロニーの壁に直撃し、大穴を開けた
(う、嘘だろ…コロニーに、穴が…)
今頃あの穴からはコロニーの大気中の空気がどんどんぬけでているだろう。少なくとも数年はこのヘリオポリスに住めなくなったことが決まった瞬間であった。
しかも、さっきも言ったように足元にはまだキラ君の友人達が、宇宙服も何も無い無防備な人間がいるのだ。このまま悠長にしていればいずれ死人が出てしまう。
だが、事態はまだ急変する。
今度はヘリオポリス内の山岳付近から大量の熱源反応を感知した。
「ッ!今度はなんだよッ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、とてつもない地響きが起こり、山岳の中腹辺りに大爆発が起こる。
そして中から出てきたのは
巨大な戦艦だった。
「まてまてまてまて待ってくれッ!!状況がわからんッ!?あれはなんなんだよっ!」
唐突に現れた戦艦と戦闘中の2機を前に俺の小さな脳ではキャパオーバーである。
動きたくても動けない、誰が敵で誰が味方なのかも分からないこの状況では下手に動けない。
「このぉッ!」
「ちょ、キラ君待てッ!危険すぎるッ!」
だが、キラ君は興奮状態なのか、俺の静止を聞かずに戦闘中の2機に向かって突っ込んで行く。もはや連携も何も無いこんな状態で軽く絶望していたが、下からマリューさんが無線で通信を繋げてきた。
「ツクミ君聞こえる!?応答して!」
「あ、はいっ!聞こえます!マリューさん、あれは一体なんなんです!?」
「簡潔に説明するからよく聞いてっ!あの戦艦は地球軍の新型強襲高速戦艦、アークエンジェル!つまり味方よ!私はこれからどうにかしてアークエンジェルに通信を繋げるから貴方はこれからキラ君と味方のメビウスと一緒に協力してあのザフトのモビルスーツを追い払ってちょうだい!…頼んだわよ!」
そう言って一方的に通信を切られてしまった。
追い払えなどと簡単に言ってくれるが、今手元にあるのは本来バスターガンダムという機体が持っている武装、350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルなる2つの銃身を連結した状態である超高インパルス長射程狙撃ライフルを、片手で何とか撃てる状態にしている。
本来専用の狙撃用モニターと両手持ちプラス沢山のショックアブソーバーを積むことによって撃てる大火力砲なのだ。今の俺が乗るストライクは前の戦闘のせいで片足のフレーム強度に多少の不安があるし、そもそもノイズの走るモニターでは碌に狙いをつけることすら出来ない。というか撃てば先程のキラ君のようにコロニーに穴が空く。
しかし弱音を吐く暇は無い…現にキラ君はもう戦闘を開始してしまっているし、コロニーの状態は今更一つや二つ穴が空いても変わらないだろう…多分…。
俺に出来るのは、皆に被害が及ばないようにここから援護射撃を行うことぐらいだった。
「クッソ…牽制でもなんでもいいッ…!避ければ隙はできるだろッ…!頼むぞッ!」
俺はノイズまみれのモニターとレーダーを駆使し、大方の狙いをつけてビーム砲は放つ。あまりの反動に体勢が崩れそうになるが何とか持ちこたえる。肝心のビームは先程のキラ君のアグニと同じくかすりもしなかった。
が、多少なりとも隙はできたようで、味方の戦闘機…メビウス・ゼロだったか?あの戦闘機についている4つの巨大なバーニアが本体から分離し、なんとブースターの中から銃身が露出して各方向からのオールレンジ攻撃を行った。
その上さらにキラ君の射撃や、アークエンジェルからのミサイルも加わり、敵のモビルスーツは絶体絶命かと思われたが、余程パイロットの技量が凄まじいのか、全ての攻撃を紙一重でかわし続けた。
しかし、ここからが問題だった。
敵のモビルスーツとしては3体と母艦もいる状態では厄介極まりないはず。だとしたらどうするか、数を減らしに来る。ではこの状況で1番手っ取り早く数を減らすには誰がいいか?
考えるまでもない…当然すぐに身動きの取れない俺だった
「ッ!来るかよッ…!!」
敵モビルスーツはキラ君とメビウスの射撃を躱しながらこちらに近づいてくる。まだ距離はあるが間もなく敵の射撃圏内に入るだろう。
俺には迫り来る恐怖と緊張感はあれど、自分がこれからとる行動に迷いはなかった。俺にだってこんな状況になることぐらい予想済みだ。その為にとある策も用意したし覚悟もしていた。まぁ、策と呼べるほどのものでもないが…故に、あと必要なのは実行すること。
「ステラ…怖いかもだけど、俺を信じてくれるか…?」
軽く苦笑いしながら俺はステラ問いかける。こういう時ぐらい大人らしくカッコつけたかったけど、どれだけ覚悟していてもやっぱり怖いし、自分の心臓の音が酷く響いているように聞こえた。胸元にいるステラならきっとよく聞こえているだろう。
「うん。ツクミ、ステラをまもってくれるひと。しんじる」
しかし、彼女は間髪入れずに答えてくれた。その答えが、何故かとても頼もしくて、そして、勇気をくれた。
「やれるよな……俺のストライクッ!」
いま、敵の射撃圏内に入り、ライフルの銃口がこちらに向く。鳴り響く警報の中、俺は威嚇で狙撃ライフルを撃ちながらフェイズシフト装甲の展開スイッチを押す。
そして、僅か1秒にも満たない時間の中、機体の装甲の分子配列が入れ替わり、全身がキラ君のストライクとは真反対とも言えるネイビー色に染まる。
俺の持つ策は単純。装甲に物言わせて防御に徹することだった。
本来ならこのプロトストライクの内部バッテリーなどほぼ劣化してしまっていて、フェイズシフト装甲など展開しようものならものの数分と持たずエネルギー切れになる。しかし、今の状況に限っては違う。
バッテリー補給をしている最中に強襲を受けたため、ストライクの背中には充電ケーブルが差しっぱなしだ。つまり、無くなっていく電力をそれを超える速度で補給することによって常に装甲を展開でき、なおかつ今手元にあるビーム砲も撃ち放題なのだ。
超高圧電力を常に受け止めながらとんでもない量を放出し続けるため、バッテリーの劣化が尋常じゃないぐらいに激しくなるだろうが、知ったことか。今生き残ることの方が何よりも優先なのだ。
「…上等ォッ!!」
そして敵から放たれる弾丸。俺は後ろにいる友人達に被害が及ばないよう1歩も動かずに全身で受け止める。実弾兵器に対し強い防御力を誇るフェイズシフト装甲はいとも容易く弾丸を弾き飛ばす。
敵はライフルでは埒が明かないと察したか、近接武器の重斬刀に持ち変える。キラ君やメビウスのパイロットも射撃しようと狙いをつけるが、射線上に俺がいるためか撃つに撃てない状況だった。だが、俺にとってはもう援護射撃なんていらない。
モビルスーツの驚異的な速度と金属でできたとてつもない重量の剣から繰り出される威力は凄まじいだろう。しかし俺は逃げない。持っていた狙撃ライフルを手放してしっかりと踏ん張り、決して敵から目を背けない。
そして放たれる斬撃。
片腕を前に出して受け止めるが、あまりの衝撃に俺のストライクは後ろにずり下がる。あと少し後ろには生身の人間がいるのだ。スラスターを吹かすこともできないし、かといってこのまま下がる事も出来ない。
だが俺のストライクは1歩ずつ、確実に前に足を出す。
「こんッッッじょォォォォッッ!!!」
そう叫びながら剣をはじき飛ばし、敵の体制を大きく崩した。
俺はすかさず腰部にあるアーマーシュナイダーを取りだしたが、相手は空中に浮いていて届かないため、それならばと思いっきり投げつけた。
奇跡的にそのナイフは頭部に刺さり、その上、頭上からキラ君のストライクの肩に装備されているガンランチャーやメビウスのガンポッドから無数の弾丸が飛び交い、結果撃墜することはできなかったが片足に被弾させることが出来た。
このまま撃墜できればよかったが、敵機は引き際もしっかり見極められるのか、そのまま撤退していく。
「……ハァ……ハハッ…どうよ、俺だって…やる時はやるだろ…?」
「うん!ツクミ、すごいひと!」
相変わらずなんでかカタコトっぽい喋り方だが、それでもステラの嬉しそうな声を聞いただけで、俺は安心できた。
そうして周りを確認しても新たな熱源反応もなかったため、アークエンジェルは広い地表に着陸し、メビウス・ゼロを含む俺達は艦の近くに移動した。
そして艦から降りてきたのは、もう一目で軍人だとわかる制服を着た黒髪ショートの女性だった。その女性はマリューさん見るや否や、コックピットのノイズ走るモニターの中でも思わず感心してしまうぐらい綺麗な敬礼を示した。そして背後からもぞろぞろと軍人さんが出てくる。
マリューさんも彼女を見て微笑みながら何かを話していた。そこに、先程のメビウス・ゼロのパイロットも加わり、何かを話していたが、次第に各々表情が暗くなっていた。
『ツクミさん、僕達ももう降りていいですよね…?』
「ん?あぁ、多分大丈夫だと思うよ。そんじゃま、俺達も降りようか。ステラ」
「うん」
そんな中、酷く疲れた表情のキラは通信で俺に降りていいかを確認してきた。まぁ俺もあまりに変化し続ける状況のせいで、日々の仕事とは比べ物にならないほど疲れた。
、
俺達は互いにコックピットを開いて外に出てくると、周りから、と言うより主に軍の人達からとんでもないような目で見られた。え?なに?皆なんでそんな目で見てくるの?と思ったが、
そうじゃん。俺達民間人じゃん。
あまりの疲れで忘れていたが、俺達は軍とは何の関係もない一般人。そらそんな目で見るよな。だって民間人が軍の虎の子であるモビルスーツに乗ってるんだもの。しかもキラ君に至っては子供。俺と一緒に乗ってたステラも子供。異常も異常、異常のオンパレードだもんな…
「……へぇ、こいつぁ驚いた…」
「ラ、ラミアス大尉ッ!?これは、一体どういう…!?」
メビウスのパイロットである男性が興味深そうにこちらをジロジロと見つめる中、黒髪の女性が慌てた様子でマリューさんに詰め寄るが、マリューさんは女性をなだめながら軽く説明してくれた。
「その、混乱するのも重々わかるのだけれど…落ち着いて聞いてちょうだい。彼らは、見ての通りの民間人。少年の方は名前はキラ・ヤマト。避難する際工場区に迷い込んでしまい、仕方なく私と共にストライクに乗せたの。青年と少女の方はツクミ・バーシル、そしてステラ・ルーシェ。彼らもキラ君と同じく避難する際に工場区にたどり着き、運良く解体作業中のプロト・ストライクを発見し、逃げるためにやむを得ず搭乗した…そんなところね」
「ま、待ってくださいラミアス大尉!ということは、あのシグーと交戦していたのは…」
「……えぇ、彼らよ。なんなら、先程の戦闘の前にジンを一機撃墜しているわ」
マリューさんのその一言で、軍人方はザワつく。まぁそりゃただの民間人がモビルスーツを操縦して初の実践で敵モビルスーツを撃墜・撤退させるぐらいまでに戦ったんだ。普通じゃ絶対ありえない。そう、一部を除いて。
周りの見る目が怪訝と驚愕に染まる中、パイロットの男が近づき何気なく俺達2人に問いかけた。
「君達、コーディネイターだろ?」
そりゃ、気づきますよね…
俺は男の放ったその一言で、この艦の中での生活はとても暮らしづらくなるということが簡単に予測できた…
プロト・ストライクのカラーリングはガンダムMa-kIIをイメージしてます。