機動戦士ガンダムSEED 臆病者の意地   作:ユーリさん

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第5話 やるしかないから

 

 

 

 

 

「ツクミ…すごい、みられてるよ?……」

 

「……大丈夫さ、ステラ…きっと、大丈夫…」

 

 

周りの視線が痛い…この状況に怯えるでもなく、不思議そうに今の状況を口にするステラとは対象に、俺は今日何度目か分からない軽い絶望感を感じていた。

金髪の男…メビウスのパイロットだろうこの人は、よりにもよって地球軍の目の前でコーディネイターなんだろお前と聞いてきた。

俺は絶え間ない冷や汗でステラと繋いでいる手がぐっしょりだし(ごめんステラ…)あまりのストレスで胃が痛い。

 

考えてもみてくれ、周りには地球軍しかいないこの場で、あの男の言う通り『はい!私はコーディネイターです』なんて言ってみろ。今この時に至ってはその場で銃殺されたっておかしい事じゃない。

普段ならいくら敵の種族と言えど問答無用で殺したりなんてしない。多分侮蔑と軽蔑の目で見られるだけですむだろう。だが、ついさっきザフト軍が攻め込んできており、現に今もどこかに潜んでいるのかもしれない。そんな状況ではいかに民間人であろうと、コーディネイターという種族だけで敵と認定されるのがオチだ

 

だがしかし嘘をつくのもよくない。どうせ今ここで違うと答えても戸籍調べられれば1発でバレる。なら潔く吐いた方がまだ希望はあるのでは?

 

 

「…はい。その通りです」

 

 

そうこうしていると、隣にいたキラ君が少し怯えながらも白状した。するとどうだ。あっという間に兵士たちの目は親の仇でも見るかのような敵対心の籠った目に変わった。あぁ終わったかな俺…今更逃げるなんてできやしないし……今命乞いすればステラだけでも助けてくれるかな…?

 

俺は大人しく投降するために両手をあげようとするが、俺達のあとから続いて来ていたキラの友人達…トール、だったか?その子がたくさんの兵士のなか、俺たちの前に立った

 

 

「な、なんだよ!なんなんだよあんたちはッ!さっきの戦闘見てなかったのかよ!?一体どういう頭してんのさ!?」

 

 

彼自身も軍を相手に相当怖いだろうに、友人の為に体を張って弁明してくれた。それに彼だけじゃない、カズイやサイも兵士達の前に立ち塞がった。キラ君がいたからこそ彼らは反抗してくれたのだろうが、それでもナチュラルの子達が、コーディネイターの友人の為に行動してくれたことが、俺には嬉しく、そして頼もしかった。

 

 

「あぁいや、もしかしてと思ってちょっと気になっちまっただけなんだ。こんな騒ぎにするつもりはなかったんだよ、悪いな。金髪のお嬢ちゃんも、そう怖がんなくていいぜ」

 

緊迫した状況の中、金髪の男はまるで友人に謝るかのように俺達に軽く謝罪した。それに続いてマリューさんも周りを軽く諌める。

 

「ここは中立国のコロニーよ?戦争が嫌で逃げてきたコーディネイターがいたって何も不思議な事じゃないわ。貴方達も、こんな状況でそういった目を向ける気持ちはわかるけれど、今回の騒動に彼らは何の関係もないわ。ただ巻き込まれただけの民間人なのよ。」

 

マリューさんの言葉もあって、やっと軍人さん方は渋々落ち着いてくれた。…まぁでも過ごしづらいことに変わりは無いが

 

「改めて、俺はムウ・ラ・フラガだ。隣の黒髪さんはナタル・バジルール中尉。よろしくな、ボウズ共」

 

そう言ってムウさんは気楽に挨拶をかわした。軽薄そうな男だと思ったが、この男のおかげでこの場の空気も幾分かはマシになってると思う。

 

「とりあえず、艦の中に入ろうぜ。またいつ襲ってくるかも分からないし、さっきの戦闘でコロニーに穴が空いちまってるしな」

 

確かに、これ以上生身でこのコロニーにいたら軽く死んでしまう。フラガさんのお言葉に甘えて、俺達は地球軍の艦、『アークエンジェル』の中に入った。

 

 

 

 

 

 

「さて、これからどうするよ?アークエンジェルの方はどこまでいってるんだ?」

 

「準備の途中でしたので、殆ど進んでおりません」

 

バジルール中尉は簡潔に情報を伝えるが、殆ど進んでいないってなんだよ…って思ったが、よくよく見たら周りには負傷兵もちらほらいた。おそらく、襲撃の被害にあっていたのは俺のいた軍基地周辺だけでは無かったのだろう。

 

「そりゃ面倒だなぁ…なるべく早めに済ませねーと、外にいるのはクルーゼ隊だ。アイツはしつこいぞぉ?」

 

「えぇ。早急に事を進めなくては…ではまず、物資の搬入を最優先に。G兵器のパーツと武器、それから航海に必要な物資を積み込みましょう。G兵器に関しては私がある程度情報を持っているため、そちら私が。艦とそれ以外の物資についてはバジルール中尉にお願いするわ。それと…」

 

指示の途中で俺達民間人側に目線を向けたマリューさんは、俺達にも指示を出してくる。

 

「申し訳ないけれど、貴方達にも手伝ってもらうわ。特に、キラ君とツクミ君にはまたストライクに乗ってもらうことになる」

 

「なっ、正気ですかラミアス大尉!?モビルスーツに乗せるなどっ!」

 

その指示に信じられないと言うように異議を唱えるバジルール中尉に、キラ君がどうかは知らないが俺も中尉と同じ反応だった。もちろん、手伝うことに対して何か不満がある訳じゃないが、またモビルスーツに乗るとなると中尉のように周りが黙っていないはずだ。マリューさんはここに至るまでの俺達のことを少なからず知っているからモビルスーツに乗せたところで何も起こらないと信用していくれているのだろうが、周りの兵士は違う。民間人とはいえ仮にも敵であるコーディネイターを自らのモビルスーツに乗せるなんて普通は許されないだろう。だが、マリューさんはそんな反対の意見など関係ないとでも言うように振舞った。

 

「時は一刻を争うのよ。大量の物資を積み込むのに人の手だけでは到底足りないわ。それが巨大な機械のパーツともなると尚更ね。貴方の言いたいことも十分承知しているわ。けれど、今この状況でストライクを扱えるのはキラ君とツクミ君しかいないんだから、しょうがないでしょう?」

 

「ですがっ!何も彼らにッ!……フラガ大尉なら!」

 

なおも抗議を続ける中尉に、話が飛び火してきたフラガ大尉は慌てて答える

 

「おいおい冗談じゃないぜ!?俺はアーマー乗りで、モビルスーツは専門外だ。それにあのOS!戦闘中の動きは見たが、君ら、中身のOS書き換えたろ?」

 

「え?えぇまぁ…めちゃくちゃだったので、動かす為に仕方なく…」

 

「…俺も、全部書き換えた訳じゃないですけど、それでも半分ぐらいは弄りましたね…」

 

「なッ!?貴様ら何を勝手に!!」

 

中尉は軍の物を勝手に弄られたのが相当許せないようで鬼気迫る表情で俺達2人に迫ってくるが、大尉に諌められる。だってしょうがないだろう…元のOSじゃあまりの機体の鈍さに戦闘どころかものを掴むことすら億劫になるほどだ。

 

「まぁまぁそうカッカしなさんなって!とにかく、マニュアルもない、OSも独自のものってなると俺にゃ到底動かせねーよ」

 

「なら元に戻させればッ!!」

 

「戻ったって元がイカれたOSなら意味が無いだろ?そんなら動かす人間を選ぶとはいえまだまともに動く分今の状態がマシだって!」

 

……俺達だって乗りたくて乗ってるわけじゃないってのに、そんなに言うならアンタが乗ってくれよ……

 

なんて悪態を心の中でつくが、そうもいかないことは重々承知している。好きでやった訳じゃないが中身をいじってしまった以上扱えるのは俺ら2人のみ。しかし中尉はどうにかして俺達をモビルスーツに乗せたくは無いようだったが、見かねたマリューさんはフラガ大尉と一緒に中尉を落ち着かせる

 

「バジルール中尉…今こうしている間にも、外にいるザフトは戦闘準備を進めているはずよ。急がなければ、せっかく残ったこのストライクも、我々も、全部無駄になる…それは、今の我々において1番の最悪だってことは理解してもらえるわね?」

 

マリューさんの言葉は今のこの状況の全てを言い表していた。今はまだこうやって話し合うことができているが、またいつ襲撃が始まるか分からないし、次来るとしたらまず間違いなく今まで以上の戦力で来るだろう。そんな中、俺達は言い争って何も準備できていませんでしたじゃ話にならない。少しでも多く物資を確保し、身の回りを整えなければ勝てるものも勝てない。

 

中尉も頭の中ではそれを理解しているのか、渋々、本当に渋々引き下がった。

 

 

「…ふう、それでは、キラ君とツクミ君はそれぞれのストライクに搭乗したのち、私の指定する場所に向かいパーツを回収。それ以外のものは中尉に従い、まだ使えそうな物資を回収した後、アークエンジェルの各部最終チェックをお願いするわ」

 

皆、己の仕事を把握し、それぞれの持ち場に別れていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間がたった。

 

 

幸いなことにザフトの襲撃はなく、事は順調に進んでいた。

この艦に乗っている人数が少ないこともあって、元から積まれている日常品や食料品と回収してきたものを含めるとしばらくは航海できるほどには集まった。

 

俺とキラ君の方もパーツの入ったコンテナを無事回収し、アークエンジェルのモビルスーツ格納庫に収納していた。しかしやることは終わらない。

 

今度は機体の整備が始まり、俺はストライクに乗っていたということと、一応自動車関係とはいえ、機械のエンジニアというこの艦の中では数少ない人間でもあるので、このアークエンジェルの整備士長であるマードックという人から呼び出されていた。

 

 

「よぉ、来たか。……って、おいおい…ここは嬢ちゃんの来るところじゃねぇぞ?」

 

溜息混じりにそう言われるが、常に手を繋いでいるか服のすそを掴んでいるステラはなんの反応も示さない。

 

「申し訳ない…決して邪魔はさせないので、許して下さい…」

 

「……」

 

「…ったく、怪我したって知らねーからな?っと、んな事より、お前さんにも一応見せといた方がいいと思ってな」

 

そう言ってマードックさんは俺に今のプロトストライクの資料が入ったタブレット端末を渡してきた。

 

「今のプロト・ストライクの状態をまとめたものだ。とりあえずフレームむき出しだった片足は、回収してきた他のGの装甲を引っ付けてみたんだ。Gのほとんどは同型機だから、装甲の付け替え程度じゃさほど問題は無いはずなんだが、正直何が起きるかわからん。でもまあないよりマシだろ?」

 

確かに、実際に見てみると片足の装甲がもう片方とは違っていた。色はフェイズシフトがダウンしているためすべてグレーになっているが、装甲展開時にどうなるのか…そもそも違う装甲で流す電圧も違うだろうに展開できるのか?そんな不安もあったが、このストライクにはほかにも不安がある。マードックさんは次にコックピット周辺を指して言う。

 

「内部のバッテリーについてだが、これももうダメだな。元が規格落ちの劣化部品を使っていたから電力の貯蔵も消費も向こうのストライクとは比べもんになんねぇし、何より焼き付いてほぼほぼショート寸前だ…一体どんな使い方したんだよ、えぇ?」

 

「……生きる為に、仕方なく…」

 

そう、生きるためにはしょうがなかったんだ。例えあの時撃ったビームがかすりもしなかったとしても、きっと何かしらの意味はあったはず。そうに決まってる。そうでなければただ単に無駄撃ちしてバッテリー焼きつかせただけの馬鹿だ。

 

「……まぁ過ぎちまったもんをグチグチ言ってもしょうがねぇ、元々試作品としての役目を終えて解体予定だったコイツが、今ここにあるだけでも僥倖モンだ。そんで、実際にバッテリーを交換したわけなんだが、だからといって無茶すんなよ?フェイズシフト装甲を展開しつつ馬鹿みたいに撃ってたらすぐにエネルギー切れになるからな。死なない程度に節約する癖つけとけ。あとは…」

 

その他にもどこを修理してどんな処置をしてくれたのかを教えてくれた。動かなかった片腕も一応動かせるようにはなっていた。どうやら片腕は電気信号そのものがショートして通じていなかったらしい。応急処置ではあるがそれでも動くだけありがたかった。

 

しかし…

 

「…なんか、俺が乗ること前提、みたいに話してません?」

 

頭ではわかってる。外でマリューさんが言っていた通り、今この機体を扱えるのは俺とキラ君しかいない。だから乗るしかない。外にはまだザフトがいるだろうし、行動しなければ死ぬだろう。でも、理解はしても納得しているわけじゃない。

 

だって、コレに乗るってことは、遅かれ早かれ殺し合いをすることになる。俺は軍人でもなんでもない、ただの民間人なのに…そう思うが、向こうだって好きで乗せてるわけじゃないってことも十分承知している。

 

だからこそやるせない。どうしようもないって、こんな質問になんの意味もないってわかってるけど、自嘲気味に尋ねた

 

「…正直、悪いとは思ってるさ。お前さん方の日常を壊しちまった原因も、コイツに乗せてしまうようになったことも、ほぼほぼ俺達だからな…だからよ」

 

そこまで言ってマードックさんは、俺に頭を下げた

 

「こんな男の頭で悪ぃがよ、今この艦にはあんたとあのボウズが必要なんだ…今はこれで勘弁してくれや」

 

「…いえ、いいんです。俺だって腐っても大人ですから…今がどういう状況かぐらいは分かります。こっちこそ、答えづらい質問をしてしまってすみません…」

 

俺はマードックさんの頭を下げた姿を見て、余計に胸が苦しくなった。俺は一体、彼らに何をどうして欲しかったのか分からなくなってしまった。

 

 

「…申し訳ない.、少し、休憩してきます」

 

ダメだダメだ、これ以上暗く考えてもしょうがない。切り替えなければ。その思いのまま俺はステラを連れて足早に立ち去ろうとした。

 

「……コイツを動かせるのもそうだが、その子を守れるのもアンタだけだってこと、忘れんなよ」

 

 

後ろから聞こえたその言葉に俺は一瞬立ち止まったが、振り返らずにその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツクミ、だいじょうぶ…?」

 

「…あぁ、大丈夫さ。俺はまだ大丈夫…」

 

そうさ、俺は大丈夫。キラ君だって俺より年下でまだ学生だろうに、俺と同じような状況に陥ってしまって、きっと俺以上に悩んでるはずだ。彼だけじゃない、トール君やカズイ君達もそうだろう。俺が彼らを助けてやんなくちゃ

 

 

 

 

それができるのは、俺だけなんだから。

 

 

 

 

 

「……ツクミ……ステラも、まもるから……」

 

 

 

 

 

 

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