ブレイン傭兵事務所へようこそ   作:上代わちき

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九話「独立傭兵レイヴン捕獲」

 

 

 

「ハンドラー・ウォルター、か。あいつ……」

 

 

 おや、ここにいたのかスカルちゃん。

 そろそろ作戦時間だぞーっと。

 

 

 

「作戦……ハンドラー・ウォルターと、その猟犬の捕獲、だったか」

 

 おうさ。

 ハンドラー・ウォルターの猟犬による先行調査は打ち切られた。

 

 残りはスネイルんとこの部隊が技研都市を探査する手筈だ。

 

 

 

 尤も、奴らはまず間違いなく出張ってくるだろうけどな。

 それがスネイルの見立てだ。

 

 だから再教育センターに放り込んだ政敵を使った捨て駒部隊を使い、奴らをおびき出す。

 具体的にはメーテルリンクちゃんと五花海だな。

 奴らに首輪をつけて、強制的に仕事をさせる。

 

 

 そこを猟犬に撃墜させることで、奴らの油断を誘う。

 その油断を突くのさ。

 

 スネイルだけなら穴はあるかもらしいから、僕らは念のための後詰だ。

 

 

 

 ……スネイル曰く、上層部との軋轢がそれなりに酷くなってきているらしい。

 一晩中奴らと討論して、ようやくアイスワーム殺しを生け捕りにして再教育するというところまで妥協させた。

 その結果で、奴らとの戦争までの時間を稼ぐ。

 フロイトはそのために温存だ。

 

 

 

「そうか……」

 

 

 …………。

 思い出した、のかい?

 

 

 

 

「いんや。今まで何度かあちしがC4-618で、ウォルターは元飼い主らしいってのは聞いてるけどよ……やっぱり実感わかねぇや」

 

 ……。

 

 

 

「けどまぁ、ウォルターが噂の悪人ってわけでもなさそーだなってのはなんとなく感じているよ。根拠はないけどさ」

 

 ……そっか。

 

 

 

「でも、C4-618は死んだよ。あの時、スッラとかいう奴に殺されて」

 

 それは……。

 

 

 

 

 

「あんたは悪人だ」

 

「必要であれば女子供ですら嬲り、再起不能の生き地獄に落とすことすら厭わず、どれだけの悲鳴を聞いても眉一つ動かさない」

 

「殺してやった方が楽になるような地獄を作っておきながら、決して自分ではトドメを刺さない悍ましさがアンタにはある」

 

「あの狂気じみたアンタの顔は、今でも夢に見る。……情けなくも、一度泣いちまったなぁ」

 

 

…………。

 

 

 

 

「でも、それが誰のための狂気かはわかっているつもりだ」

 

「ブレインは噂以上の悪人だ。根拠なんて、いくらでもある」

 

「それでも、死んでいい奴ってわけじゃあない。……つうか悪人云々はあちしも大概だからな。仕事で何十人も殺してきたわけだし」

 

 ……っ。

 

 

 

 

「だからまぁ、なんだ。そんなツラすんな。アンタを一人にした時のやばさは、一度泣いたあの件で思い知った。二度と離れりゃしねぇ」

 

 スカルちゃん……。

 

 

 

 

「そう。あちしこそがスカルだ。アンタの助手で、相棒なんだからよ」

 

 

 そうか。

 

 うん、ごめん。

 いつになく弱気になってたね。

 

 

 

「アンタの場合わりといつものことだろ、ヘボ所長」

 

 

 

 

 

 

「ミッション開始。ハンドラー・ウォルターとその猟犬を捕獲する」

 

 

 あいよー。

 技研都市を突っ走るぜ。

 

 

 

「こちらV.Ⅱスネイル。……駄犬がC兵器と交戦しました。折を見てスタンニードルランチャーを打ち込み捕獲を試みます」

 

 了解了解。

 一応そっちまで行って事前のBF通り万が一の後詰をすりゃいいんかね?

 

 

 

「ええ。その通りに。……駄犬の捕獲が成功すれば次は飼い主です。そちらについては予め座標を突き止めてありますので、貴方達に任せます」

 

 あいよー。

 

 ……ん?

 おいスネイル、レイヴンに撃墜されちったメーテルリンクちゃんとよくわからん三番生きてっぞ。

 

 

 

「……後でMT部隊に回収させます。作戦が完了すれば技研都市内に再教育センターを建設する予定ですので、今は営倉送りにします」

 

 運がいいんだか悪いんだか。

 

 

 

「二人してそれぞれの身内を助けようとしてこれだもんな」

 

 

 誰だって生きるために戦っている。

 身内ってのはそのために必要不可欠な絆さね。

 その絆を大事にできない屑はすぐにあの世行きになるし、というか僕がそうする。

 

 なんだかスピリチュアルな話だけど、あいつらが生きているってのはそういうことなんだろね。

 立場上庇ってやるわけにいかないしこっちもスネイルとフロイトっていう身内がいるからあれだけどさ。

 

 

 

 

「だな。……ところであれどーする。ルビコニアンデスパンジャンドラムの群れ」

 

 ……パスで。

 

 

 

「その方がいい。先行部隊内からも甚大な被害が報告されています。あのエリアを探査する時間はいくらでも捻出できる筈ですので、今は無視しておきなさい」

 

 

 

 

 

 

「独立傭兵レイヴンの無力化を確認。これが一番の懸念事項だったのに、あっさりだな」

「ええ。かのアイスワーム殺しといえど、消耗と油断が重なれば隙の一つは晒すでしょう。そして、私はその隙を見逃す愚鈍とは違う」

 

 よし、じゃあ残りの仕事を片付けようか。

 ハンドラー・ウォルターのヘリは……あっちの方か。

 

 

 

「万が一があっては困りますので、私はこのまま駄犬が収容されるまで待機します。飼い主については手筈通りに」

 

 あいよ。

 行くぞスカルちゃん。

 

 

「おーぅ」

 

 

 

 ……さてはて、どうやら逃げるような真似はしないか。

 ハンドラー・ウォルター。

 

 

 

 

「……スネイルからの差し金か」

 

 まぁね。

 両手をあげてヘリから降りな。

 

 ヘリを動かしたり不審なそぶりを見せようものならそのまま撃墜する。

 

 

 

 

「ハンドラー・ウォルターの姿を確認。両手もあげてる。抵抗はしないようだ」

 

 念のため僕が拘束する。

 スカルちゃんは周辺の警戒を。

 

 

 

「あいよ」

 

 

 ……さて、話すことがあるなら今のうちにどーぞ?

 

 

 

 

「……元気そうだな、618」

「それは皮肉かい? それともやっぱ本心? 何にせよ、そいつはもうとっくの昔に死んだよ」

「……」

「ただまぁ、もし618とやらに口があったなら。案外アンタに礼を言っていたかもね。あの廃棄処分場から引きずり出してくれてありがとうよって。生憎あちしは無関係だが」

「なるほど。618とは、無関係か」

「そうさね。あちしはスカル。スカルにとっての命の恩人は、そこなヘボ所長。アンタに負けず劣らずの悪人で、でも悪い奴じゃあない」

「……そうか。お前にも……」

 

 

 

 

 

 

 お互いミッション完了、だな。

 ひとまず全員無事でよかったぜ。

 

 

「ええ。駄犬とその飼い主は、技研都市内に建設する再教育センター送りに。裏切り者の第六隊長およびレッドガンG3も同様に」

 

 さて、このうちどいつまでがファクトリー送りなんじゃろね。

 また脳髄引きずり出したりすんのかねぇ。

 僕は見慣れたけど、あんまり血生臭いのはばれないようにすると便利な時があるよ~。

 

 

 

「貴方の悪趣味と同じにしないでいただきたい。私は有意義な実験結果を求めてそうしている。ただ恐怖を周囲にまき散らすだけの貴方とは違うのですよ」

 

 

 いや一応ちゃんと理由があってそういう恐怖刻み込んでまき散らしてるから僕。

 

 ……でも、流石に最近は自重するようにしてるよ。

 前にも言ったけどさ、スカルちゃんを泣かせるような事態にはしたくない。

 

 

 

 

「……飼い主については、多少手心を加えましょうか? スカルについては単体でも見どころがあると聞いている。何より裏切りの心配がない手駒となるのですから、多少は配慮します」

 

 

 すまん、そうしてやってくれ。

 思っていた以上にウォルターからの扱いは悪くなかったらしい。

 

 それでも、スカルちゃんは僕についてくって選んでくれた。

 できるだけ汲んでやってくれ。

 

 

 

「ええ。利益を受けた者として、その選択には報います。それに、貴方の世話役はもう二度とごめんだ」

 

 ひっでぇ。

 

 

 

 

 

「問題はここからです」

 

 上層部とルビコン解放戦線だな。

 奴らに動きはあったか?

 

 

 

「上層部については、駄犬の生け捕りで表面上は機嫌を良くしています。今のところ何かを仕掛けてくる気配もない」

 

 かえって不気味だこと。

 解放戦線経由でフロイト暗殺未遂とか色々やっといて……。

 

 

 

「第三隊長オキーフに続き第四隊長ラスティが所属不明機体に暗殺された件もあります。……おそらくフロイト以外はブラフ。額縁通りに盤面を見るべきではない」

 

 だろうな。

 あの二人はまず間違いなくどこかに潜伏してやがる。

 シュナイダーにいんのか、解放戦線にでも戻ったのか、それとも上層部の秘密部署にでも保護されてるのか。

 上層部のあの謎権力さえなけりゃ手数使って堂々と捜索できたんだが……。

 

 

 

 話は変わるが、ホーキンスさんとペイター君については?

 

 

 

「やはり表面上は私に尽くす姿勢を見せています。……今となっては私が優勢ですから当然の姿勢でしょうね。あのオポチュニストどもめ」

 

 倫理的にはあれだけど、すんごい邪魔だなぁこの二人。

 人と能力はいい人達なんだが……ままなんないね。

 

 

 

「解放戦線の動きもみられません。盤面の上では敗北は必至。やはり、彼らの動きは上層部次第でしょうね」

 

 一応RaD辺りの他勢力も残ってる。

 警戒は怠るなよ。

 

 

 

「貴方に言われるまでもない。……ひとまずはMT部隊を用いて技研都市の調査を進めつつ、バスキュラープラントの修繕および延伸計画に着手します」

 

 そのバスキュラープラントでコーラルを吸い上げてしまえば、後はこちらのもん。

 晴れてルビコンでの仕事は終わりだ。

 

 

 

「私の仕事はここからですがね。吸い上げたコーラルの利権を用いて、いよいよ上層部を粛清します。もうすでに私の手の者が本社に潜んでいます」

 

 頃合を見てそいつらが上層部に攻撃するってこったな。

 まぁそのあたりで僕が役立てることはないからねー。

 

 その段階になったら僕は何も考えずに暴力装置に徹しておきますよ。

 

 

 

「その道中で考えられるのは、やはりルビコン解放戦線を用いた代理戦争。動きがないのは今だけと思いなさい」

 

 おうさ。

 フロイトともども頑張らせてもらいますよー。

 

 

 

 

 

 

「これで一段階というわけか、オキーフ」

「ああ。後はオールマインドの合図を待てばいい。その時は……奴らとの共闘ではあるが……純粋に解放戦線の一員としてスネイルを打倒できる」

 

「以前から聞かされていたとはいえ、よりにもよってまさか『アーキバス』が我々の戦友のような存在になってしまうとは……」

「封鎖機構を前にアーキバスとベイラムが組んでいた。それと同じ要領だ。事実スネイルを排除する点においてはまだ信頼できる。業腹だが」

 

「皮算用だが、スネイルの後は?」

「オールマインドが支配するアーキバスを裏切るさ。向こうもそうするだろうが。……コーラルには危険性がある。だが、奴らの目論むリリースや『破綻』を回避する術がないわけではない」

「オキーフ、わかっているだろうが……」

「安心しろ。私は『観測者』ほど過激派ではない。ルビコンを焼かずとも、最悪延命程度ならできる目算だ」

「そうか……ひとまずは、信用しよう」

「どちらかというと、その過激派を抑える準備も必要だが……まぁ、やはりまずはスネイル達だな。奴らを排除せねば話にならん」

 

 

 

「策はあるか? おんぶにだっこではどうにもならないだろう」

「今の私は亡霊らしい。アーキバスの施設から兵器を一つ盗み出す程度はできる。とびきりの兵器を盗んでみせるさ」

 

「なるほどな。後は、私の新型が間に合うかどうか……」

「ファーロンは技術支援に同意した。ベイラムの残党も合流している。VCPLの小規模支援もあり、シュナイダーはもとより上層部以上に協力的で、BAWSが稼いだ金もある」

 

「エルカノ……フロイトが感づいていたらしいのが気がかりだが」

「そこはお前の腕で奴の予想を上回ってやれ。……ルビコンの夜明けを、拓くのだろう?」

 

 

 

 

「……ああ。このラスティには、ルビコンで為すべきことがある」

 

 

 




これでようやっと筆者的に状況が整いました。
次回、急展開です。
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