ブレイン傭兵事務所へようこそ   作:上代わちき

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急展開です。
細かいことは気にしないスタイルです。

でも、この展開をやってみたかった。
そういう内容です。


十話「ルビコン脱出Ⅰ」

 

 

 

 緊急事態だ。

 アーキバス本社に潜んでいたスネイルの手の者が粛清された。

 

 それに合わせて、アーキバスの支配下にあった管理基地から封鎖機構の兵器が盗み出された。

 他の、スネイルの支配下にあった強襲艦をはじめとする兵器の数々も破壊ないし窃盗された。

 

 ダメ押しと言わんばかりに、命令系統に妨害が入り込んだ。

 

 

 

 ここまで来たら、もう訊くまでもない。

 いよいよアーキバス上層部が、スネイルに牙を向いたってわけだ。

 

 

 

「……」

 

 スネイルは、呆然としている。

 今まで付き従ってきた部下達が、生身のスネイルに銃口を向けているからだ。

 

 彼らの言い分は、こうだ。

 上層部からの命令。

 V.Ⅱスネイルに叛逆の嫌疑あり。

 即刻再教育センター送りにしろ。

 

 逆らえば、アーキバスでの立場がない。

 

 

 

 

「僕の前でそれは馬鹿だろお前ら」

 

 

 まぁ、そんなの僕には関係ないわけだが。

 

 ずっと手元に忍ばせていたスタンハンドガン。

 そいつでスネイルを包囲してた連中を撃ち潰す。

 

 

 何人かは機敏に反応して僕へ向けて発砲するけど、まぁ僕もそれなりに鍛えている。

 見てから余裕で避けて、逆に撃ち返す。

 

 それでも対応できない奴は、スカルちゃんがスタンハンドガンをぶっ放してくれて対応してくれた。

 それで、話は終わった。

 

 

 

「ブレイン……」

「どうやら、お互い下手打っちまったみたいだな」

「貴方は……自分が何をしているのかわかっているのですか……? このままでは、貴方までも……」

「……お前からそんな台詞を聞くことになるとは、夢にも思わなかったなぁ」

 

 

 ひとまず落ち着いたところで連中を拘束しながらスネイルの様子を見る。

 

 ……まぁ酷いもんだ。

 足場が崩れ落ちるような感覚なんだろうな。

 

 

 ヴェスパー次席隊長であり、アーキバスである。

 それがアイデンティティーの一部だった節がある奴だからな。

 

 どういう理屈であれ、そのアーキバスからこうも堂々と攻撃されるなんて予想の外だったんだろう。

 

 

 

「僕は独立傭兵だ。アーキバスに見捨てられても生きてく術やツテはいくらでもある。けど…………僕のやり方。覚えてるだろ」

「……身内には最大限の愛を。その代わり、他者には一切の関心もなく」

「そして。身内への攻撃や裏切りには、絶対の恐怖を。……アーキバスは僕の身内に、手酷い裏切りをしてみせた」

「…………。報復するというのですか。アーキバスに」

「ああ。裏でつながっている筈の解放戦線だけじゃなく、直接こんな強引な手を使ってきたんだ。義理立てなんて、もういいだろ」

 

 

 だが、現実は待ってくれない。

 状況は刻一刻と変わってる。

 

 動くなら、今だ。

 

 

 

「僕についてこいスネイル。お前は、こんなところで死んでいい奴じゃない」

 

 これはアーキバスの前提を覆す、明確な叛逆行為だ。

 嫌疑ではなく、自分の意思でアーキバスの敵となる。

 

 

 

 

「策は、あるのですか?」

 

 その手を、スネイルはとった。

 正真正銘、スネイルはアーキバスの敵となった。

 

 

 

「まず手札を確認したい。僕らはどこまでできる?」

「……バスキュラープラントへのアクセスができません。専用のセキュリティをかけた筈ですが、突破されたのでしょう」

「だよなぁ。コーラルをおさえたから、こんな手段をとったんだろ。正直ここまでやられるとお手上げだ。コーラルは捨てるしかない」

「ですが、私達のACには別種のセキュリティを施してあります。こちらは突破されていません。……なんとか、ACは頼れます」

「了解。……権力は? 上層部への発言はなしのつぶてでも、部下連中にはもう通じないのか?」

「先の光景を見たでしょう? ……もう、貴方達以外は誰も信用できない」

「いや、少しだけアテがないこともない」

「……フロイトですか」

 

 すぐフロイトにも連絡を取る。

 割と気分屋な奴だが、今回に限ってはすぐ応答してくれた。

 

 

 

「緊急事態だフロイト。スネイルが失脚させられた。荷物を纏めてロックスミスに乗り込め」

「……そうか。わかった、すぐかけつける」

 

 

 最低限の言葉で、奴はすべて理解したかのように動き出した。

 やっぱり、こういう時の嗅覚は抜群だ。

 

 なんというか、こいつ不思議なんだよ。

 仕事は雑で人間関係も雑で、他人を怒らせるのなんてしばしばで、スネイルに対する配慮なんてこいつの辞書にはあんまりない。

 なのにどういうわけか、こいつ一定のところまではスネイルを眼中の内に置いている。

 なんだかんだで、何も言わずにスネイルの絶対的な味方の位置にはいてくれる。

 

 何かが違えばその限りじゃないかもだが、今回は関係なく、だから信頼できる。

 それが、フロイトっていう男だった。

 

 

 

 

「これで味方についてはっきりした。施設管理用のセキュリティカードは? バスキュラープラントは無理でも、他の施設はアクセスできないのか?」

「使えます。しかし、奴らの全員が敵ならば……」

「わかっている。おそらく僕らがとるべき手段は、ウォッチポイントからの脱出。……忌々しいが、一度はアーキバスから逃げなきゃならん。報復はその後だ」

「ウォッチポイントからの脱出はACか。しかし、今のルビコンは事実上アーキバスの支配下です。ルビコンから脱出せねば、安全を確保できない」

「だから、あの時の仕込みが効くんだよ」

「……貴方の船ですか」

「ああ。僕の船で、ルビコンを脱出する」

 

 

 そのフロイトの暴力を頼りに、あとついでに僕とスカルの暴力も使い、ウォッチポイントから離脱してルビコンから出る。

 そこから、アーキバスへの報復を始める。

 

 反撃の暇すらなくスネイルを失脚にまで追い込んで来た魔法使いだらうと、関係ない。

 奴らがどんな巨人だろうと、確実に生き地獄に引きずり込んでやる……!

 

 そのためにも、僕らは五体満足で生きて帰る必要がある。

 

 

 

「陽動が欲しい。僕らの脱出を手助けする、助っ人が要る」

「MT部隊は使えないと考えるべきです。再教育センター送りにしたものに首輪をまたつけるとしても……」

「いや、首輪をつける必要はない。……僕らが何もしなくても、アーキバスに攻撃を仕掛ける奴らがいる。それも、とびきり有能な奴らが」

「……まさか」

 

 そうだ。

 使えるものは、全部使うべきだ。

 

 

 

「ハンドラー・ウォルターと、その猟犬である独立傭兵レイヴン。こいつらを使う」

 

 

 

 

 

 

「それが俺達を解放した理由か、618」

「だからそいつはあちしと無関係っつってんだろが」

 

 もうすでにメーテルリンクは別の所に送られちまったからな。

 五体満足に治療してそのまま家族の所に送られたのを美談にして、体よく僕らを叩くためのカバーストーリーに使われちまってる。

 いつかどこかの三番も似たようなもんだ。

 

 けど、お前達は違う。

 連中にとっても何か特別なものがあるのか、それとも逆に扱いにくい理由でもあるのか……。

 

 

 

「…………」

 

 まぁ、その辺りのことはいいや。

 重要なのは、お前達にとってアーキバスは帰る場所でも何でもなく、何も考えずに解放してもアーキバスの味方になる見込みはないってことだ。

 

 

「奴らに大金を積まれたら、俺達はすぐお前達を攻撃する。独立傭兵とはそういうものだろう?」

 

 どうだかね。

 それができたら、メーテルリンク同様取り込んでいる筈だと思うよ。

 

 

「それに。そっちの我が後輩についてはよく知らんが。あんたは企業の言いなりで終わる男じゃない。それはよぉく知っているよ」

「……」

 

 ……そんじゃまぁ、そろそろ本題に入りましょか。

 

 

 

「あちしら『ブレイン傭兵事務所』から、独立傭兵レイヴンおよびハンドラー・ウォルターへ仕事の依頼だ」

 

 今回僕らが君達に頼むのは、技研都市およびウォッチポイントからの脱出。

 手段もルートも問わないから、とにかく脱出してくれ。

 

 ただし、条件としてできるだけアーキバスの戦力の気を引いてもらおう。

 場合によっては解放戦線からもちょっかいかけられる可能性もあるが、そっちも撃退してくれると依頼主からの心証は良くなるぜ。

 どうせなら派手に暴れてくれると助かる。

 

 

 

「ご生憎様だがこのミッションに報酬はない。修理費・弾薬費は自分らで工面するこった」

 

 その代わり、別の形で前払いとさせてもらおう。

 

 

 

「これは……621のACか」

 

 まず一つ目。

 あんとき鹵獲したレイヴンのACを、万全の状態にしてある。

 使い慣れた機体で好きなように暴れてくれ。

 

 

 

「で、もう一つが……」

「私の部下が掘り出した、技研製ACです。忌々しいことに生体認証が必要な機体でしてね……使えるのが、よりにもよって貴方だけなのですよ。ハンドラー・ウォルター」

「……『HAL 826』か」

 

 なんでアンタの機体が、技研都市にあったんだろね?

 ……まぁそれはもうどうでもいいや。

 

 

 アイスワーム殺しの傭兵と、強力な性能を誇る技研製AC。

 その二つの力を合わせれば、相応の戦力になる。

 

 これが、僕達が用意できる最大限の報酬だ。

 

 

 

「……この仕事を請け負うとして、お前達はどうするつもりだ?」

 

 

 アーキバスに報復する。

 そのためには、まず一度安全な場所へ移動しなきゃなんない。

 

 わかるだろ?

 お前達二人は体のいい捨て駒さね。

 せいぜい自己責任で生き延びるこった。

 

 それが独立傭兵のやり方だろ?

 

 

 

「それも、そうだな。……618。一つ助言を送ろう」

「だーかーら、あちしは……」

「ルビコンを出るだけではだめだ。安全を確保するなら、最低でも星系の外へ出ろ」

「……あ?」

 

 

 どういう意味さね?

 

 

 

「……ただの、個人的な助言だ。好きにとればいい」

 

 ……。

 ま、いいだろ。

 問いただしてやる時間もないし、詳しくは聞かないでやるよ。

 

 

 

「では、お前達とはここまでだな」

「ええ。せいぜい犬死にしないよう気を付けることです。この機体を用意した意味がなくなる」

「俺はともかく、621は相応の修羅場をくぐっている。心配は不要だ」

 

 そうかそうか。

 じゃあ期待しすぎない程度に期待しとくよ、ハンドラー・ウォルターさんよ。

 

 

 

「私達も行きましょう。……私の端末を用いた妨害も、そろそろ突破される頃合です」

 

 了解。

 行くよ、スカルちゃん。

 

 

 

 

「あい。…………あばよ、我が愛しきハンドラー・ウォルター。少しは自分を労わって長生きするこった」

「肝に銘じておく。……元気でな、618」

「だからあちしはスカルだっつってんだろが。つかさりげなく頭撫でてんじゃねーよ。……まったく」

 

 

 

 

 

 

 さて、と。

 まさかこんなお披露目になるとはね。

 

 

「アンタの新型ACか」

 

 おう。

 といっても、ベイラムコアと足を掘り出した技研製フレームにして、そこにヴェスパー部隊用の頭部と腕部をくっつけただけだけどな。

 

 武装は元のまんまで、強いて言えばFCSを技研製の超近距離特化型にしてるぐらいか。

 

 

 

「寄せ集め、ね。その割にはずいぶんかっこいい仕上がりじゃねーか。塗装を統一してんのを加味しても、中々しっくり来るぜ」

 

 コアと脚部の名称が『HAL 826』……まさかハンドラー・ウォルターの機体とおんなじ奴とはね。

 

 

 

「専用の調整が施されたあの機体はともかく、予備パーツでしたら誰でも使える。それだけのことです……が、それでも元の機体よりは性能に期待できる」

 

 

 ああ。

 この機体は特別な代物だからな。

 

 カメラ回りを超近距離特化にさせてもらって、かつヴェスパーパーツで安定性能を引き上げさせてもらった。

 その力を、存分に活かさせてもらおう。

 

 

 

 

 

「さて……奴さん、おっぱじめおったで」

「独立傭兵レイヴンとハンドラー・ウォルターの陽動ですね。……どこで連絡したのか、まさかRaDまで参戦するとは」

 

 なーるほど。

 今回RaDは味方ってわけね。

 

 せいぜい頼りにさせてもらおうか。

 

 

 

 

 

「随分と派手に盛り上げたものだな、ブレイン」

 

 遅かったな、フロイト。

 

 

 

「それなりに色々あったが、やはりお前やスネイルのいないアーキバスはつまらない。スネイル側を選んで正解だった」

 

 

 そうかい。

 まぁ、お前さんはそれでいい。

 

 

 それに。

 これで、全員揃った。

 

 

 

 

「こちらスカル。ACスケルトンは万全だ」

「オープンフェイス、ステータスオールグリーン。……いつでも始められます」

 

 同じくACストーミングも問題なしってね。

 

 

「ロックスミスも補給済みだ。いくらでも暴れられるぞ」

 

 

 

 

 ……そんで、奴らも暴れたそうだぜ。

 

 

「アーキバスのMT部隊か。……どうやら俺達に加勢というわけではなさそうだな」

「彼らもまた上層部の息がかかっている。この場において味方同士と言えるのは、私達四人だけです」

 

 わかっている。

 早速、始めようか。

 

 

 

 

 

「そういえば、スネイルと共に戦場へ出るのはいつ振りだったか」

「ふん。あの頃の連携は忘れていません。オープンフェイスの性能も、以前より向上している」

「そりゃ頼もしいこった。出遅れないようあちしらも頑張りましょか、ブレイン」

 

 ああ。

 ……行くぞ!!!

 

 

 

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