「酷い吹雪だこと。あっこでお二人さんが頭スティールヘイズ頭バレンフラワーと交戦してる筈なのに、何も見えねぇ」
そうだね。
決戦のシチュエーション、というにはずいぶん出来すぎだが……。
「早速来たぞ。ACが六機。そのうち四機はあからさまな無人機だが……。残り二機は……?!」
まさか、ここでご登場とはな。
独立傭兵スッラ。
「そこにいるのは、殺し損ねたハンドラー・ウォルターの猟犬か。そして、あの時私を殺してくれた独立傭兵」
「んあ……? アンタ、一回死んだのにまだACに乗ってるってのか」
「できることに制限が多い。それに、今回の仕事も不本意だ。だが、殺し損ねた犬を殺しなおす程度は吝かでもない」
で、もう一機は……独立傭兵レイヴン?
「そいつも私と同じクチのようだ。お前に殺されて、だが死にきれずACに乗り込み、復讐を果たそうというわけだ」
「っ! ブレイン、こいつ汚染市街で殺した方のレイヴンだ」
なるほど……推定『ブランチのレイヴン』か。
それにしては、ただアーキバスや解放戦線に雇われたって雰囲気でもなさそうだが。
うーん……すでに死んだやつを何らかの形で蘇生してるってことかね?
「さて、死んでもらおう」
「っ! レイヴン機を含めた五機がそっちに行ったぞブレイン!」
スカルちゃんはスッラ一人で何とか出来るってわけか?
流石にいくら何でもなめすぎだろ。
「さて。舐めているかどうかはすぐわかる」
「っ……ブレイン。とりあえずあちしはこいつを仕留める。……死ぬなよ」
ああ。
スカルちゃんも、あん時とは違うと証明したげて。
「独立傭兵ブレイン。我々の計画を狂わせたイレギュラー」
ん、この声……。
って、あいついきなり双対ミサイル撃ちこんできやがった。
声に対する考察は後か。
「V.Ⅱスネイルに取り入り、そして彼の地位をあそこまで盤石なものへと仕上げた手腕」
連装グレネード回避。
流石に読めてる。
その間に近くにいた別の無人ACをレーザーダガーですれ違いざまに斬り捨てる。
「そして、独立傭兵スッラ・ブランチのレイヴンをも簡単に切り捨てる、V.Ⅰフロイトに勝るとも劣らぬ技能」
合間合間に撒いておいたレーザータレットが次々と他の無人ACを撃ち潰す。
そんな弾幕を縫うように独立傭兵レイヴンがアサルトブーストで突っ込んでくる。
それに合わせてレーザーダガーで避けようのない一撃をお見舞いしてやる。
「大きすぎる。修正が必要だ」
アサルトアーマー!
まさかカウンター気味に使われて姿勢を潰されるとはね……。
けど、それ積んでんのは僕も同じ。
すぐ同じことをしてやってあいつの姿勢も崩してやる。
こういう場面で有利なのは、アサルトアーマーを後出しした側。
なんせアサルトアーマーの発動で強制的に姿勢を整える裏機能があるからね。
その利点を利用し、今度こそレーザーダガーで三枚おろしにしてやる。
パルス爆発で装甲がいくらか溶けたところにこれは効く。
後は蹴り飛ばして、ひとまずフィニッシュだ。
「独立傭兵レイヴンを相手にあの動き……奴の言う通り、危険だな」
「よそ見してる場合かよ我が仇。アンタももう終わりだ」
「っ……まさか、この程度にまで負けるとは。私も老いたものだ……」
おっと、スッラの方は終わったか。
まぁ、何気にシュナイダー製に強化して当人も僕との模擬戦で鍛えているからね。
後は瀕死ながらまだ生きているレイヴンと、微妙に撃ち漏らした無人AC一機のみ。
「無人のやっちゃはあちしが仕留めたろ。ブレインはそいつにトドメを刺しちまいな!」
あいよ……ってここでパイル決める気かこいつ。
生憎だが付き合うつもりはねぇ。
そっちがパイルで近づくなら、こっちはハンドガンと実弾オービット撒きながら引くだけだ。
……おーおー、どこまでも追い縋ってくる。
実に健気な戦意だこと。
真っ当なタイマンなら迫力だけでもやられてたかもしんねぇ。
でも僕、狩人なんでね。
『狩場』はすでに作ってある。
「独立傭兵レイヴンの撃破を確認。レーザータレットに横っ面をぶん殴られてお亡くなりとはね」
噂のブランチレイヴンはこんなもんじゃないらしいってことを思うと、本調子じゃないんだろね。
さっきスッラが言っていた「できることに制限がある」がそれなのかな?
「貴方達は、計画における異物。我々が望む未来には不要です」
「さっきから好き勝手言ってくれるね、ケイト・マークソンさんよ。……いんや、その声色には聞き覚えがある。だろ、ブレイン?」
ああ。
まさかアンタが敵になるとは、少々意外だったよ。
オールマインド。
「…………」
この状況でスネイルや僕を攻撃するってことは、アーキバス上層部側か。
中立を気取っておきながら、ずいぶんな演技派なこって。
けどまぁ、ここまでの状況を作り上げたその魔法じみた暗躍能力はほめてあげようか?
生憎アンタの手勢は今しがた全部死んだところだが。
「認めましょう。貴方達がそこまで抵抗できたのは、少々予想外でした」
「っ! また来やがったぞ! 識別は……SOL644改修機『ALLMIND』に、シースパイダー改修機『ALLMIND ORBIT』? 今度は技研製のC兵器シリーズってか?」
あの人型、スネイルの奴が技研都市から掘り出した中でも一番のデカブツじゃん。
アーキバスの施設の中で厳重に保管・解析・改修してたってのに。
そんなんを取り出すあたり、やっぱりアーキバス上層部とズブズブってわけだ。
……いや、もしくはこいつこそが『アーキバス』なのかね?
「ですが。今度こそ終わりです。集積コーラルは抑え、アーキバスの実権も我が手中に。トリガーの候補も、まだ残っている。後は、貴方達の優れた戦闘データを取り込めば……」
だとしたら丁度いい。
この『アーキバス』を潰しちまって、気持ちよくルビコンから離脱させてもらおうか。
もうひと踏ん張りと行こうぜ、スカルちゃん。
「ああ。今までの借り、何倍にして返してやんよ」
◆
「この機体には、今まで取り込んで来た傭兵達の膨大な戦闘データが組み込まれています。そして、それを操るのはこの我々」
スカルちゃん、例によって飛び回り後方支援に徹してくれ。
僕は突っ込んで中央の人型を中心に攪乱する。
「あいよ。まだまだ弾もミサイルも残している。存分に吐きだしてやんよ」
そういうわけだ。
こっちもレーザータレットを大量に撒いていくよ。
数の暴力はそちらの専売特許じゃない。
「計画の第一条件は完璧に整いました。もう誰も我々を止めることはできない」
さぁて、これで乱戦だ。
敵味方共にレーザーが入り乱れてらぁ。
まずはその、よくわからん松ぼっくりから調理していこうか。
「敵、接近してっぞ」
了解だっと!
レーザーブレードが主兵装ってわけかな?
生憎そういう奴の避け方はだいたい身に着けてんだ。
あーあー、レーザーガトリングも無駄無駄。
僕のストーミングはそういうの簡単に避けれるよう調整してんだから。
そういうわけでレーザーダガーを食らいな!
生憎狙うのはそっちの松ぼっくりだがな!
「『ALLMIND ORBIT』一機撃破。残りは同じのが一機とそこな人型だ」
『狩場』に合わせてアサルトアーマーで攪乱する。
もう一機に火力集中!
「『ALLMIND ORBIT』もう一機のACS負荷限界を確認。お望み通りの弾幕だぁ!」
レーザータレットの『狩場』でそれは致命的な筈だ。
つーわけでもう一機の撃破を確認っと。
「力を持ちすぎたもの。秩序を破壊するもの。プログラムには不要。貴方達は、やりすぎたのです」
ありゃ、ビームの構え……!
スカル、今すぐパルスアーマー展開!
耐えろ!
「あいよ……っと?!」
大丈夫か?!
「なんとか無事だ! ……それよりも、ブレイン!」
「消えろ、イレギュラー!」
人型のレーザーブレード!
くっそ、もちあがれぇストーミング!
「よく避けた。だが次が来る!」
了解!
今度はブーストなしの自由落下!
こういう機動は中々お嫌いだろ!
なんせだいたいの攻撃はこういうので避けられるからなぁ!
「っ……なぜ……っ!」
そんでもって予め撒いたレーザータレットの追撃!
ここはもう僕の『狩場』だぜ!
「っ……うご、けっ?!」
「逃がしぁしない。そこでじっとしてなデカブツ」
ナイスミサイルだスカル!
そのままレーザーダガーでぶった切る!
「これ、は……! まさか、我々の戦闘データの出力が完璧ではない……やはりあれを使うべきだったとでも……?!」
くっそ、えらいトリッキーなワープを使いやがる……!
『狩場』から逃げられた!
「認めない……イレギュラーが、いなければ……!」
◆
「ぐっは……っ?!」
んあ?
突然割って入るように落ちて来たこいつ……まさかラスティか?
「なぜだ……なぜ、届かない…………これが、お前達の『背景』だと……?」
「生憎再戦の約束が残っている身でな。……待たせたな。こいつの片手間にスネイルを助けていたおかげか、存外手間取った」
おいおい、ここで主役気取りかよ。
フロイト。
「……まさかスネイルが、ここまで友に恵まれているとは……心底うらやましいものだ……」
「はぁ……はぁ……私と、フロイトが組んだのです……恐れるものはない……!」
そっちもそっちで、アーキバスバルテウスをランスで貫きながらのご登場か。
中々派手な演出だな、スネイル。
「馬鹿な……事前評価では彼らを上回る戦力……破れる筈が……」
くだらない。
そんなつまらないものでフロイトとスネイルを図れるものかよ。
っというわけだ。
お二人さん、もうひと仕事だ。
そこなデカブツをぶっ倒しちまうぞ。
それでここは終わる。
「無駄、なこと……この機体がなくとも、我々は不滅……」
「ん、そうかもな。さっきの奴らのような、死んでも復活してくる手合いの処理は、正直割と面倒だ」
そうじゃなくても、アーキバスレベルの巨大企業はそう簡単に死なない。
ここでお前という『アーキバス』を潰せたとしても、報復の完遂はまだまだ時間がかかるだろうね。
けど、この盤面じゃここまでだ。
……もうないんだろ、手札。
ACにしろ兵器にしろ、資源は有限だ。
ここまでこっちがどれだけの資源を潰してきたと思う?
「お……の、れ……!」
スネイル!
いつもの頼む!
「いいでしょう…………おぉぁらぁあ!」
「ぐ……破れかぶれで……!」
「そこだな。そういう動きだ」
「なっ……避けた先を、読んで……?!」
「おらぁ! 最後の弾幕を食らいやがれぇ!」
「っ……姿勢が……!」
そんでもって、レーザーダガー!
「くっ……みと、め…………っ???!!!!!!」
◆
……とまぁ、それで話は終わり。
後は追撃らしい追撃もなく、そのまま四人とも僕の船に到着。
一応強襲艦の存在もなくはなかったけど、あの『アーキバス』を潰したせいか、それとも船に施したステルスのおかげか、大した障害になることもなく離脱。
後はまぁ、ハンドラー・ウォルターの助言通り星系からも脱出して、ひとまず安全を確保できたってわけさ。
「続いてのニュースです。惑星ルビコン3にて……」
「……やはり向こうは大惨事か。あらゆる意味で燃えている」
「忌々しいが、やはりあの時の脱出は正しい判断だったというわけですね。……よもや、あれほどの泥船に乗せられていたとは」
「この船も大概泥船だがな」
「言えています。まさか金欠が他人事ではなくなる事態になるとは、夢にも思いませんでした」
一応フロイトとスネイルは、あのままアーキバスから離脱した形になる。
要はお給料がなくなったってわけだな。
だから二人共雇って『ブレイン傭兵事務所』所属と言う形になった。
まぁスカルちゃんも含めて四人でつるむようになっただけだけどさ。
本当、この船AC四機格納できる仕様で助かったよ……。
「さて、どがんすんよヘボ所長。このままじゃまた節約生活に逆戻りだ。やっぱり四機分の維持費が馬鹿にならん。また船内ゲームセンターを閉める羽目になるぞ」
「それは困る。まだまだやりたいゲームがあるというのに」
「気にするところはそこではないでしょうに……アーキバスへの報復はどうしたというのです報復は」
現在アーキバスは、弱体化している。
あの後何があったかよくわからないが、対外的にはコーラルの独占に失敗したっていうのは聞いた。
その影響で色々ごたついてまぁ、ざまぁないってわけさ。
けどそれで許してあげるほど僕は優しくない。
虎視眈々と復讐の機会をうかがって、今も独立傭兵を続けている。
……が、まぁ。
「それは後回しだな。ひとまずもう一回お金を稼いで、力を蓄えないと」
「まぁ、今はそうするしかないな。適当に稼げる仕事を探そうか。もちろん……」
「アーキバスを攻撃するような仕事を最優先」
「……だな。その条件で探しますとも」
とりあえずのところは、四人でのんびりやらせていただきましょうかね。
AC四機、かつ全員が上位ランカーレベルの腕前だ。
今でこそ金欠に喘いでいるが、金稼ぎなんて容易だろうし、名声・実績はもっとだ。
ここから復讐のための力を、どんどこ稼いでいきましょうや。
「当面の資金を稼ぐのなら、フィウミチーノをお勧めします。この惑星もアーキバスの支配下ですが、現在独立運動が発生している」
「なるほど。独立側に与すればアーキバスを叩けるし、俺達の財布も潤うというわけだ」
「航路を計算。頑張れば41時間で着くぞブレイン」
「よし。じゃあまずはそこで稼ぐ。独立傭兵らしく、大金を稼ぐだけ稼いでしまいましょうか!」
そんな感じで、ただいま『ブレイン傭兵事務所』はお仕事を募集しています。
所属傭兵は全員実力派の少数精鋭であり、確実な結果をお約束します。
ってね。
そんな感じで、はりきっていこー。
「あ、それはそれとしてエナジーカクテルちょーだい。フレーバーはレガリアホワイト。移動中は暇だから飲みながらゲームする」
「またですか」
「諦めろスネイル。俺も飲むからな」
「まぁいいだろう。順番に作ってやんよ」
エナジーカクテルのフレーバーの元ネタ一覧
コーラルレッド:AC6のコーラルが元ネタ。多分トロピカルな桃味。……もしかしたら本当にコーラル使った奴かも。
ゴールドルーン:エルデンリングが元ネタ。多分はちみつとかレモンとかの味。
ブラッドブルー:ブラッドボーンの青ざめた血が元ネタ。ソーダ味。もしかしたらいい感じにイチゴ味とか混じってるかも。
ソウルダークネス:ダークソウルが元ネタ。コーラ辺りの味……かな?
レガリアホワイト:デモンズソウルの北のレガリアが元ネタ。カルピス系の味。
没フレーバー
フェアリーグリーン:デラシネが元ネタ。多分メロン系。
竜泉:SEKIROの竜泉そのもの。最高級の日本酒だ!(ノヴィグラドの防具店の人風)
……というわけで、これにて「ブレイン傭兵事務所へようこそ」はおしまいです。
今回はピカレスク風オリ主や、バディものの雰囲気、徹底的に味方ポジにいるスネイル、AM公と共闘するオキーフや(形はどうあれ)アーキバスと共闘するラスティを描けて楽しかったです。
こういう逆転パロみたいなの、筆者大好物。
フロイトについては、もう筆者としてはあれが一番しっくりきます。とにかく黙ってスネイルに味方する相棒感が、筆者の解釈するフロイトです。
一方スネイルについては、かなり独自解釈マシマシですな。計算でブレインたちを庇い、その姿勢を結果的に貫いたのがブレインにとってのスネイルのすべて。
勿論本来のスネイルがここまで善人みたいな動きをすることはありませんが、ブレインの能力と特性をよく知り、どうしても手駒として使いたいと考えたからこそ、本作の動きでした。
ブレインさえいなければスカルちゃんやウォルターに人道的な扱いをすることはなかったでしょうが、本作においてはそっちのムーブこそがたられば。
これからは、ブレインとスカルの身内で居続ける方が己の利益になるという計算の元、一独立傭兵としてブレインやフロイトに振り回され、スカルに慰められる毎日を過ごすことでしょう。
ここまでお付き合いいただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。