あぁーお。
カウチポテトも控えないとなぁ~。
「ほら、頼んでたエナジーカクテルだ。フレーバーはソウルダークネス」
ありがとスカルちゃん。
……むぅーん、うまい!
「仕事中に酒ですかブレイン」
「俺も貰っていいか」
「フロイト、貴方もですか……」
「あんたも飲むか、スネイルさんよ」
「……いえ、やはり遠慮します。有事に薬でアルコールを抜くのも手間だ。私はフィーカを」
「あいよ」
いやー。
ハンドラー・ウォルターの猟犬があくせく地底探査してるのを見ながらのカクテルはいいですなぁ。
ポテチがうまい。
「一応これが駄犬の監視任務であること、理解していますよね?」
「そこの焼き鳥もらうぞ。給湯室でレンチンする」
「おう、もってけもってけ」
「……少しは緊張感を持ちなさい」
いやだって、この段階で何か仕掛けるほど馬鹿じゃないだろーし。
万が一に備えてACに乗れるようモニタしてるだけで、ぶっちゃけただの休憩時間だろ。
「貴方達に少しでも期待した私が馬鹿でした。スカル、そこのビスケットをいただきます。真面目にしているのが馬鹿らしくなった」
「いいだろう。もっていけ」
……今更なんだけどさ。
そいつら、一応僕の船から持ってきた奴なんだけど。
「なるほど、自費で食べるよりうまいわけです」
この野郎。
◆
件のレイヴンが地底探査を始めて三日。
あっちゅうまにレーザー障壁も消えちまったわけですな。
「これから未踏破領域ですが、駄犬には『待て』と伝えてあります」
「今までの領域を制圧し、かつベイラムを片づけなければならないからな」
「無断出撃は許しませんよ、フロイト」
「……むぅ。ブレインの出戻りがかかっている今、逆らうわけにはいかんか」
「わかればよろしい」
じゃあ、問題のミシガンはどうすんの?
「駄犬に任務を通達します。これで渋るようなら、奴らはベイラムからの差し金と断定していい」
「万一の代役は……まぁスパイの件を考えればV.Ⅳが適任だろう。最悪その場で死んでくれれば少なくともスネイルにとっては損がない」
「あんたにとっちゃ損があるみたいな言い方だな」
「一度も本気で戦ってくれないからな。正直なところレッドガンよりもこいつの本気の方がそそられる」
なぁるほどね。
僕らはもうしばらくこの指令室で缶詰かぁ~。
ここ窮屈なんだよなぁ~。
「仮眠室を半ば私物化しておいてよく言いますね」
「シミュレータならあるからそれで遊ぼうか?」
「……フロイト」
そいやホーキンスさんとかはどうしてんの?
あの人ら、ぶっちゃけ僕らの敵だろ?
表向きはともかく。
「第五隊長ホーキンスは第八隊長ペイターと共に実働部隊として地中探査に出向いています。悪だくみがあったとして、相談するだけの暇は与えていません」
うっわ。
よーするに仕事で忙殺してるってことだろ~。
ブラックだなーヴェスパー部隊。
「そういえばレッドガンのG3の件、あれはどうなった? 確かV.Ⅵが引き入れたとかいう」
「当然再教育センター送りです。鞍替えした途端こちらの情報をレッドガンにリークしたのですから。……まったく、何が『手切れ金』だ」
いやあれは大胆すぎるよな……。
裏切り者の第六隊長が主導した話だから、少なからず上層部の意向が絡んでいるだろうけど。
「頭の悪い上層部に振り回されるのもあと少しです。レッドガンを処理し、第三隊長オキーフ・第四隊長ラスティを粛清すれば、事はなる」
「まぁあと少しだけ時間はあるな。少しチャンネルを変えるぞ。見たい番組がある」
「……ここのモニターはテレビじゃないんですよ」
「というかここにまで電波が届くのかよ、アーキバスのモニター」
「仮にも最新鋭の装備ですから。本社の放送局から流れる公共放送などはすぐ映るよう調整しています」
「俺が見たいのはベイラムのところのバラエティなんだが」
「……頼みますから少しは空気を読んでくれませんか?」
ベイラムで思い出した。
スネイル、頼んでおいた弾薬と修理機材は問題ないか?
「……まぁ、貴方は一応独立傭兵ですからね。貴方の名義でオールマインドシステムから大量に取り寄せてあります。感謝しておくように」
助かる。
……そんじゃあ、アーキバス製品の商談はできるか?
今回の監視任務がひと段落したらでいいんで、パーツ買いたい。
ハンドガンとオービットはそのままの方がいいけど、フレームの方はそろそろ変えときたいんよ。
金ならそれなりにある。
「おや、欲しいものでもあるのですか?」
VPシリーズのコアと脚部だな。
流石にベイラムの安物で済ませたままにしとくのもあれだし。
「ヴェスパー部隊用の派生パーツは使わないのですか? これを機に頭部と腕部の換装もしておきなさい。貴方なら安くしておきます」
おーぅ。
あのやたら安定性能高い奴とやたら軽い奴か。
確かに、あっちの方が性能は高いもんな。
「それと、地中探査で技研製のパーツをいくつか掘り出せました。余りでよければこちらも売りましょう。ものによっては、アーキバスのパーツより高性能です」
「む、それは面白そうなことを聞いた。ロックスミスの遊びがそろそろ気になっていたんだ。俺も漁っていいか?」
フロイトは今の遊びがあるアセンのままの方がいいと思うけどなー。
昔ダリさんに勝負やった時、下手にハングリー精神こじらせたガチアセンに振り回されてたろ。
そん時のことを思うとやっぱお前は遊びのある奴で精神的余裕を担保した方が強いぜ。
「そうか、そういうものか。だがパーツが気になるのは気になるんだ。俺にも見させろ」
じゃあ後で一緒に確認しよっか。
「そいやヘボ所長。あちしが頼んだ水平式のプラズマミサイルはすでに買ってあるんだろうな」
もちろん。
閉所戦闘で垂直式がだめなのは火を見るよりも明らかだ。
換装もこちらの方で済ませたよー。
「あい。あんがとさん」
……ん。
スネイル、ハンドラー・ウォルターから連絡来てるぜ。
「……レッドガン部隊迎撃を請け負うようだ。その連絡ですね」
おんや。
となるとウォルター達はベイラムやレッドガンとは別でここに忍び込んできているわけだ。
……いったい何を企んでいる?
「さて。……私は今のうちに仮眠を取ります。監視とヴェスパー部隊の管理は任せますよ。商談の件はカタログ資料がこちらにあるので、それを精査するように」
あいあい。
しっかり休んでらー。
◆
「おはようございます。安心して八時間も睡眠するなど、久々です」
それもう仮眠でも何でもないんよ。
「それで、何かありましたか?」
お前がぐーすかしてる間の大まかな報告と部隊入出金はそっちの書類にまとめといたぞ。
いくつか新しい技研製パーツや資料が発掘できたそうだからそちらもリストアップした。
ホーキンスさん達も僕の判断で適当な任務を発注して忙殺させてる。
あの人の代わりに処理した輜重関連の報告はこっちのプリントに、だ。
……お前さんが身内に対してラディカルな恐怖政治してる理屈がよくわかったよ。
本当にフロイト以外誰も信用なんないのな。
第六・第七のところのMT部隊が怪しい動きしてるのはともかく、フロイトやお前んとこのMT部隊にも変なのが紛れ込んでるよ。
案外フロイトの件を漏らしたのもメーテルリンクだけじゃないかもな。
「なるほど。少しは私の苦労が理解できたようですね。ふむ……まぁ自堕落な常識知らずの割りにはマシな働きです。褒めてあげますよ」
一言余計だぞ陰険クソ眼鏡野郎。
一応怪しい奴らのリストアップも済ませてる。
証拠探しとか裏付けとかまではしてないけど、雰囲気的にこいつらの場合十中八九クロだろ。
再教育するなりファクトリー送りするなりご随意にどーぞ。
後は……フロイトの奴が勝手に寝落ちしたってぐらいかな。
あ、スカルちゃんは僕の判断で眠らせたよ。
いくら実年齢二十代の大人とはいえ、肉体は強化手術のせいで幼いままだから。
機能の都合で酒とかは飲めるけど、まぁ負荷は抑えときたいよね。
「え」
え?
「……まぁいいでしょう。レッドガン部隊迎撃は?」
恙無く。
これでベイラムはコーラル争奪戦から脱落した形になる。
また懸念事項が一個消えたわけだ。
「……確かにG1の生体反応はない。駄犬もたまには役に立つ。相打ちしてくれればなおのことよかったのですが」
まぁそりゃ仕方ないってもんよ。
向こうからすれば僕達の思い通りに動いてやる義理はないし。
……それじゃあ、僕もそろそろ寝るわー。
一晩中フロイトの代わりにMTに指示とかもしてたから肩と胃が痛くって痛くって。
「MT部隊への指示など訓練生時代に習っていたでしょうに。……まぁいい、せいぜい今のうちに英気を養うことです。すぐに忙しく……っ?!」
ん、どがんしたよ?
「面倒ごとです。第三隊長オキーフが暗殺されました」
っ?!
おいおい、大事じゃねぇかよ。
下手人は?
件のレイヴンか、それともベイラムの残党か?
今のアーキバス上層部はルビコン解放戦線とズブズブの筈だ。
少なくとも奴らが今の段階でオキーフを消す利点はない筈……。
「下手人は所属不明のステルス機体。少なくともACではありません……何が起きているというのだ?」
一気にきな臭くなったな……。
どうする、スネイル?
「……当初の予定通り集積コーラルを押さえるのが先決です。それさえ叶えば、上層部にしろ第三勢力相手にしろ打って出ることができる筈だ」
オーケー。
まずはお互い落ち着いてってわけだな。
「駄犬に未踏破領域の探査を通達します。まずはそこから話を進めます」
了解だ。
いよいよ詰めだな。
◆
「我々の『暗殺』は如何でしたか、オキーフ」
「……次があれば加減してくれると助かる」
「ですが、これでヴェスパー部隊は貴方を死んだ者として扱うことでしょう。貴方は亡霊として、ヴェスパーの誰にもマークされることなく動けます」
「だといいんだがな……ラスティは?」
「彼も同じ方法でヴェスパー部隊から逃がします。その後、共に解放戦線へと合流し我々の合図を待ってください」
「了解した。……よもや、お前からここまで手厚いサポートを得られるとは思わなかったぞ」
「今のスネイルは、我々の計画にないほどにその立場を盤石なものとしている。このままでは、我々の計画を覆す重大な脅威となることでしょう」
「まぁ、奴なら集積コーラルを手札にアーキバス上層部へ叛逆する程度はするだろうな。フロイトとブレインという信頼できる手駒がいるのだから」
「故に、スネイルの排除は我々にとって必須事項です」
「……まぁいいだろう。先の通り、スネイル一派の排除については私も全面的に協力する。これはラスティ、ひいては解放戦線のフラットウェルも同意していると思ってくれ」
「承知しました。ご武運を、オキーフ」
「……尤も、スネイル達が消えた後は裏切らせてもらうがな。どうせお前もそのつもりだろう、オールマインド?」