職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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超不運

ただゲームで遊んでいただけ……の筈だった。

なのに、大変な起こってしまったみたいだ。

 

 

「………どうしよう? どういう事?」

 

 

今の状況に頭を抱える。

 

 

右手の人差し指を上下すると現れる筈のシステム画面がいつまでも出てこない。何度も何度も試して試して……一向に現れる気配がない。

ならば、緊急電源遮断機構を使う。何か不具合があった時の為にログアウトの機能。それは安全を考慮して幾重にも用意されている代物————なのだが、全部駄目。

 

 

つまり、目を覚ます事が出来ないと言う事。

このゲームの世界VRMMOから……。

 

 

「いや、そもそもここドコ? 全然知らない場所だ……」

 

 

【マジック・プラネット】

 

それが遊んでいたVRゲームの正式名称。

その名の通り【魔法】が存在する星で、そこで主人公の1人となって思うがままに世界を冒険・探求したり、日常生活をしたり、武芸や魔法を極めたり……と遊び方が多岐に渡って存在する世界。

年齢制限は15歳以上、だから過度な血生臭い映像や簡易的なモノはあるが所謂18禁な本格的な性的な映像などは無い。

 

のんびりマイペースに各々が楽しみを見つけて過ごす世界。

 

そんな世界で毎日穏やかに、楽しく過ごして来て早2年(ゲームの世界で)経ったけど一向に飽きる気配もなく……現在はオフラインで遊んでいた。

つまりNPCたちと共に冒険したり生活をしたり、だ。

でも、NPCと侮ってはいけない。彼らは、彼女らは超高性能AIが作りし仮想世界の住人だ。現実世界の人間の情報量と大差ないレベル。だから直ぐに世界に溶け込む事が出来たし、命を賭けて助けて、命を賭けて共に戦って……と世界を満喫する事が出来たのだ。

 

と言う訳で話が逸れたかもしれないが、つまり何が言いたいかと言うと、実際に生身のプレイヤーたちとの交流は一切ない、と言う事。

 

ここは完全に独立したVR世界。

 

以前まではオンライン上で色々ブイブイ言わせていたのだが……いい加減煩わしい挑戦者(ユーザー)らに辟易したので、オフラインで遊んで……暮らしていたのだ。

 

 

「大正解だった。確かに参ったけど………現実なんかより全然心地いいし」

 

 

最初はオフラインなんて陰キャが~~やら、現実逃避するヤツが~~やら言われていた世界なので良い印象はあまり無かったのだが、そもそもVRMMO自体が仮想現実なんだからオンラインだろうとオフラインだろうと現実逃避も何もない。

陰キャがVRMMOを経てコミュニケーション能力を養って現実社会へ~~なんて体験談もある。

 

オフラインの世界は決して悪く無い。身を持って体感した。

体感した結果————なぜか出られなくなってしまったのだ。

 

 

 

オフラインだから異常事態の原因を探ったり他のユーザーと情報共有したりと言う手段が取れない。システムを立ち上げる事が出来ないから運営側にアクシデントを連絡する事も出来ない。

 

 

解る事は、今視界に広がってるエリアは来た事がない、見た事も無い場所だと言う事。

基本的にこの世界の隅々まで遊びつくしているので、大型アップデートやAIによる自動アップデート等が無い限り、新たな世界・未知のエリアが解禁されるなんて事は無い筈なのに。

そもそもオフラインだから手動アップデートしないと追加されないので、知らない場所があるなんて絶対あり得なかった。

 

 

 

「やっぱりビックリしちゃうよね? そりゃぁ最初は誰だって驚くさ!」

「うわっっ!!?」

 

 

 

周囲をキョロキョロと見渡していた。

でも、頭上だけは疎かになっていたみたいだ。突然、上から声がしたかと思えば、即座に目の前に何かが現れた。

 

そう……なにか、が。

 

 

「なに? なになに??」

「やっほーー! キミぃ、死んじゃったんだよ? わかんなかった??」

「え………? えええ!?」

 

 

目の前の何かは、陽気な声でそう告げる。

そんな訳がない。普通に暮らしていただけだし、ゲームやり過ぎて現実世界を疎かにした、と言う訳でもない。

普通に仕事もしてる。健康診断だって全て良好だった筈だ。死んだなんて……突然、前触れもなく死ぬなんて到底納得できない。

 

 

「い、いやいやいや、そんな! そんな訳————」

「でも、仕方ないよ。なんせ、めておすとらいく! ってヤツだから」

「……はい?」

 

 

また、よく解らない言語が飛び出してきた。

めてお、すとらいく……、と言う言語。

いや、全くわからないと言う訳じゃない。それなりに勉強も出来てたから……と言うか、その程度の英語なら昨今小学生だって解るから。

 

 

メテオ=隕石

ストライク=代表的なのは野球のストライク。後は打つ。手で殴る。或いは急に強い一撃を与える。

 

 

つまり、それらをつなぎ合わせて訳してみると……。

 

 

「……隕石の一撃?」

「そーそれそれ。キミのお家、隕石直撃!! それもなんとビックリ、拳大の小さい隕石なのに、ものの見事に君の部屋の君の頭、ピンポイントで直撃して頭ぼーーん! ってなっちゃった」

「うわわわわっっ!! 急にグロ画像みせないで!!!」

 

 

目の前の何かが、なにかをした途端に映し出されるのはよく知る光景。

自宅だ。親が残してくれた遺産の1つ。その屋根に穴が開いていて、そこを拡大させていくと……頭部が爆散したご遺体と対面してしまった。

 

 

「え……、いや、マジ……? なの……??」

「そうそう。いやいや~ 隕石直撃って確か160万分の1! あははは! すごーい強運の持ち主だね~。いや、この場合凶運ってヤツかなぁ。あーーーっはっはっはっ!」

「ば、爆笑してる…………そんな笑い所じゃ………」

 

 

自分の死を受け入れられない。受け入れたくない。悪い夢であって欲しい。でも、実際の所この世界から抜け出す事が出来ないし、夢にしてはリアルすぎる。頬をつねって見たら普通に痛い。VR世界でも痛覚設定はあるんだけど、こんなには痛く無いし、そもそも切っているから感じられる訳がない。

 

だから、自分は死んだ……。

 

ショックだ。

かなりショック。

ゲームの世界での未練は勿論、現実世界にだってそれなりに未練は残している。不幸中の幸いが、家族は自分を残して皆他界してしまった、と言う所と彼女と呼べる人が居ない、と言う点か。

 

それでも、ある程度充実していた。仕事仲間とだって良い付き合いが出来ていたし、随分時間がかかったけれど友達だって居た。

全部、無くなってしまったんだ………。

 

 

 

「それで、僕はこれからどこに? ……出来たら、家族に会いたい」

「うん? ああ、説明出来てなかったね~。笑いこけててスッカリ忘れてたわ」

「…………」

 

 

 

性格最悪だ。

本当に性格最悪。

でも、何も出来ない。……と言うよりしない方が良い。相手は所謂神様的な立場の存在だと言う事くらいは解るから。

目視出来ない(・・・・・・)点を考えてもそう。声はハッキリと聞こえるのに、その姿が視えない。多分目の前に居るんだろうけれど、僅かな光の輪郭が周囲に漂うだけで、その姿がハッキリと視えない。

 

そんな相手なのだ。変に刺激したり、暴れたり、暴言吐いたりしたら、即座に地獄の業火で永遠の苦しみを~~なんて事も有りえるかもしれない。

 

本当の最後に何かを……地獄の苦しみ的なモノを与えてくると確定したなら……文字通り最後の足掻きくらいはするかもしれないが、この程度の性格最悪くらいなら我慢するのが吉だろう。

 

 

「君はもう地球の輪廻の外だから。あっちに居る家族には会えないよ?」

「…………え?」

 

 

黙って聞いてたら……また驚いた。

性格最悪~な事が吹き飛ぶくらいには、驚いた。

 

今は昔——— 一大ブームを巻き起こした《異世界へ転生する》と言うのが身に降りかかった、と言う事なのだから。

 

実際に、VRMMOと言うゲームが開発されて販売されてから、そのゲームの世界自体が《異世界》みたいなモノだから。色々と設定を弄れるので現世で死に、世界を超えた勇者~的な事も出来る。ゲームの世界だけ……ユーザーの数だけ世界が作れたりもするので、それこそ星の数程異世界が存在する様な状態。

 

だから今の時代には浸透されず昔流行った~程度になってしまっているが、まさかそれが自分の身に起こるなんて思っても居なかった。

 

 

 

「てな訳で。隕石直撃して吹っ飛んじゃった君の魂を、私がキャッチしてこっちに運んだ~って訳。どう? 解った??」

「……魂って概念。まだ確定してなかったと思うんだけど、隕石(物理的)なヤツで飛び出たりするんだね……」

「あっははは! 何せ160万分の1だからね! それくらい起こるんじゃない?」

「どーゆー理屈……」

 

 

 

そうこうしている内に、世界がより開けた気がした。

知らない場所が……まるで導いてくれる様に何もない空間なのに開いた様な感覚がした。

 

 

「じゃあ、こっちの世界で頑張ってね!」

「何が《じゃあ》なのか解んないよ! 何をどう頑張ったら良いの!? こっちの事、なーんにも解んないんだけど!?」

「だいじょーぶ。その辺の説明はぜーんぶ出来る様にしてるからさ? ほらいってきなさーい!」

「わひゃああああああぁああ!!」

 

 

どんっ、と突き飛ばされた気がした。

すると、どんどん空間が小さくなっていき……軈て闇に包まれた。そして光と闇が交錯し合い、様々な色が映し出され———妙な感覚がする。

 

 

 

生まれる————って感覚はこういう感覚なのだろうか……?

 

 

 

そして、意識は完全に消えた。

 

最後にあの存在の笑い声をBGMに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん」

 

 

ゆっくりと……眼を開ける。

そこには開けた快晴の空が目の前に広がった。

むくりと身体を起こすと大きく深呼吸をした。

 

 

「凄く妙な、気分。……今目を覚ましたばっかりなのに………、全部頭に入ってる」

 

 

指を振った。

すると、慣れ親しんだ画面が空間に現れる。

自らのステータスを表示している画面だ。勝手は少々違うが、色んなゲームを経験してきているので、もうどんな画面であっても慣れている様なモノ。

 

 

「やっぱ……、所々バグってるなぁ」

 

 

そして、初めて行い視た筈のメニュー画面を見て呟いた。

 

そこには虫食い状態になっている様な画面。画面の端に、【Lv】の字が視えるので、どうやらLv表示画面である、と言う事は解る。それが【××◆◆◆】と黒く塗りつぶされていてちゃんとしたステータスが、レベルが解らない。

 

読めない所は置いといて、他の場所を確認してみると……。

 

 

「やっぱり……。これマジック・プラネットの世界の力だ」

 

 

解っていたが、改めて理解した。

使える能力(スキル)一覧は幸いな事にバグを起こしている訳ではなく、しっかりと視える。

それは、あの世界で使っていた種族……そして職業をカンストさせた者のアビリティだったから。

ある程度レベルやアビリティが上がってくると、戦闘と言う面では殆ど大差が無くなってしまうが、敢えて言うならば【白魔導士】。後衛に位置して皆をサポートし、傷を癒したりする職業だ。

でも、先ほど言った通り全てをカンストさせたので戦闘職、前衛が出来ないと言う訳ではない。中々にえげつない攻撃手段があったりもする。

でも、味方を癒す……助ける、と言った能力を持つのは白魔導士の特性。他にも【精霊使い】や【赤魔導士】など、似た力を使えるものもあるが、白魔導士には敵わない。

 

攻めるより守り、癒す事を好む様になって……オンライン世界から引退した後はずっとこの力を好んでいた。だから、この力が選ばれたのか……或いはテキトウに選ばれたのか。

あの性格を考えたら、恐らく後者だろうか。

 

 

それに関しては幾ら考えても解らない事なので、深く考えない様にした。

 

 

ただ、解る事だけを始めようと歩きはじめる。

全て、頭の中に入っている。無理矢理頭の中にチュートリアルを詰め込まれた感覚だ。記憶しておく事は可能なので、ゆっくりと記憶の扉を開けて再確認を始めた。

 

 

「ここは人種(ヒューマン)差別が横行している世界。差別なんて生易しい。劣等種扱い……か」

 

 

この世界の成り立ちを、有り方を口で復唱する。

 

降り立ったこの世界には9つの種族が存在している。

 

竜人種(ドラゴニュート)

魔人種(まじん)

鬼人種(きじん)

◇エルフ種

◇ダークエルフ種

◇ドワーフ種

◇ケンタウロス種

獣人種(じゅうじん)

人種(ヒューマン)

 

 

ありとあらゆる能力で圧倒的に多種より低い人種(ヒューマン)は9種の中で『最も劣った種族』としてこの世界では見下されて差別をされている。

でも、差別なんて生易しいモノじゃない。表立って公開はしてないし、ある程度の人種差別は伏せている様だが、内情を探れば奴隷扱いが可愛いくらい。気まぐれに殺傷する事なんて日常茶飯事。危険な場所へ強引に連れて行き、生贄にする事だってある。

 

人種(ヒューマン)の国も存在するが、王族が秘密裏に国民を売り……そして国を存続させようと藻掻いている、と言うのが実情。植民地……家畜扱いされている種が人種(ヒューマン)なのだ。

 

 

「えげつない。でも、こういう系で一番のバケモノって、環境(・・)なんだよね……」

 

 

遠い目をしながら呟く。

この手の設定の世界は幾つも経験してきている。ゲームと言えどもかなりリアルに作られた仮想世界なので、それなりには理解しているつもりだ。

人種(ヒューマン)を見下し、奴隷の様に扱い、命だって気分次第で奪う。

 

それが、当たり前(・・・・)である、と言う認識。生まれてからそれが正しいと生きていた、生きてきた者達にとっては、それが普通の事であり、それが悪いなんて微塵も考えない。

 

毒を持つ危険生物を排除する事に躊躇わない様に。

生きる為に動物を殺し、肉を食べる事が当たり前であると認識している様に。

 

その当たり前な日常として過ごしてきた。長い年月をかけて脈々と根付いていたと言うのなら……もうどうしようもない。

 

 

「ボクはこの世界で何をすれば良いんだろう……?」

 

 

再びステータスを確認する。

人物名がそこには刻まれていた。【ハク】と。

それはあの世界で使っていた名前であり、あの世界での役割はNPC……人を助けると言う事。ありふれた日常、そこにいて当たり前な日常が突如奪われる。そんな悲劇や人々の嘆きを救う為に、あの世界ではそう言う役割をしていた。

ある程度経験があるが、総じて言えるのはゲームで誰かを殺すより、誰かを救う方が良かった、と言う点だ。

 

そして、今———ハクと言う名がこの世界で引き継がれている。

 

 

「うん。……やっぱり治癒術士(ヒーラー)かな。多分、この世界には無い力だし、驚かれるかもしれないから、最初は秘密裏に、あまり目立たずに……だね」

 

 

淡く白い輝きが身を包む。

あの世界では誰かを助ける為に行動をしていた。……その姿と力を引き継ぎ、この世界へとやってきたなら、同じ事をしよう。苦しんでいる人達を助けよう。

明確な生き方を定めたハクは、力強く歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某日。

 

この世界最大にして最強最悪のダンジョン【奈落】にて、激震が走る。

 

 

「それは———たしか、なのかい? メイ」

「はい。間違いないと確認が取れました」

 

 

奈落に築き上げた居城の主が声を荒げる。

落ち着いた様子で受け答えをしているメイド服に包まれた麗しき女性もゆっくりと頷いた。

 

 

「僕の故郷……が?」

「……復元、されておりました。ライト様の故郷、ジニアス村が再建しておりました」

 

 

驚きを隠せれない様子に動悸が起こるのを感じる。

ライト———と呼ばれる居城の主は見た目10歳程度の人種(ヒューマン)の子供。だが、その身に纏うオーラは尋常ではなく、ひと睨み、ひと殴りするだけで全てを滅ぼしかねない膨大な力を内包していた。

 

そんな圧を身に受けながらも、メイと呼ばれたメイド姿の彼女はゆっくりと告げる。

 

 

「モヒカンさん達がまず現地へと赴きました。……何者かに操られた様子は一切なく、ただただ平和な村だった、との事です。……誰もが笑顔で笑っている村だった、と」

「そんな……そんなバカな事が……」

 

 

わなわな、と震えはじめた。

あの場所は……彼の故郷はもう滅ぼされてしまったのだから。

 

 

村に戻った時に見たその光景は……脳裏に焼き付けられている。

 

妹の友達が住んでいる家。

恐いけれど、優しかったお爺ちゃんが住んでいる家。

行きつけのパン屋で、いつも美味しいパンを作ってくれたおばあちゃん達の家。

 

そして何より……自分の家。

 

 

父と母の亡骸を……この目で見た。

父と母の亡骸を……この手で埋葬した。

 

悪夢だと信じたかった。現実じゃないと思いたかった。

でも———それが現実である、と認識させられた瞬間に、心の中の全てが憎悪で染まった。

 

復讐する為に、世界最強最悪のダンジョンで、仲間たちに裏切られ……いや、仲間だと思っていた奴等に殺されかけ、生き延びたその瞬間から復讐する事を考えていたライト。

 

故郷の悲劇を目の当たりにし……更なる闇に染まった。

 

 

 

でも、そんな事はもうどうでも良い。

 

 

「―———『冒険者計画』を始める前に……村に行ってみるよ。元々、とーちゃんとかーちゃん、村の皆の墓参りをしてから、始めるつもりだったんだ。……少し早いけど、ゴールドとネムムと一緒に行ってくる」

「はい。ライト様。新たな情報が入り次第、随時知らせます」

 

 

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