職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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この話じゃないですが、
もうそろそろ、タイトル通り邪魔しちゃった〜的な話になるかも……


成長の証と免許皆伝の証

 

 

 

———空は広がる。世界の果てまでも。空はどこまでも高い。それは全てを見ているから。

 

———痛み、苦しみ、全て包み込んでくれる。大いなる空は全てを支えている。

 

———だから、心配しないで。1人じゃない。必ず、必ず……傍に居るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空を眺めながら……歌を口ずさむのはハク。

 

そういえば野営で1人きりになるのは随分と久しぶりだなと思った。だからこそ、自然に歌う事が出来たのかもしれない。

 

必ずミヤか若しくはエリオが一緒に居るから。流石に誰かといる時に歌を口ずさむ程目立ちたがり屋じゃないし、承認欲求がある訳じゃない。

 

思い返してみると……最近ではミヤと一緒なのが多いかもしれない。あの子がどういう目で見ているのか。そう……純粋な好意に対して気付かない程ハクは初心じゃない。

 

でも、流石に歳が離れている事もあって、受け入れる~と言う選択は難しいと言わざるを得ない。―――もし、大人になった後も変わらず想いを寄せてくれるなら………と考えなくもないが、未来は解らない。

 

客観的に見ても、気を持たせ続けるなんてかなりヒドイ男だと思うし、男なら腹を括れ、とも思うが……、何せまだこの世界の初心者なのだ。いきなりそう言う系統に向かう事こそが無茶だと言うもの。

可愛らしいヒロインと近づき、苦難の果てに結ばれる……みたいな世界(ゲーム)も無数にあったし、それをある意味経験しておいた方が良かった……と自虐的にハクは笑った。

 

 

 

「素敵な歌、ですね」

 

 

 

そんな時だった。不意に、後ろから声を掛けられたのは。

その主は、ライトだった。

 

 

「ダークさん? あれ? もう交代の時間、でしたか」

「いいえ。少しゴールドに話が合って起きてきたんです。ネムムにバレない様に忍び足で起きてきたので驚かせてしまってすみません。……でも、貴方の……ハクさんの歌が聞こえてきて、素敵だったのでついつい聴き入ってしまいました」

「あ————……そ、その。どうもありがとうございます」

 

 

頭をぽりぽり、と掻きながらそう言うライト。

純粋に歌を褒めてくれる~と言うのはこうむず痒いモノがある。聞かれてしまっていた事自体も、結構恥ずかしい。

 

 

「ハクさんがいた場所(・・・・)。故郷の歌、ですか?」

「そうですね。そんな感じです。……皆でよく歌ってました。青い空の下で」

 

 

それはハクの身の上話をした時の事。

迷い人———の説明をした時の話だ。

 

 

『迷い人、ですか』

『ええ』

 

 

嘗ての世界でもあった。世界から世界へ渡る際に起こる現象の1つ。

 

【マジック・プラネット】と言うゲームの世界。

 

それは実は1つの惑星(プラネット)の話ではなく、様々な世界の集合体なのだ。

世界から世界へ渡り歩いたり、イベント等で強制的に転移させられたり、と手段は多岐に渡る。

 

 

白き翼(・・・)に誘われたかと思えば……気付けばエリオさん達と出会った付近に立っていました。見知らぬ世界に降りて、最初は混乱してましたが……』

 

 

そう、混乱していた。

妙な性格悪いヤツに叩き落とされて、でも世界の知識だけは頭の中に直接書かれたみたいにインプットされてて……、色んな意味で混乱していた。

そのおかげで、この世界ででも十分立ち回っていけるので、ある意味では感謝は出来るのかもしれないが、非常に複雑な感じだ。

 

 

『暫くは放浪の旅をしていて————ですから、僕もダークさん同様に、見識を広げる為にこの世界を旅してます。まだまだ見た事の無い場所、いった事の無い場所、世界は広いですから、目標が大きくて、やる事が沢山です』

『………それは、大変でしたね。その……聞いて良いのかわかりませんが……辛くは無かったのですか?』

『あははは。大丈夫ですよ。そうですね……。確かに寂しさはありましたが、僕は結構切り替える事が出来る人種だって、自負してまして。やる事する事直ぐ決まって、決まったら進むだけなんで辛くは無かったですね』

 

 

故郷に戻れなくなってしまった事実。

故郷を滅ぼされてしまったライトとはまた違った意味で苦しく、辛いだろう……と思ったんだが、どうやらハクはあっけらかんとしている。

 

ひょっとしたら……。

 

 

『世界を見て回る過程で、ひょっとしたら戻れる手段があるのかもしれませんしね。……まぁ、悲観的ではなく、楽観的に考えてます。戻れなかったとしても、この世界を見て回ったら、きっと生きていく意味を見出せると思ってますので。なので皆も重く受け取らないで頂けたら幸いです』

 

 

あの世界には戻れない。

……戻れたとしても、隕石直撃で粉々なんだから、何処に戻ると言うのだろうか、と苦笑いをしてしまう。

 

 

ハクとして生きていくと決めているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは。あんな荒唐無稽な話でしたが、皆さん信じてくれて、そっちの方が正直びっくりなんですよ」

 

 

ハクはそう言って笑った。

こんな話、普通に考えたら頭のおかしい狂人か、或いは頭の病気持ちか……、普通に笑われて終わる可能性だって考えていたんだけれど、あの場にいた誰もが信じてくれている様だったので、ある意味驚いたのも本当だ。

 

 

「信じますよ。まだ、知り合って間もない関係かもしれませんが、ハクさんが嘘をつくような人ではない、と僕は思ってますので」

 

 

ライトはそう言って笑った。

虚偽を看破する能力は持ち合わせている。だから、ライトの前では普通に嘘は無意味。外で活動する以上、心苦しい事もあるかもしれないが、情報収集をする際には、嘘発見能力は重宝している。

特に気になっているハクと言う人物からの話であれば、尚更だ。……そして色々と合点が言った。

 

ハクと言う人物があまりにも特殊なだけで……、エルフ種と彼をイコールで結びつける事は出来ないんだと言う事が改めて解ったのだ。

 

 

「それは光栄ですね。……実を言うと、なーんとなくダークさん達には下手な嘘は通じないかな? って思ったので、もうこの際信じてもらえなくても正直に話せば良いや~って裏事情が合ったりしますよ」

 

 

ハクの言葉に一瞬ドキリとしたダーク。嘘が通じない……。確かに事実、嘘を見破る能力を発動させていたから、ハクはそれを見抜いているのでは? と思いそうになったが……、結局本当の事を言ってくれたし、別に見抜いていようが無かろうが、特に変わる事は無いな、と苦笑い軽く否定して返した。

 

 

「ハクさんは暫く彼らと一緒のパーティを?」

「そうですね……、細かな事はまだ決めてませんが。元々はこの街ダガスに向かうまで~と言う話で臨時で入ったんです。ありがたい事に、皆僕を気に入ってくれて打ち解けましたので。この街のダンジョン内では彼らと共に行動しようかな? と思ってます。………何より、まだまだ皆危なっかしくて見てないと、って思いが一番ですかね。……確かに冒険には危険は付き物かもしれませんが……」

「ふふふ。ミヤちゃんが言っていた皆で一緒に、と言うのはハクさんも含まれていると思いますから。一緒に居られる期間が長くなればなるほど、喜ぶと思いますよ」

「うーん、それはありがたいですし、解っている事でもありますが、如何せん拠点を決めずに世界を見て回ってるスタイルなので。Lv的に難しい所もありますから。でも、だからと言って広がった縁は大切にしたい。ですから今生の別れをするつもりもないです」

 

 

ライトとの会話は不思議と盛り上がりを見せていた。

あの皆で食事をしていた時よりも、会話が弾んでいる様にすら思える。

 

でも、実はライトはある意味意識的に、意図的に会話が弾む様に頑張った? のだ

 

最も聞きたい事を、あまり不信感を与えずに聞けれれば―――と思っていたから。

 

 

「僕も色々な所を回って……少し気にある事があったんです。何か知っていたら教えていただきたい、と思いまして」

「はい良いですよー……と言いたいですが、僕自身そんなに回れてる、って訳じゃないので期待に応えれるかわかりませんよ?」

「あははは。ハクさんの言葉を借りるなら、あまり重く受け止めないで大丈夫ですよ。……ま、まぁ話の内容自体はかなり重い話にはなりますが」

 

 

ライトは苦笑いをした後に……つづけた。

 

 

「ある事情があって、僕たちは人種(ヒューマン)の村、ジニアスの調査をしていました。……その村は、何者かに滅ぼされてしまっていたのですが――――――」

 

 

いつまでも消える事の無い憎悪。

自分自身を裏切り、絶望のままに殺そうとした種族の集いの連中に対する怒り以上に………。

自身の中の黒い炎をライトはどうにか抑える。

向けるべき相手はアイツらで、ハクではないから。

 

 

 

それに、ハクはひょっとしたら――――――……

 

 

 

 

「滅んだ村が……元に?」

「はい。厳密には少し―――違います。調査した彼らは、記憶の一部が欠落している様で、滅んだ原因も、滅び以前の記憶も何も解らないとの事でした。……ですが、村での生活に影響は無いようで、………正直、色々と出来過ぎている様な気もします。村を助けた事を秘匿にしたかったのか。そもそも、何故村を助けたのか………、何故 都合が良い部分だけの記憶を消す事が出来るのか」

 

 

村の襲撃者の記憶がない。

そして村を救済した存在の記憶もない。

 

その二つの存在が、同一だったとするなら? そもそも何故村を襲ったのかが解らない。

記憶を消す事で何かを狙っている? とも考えたが、ライトは首を横に振る。あの村で育ってきたが、ありふれた人種(ヒューマン)の村だった。そんな重要な秘密、ここまで大掛かりな……それも神がかった能力を駆使して、どうにかしようとされる謂われはない、と断言できる。

 

襲撃者と救済、それぞれが別の存在だったとするなら。

 

何故村を助けたのか。

何故村の人たちの復活は不完全なのか。

 

そもそも、この世界に蘇生魔法事態は存在するが、様々な条件がある魔術の歴史上最も難しい魔法とされる。

極限級(アルティメット・クラス)の中でも最上位に位置するものであり、エリ―であってもそれを発動させるのは容易ではない。準備に準備を重ね……、万が一の不測の事態で発動する様に備える程度。故に、ライトにはその備えを行っている。

 

だからこそ、完全再現は不可能だったのか、とも思えた。

 

 

幾ら考えても解らない。

襲撃者に関しては、例え地獄の果てであっても必ず追い詰めて、追い詰めて、相応の報いをさせてやる。決して逃がしはしない、と思っているが、村を助けてくれた……村を復活させてくれた文字通り女神な存在については……心から感謝をしたい。実際に目の当たりにし、頭を垂れたい。自身が出来うる事全部使ってその恩に報いたい、と思っている。

 

どちらも見つける事は容易ではないだろう。復讐計画の方が容易であり、世界に進軍を果たす方が先な気もする。

 

 

「(……もし、ハクさんが…………だったら………)」

 

 

ライトは目の前のエルフ。異世界のエルフ、と称した方が良いだろうか、彼の反応を待った。

可能性としては、低いかもしれない。そもそもこんなにも早く相対できるなんて思っても無かった事。………でも、でも、期待せずにはいられないのだ。

 

 

 

 

「(………まさか………あの時(・・・)のヤツだったりする? い、いや、確証なんか無いし)」

 

 

ハクはと言うと、少しだけ考え込んでいた。

 

この世界に落ちた直ぐ後に、所謂チュートリアル的なモノを脳裏に強引に叩き込まれ、一瞬で全てを知ったような状態になった。

……とは言っても、脳がそれらを処理するのには膨大な負荷がかかる訳で……。無論そう言った部分を超人化、超強化をしてくれたと言う訳でもなく、この世界に落とされて、力を色々と認識する過程で物凄くひどい目に合った事があった。

あまりにも雑過ぎる仕事に物凄く苛立ったのを覚えている。

特に力の調整も物凄く雑。反動が大変だし、齎せる効果も大変。

なので、魔術の1つ1つを全て確認しなくちゃ、非常に危ない!! とも思った。降り立った後は人気のない場所で、それらを確認する事に心血を注いだ。

 

 

「(……そもそも再現なんか、無理。……と言うか、自分が冗談抜きで死ぬ。死にかけた。あんなの嫌……)」

 

 

ライトの言う村が復元された、と言う話。

 

白を極めた魔術の1つであり、その力の確認で、発動させてしまった慈愛の天使(ミスレストレーション)のせいではないか? と推察。

 

それは全体蘇生魔術。

 

反則級の力、死生観がメチャクチャになりそうな力。

オンラインでもしもアレが使えるなら運営側が速攻で調整するだろう力。

前の世界では別に使っても魔力が相当吸われて、回復させなきゃ~~程度な認識だったと言うのに、こちらの世界では反動が酷すぎる。

 

まぁ、現実と仮想の違いがそういう所にでるのかな? とも思えたが……速攻で首を横に振った。あの性悪なヤツの雑な仕事に決まっている、と結論が出たからだ。

そう、効果も代償もめちゃくちゃに設定したのでは? と。

 

 

更に歌も覚えている村人がいるとのこと。詠唱を必要とする魔術で、その感じから天使◎ラブソング〜とネタにされた事もあった筈だ。

100%とは言えないが………。

 

 

 

 

ライトは嘘を見抜く。そう感じたのは事実。なので、確信がないのは事実なので、嘘じゃないと再確認をしつつ続けた。

 

 

「その……心当たりは無い、ですね。時期的には僕がこの世界に来たタイミング? だとは思うんですが……、ひょっとしたら世界と世界が結びつく反動で、この世界に……その不具合のようなモノが、逆に苦しめる様な事が起こってしまった、とするなら…………」

 

 

―――申し訳ない。そう言おうとしたその瞬間、ライトは立ち上がった。

 

 

「不具合だなんてとんでもありません!! それに、苦しめるなんてとんでもない。……村を、救ってくれたんだと僕は思ってます。例え、完全じゃなかったとしても、……記憶がなくなったとしても、村で過ごしている彼らは皆笑っていたんです。幸せそうに過ごしていたんです。それを視れただけでも、僕は幸せでした。天の恵みだと、想いました。もし、ハクさんの言う通りに何かが起こったのだとしても、それを……不具合と言ってほしくは無いんです」

「!」

 

 

調査をする。

そう言ってライトはその村に訪れた~と言っていたが、この反応を見てハクは思った。

 

調査をする為に訪れた、と言うのは方便。実は自分の村だった。……故郷を滅ぼされた。そして墓参りに戻った時に、異変に気付いた。それが一番しっくりと来たんだ。

 

 

「そう、ですか。すみません。確信がないからこそ、言葉を選ぶべきでした」

「あ、いえいえ。こちらこそすみません、少し興奮してしまって。……もしも、その通りだったのなら、僕はハクさんに多大なる感謝をしたい」

 

 

ハクの手を、ライトは握った。

ハクは慌てた。

 

 

「で、でも。あくまで可能性と言うか、確信は無いですよ?」

「確かにそうかもしれませんね」

 

 

ライトはハクの眼を見てニコリと笑った。そして、仮面を外して素顔をあらわにして、言った。

 

 

「一番、すとん―――と心に落ちたような感覚がしたんです。それと、これ以上原因を探したとしても、もう答えは出ない―――と言う確信に似た何かも感じました。なので僕の中ではハクさんの説を推し、一先ず解決とする事に決めました。……自己満足に突き合わせるようで気が引けてしまいますが、どうかお礼を言わせてください」

 

 

その手を握られて目を閉じるライト。

ハク自身も確信はない。……だからこそ、安易にアレは自分だよ! なんて言えないし、再現だってあの苦痛を覚悟してまで披露したくない。何より、ライトがそれで満足するのなら、心満たされると言うのなら。

 

 

「僕でよろしければ、幾らでもお付き合いしますよ」

 

 

そう言って、ライトの手を握り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――男2人で何やってるんスかね? アレ……」

「これって、き、禁断の――――こ、これもまた愛の……、あ、あう、あぅあぅあぅあぅ~~~~~」

「ちょちょ!! ミヤちゃん声デカいっス!! き、気づかれちゃうっスよ!!」

 

 

何やら多大なる勘違いをしている様だ。

勿論、2人の気配には気づいていたが、この空気を変えてでも否定に行くのは気が引けるし、特に気にする事も無いのでヨシとした――――くは無い。

 

 

「2人とも、何してるのかな?」

「「ひゃいい!!!??」」

 

 

男色家(そっち)の気はないと全力否定する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だだ、だーく様が……、ダーク、さまがぁぁぁぁぁあああああ!!」

「おいコラ。ネムムよ」

 

 

因みに、また別の場所で盛大に盛り上がってたペアも居た。

 

 

「何貴様は『寝取られた』みたいに騒いでいるのだネムム」

「ね、ねとら―――――――!!??」

「はぁ……。これは主の口より説明して貰わなければ止まらぬな。この駄馬は」

 

 

 

最終的に、ライトの口でネムム達には説明。

ハクは、きっちりとミヤとギムラに説明。

 

色々と複雑極まりない実情なので、魔力の流れを確認して貰った~~~とと言うていで、手を握ったと作り話。

ネムムに関しては、ハクの了解を得て今の話を説明してくれて納得して貰った。

 

 

「また主に迷惑をかけて――――」

 

 

 

と言う、この世のどんな武器よりも何よりも、キツく攻撃力がやばい刃がネムムを貫き、再び絶叫してしまう事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン第3階層 沼地エリア。

 

 

夜の闇の中、銀閃と金髪が入り乱れる。

 

 

「散れ!! 英雄の力で!!」

「グボオオオオオ!」

 

 

エルフのカイトの力で、トロールの群れを両断していた。

再生能力があり、体躯だけは倍近くあってその見た目に比例する形で生命力が高い厄介なモンスターだが、Lv1500のカイトにとっては有象無象も同じ。

 

ただLvの高さを盛大に生かした攻撃方法で、それを見るだけでも戦闘IQは非常に低い……と思わずにはいられないのだが、数の暴力以上にLvの暴力はとんでもなく、あっという間に終わった。

 

それを見ていたダークエルフ、ヤナークが意気揚々と事切れたトロールに刃を入れた。

 

 

「これが再生能力の高いトロール……。こんなに新鮮な実験材料が手に入るとは。それもこんなに!! 研究者として好奇心が抑えきれませんね。カイトさんに同行して本当に良かった。やはり研究者は実験室に籠っているだけでは駄目で、現場に訪れるべきですね」

「おいヤナーク……、そろそろ巫山戯るのも大概にしろよ」

 

 

似たような反応と台詞を乱立させてるヤナークに殺気をぶつけるカイト。

元々気が短いで有名な男なので、たった2回でももう我慢できなくなってしまうのだ。

 

 

「貴様の好奇心を満たす為に共にいる訳じゃない。片耳、片目、削ぐか抉るかして解らせた方が良いか?」

 

 

自称・女神の試練を突破しLv1500の壁を越えて、真なる英雄・勇者になる覇道。その道を逸れてる、遅らせている、と感じた者にはなんでも噛みつく勢いだ。

ヤナークも性格に関しては重々承知であり、如何にLv1500の圧があったとしても、コントロールは容易である、と思ってる節がある。

 

そもそも、エルフとダークエルフは仲良くない種族。ただの利害の一致で居るだけだ。

 

 

「巫山戯てなどいませんよ。以前説明した通り、当方の研究テーマは『種族による成長限界の突破』。それに必要だから採取をしているだけ。寧ろ、カイトさんには感謝をしていますよ。危ない橋を渡り、そのエルフ女王国の宝剣『グランディウス』を盗み出し、こうやって新鮮な素材を提供してくださる」

 

 

一瞥して、トロールの素材をしまい込むと、続ける。

 

 

「実際、当方の研究で人種(ヒューマン)を実験体とし、モンスターと組み合わせた結果、『成長限界』を突破させる事が出来ました。――この1つは当方の研究成果」

 

 

ヤナークの後ろに控えている影。

モノ言わず、荷物を背負い奴隷の様にこき使うが、疲れる様子も無ければ倒れる様子も一切ない。姿は見えないが、それが人種(ヒューマン)だと言うのなら、あり得ない体力と精神力だ。

 

 

「このダンジョンで、新たな実験材料を確保し、もう1体作る事を予定しております。何故、結果が出ると解っている偉大な研究成果を禁忌とするのか、現当主はおろかである、としか言えません」

「……ふん。ダークエルフ種本国の気持ちもわからなくもないけどな。誇り高き種に他種やモンスターの細胞を混ぜるなど、怖気を震る」

「ですが、エルフ種は過去他種である《ますたー》の血を取り込み、成長限界を突破し、《さぶますたー》を作り出したではありませんか。当方はそれを人工的にやろうとしているだけなのですがね。出来る、と判明しているものを、ね」

「はん! 出来ると称しているが、実際にはまだ満足な成果が得られてないじゃないか。エルフ種の血統管理の方が優れている、と言うだけの事だがな」

「あっはっはっは。それは手厳しい。ですがそれもまた1つの事実。実際にエルフ種のさぶますたーのような成果は出てませんからね。真摯に受け止めることとしましょう。――――ですが、当方の研究成果の果てに、エルフ種最強と名高い『白の騎士団』団長『静かなるハーディー』のような超常の存在をコンスタントに生み出して見せますよ」

 

 

古巣の名前を出されて、怒りを忘れて嫌味を言っていたカイトは苦い顔をした。

 

そして、己の手の中にある宝剣グランディウスを見る。

例え、この宝剣を携えて、挑んだとしてもあの団長ハーディーには勝機はほどんどない。天井知らずなカイトであっても、そう認めざるを得ない程のバケモノなのだ。……実際に『ほとんどない』ではなく『全くない』のだ。

 

そんなバケモノが目の色を変えて狙ってくると考えると……ぞっとする。と言うものだ。

 

 

「(だが、それもまた女神の試練。超えさえすれば、ハーディーをも返り討ちに出来る! そう、出来る筈なのだ! 僕様は英雄で、勇者。あの程度に負ける筈がない。将来は必ず―――――ッ!!)」

 

 

ハーディーの名を出したからこそ……すっかり忘れていたあの男の事も同時に思い返してしまった。

 

そう、劣等種(ヒューマン)と共にいたエルフ種(裏切者)の存在。

 

 

「……やはりなるべく早くにあの男は消さなければならないな。如何に英雄で勇者と覇道が決まっていたとしても、試練よりも早く団長が部下を引きつれ攻めてきたともなれば……」

「あの男、とは人種(ヒューマン)と共にいたエルフ種の男ですか?」

「ああ。僕様の姿こそは見せていないが、それでも何かを勘づかれ、エルフ女王国に密告していたとしたら? と考えれば。………危険な芽は早々に絶つに限るだろう? ヤナークの研究もあるが、僕様はそちらを優先させる。今決めた!」

 

 

と、強引に決めた様だ。こうなってしまえば、わがままなカイトは聞く耳を持たないだろう……と、想っていたのだが、ここでヤナークが1つカードを切る。

 

 

冒険の過程で、得た情報の1つ。

 

 

「あのエルフ種の男の戦闘スタイルの情報を得ました」

「……なに?」

 

 

踵を返していたカイトだが、あっという間に振り返った。

 

 

「主に支援魔術を中心。所謂ヒーラーのポジション。あくまで攻撃手段は人種(ヒューマン)達のみ、との事。情報屋をも利用し、他の冒険者の話も聞いて得た情報。信用性は非常に高いと存じます。後、彼らがこのダガスを出たと言う情報も一切ありません」

「………」

「つまり、同じエルフ種と言えどカイトさんがその気になり、攻勢に出たとするなら早々に片付く案件だと進言しますよ。わざわざ、第3階まできて引き返すだけの価値のあるモノだともリスクだとも思えない、と言うのが当方の考え。最早カイトさんとは一蓮托生である、と自負している当方の考えです」

 

 

ここまで言った所で、先ほどまでハーディーの名で焦っていた顔も自然と変わる。ハーディーと比べたら道端の石ころにも満たない存在だと改めて認識。

 

 

「して、次の素材はいよいよ佳境。人種(ヒューマン)……ヒューマン(劣等種)と大詰めとなります」

「わかったわかった。僕様の力をもってすれば容易い事だ。劣等種(ヒューマン)なぞ、幾らでも沸いて出てくる」

「おお、流石はカイトさんですね。頼もしい。ヒューマン(劣等種)を確保し続ければ、必然的にヒューマン(劣等種)に加担するエルフの男も出てくる事でしょう。まさに一石二鳥と言うモノです。なるべく生きの良い素材をよろしくお願いします」

 

 

 

こうして、彼らの異常な矛先がギルドで禁忌とされている冒険者間の殺し――――モンスターから冒険者(ヒューマン)へと移るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンに潜って魔石を清算し――――そして10数日後。

 

 

「ダークさん! ゴールドさん! ネムムさん!」

 

 

早朝、ダンジョンに入る為に最後尾に並んでいると、顔見知りであるパーティに声をかけられた。

 

あのダンジョンで共に行動をして、別れてから10日ぶりだろうか。

 

 

「お久しぶりです。エリオさん。共に野営をした時以来ですね」

「ですね。他のダンジョンならともかく、ここでは野営が基本ですから、タイミングが合わないと顔を合わす事が難しいんですよね。……実は、今日はようやくお礼の品が渡せそうで本当に運が良かったですよ!」

「お礼の品?」

 

 

予想外の言葉に、ライトは驚いていた。

視界の中にいるハクは笑っていて、おずおずと緊張をしているのはミヤだけだろうか。

 

 

「実は、前に実践で指南していただいた時のお礼が出来ていなくて……皆で考えたんです。俺たちを代表してミヤがお渡しします。ほら」

 

 

どうやら、代表者として選ばれていたから少々緊張をしているのだろう。

 

 

「わ、解ってるから! お兄ちゃんも押さないでよぉ」

「あはは。ミヤさん頑張って! さっきまで平気だったでしょ?」

「は、ハクさんも煽らないでくださいよぅ…… ッッ!! あの、ダークさん……いえ、先生たち!!」

 

 

ミヤがポケットから取り出したのは3つの首飾りだった。

ダークやゴールド、そしてネムムの3人分ある。

 

 

「や~~きつかったっスよねぇ。なんせ必要素材が大変で大変で……」

「こら! お礼なのに、恩着せがましい台詞を吐くんじゃない、ギムラ!」

「ッッ~~~、そ、そんな事無かったっス! ほんとっス!! ……以前までのレベルを考えたら~~って枕詞がつくっス!!」

 

 

3つの首飾りを作る為に必要な素材を得る為に……最終目標にしていた筈の第2階まで行ったのだ。……あのカマキリを倒せたから大幅にレベルが上がって、更にハクも居たから、本当にそこまで大変だった訳じゃない。……色々と現実感が無いから大変だと思ってしまったのだ。

 

それにこれは言わば師事をしてもらい、成長できた。その証。その証明のようなモノだ。

 

 

「ほほう。『剣』」

「自分は『疾風』」

「僕のは『魔』」

 

 

夫々の効果

 

『剣』物理攻撃力(小)

『疾風』素早さ(小)

『魔』魔力(小)

 

それらを向上させる効果のあるマジックアイテムだ。

ライト達が居た場所である、奈落。そしてライトの恩恵(ギフト)の無限ガチャで得られるアイテムと比べたらかなりグレードの低いアイテムからもしれないが、このダンジョンでは、間違いなく高級と言えるのもの。

 

 

「「「「本当にありがとうございました!! 師匠(先生)」」」」

「僕からも、改めてありがとうございました。皆さん」

 

 

4人が頭を下げた。

呆気に取られている時間が少々あって……、その間にミヤが顔をあげた。

 

 

「そ、その……皆さんの力を考えたら、全然大したことの無いアイテムだと思います……。ご、ご迷惑、でしたか?」

「い、いえいえ! 全然迷惑なんかじゃないですよ。……と言うより、ここまでの事をしていただく程の事は……、先生と呼ばれる程の事はしてないんじゃ、って思ってしまって……。皆さんの実力、頑張りの結果だと思ってましたので」

 

 

ライトは困惑しながらも……、ある事を思いついた。

 

 

「そうだ。先生と呼ばれて、これ程までのアイテムを作り出す事まで出来た皆さんに……お返しをしないといけせんね。先生としての……所謂、免許皆伝と言うべきものを」

 

 

ライトは懐を弄る。

流石に剣や盾と言った武具を懐から出すのは驚かれるから、小物系のアイテム。

 

懐から取り出すような所作でカードを選ぶと、解放(リリース)と唱えて具現化する。

 

 

「僕たちからの免許皆伝の品です。お受け取り下さい」

 

 

ミヤには 『SSR 祈りのミサンガ』

エリオには『SSR 祝福の腕輪』

ギムラ・ワーディには『SR 漢の護符』

 

 

やや、ランクが下がってしまう2人には申し訳ない、と思ってしまうが。効果的にはレア度と大差ない。

免許皆伝、と言う割には……と思ってしまうが、如何せん前準備不足だったので、仕方ない。そして反応を見るのが何だか緊張してしまう。

 

 

「え、ええ!! こ、これお礼のよりも凄いアイテムなんじゃ……!!?」

 

 

ミヤ以外はただただ『免許皆伝』の響きが嬉しくて燥いでいた様だが、ミヤは魔術師。マジックアイテムの効果までは解らないが、本能的にSSRと言うレア度を感じ取ったのだろう。

 

 

「今後も頑張ってほしい、と言う願いも込めました。返礼として……ではなく、短い時間ではありましたが、師事してくれて、その期待に応えてくれた僕たちの喜びです。どうか、恐縮される事なく、受け取ってください」

「あ、ありがとうございました!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 

これじゃどっちが感謝をしているのかわからないな、と苦笑いをするハク。

ライトはハクの方を見て何かを――――と懐を弄ったが、ハクは首を振った。

 

 

「僕たちは互いに先生の位置ですから」

 

 

そう言ってやんわり拒否をすると同時に、その代わりと言う意味でつづけた。

 

 

「また、一緒にご飯を食べましょう。世界を見て回る同士として、土産話に花を咲かせながら美味しいものを……」

 

 

笑顔でそう言われては、もう何も出せない。何を出しても……例え、最上級のレアアイテムだったとしても、無粋である、と思ってしまうからだ。

 

 

 

ネムムやゴールドも師匠(せんせい)と呼ばれて、満更でもなく、先生(師匠)として堂々と――――を、心がけていたのだが……、ライトがプレゼント? を渡すのを見て、ネムムが反応。

 

 

「だ、ダーク様からプレゼント……、免許皆伝のお言葉……、う、羨ましい。ね、ねたましい………ッッ」

「ネムムよ。師と呼ばれる立場でありながら、それは頂けんぞ。以前の事もあるが主のメンツをつぶすような真似は吾輩も容赦せぬぞ」

 

 

いつものじゃれ合い~ではなく、少々怒気が籠っている様にも感じたので、流石にライトは反応。

 

 

「……ゴールド、ネムム」

「し、失礼しました。ダーク様!!」

「吾輩も少々口が過ぎた様だ。許してほしい。そして……」

 

 

ゴールドとネムムは目配せをした。

こういう時くらいは、息が合っても良いだろう、とネムムは納得させると。

 

 

「戦闘は創意工夫である。吾輩が一番若人らに伝えたいのはそこだ」

「そして、自分からは視野の広さだ。狭ければ狭い程、危険を呼び込む事を今後も意識しなさい」

 

 

先生と呼ばれた内の1人として、恥ずかしくない言葉を残す。

皆は恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに眼を輝かせて頷いた。

 

 

「して、ハク殿。貴殿は酒の方は飲めるのだろうか」

「僕ですか? はい。大丈夫ですよ。飲める年齢です」

 

 

見た目的には、ライトと対して変わらない程の背丈。エルフ種は見た目だけでは年齢は解らない造形の種族。なので、一応聞いたのである。

 

 

「ならば、吾輩とも約束を。いつの日か、あの日の様に共に飲み明かそうぞ」

「! ふふふ。楽しみにしてますね」

 

 

流石にネムムはそこには参加しなかった。

ネムムが意識し、支持し、尊敬し、敬愛し――――兎に角、ネムムの中ではライトがナンバーワンでオンリーワンなのだから。

勿論、失礼にならない態度は絶対にとって、ライトにも失礼が無い様にしつつ……どうか、ライトからゴールドに続く様に言われない様に……と願いをしながら……その願いはかなった。

 

 

 

軈て順番が来てダンジョンへと進む。

 

 

 

 

「これでより一層頑張らないと、ですね。皆さん!」

 

 

 

最後に互いに挨拶を交わすと……別れる。

免許皆伝を頂いたのだ。新たな戦いが……新たな冒険の章が始まる……と、エリオは気合十分に、ダンジョンへと突き進む。

 

 

そう―――新たな幕が開けた。

 

 

 

人種(ヒューマン)にとって、惨劇と言う名の幕が……ダンジョンで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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