職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件 作:やっくんYU
「……慌てて来てみたは良いけど、取り越し苦労。………心配は杞憂だったようだね」
「うむ。ハク殿の一撃は見事であったな。正しく漢の拳と呼ぶに相応しいモノだった。……うむ! 見事!」
「―――――ふんっ」
遥か上空より、一連の流れを見守っていたのはライト一行である。
今より少し早めに現場に到着をしていたが、手を出さずに見守っていた。
この展開を大体予期していたからなのかもしれないが、ここまでのモノを視れるとは思っても居なかった、想像以上だ、と言うのが正直な感想だった。
エルフ種のカイトと言う男は『鑑定』スキルにより判明した。
加えてその手にした武器もただの武器ではない。かなりのレア。
生半可な相手であれば成す術もなく殺されてしまう。
これまで殺されてきた冒険者たちの様に。
でも、ふたを開けてみればただただ一方的。圧倒。
攻撃は1つも通らず、最後は肉体的な一撃。武器も完全に粉砕して絶命の一撃だ。
「―――世界は広い、って事なのかな。僕もまだまだ………」
見聞を広げると言う仮初の目標だったが、本当の目標の一つにしてみようか? とライトは笑う。
無論、全てを終えたあとになるが。
ライト達はミヤ達の願いを聞き受けて、急いでダンジョン内へと舞い戻ってきた。
でもライトが言う通り、ミヤ達にとってもその心配は取り越し苦労だと言える程の結果だった。
「彼らがここに来れたら、直ぐにでも安心出来ただろうけど……」
「それは無理だと言うものだぞ主よ。彼らは肉体精神共に限界を超えて身体を動かし続けた。ぶっ倒れるまで身体を酷使し走り続けた。その反動で今は昏睡状態だ」
「うん。解っているよ。……でも、安心してって言いたいね」
ミヤの涙を見れば当然。そして、その妹を守ろうとするエリオ達の姿を見たら当然。
気を失う寸前まで心から無事を、生還を祈っていたのだから。
「それにしてもやっぱり、彼の底は見えないね。―――あの男、エルフ種の中でも大分Lvは高い方だと思う。カイトLv1500か」
「一般的なエルフ種のレベル上限は1000だと言っていたか?」
「うん。それは間違いないと思うよ。ただ、得た情報の中にはエルフ女王国の一団のメンバーは上限を突破しているとか、って情報は耳にしてるけど、あの男もそこの所属だったのかもね」
エルフ種の、それもLv1500の男の攻撃を全て防ぎ、且つたった1撃で仕留めて見せた。……遠目からではあるが、あの一撃が全力だったとは到底思えない。余力をかなり残しているとみるのが自然だ。
「ダーク様。ハク殿はエルフ種では無かった、と言う事でしょうか」
「……うん。それは間違いなく、ね。エルフ種の特徴は尖った耳に、金色の髪、緑色の瞳が一般的。でも、今のハクさんは黒髪だ。流石に耳や目の色までは確認出来てないけど、ほぼそれで間違いないよ。多分、
ネムムの言葉に対して、エルフ種ではない、とライトは肯定した。
エルフ種ではないとは当初より思っていた事だった。あんな優しい人が……
ただ、ある意味ではほんの少し……残念に思う点もある。
エルフ種全員が屑じゃない、とハクを通して思う事はあった。……数少なくても偏見無く、誰にでも優しく、そして強い者だって中には居たんだと。……友達の様になれる人だっているんだと、心の何処か、片隅では思いかけていたから。
それだけが本当に残念だ。
「……しかし、ダーク様を欺いていた、と言う事実は変わりません。……やはり、安易に信用は出来ない、信用に値するとは言えないのでは? あの力も危険かもしれません」
随分辛辣な物言いだが……実はネムムの中では少々違った。
ハクに対して、色んな意味で嫉妬心を持ち合わせているから、そう言う結論を(結構無理矢理)導き出したのだ。
何せ、あのハクは最愛の主であるライトと固く握手を交わし、笑顔でで語り合い、更には料理で満面の笑みと感謝を向けさせていた。
ネムムの知る限りでは、アレほどの笑顔は、あの質の笑顔は奈落では見た事無い様な気がする。
あんなに笑ってくれていたら、きっと一大事件で、色々な紛争があちこちで起こりそうな気がするから。
だから、ここは1つ問題ある人物認定をして貰って、ライトの中でのハク評価? を下げる方が無難だ(暴論)、と結論が出たのだが……。
「うーん……、それは違うよネムム。だってハクさんは僕達に一度も『自分はエルフ種のハクです』って自己紹介してなかったし、人成りは彼と接して僕もよく解ったつもりだよ。秘してる部分は大なり小なり誰にもある事だしね。……それは僕たちだって同じだから」
「―――――――ぅ」
そんなネムムを他所に、ライトは少しだけ考えてやはり間違いない、と確信をしつつ言った。
ライトならそういうだろう、と心の中では解っていたネムムだったが……改めて直接聞くとやっぱり
因みに、ネムムとライトを見て聞いていたゴールドは盛大に笑う。
「わっはっはっはっは! 正しくその通りだ。浅はかだぞネムムよ。それに同姓なら兎も角、男にいつまでも嫉妬をするんじゃない。見苦しい」
「うぐぐっっ、だ、誰が嫉妬なんかするか!!」
大分強がっている様子だが、そんな訳がないとゴールドも解っている。
と言うより、ネムム自身もハクの事を認めている事くらい解っているのだ。
『殿』をつけているところを見ても。―――が、醜い欲の部分がそれを邪魔しているだけだ。
「今の貴様が
「そ、そんな訳ないだろ!! 変な事言うなゴールド!! 自分は、自分は万が一を考えてだなぁ!!」
ぐあっっ! とゴールドに迫り、その甲冑をガンガン叩いて抗議する―――が。
「皆。……どうやら終わりじゃない。動きがあるみたいだよ」
ライトの次の言葉で2人は言い争いを止めて、視線を眼下へ向けるのだった。
粉砕させられた。
命が粉砕したのが解る。
でも、そんな訳がない。
自分は女神に認められ、英雄として覚醒し、勇者として世界に君臨する筈の男。
こんなところで死ぬ訳がない。
死なんて、間違っている。ありえない! 絶対に――――――
「
「げぼぁぁぁ、がはぁっっ!! ぐあああっっ!!」
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
何でこんなに痛い!?
それはカイトの心情。
身体を貫く勢いの拳は振りぬかれる事こそなかったが、その衝撃は命に届く。衝撃波が体中を巡り、全てを粉みじんにし、本来ならば内部から爆散してもおかしくなかったのだが。
「ぎゃあ、ぐぎゃあああ! げはぁぁぁぁ!!」
体中から血飛沫こそまき散らしているが、カイトは生きていた。
でも、のたうち回っている。只管大地をのたうち回り、身体を掻きむしり、血だけでなくあらゆる体液で己を汚し続けていた。
「一体、何が……どういう……」
ヤナークもその姿を見て、混乱していた。
宝剣グランディウスを粉砕し、その粉砕した力をそのままカイトに向けたのだ。ありえないし、考えられない程の力だが、実際に剣は粉砕したのは間違いない。如何にカイトとは言え、死は免れないだろうと踏んでいたのだが……、生きている。
ここで1つの仮説がヤナークの頭に浮かんだ。
どの道この男をどうにかしないと自分達の未来が絶望的なのだ。
ただでさえ、情報が広がるのが早いのに逃げていった連中がギルドに報告すれば、更に広がる。エルフ女王組に伝わるのも時間の問題。
ならば逃げる? とも考えたがそれも無理だろう。宝剣グランディウスの攻撃をあっさり防ぐほどの強固な結界を広げられるからだ。
つまり、目の前の男をどうにか殺さなければ未来は無い。
そして、仮説が正しければまだ望みはある。勝算もある。
「け、くひ、くひひ。なるほど、なるほどなるほど………」
「お? まだお前はやる気みたいだな? 驚いた。正直命乞いするんだろうな~って思ってたんだが」
好戦的な眼を向けてくるヤナークに、ハクは少しだけ驚いていた。
カイトが目の前でやられた。そんな場面を見たら、降参待ったなし。許すかどうかはさておき、敗北を認めるだろうと予想していたのだが。
「確かに、当方は研究者。故に荒事は苦手でして八方ふさがりとなれば、生殺与奪を持つ貴方に命を乞う事も厭わないでしょう。……しかし、当方の武器とあなたとは相性が良さそうな故に! 今こそこの我が実験体の全てとお相手していただこうか!!」
ヤナークが高らかにそう宣言すると、後方に衝撃波で吹き飛んでいた2体が戻ってくた。
「agaかjmvjかなやまadw!!」
フードをとり露わになったその姿は異形そのもの。
人でもなければモンスターでもないと言った感じだろうか。
固い岩のような皮膚に覆われて、
実はこの世界にはそういう種族もいるのだろうか? と一瞬だけ考えたが、直ぐに考えるのを止めた。
微かにその顔から聞こえてくる懇願の声が聞こえてきたからだ。だから、それは無いと察した。
『殺してくれ』
そう言っているのが、はっきりと聞こえたのだ。
「ぼ、僕様は死なない!!! 死なないんだぁぁぁ!!!」
そして、今の今までのたうち回っていたカイトが起き上がった。
格好つける様に両手を振るい上げながら。
それに最早武器もない状態だが、それでも起き上がってきたところを見て、ヤナークは口角を吊り上げる。
「こっちは呆れた。回復してやったのに起き上がってくるのが遅過ぎだ雑魚」
「だれ、誰が雑魚だぁぁぁ!!」
「お前だ馬鹿で雑魚」
剣が無ければ拳で。
いや、粉砕した宝剣グランディウスは刀身こそは打ち砕かれた様だが、その特性はまだ生きている様で、やや小さめの柄の無いナイフのような複数の分身体を投擲してきた。例によって芸がなく多数の属性を付与している投げナイフ。
ハクの身体に当たるが、それは先ほど同様に全て弾かれ、かすり傷1つ負わす事が出来ない。
ドンッ!
ボキッ!
メキャッ!!
グチャッ!!
ーーーどかん。
その合間合間で繰り出すハクの攻撃は面白い様に当たる。
右頬骨が砕ける。……でも治る。眼球が飛び出る。でも治す。
これまで
ガムシャラに攻撃をしていたカイトだったが、その手を止めて膝をつく。
「はぁっ、はぁっっ、はぁぁぁっっ、き、きさまは、なんなんだ。なん、なんだよぉ!! なんで、なんでぼくさまが、こんな、こんなめ、に……!!」
こうも無限に痛みと再生を繰り返し続けるんだ。即座に立ち上がれる位には痛みが引くが、………あまにりもおかしい。不自然極まりない。
こうなっては如何に残念で春な頭であってもその性質の異常さに……残酷さに気付く事が出来たのだろう。
そう、打ち勝ってなどいないのだ。
簡単には死なせない。死と言う楽を与えない。無限に苦しませるつもりなのだ、と。幾らでも殴る。幾らでも治す。
「なんだ? もう終わりか。随分と情けない英雄で勇者様がいたもんだ」
ヒーラーとは本当は怖いのだ。
誰よりも優しいが……本当の本気で怒らせるような外道には、地獄の鬼にでもなるのだ。
カイトは知らない方が、最初から最後までくるっていた方が幸せだったかもしれない。何せカイトは身体を粉砕されて、耐え難い痛みに襲われていたのだが、それを耐えて立ち上がった事を変に解釈。自信に変えていたのだから。
自身の都合の良い脳内変換。女神の試練に打ち勝った、と勝手に解釈し、勢いとそのの太い精神力が向かっていけるだけの張りぼての気力を与えていたのだ。そのままの方が絶対に幸せだっただろう。
エルフ種は見た目は若く麗しい姿をしている筈なのに、精神が削られ徐々に老いさらばえていった。
あまりに残酷極まりない刑。
カイトは漸く気づき始めたようだが、当のヤナークも残念ながらプラス思考が伝染したとでも言うのか調子を上げていばかりだった。
ヤナークの場合はまだ直接攻撃をしていないから気付かなかったのかもしれない。
「貴方にとって、最悪の相手となるこの実験第1、2号は強力な再生能力を持つ当方の傑作です! 例え打ち抜かれようが、砕かれようが首を切断されようが、殺す事はかなわないでしょう!」
「ふ……ん」
ハクはそんな二人を無視する様に実験体と呼ばれた2体の方へと足を勧めた。
その間も、煽られたカイトは再び攻撃に転じるが全く無意味。例によってかすり傷1つ負わない。
「3人、いや……もっと」
このバケモノ……いや、人であった筈の者たちの怨嗟が聞こえてくる。
「お前は何故、こんな事をする?」
「決まっているでしょう! 当方の研究は人工的に種を融合、成長限界を突破。『ますたー』やカイトさんの様な『さぶますたー』といった規格外の強者をこの手で作り出し、量産すること!! この崇高な研究は貴様のような
別にこの手のマッドサイエンティスト的な思考は珍しいものでもない。
あの世界ででも、数多く居たから、在り来たりと言えば在り来たりだ。
ただ、だからと言って実際に目の前で見せつけられて――――ハクとして長く生きてきた自分の中の信念がヤナークと言うゲスをどうしても許す事が出来なかった。
ヒーラーは人を救う事。誰かを助ける事。死を齎す存在ではない。
カイトにしてもそうだ。無限の苦痛を―――とも思っていたが、最後の最後では何処か罪を清算出来た、と言う事にしてやろうと考えていたかもしれない。
でも、こいつらだけは――――もう、良いだろう。
脳裏に映るのは、エリオやミヤ、ワーディ、ギムラ達の姿。
彼らが、この男たちの餌食になる未来が見えた。
死の気配、その根源は、その元凶はこの男たちだった。
もしも、自分が気付かなかったら……? 絶対とは言わないが、今までの経験上……悲惨な未来が待ち受けていた筈。
ミヤが、エリオが、……皆がバケモノに変えられ、それを愉悦な表情で、こいつらは見下ろしている光景が目に浮かぶ。
より鮮明に、その未来の闇が見えた。
命を弄んでいる光景。
力なくとも懸命に生き、夢を叶えようとしている彼らを……
ドンっ!!
「ぐぎょっっっ!!??」
「オレは感情移入しやすい性質なんだ。………耳障りな口を閉じろ」
ハクは怒りを込めて再び拳を振るった。
死なせない程度に加減をしつつ、最大限の痛みを堪能出来るレベルを見極めて。
そしてその一撃はヤナークの顔面を完全に潰してしまった。眼鏡と鼻っ柱が粉砕され、横に3回転半程回った後に地面に転がった。それでも意識を保てているのは熟練の技、と言うべきものだろうか。
「それとな。………お前の研究なんざ知るか。糞だ。いや、糞以下だ。―――だから、オレが全てを否定してやる」
「ぎゃ、っぐあびぼ!?」
滝の様に流れる鼻血、涙腺が崩壊したかの様に流れる涙を止める為手で抑えながらハクの方を見ると――――次の瞬間には信じがたい光景が広がる。
「再生を願う真なる祈り―――」
両手を広げて何かを唱えたかと思えば淡い白い光に包まれた。
その光が、実験体たちを包み込む。
「gkごgwjgぱ@あgh……、お、あい、……、ひ、日が……、ひか、ひか――――りが……」
次に泡のように体が膨れてゆく。
光りに誘われるかの様に、膨らんだ体が徐々に削れ、光に吸収されてゆく。
細胞のひとつひとつを餞別し、モンスターのモノと、人のモノと分けてゆく。
「
まさに、神業を視た。
今の今まで罵倒し、死ね殺すを連呼していた筈のカイトも口をあんぐりと開けたまま固まり、ヤナークも止めようとしていた鼻血や涙も気にならないかの様に、まるで痛みをも忘れたかの様に固まっていた。
手を加えたヤナーク自身がよく解っている。あの実験体は人でもモンスターでもない。融合種と言う新たな存在へと
ロックリザード、トロール、厳選に厳選を重ね、試行錯誤し、数多の
それなのに――――
「ぅ………」
「ぁ………」
「…………」
どさっ、どさっ、どさっ……
また1人、また1人と……
かけ合わせた
眠っているようだが、鼓動は離れていても見える。血色も良い。直接確認するまでもなく、生きているのが解る。
融合させたモンスターの素材も完全に分離されて、そのまま消滅してゆく。
「ぞんば、ばがぎゃ………」
「お、おま、おまえ………」
白いオーラ、神々しい光を纏い、人を生み出した。
死神に視えた男が今は神のように見える。
……いや、この異常な力はかの存在を彷彿させる。
「まさか、きさまは、……ますたー、だとでも言うのか………?」
「ふぅ……。良かった。死んで間もなかったから、全部戻す事が出来た……。ちょっと疲れたけど、この程度ならまだまだ」
カイトの問に対して無視するように、ぐいっ、と汗をぬぐうハク。それもその筈。蘇生の力は相応に消耗するからなのだ。
その間も2人は信じられない、と息をのむ。
人を蘇らせる御業をみせられて、最強の存在を人工的に作ろうとしていたソレを戻されて………研究の全てを否定されて……そして何より、この人外の能力はまさしく神の名に相応しいモノだと思い知らされて………。
「ぼ、僕様は、ぼくはますたーの血をひく『さぶますたー』だ!! お前がますたーだと言うのなら、僕をみちびくのが筋だ――――」
カイトは声を荒げた。余りにも異常な光景、余りにも破壊と再生の繰り返しを受けていたので、精神がおかしくなったのだろう。
「いきなり何をわけわからん事を言ってるんだお前は。狂うにしても、もっとこう……狂い方ってのがあるだろ」
今の今まで殺すと罵倒し続けてきた相手に、その後は疲弊し、命乞いを始めそうになっていた筈なのに、今はよく解らない事を言いながらすり寄りを始めてきた。
訳が分からなくなった。狂ってしまった、程度で許そうとは到底思えない。今までやってきた事に対しては必ず報いを受けさせる。
「その力、お前はますたーなんだろ!? 僕様は未来の勇者でさぶますたーだ。ますたーならば、さぶますたーである僕様に力を与えるのが筋であり、普通なんだ! 今こそ真の女神の試練なんだ」
正直、不愉快極まりない猛言だった。
何故この男は自分本位に、自分中心に物事が動くと思っているのか、と。どうやら狂ってるように見えて大真面目な様子。
心の底からそう思っている様なのだ。力を与えろ〜と。そして与えられるのが当然である〜と。
「ふ、ん……………そうか。なら、こうしよう」
ハクは、カイトの前に立った。
最早言葉が通じない狂人のようなモノだと、と考え、もう何を言っても意味は無いとも思った……が、それでも敢えて言う。
「―――力が欲しかったら、このオレを倒して見せろ。このオレに一撃でも入れて見せろ」
「は?」
「力ってもんは安売りするもんじゃないだろ。かすりもしてない雑魚なお前にゃ分相応ってなもんだ」
そういうと、懐から一振りの剣を取り出した。
「だから、こっからはマジだ。……お前が力を与えるに足る男か、本当の意味で見てやる。……かかってこい!」
凄まじい眼力を向ける。
その目は、カイトの脳裏に叩きこまれ、これまでカイトにしてきた地獄の苦しみの記憶を呼び起こした。
白いオーラが異常なまでに放出されてその拳に集中してる。
あれが振るわれれば……これまでの比じゃないと察する。
だが、それで良い。そういうものだとハクは思う。
カイトの言葉に付き合うなら、ある種当然というものだ。
「試練、なんだろ? なら乗り越えろ。……さぁ、やってみせろ」
「ひあ、い、ひ、ひぃっっ、ひゃぁ……、な、なにを、なぜ、そんなことを。だ、だから、おまえは、はやくぼくさまにちからあたえれば―――――――――」
折角付き合ってやったと言うのに、結局は自らの足で立つ事もなく、ただただ現実から目を逸らせ続けるだけの無様な姿を晒しただけだった。
この姿のどこに英雄で勇者を名乗れるのか……恥知らずもここに極まると言うもの。だからただただ不愉快。
なので、もう付き合うのは止めた。
かの世界でも指折りの下衆にしか使わなかった凶悪無慈悲なオリジナル断罪魔術を指に込める。
「もう―――良い。
「あ――――が………」
カイトの頭に人差し指を当てると……カイトはまるで糸の切れた操り人形のように白目をむいて倒れた。
「――逃れる事の出来ない。死にすら逃れない次元の牢獄。……虚無の世界で、億の時を味わって来い。そもそもな話。誰がお前のマスターだよ。お断りだ」
カイトはもう何も言えず、地面に突っ伏したまま動かなくなった。
そして、その時だ。
「ハクさん」
カイトを処理した後はヤナーク……と、思ったのだが、背後より聞こえてきた声に振り向いてみると、1人の男……いや、3人がいた。
その内の1人、現れたネムムの一撃でヤナークは昏倒している。
何やら内股になっているから、どうやら股間に強烈な一撃を与えたらしい。考えただけで股がひゅんっっ、となってしまいそうになるが……それはそれとして。
「貴方は、ますたーなんですか?」
ライトは、仮面を取り、真っすぐ見据えて問いてきた。
ヤナークが何かをしようとした事。
そしてあれ程の一撃を受けたのに絶命することなく復活したカイト。
全て、ライト達は見ていた。
でもどれもこれも不安は一切ないし、助太刀の必要もない。冒険者を……人種を殺してきたあいつらを断罪したい気持ちもあったが、ハクが全てやってくれると思えた。
と言うよりそもそも、何故ここまでの実力の差がある事に気付かず無駄に抗おうとするのかが解らなかった。
寧ろ、あの場面では逃げ一択が最善だと分かるだろう? と半ばあきれもしていた。力量の差を見極めるのも強さの1つ。そういう意味でもあの男達は三流以下だろう。
騎士として、男として敵前逃亡はあり得ぬ! とゴールドと言ったりもしていたが、命をつなぐ為には逃げる以外は無い、と解りきっていたので、ライトはただただ苦笑いするだけだった。
だけど、本当の意味で驚いたのはその後だった。
『ますたー』『さぶますたー』と言う単語が出てきた事。
そして、カイトは『さぶますたー』であり、ますたーから血を受け継ぐとさぶますたーになる、と言うもの。
手は出さないつもりだったが、自分が、自分たちが特に知りたい情報を謡った時点で方向転換。ハクがとどめを刺す前に一度止めて内容を聞こうとしたのだが、想像を超えた力を目の当たりにして………少しだけ遅れた。
「ハクさん。貴方はますたーなんですか?」
中でも一番の衝撃。それは死者をも蘇らせてしまった事。
あの状態になってしまった人達。自分たちならどうするだろう?
決まっている。殺して楽にさせてあげる事以外何も出来ない。死に救いを求める事しか出来ない。
でも、彼はやってのけた。
それに以前、否定はしたが故郷の村を助けてくれたのも……………………。
「違いますよ―――と言う前に、まずはダークさんの言ってる『マスター』の意味と定義が知りたい所です」
「………定義、ですか?」
後ろから話しかけたのにも関わらず、驚く様子も無くて……いつの間にか口調ももとに戻っていた。元の優しいハクのモノに。怒ると人格が変わる人が居る事は知っているし、別段驚く事でもない。それ以上に驚かされてきたから。
「……やっぱり、認識にズレがあると思うんです。僕が知るマスターとは、『師匠』若しくは『心技体の全てを極めた者に対する称号』……それが《マスター》です」
「…………」
「だから、聞かせてもらえませんか? ……宜しければ貴方の事を含めて」
ライトが驚いている様に……実は、ハク自身も驚いている。
それは後ろから話しかけられた事もそうだが、それ以上にますたーであるか? と聞くライトの眼の奥底に、巧妙に隠されてはいるが黒い黒い闇を視たからだ。
黒い風が鳴いているのを感じた。想像よりも深い深い闇をそこに見た。
始めてライトに出会った時に見た闇と全く同質のものを視たから。
何より、少し、ほんの少しでもそれが自分に向けられているのが……驚いた。
ますたーとは、ライトにとって『よくない者』だと言う事が直感だが解った。
だからこそ、ハクは直感以外にもちゃんと知りたい。自分とは違うと否定しつつ、ちゃんと聞きたくなった。
ますたーの事、……ライトの事を。
そして、その後――――ライトから話を聞いてハクは少々後悔する事になる。
何故なら、ハク自身のマスターと言うモノの認識とはまた違う、ライトが本当の意味で知りたがっている『ますたー』と言う
白な魔導師でも色々カンストさせたらバケモンですよね〜
軽く叩いただけでダメージ99999(FF的な)みたいな感じでw