職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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奈落

 

舞台は変わり 世界最大最強最悪ダンジョン【奈落】

 

————の最深部の食堂。いつも楽しそうに仲間たちが集い、それぞれが主であるライトへの想いを打ち明け、更に盛り上がって盛り上がって……つまり、とても楽しい所なのだ。

 

でも現在少々……いや、結構毛色が違う様子だ。

 

 

 

「これで、これでどうですか!!? 会心の出来ですよ!!」

「今度こそいける筈です!! 合作会心の出来!」

 

「う、うーん……」

 

 

事前情報では奈落と呼ばれる場所はおどろおどろしい様相で、最悪やら最強やら最大やらを冠するからわかる通り非常に危険地帯……だと言う認識。……でも、今は完全に認識を改めている。

実に平和な空間が平和な国がその最深部には有ったのだから当然だろう。

 

そんな場所でハクは用意された食事の1つ、スープを選んでスプーンを手に取り一掬い、そして口の中へと流し込む。

濃厚な出汁が効いて、それでいてハーブだろうか、仄かに香るソレが甘味を引き立てている、と言って良い。 その後のワインも少しばかり嗜み……他の料理も口に運ぶ。

 

その様子を物凄く真剣な顔つきで見ている。見られている。人によってはこんなの食べれないし、味なんて解らない、と思われそうなシチュエーションではある……が、特段気にする事は無く、

 

普通にこれらは最高級の品である、と太鼓判を押して良いと思うのだけれど……、彼女達(・・・)はそれでは到底納得しない。

世事も要らないし、忖度もなし。公平にして辛口な審判(ジャッジ)を求めている。

それでいて……同等以上(・・・・)のレベルを求めているのである。

 

 

「味は全然悪く無いです、寧ろ美味しいですけど(・・)………」

「「………けど?」」

 

 

頬をぽりぽり、と搔きながら、非常に申し訳ない……と言った様子でハクは審判を下した。

 

 

「やっぱり僕の料理(それ)と同等か? と問われれば違うとしか言えないですね……」

「「はぅっっ!!」」

 

 

評価を受けて膝から崩れ落ちるメイド妖精たち。

上では、また別の小さな妖精?たちが腹を抱えて笑っている。口々に『ざまぁ~~!』とか、『100年早い~~!』とか言っている所を見ると、ちょっぴり性格が悪い妖精なのかな? と思ってしまった。

 

実は、以前の世界で似たような経験をした事がある。

なので、ハクはやや既視感を覚えつつ、ただただ苦笑いをするだけに留まっていた。

 

 

「むきーーーー!」

「どーーすれば、貴方の様な料理を作れるんですーーーー!!」

 

 

ふんがーーー! といきり立つのは、膝から崩れ落ちていた彼女達……ではなく、これまで完敗し続けてきた他のメイド妖精たちだ。

 

断っておくが、皆料理の腕は一線級。この場所の食事処を預かっているのは実質料理長、料理人たちなのだが、彼女達も十分過ぎる程の即戦力。

それもその筈……、彼女達が敬愛してやまない主の為に腕を磨き、高め合ってきたのだから。いつの日か、美味しい美味しいと言って自分の料理を食べてくれる事が嬉しいくてたまらず、頑張ってきたのだ。

 

 

でも、そんな彼女らの信念が……積み重ねが、足元から崩れ落ちそうになっているのが、ハクの存在のせい? である。

 

 

「何が私たちには足りてない、と思われますか? ハク殿」

 

 

そんな時、メイド長なる彼女達のまとめ役の女性が声をかけてきた。

 

これまでは料理を作る過程はしっかりと見て貰っているし、材料も同じ、レシピも同じ、でもハクの域には到達できない。それが不可解極まりない、と言うのがメイド長の心情だ。

落ち着いている様子な彼女だが……、その目の奥に宿る炎はしっかり感じている。

彼女もまた、ハクの料理を超える……それ以上の料理を作り、ライトに喜んでもらいたいと思っている筆頭だから。

 

 

「足りてない……」

 

 

ハクは少し考える。

 

因みに、ハクの舌に関して皆が疑ってる~~、嘘の判断をしている~~とは思ってないし、その可能性すら考えてなかった。それも当然、彼女達が敬愛し親愛し……何よりにも勝る主が全幅の信頼を寄せているのだ。そこに疑いの余地などある訳がない。寧ろ疑ってしまえば幾ら身内で仲間だとしても針の筵……どころか袋叩きにあうだろう。

 

 

「「「…………」」」

 

 

そんなハクの言葉を一言一句聞き逃すまい、と耳を傾けている面々。

騒いでいても喧嘩していても、そういう方面には貪欲に貪欲に……なのだ。

 

 

「足りないもの、を指摘するのは中々難しいですが……僕が思う最も必要なモノを答える事は出来ますね」

「!」

「そ、それはなんですか!!?」

 

 

同じ材料、同じレシピ……これ以上無いと思っていた。

でも、ここで最も大切なもの……と言われれば、耳が大きくなると言うものだ。

 

ハクは少しだけ間を置いた後に、全員の顔を見ながら笑顔で言った。

 

 

「勿論、料理に最も必要なものは愛情ですよ」

 

「「「……………」」」

 

 

ある程度の予想を働かせていた――――のだけれども、メイド妖精たちは全員が固まってしまっていた。吃驚仰天、とはこの事なのだろうか、と。

その原因であるハクはと言うと、少しだけ首を傾けて皆に問う。

 

 

「あれ……? 僕、何かおかしな事言いましたか?」

 

 

心の底から解らない、と言ったご様子。

まさかの真顔で、そんな言葉を言ってくれる人がこの世に居たのだろうか? と、色々と騒がしい妖精たちでさえも言葉に詰まる。

 

 

そして、そこはやはりのメイド長。

1人だけバッチリ受け答えが出来ている様で、姿勢を正しながらハッキリと答えてくれた。

 

 

「いえ、申し訳ありません。どうやら予想外の答えだったようで、皆驚いてしまった様です」

「予想外、でしたか」

 

 

ハクは少しだけ意外そうな顔をしながらも、皆を見据えていった。

 

 

「美味しく食べてもらいたい。笑顔になってもらいたい。在り来たりな言葉にはなりますが、そこには大なり小なりの想いが込められるものですよ。僕が、他の誰かに振舞う時はそれを第一に考えてます。美味しいって言ってもらえると嬉しいですからね」

 

 

ニコリ、と笑いならが更に言葉を繋げる。

 

 

「真心を込めて。愛情をこめて。万物の根源の力―――。一から成る根源の力。それは愛から来る……とも言われてます。ですから、単なる精神論ではなく、最も重要な要素である、と僕は考えてますから」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

本心だ。

ハクと言う男は、心の底から本気で、本心で、ハッキリとここまで言い切っている、と判明した。ある種の天然。ジゴロな要素をふんだんに含んでいる、と確信さえ出来た。

自分たちの中には絶対神であり、敬愛してやまないライトが居るから揺らぐ事は……まぁ、無いとは思えるが、もしも外で彼と出会っていたとしたら? コロッ、と落ちていたかもしれない、と言わざるを得ない。なんて恐ろしい……と、畏怖の念さえも覚えてしまう破壊力

人種(ヒューマン)パーティの中の女の子があそこまで意識をして、夢中になり、心配をしていた意味と訳がハッキリと解ると言うモノだ。

 

 

「それで、僕の中の結論は……ですね。僕の味を意識するあまり、誰に食べてもらうか。それを少々蔑ろにしてしまっている(・・・・・・・・・・・)のでは? と言った点ですね」

 

 

ぎくり……。誰もが一瞬そう思った事だろう。それはメイド妖精たちを纏めるメイド長だって例外ではない。何が違うのか、何故なのか、あの味に追いつきたい、それらの意識が強すぎている、と少なからず実感してしまっているのは間違いなかったから。

 

 

「………皆さんが頑張って、想いを込めて、一生懸命作っている料理を振舞う相手は誰なのか」

 

 

追い求めるあまり……、ちゃんと見えなくなってしまっていたんだ。

 

 

「想いの強さはきっと、皆さんも強く、高いモノだと思ってます。僕を師事してくれているのは非常に光栄極まりない話なのですが……、僕から言えるのは、僕が教えられるのはその位しかありませんから」

 

 

料理の素材が同じでレシピも同じ。作り方も実際に作って見せて、所謂見取り稽古の様にもしてみせた。……もう、これ以上を教えれる事は無い。後は各々が研鑽を積む以外に無いのだ。

 

 

「ハク殿。……ありがとうございました」

 

 

メイド長は頭を下げた。

そして、彼女に続く様に、他のメイド妖精たちも、何なら先ほどまでうるさく煽っているだけだった妖精たちも同じく頭を下げている。

 

 

「貴方様は、我々を初心に帰らせてくれました。これからも精進し、想いを込めて振舞っていこうと思います」

「……ええ。頑張ってください。僕でよければ幾らでも応援しますから」

「ありがとうございます。……後、申し訳ありません」

 

 

そして、メイド長は更に言葉を繋げる。

 

 

「許されるのであれば……、ほんの一時でもよろしいので、……また、我々の料理を批評してはくれませんか? その時はしっかりと想いを紡ぎ、載せたいと思っております」

「――――光栄、です。何度も言いますが、僕でよければ幾らでも」

 

 

……これで、話は上手く纏まった、とハクは内心ほっとしていた。

実の所、天然だとかなんとか思われているが、実はこれは完全に計算の上である……と言っておこう。

数多の世界を経験してきたハクは、超がつく程老獪であり、熟練者でもある。普通ならば小っ恥ずかしい事この上ない台詞を臆面もなく口に出せば、その表情に現れる事間違いなしだろう。でも、何度も経験があるから……、寧ろ恥ずかしそうにする方が余計に恥ずかしいと言う事をよーく知っているから、『自分、変な事言いましたか?』と素面で聞き返せるのだ。

 

聴いた相手自身が硬直し、恥ずかしそうに紅潮させていれば、最早勝ち確と言っても良い。

 

長年連れ添ってきた彼女(・・)ならば、容易に見抜いてダメ出しとかもしてくるだろうが、生憎この世界に彼女は居ないので、ある意味一安心。少々寂しい気持ちもあるかもしれないが、それは仕方がない。出会いがあれば別れも必ずある。……数多の世界を巡るとはそういう事だから。

 

 

そう―――彼女はこの世界に居ない、のだが。

 

 

 

「やはり、ここにいらしましたのね!! ハクさん!!」

「げッ!!!」

 

 

 

彼女に、似通っている女性と言うモノも……やっぱり存在する。

これは最早ある種の法則のようなもの、なのだろう。

世の中には似た顔が3人いると言う様に……、数多の世界を巡れば、似た波長の女性等、幾らでも巡り合ってしまう、引き寄せてしまうのだ、と諦めの境地でもある。

 

それはそれとして……。

 

 

ばばーーーん!! 

 

 

と、扉を蹴破る勢いで入ってきたのは特徴的な魔女帽子をかぶっている金髪(ブロンドヘア)の美少女の姿。

人差し指をばばん! と指し示しロックオン! と言った様子。別の国、世界によっては指を指す行為はそれなりに失礼~に値する所作なのだが、どうやらここではそういう訳でもないらしい………と、割とどうでも良い事を考えていたその時だ。

 

 

「ゲッ、とはなんですの! ゲッ、とは!」

「??? 僕そんな事言ってませんよ? ねぇ、皆さん。エリーさんの勘違いですよね?」

 

 

【ミンナ、タスケテ~~】

 

そう目で訴えている様にしているのだが……、今の今まで感謝し謝罪をした相手~だと言うのに、明後日の方向に視線を向けている皆さん。

まぁ、ある種仕方がないともいえる。

 

この魔女な彼女は、奈落最強の一角。《フォーナイン》と呼ばれる4人の最強戦力が一角

 

『禁忌の魔女エリー Lv9999』

 

立場的にも力量的にも、早々口にしたりは出来なさい存在……と言う訳でもなく、実は揶揄ったり色々画策したり~~と、割と口に手に出す者が多かったりするのだが、ここはハクに助け舟を出すのではなく、口を噤んだ方が絶対面白い!! とハクからすればはた迷惑な結論を出されているのだ。

 

 

「ほら見なさいな! 皆さんもこうおっしゃってるじゃありませんか!」

「えぇぇ……、皆何もおっしゃって無いと思うんですが……」

「そういう言い訳は良いです。さぁ、今日もいらっしゃってくださいな! 最後まで手伝う、と言質もとれているのですよ」

 

 

ハクは逃げれる訳もなく、エリーに捕まってずるずるずる~~ドナドナドナ~~ と食堂から連れ出されてしまった。

 

 

「……いや、やっぱあの2人面白過ぎる!」

「あのエリー様が、ライト様以外の男性に、ああも面白く絡むなんて……」

「ごはんが進む!! 美味しい美味しい!!」

「ハクさんも、嫌じゃなくて満更じゃなさそうなのが……なんだか尊い!!」

「でも、これ、エリー様に言っちゃったらマジのガチギレするから正直扱いが難しいんですよね~~。やっぱり、ここは遠い眼で見守るのが吉、ですわ!」

 

 

燥ぐ面々。

それをため息プラス苦笑いで見据えるメイド長……。いや、彼女もある種同意している部分があるので、同類だ。

ただ、ハクの事は感謝もしているし、ライトが恩人以上である、と皆に伝えているので、相応の対応をもっているのも事実。

 

 

「頑張ってくださいませ。ハク殿」

 

 

だから、それはそれとしてしっかりと応援するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は奈落――地下訓練所。

 

 

 

「ハクさん!」

「ライトさん。お疲れ様です」

 

 

執務室で調べものをする~と言っていたライトが訓練所へと入ってきた。

因みに、ここにはエリーも隣に居る。何ならあのカイトとヤナークも一緒にいる。

 

 

「「…………」」

 

 

勿論、一緒に居るとはいってもあの2人は生きてはいるが余裕で精神の1つや2つは死んでしまっている状態。姿形はあるものの五体満足とは程遠い状態で放置されている。

 

ヤナークに関しては、別に問題視していないのだが、カイトに関しては別。

エルフ種である事と、何より『ますたー』の情報を持っている事もあって、その情報をしっかりと吐き出ささなければいけないのだ……が、ハクの魔法『無痛地獄(ホワイトアウト)』を喰らってしまって、もうどうしようもなくなってしまっているのである。

 

 

そして、問題なのはハクの魔術。

 

 

魔法、魔術、禁術、精霊術……ありとあらゆる術を極めた禁忌の魔女。

それがエリーの謡い文句。

 

 

ハクに遠い時の彼方? に飛ばされたカイトの記憶の情報を読み取る事が出来ず、エリーは混乱極まっていて、半ばやけになり、八つ当たりもし………、この世に知らぬ調べれぬ魔術など無い! と思っていたプライドがズタズタにされてしまった。かの世界最大にして最強最悪の奈落。その最深部に在るダンジョンコアでさえ、彼女の手にかかって時間はかかったが、どうにかこうにか解析して、全容を明らかにした実績もあって、更に自信を深めた矢先の事なのだ。

 

初めて訳の分からない、意味不明だ、と称したのがダンジョンコア。その時の感覚の再来――――否、それ以上の感覚だった。

 

ハクと言う存在が最早意味不明だ!! と割と暴言めいた事まで言われ始めたので、そこはライトがしっかりとかばってくれた。

 

 

「……本当に億を超える時を経験させた、と?」

「嘘は言いません。僕の居た場所では『一億年ボタン』と言う物語がありまして……、それを僕なりにアレンジして改良……改悪させたのが、無痛地獄(ホワイトアウト)です。発動条件は厳しいですが、決まればこうなります。僕達にとっては一瞬にも満たない時間でしたが、カイトは時の狭間に幽閉されて、何もない世界で億を超える時を経験し、精神が擦りつぶされたのだと」

「むきーーーーー!! どーーりで、何ページめくっても真っ新の真っ白な訳ですわっっ!! 幾ら時間があっても、これではカイトさんの持つ情報にたどりつかないじゃありませんか!!」

「……はい。その節は本当にすみませんでした……。その、エリーさんやライトさんたちの邪魔をする気なんて本当になかったんです………」

 

 

その後もまた叱責されて―――苦笑いをしているライトに止められる、と言うのが最早定番なのだった。

 

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