職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件 作:やっくんYU
場所は奈落の自然エリア。
そこでは主にモンスターたちが幸せそうに暮らしている場所。
この光景の全てを魔術と
この世界では クラフト系、ビルダー系、……自然をも作ってしまう創造系の魔術レベルがかなり高い水準に達しているなぁ……と思えるのだが、更によくよく考えてみればエリーやライトの力がこの世界の水準とはかけ離れているので、一概には言えないだろう。
「……うん、やっぱりここが一番気持ちいい……かな」
ハクは、そのエリアで寝転がって奈落の太陽を身に浴びていた。
奈落のライトの王国。その施設を自由に利用しても良い、と言われているが……やはりこの場所が一番落ち着く。
それも仕方がない事だ。他の場所だとどうしても人目に付く。その結果、色んな人に捕まって大変だったりする。
その筆頭がエリーだったりするのだが……口に出して言ったりはしないが。
「……………」
眼を閉じ、ハクはこれまでの事を思い返していた。
ライトとは、今は本当の意味で話す事が出来ている。
それは地上での通り名ダークではなく、ライトとして認識し話をする様になった事で色々と弊害が生まれるのではないか? とも危惧した面もあった。経験上解る。ライトの力、アレほどの強さを持つ者は、いわば特異点。世界の数だけ存在するその世界で何かを成す存在だと確信したから。……でも、取り合えずは大丈夫だったと安堵している部分もある。
そしてこんな幸せな空間と言える場所なんだけれど、ライトの事を聞いて、それを思い出してしまったら………やっぱり気が沈むと言うものだ。
「……そりゃあ、黒い風のひとつやふたつ、鳴いちゃうよ。……ここも、やっぱり残酷な世界だ」
ハク自身の話を聞かせると、ライト自身も生い立ちから何から何まで話をしてくれる様になった。《種族の集い》と言うパーティに入った時のこと。最初は仲良くさせて貰っていたんだけど、それらは全て虚構だったと言うこと。
全ては、ますたー疑惑のある自分を殺す為だったこと。
奈落と言う最悪最凶最大……最も、と言う言葉が何個もつく様な場所で殺されかけた。
そこで運良く奈落の底まで転移させられ、その場所でライト自身の【
ライト自身の人生はまだまだ序盤も序盤。
たった12歳の子供が外部からの悪意に晒され、酷い裏切りに合い……そして、家族をも奪われたともなれば当然の帰結。
以前、環境がひとを変える———と、ハク自身がミヤに説明したが、まさにライトはその体現者でもあった。あったが故に……覚醒したとも言えるだろうか。
純粋無垢だった少年が、今のあの姿なっているのだから。
「くぉん……」
そんな時、奈落の森林エリアで暮らしている巨獣の一体が近づいてきた。
太陽が遮られて、その巨体はハクを見下ろす様に見据えている。
「おっと……、ごめんね。日向ぼっこの邪魔になっちゃった……かな?」
「――――――」
ハクは、上半身を起こすと、その巨獣……フェンリルにそう聞いた。
フェンリルは首を左右に振ると、そのままハクの隣に座る。
白を極める過程で、テイマーとしてのスキルもある程度上げていたハク。
何かを助けるのに、人や動物、果ては魔物に至るまで区別をする事なく接し続けてきた【ハク】だったからこそ、この世界でもそれが有る程度受け継がれてきているのだろう。
勿論、此処のモンスターたちはライトに隷属。絶対服従・忠誠を誓っているから、そのライトの客人……恩人に対して何かをする、しようと言う訳がない、と言うのが本当な所かもしれないが、それでもある程度は信頼してくれているのが伝わってくるのが嬉しい。
身体を触らせてくれて、撫でさせてくれているから。
「……僕は別にそう言うつもりじゃなかったんだけどね。ほんと偶然の重なり。でも、結果ライトさんが喜んでくれたのなら……苦しんだ甲斐もあった、って思って良いかな?」
「くぉん!」
————真偽が定かではなく、意図した訳でもなく、本当にたまたまだったのに、加えて言えば不完全な形での復活だったと言うのに、ライトは多大なる感謝の意と信頼を預けてくれた。
【
魔法の確認で使用して、その結果完全封印している蘇生系魔術の中での最上位に位置する術。
エリー曰く、この世界の最上位で言う
そんな魔術があるのなら是非見せて欲しい……と、物凄く言われたが、丁重に丁重を重ねて断った。
あんなもんどりうって、七転八倒して、何回か死んだんじゃ? って思った様なヤツをもう一度……とは、ちょっとした確認の為に~とか絶対に嫌だったから。
エリーの諦めてない目が非常に怖かったんだけれど……、そこは何とかライトが間に入ってくれて難を逃れたんだ。
「うぇ……思い出しただけでもゾッとする……。っとと、そうだ、よく一緒に居るケルベロスやフェニックスたちは今日は一緒じゃないみたいだけど、皆はどうしたの?」
「くぉん」
ハクは手をフェンリルの鼻頭に宛がう。フェンリルも目と閉じて擦りつける様にしてその手に触れた。
テイマーとして大切な工程、それは心を通わせる事。これだけで相手が考えている事が解る。助ける事が前提だったハクにとっても必須な力だった。何処が痛い、何処がおかしい、それを知るだけでかなり効率良く処置する事が出来ていたから。
「ふむふむ。………なるほど、アオユキさんに」
「にゃ~」
フェンリルの伝えたい事を読み終えた後、それを理解したと同時に直ぐ傍で猫の鳴き声の様な声が聞こえてくる。
猫耳付きのフードを頭からすっぽりかぶっている美少女の姿がそこに在った。
「お邪魔させて貰ってます、アオユキさん」
「にゃー」
アオユキに対してハクはぺこり、と頭を下げた。アオユキは猫の声マネだけの返事————ではあるが、「問題ない」と言っているのはハクも解っているので、笑顔で会釈をする。
「ここ、本当に素敵な場所ですね。まだこちらの世界に来て日も浅いですが……ダントツ一番だと思います」
「にゃー」
「当然だろう」とアオユキは言っている。
何せ、ここはライトが居る、ライトの国であり、ライトの為だけに存在している場所なのだから。そこでは何もかもが最上位であり、安らぎを齎せる場所でなければ意味を成さない。
一応、仲間もエリーが作ったのは間違いないのだが、唯一絶対神はライトなので、その前では全てが霞む……と言う事なのだろう。
「……それで、僕はアオユキさんの目にはどう映りましたか? フェンリル達を介して僕を視るとの事でしたが」
「…………」
アオユキは今の今まで、ハクにただただ目を細めて猫真似で対応していただけだったのだが、ここで表情が一気に変わる。無表情になって、その視線はフェンリルに向けられた。
フェンリルは、その視線を受けてビクッっ!! と身体を震わせてしまった様だ。
アオユキは『Lv9999 天才モンスターテイマー アオユキ』
当然、如何に強大な巨獣であるフェンリルであろうと、太刀打ちできる相手ではない。そもそも、太刀打ち~~なんて自体考えた事が無い。
そしてアオユキは「何故、ハクに言ったんだ?」 と不満の顔を向けている。
「あ、ああ。ごめんなさい。フェンリルを責めないで。僕が彼の心を読み取ってしまったんで、彼に落ち度は無いです。………あ、いや、安易に僕を信頼しちゃった———って言う点は落ち度かもしれませんが」
「くぉん…………」
尻尾をぺたり、と地に降ろし、頭をだらん、と垂れてしまっているフェンリル。見ているだけで本当に悪い事をしてしまった感に苛まれてしまう。
ハクは、ただ他のケルベロスやフェニックス、一緒に居た3匹の内の2匹が居ないから気になった~だけで、そこまで深く読み取る気は無かったんだけれど、心を通わせてしまうとこういう事にもなりかねない、と新たに注意事項の1つとしてハクの心に刻んだ。
フェンリルや他のモンスターたちと交流する事が有る時は、気を付ける事にしよう。
「―――気に病む必要は無い」
そして、初めて……奈落にきて初めてアオユキの声を、言葉を聴く事になる。
「秘密にせよ。とまではアオユキは言っていない。そして何より落ち度は完全にアオユキ自身にある」
「……アオユキさんの落ち度? ですか」
いつもの穏やか~な目つき。まさに猫の様なのんびりした顔なアオユキとは全くの別。
フードと前髪でその表情がスッポリ覆い隠されている。
「神たる我が主が、貴殿の事を信じるに足る存在である、と。何より大恩のある存在である、とアオユキ達に厳命した時点で、今この瞬間アオユキのこの対応は主に対する不敬そのものに値すること」
「………」
その表情は見えないが、悔しそうな悲しそうな顔をしていることは容易に想像が出来た。
「アオユキは、自制する事をせず、自身の感情を優先させてしまった。……ただ、主が望むままの存在であれば良い、と思っていた筈だと言うのに」
主———ライトの為に生きて。
戦って
癒して
求められて
傅いて
愛して
恋して
寄り添って
鉾となり
盾となり
殺して
殺されて
燃えて
燃え尽きて灰になっても
全てはライトの役に立つ事だけを考えればそれで良い……筈なのに。
「でもそれは、アオユキさんがライトさんの事が好きだから。大好きだから仕方ない事じゃないですか。想いが強いが故に、と言う事だと思いますし、悲観しなくても良いかと」
「…………」
アオユキの言葉を最後まで黙って聞いていたハクはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「何よりも大切で、何よりも愛しく、何よりも敬愛している人だから。……そんな人の傍に、ある日突然
「……仕方ない、では済まされない。何よりアオユキはアオユキを許せそうにない。主の言葉を疑ったのだから」
アオユキは、ライトの事を疑ってしまった事実を何よりも悲観してしまっている。
それは、ハクの人柄をフェンリルを通して知ったからより強く感じているのだ。
天才モンスターテイマーだからこそ、心の底から伝わってくる。善き人物なのだと言う事が、伝わってくるから。
そもそも、ハクと共に在った時のライトの表情。
それが全てを物語ってた筈なのだ。
ハクに対して向ける表情、そして話す事もそう。食事をとる時もそう。あの笑顔があまりにも眩しく……、あまりにも
アオユキ自身の鋼の意志をも覆いつくしてしまう程に。
そして、ハク自身も伊達に世界を渡り、数多の物語を介してきた訳ではなく、アオユキの事情、内心の大体を察する事が出来た。
と言うより、どちらかと言えば非常に解りやすい分類でもある。
何せ、ここの世界の皆は、本当にライトの事が好きで好きで仕方がないのだ。
だから心配にもなるし、アオユキの言う通り意に反する結果になろうとも、その道を突き進んでしまう。
特に、ハクが視た限りフォーナインの皆は他のメンバーよりも顕著に表れていると言って良い。一部例外はあったが、基本的にはライトに直接止められなければ同じ様な行動をとっていただろうと確信できるから。
「では、こうしましょうか」
「………?」
だからこそ、その解決法も導き出せると言うモノだ。
「実は僕、ライトさんに【なんでもお願いを聞いてあげる券※】を頂いているんです。……正直、恩を感じてくれていて大変恐縮で。僕自身は偶然の産物だと思ってますし、あのカイトの件もあって、そんな大層なもの、貰えないと思っているんですが、使わせてもらおうかなと」
※ 回数制限特になし。肩たたき券の超上位互換。勿論ライトの可能な範囲である事に限り。
アオユキはハクの言っていることの真意がまだわからず、ただただ黙ってハクを見ていた。
「なので、僕がライトさんに願います。「1度だけアオユキさんに(常識的な)お願い事をする権利」を下さい、と」
「…………」
「それをライトさんが受理していただけたのなら、僕がアオユキさんにこう願いますから。「どうか自分を赦してあげてください」と」
間接的ではあるが、唯一絶対神であるライトからの命令に等しい事だ。
ならば、アオユキは聞かなければならない。何よりこれ以上不敬を重ねたくないアオユキにとって選択肢は無いも同然なのだから。
「………にゃー」
「甘い、ですか?」
「にゃぁ」
フードの先を摘まみ、アオユキは目線を隠す様に深く被りなおす。
モンスターを介して、探ろうとしてきた相手に対し、何故ここまで気を遣うと言うのか……。解らないと思う以上に、ハクと言う人物が存外甘すぎるとアオユキは思ったのである。
「そう思われてもかまいません。……やっぱり僕は、笑顔が好きなんです。僕の出来る事があるなら、惜しまないと言うだけです」
あの
死の気配から解放された。
他にも蘇生する事で涙を流し抱き合って喜ぶパーティも見た。
カイトらの事は今でも腸が煮えくり返る程度には許せないし、例え邪魔になったとしても報いを受けさせることを厭わない。ある程度気が楽になり言い方は悪いが発散だって出来る……が、やっぱり前者が性に合っている。
ハクはそう言う存在……だったから。
「ええ……っと、本当に行くんですか?」
「はいっ! ……ライトさんがダメだ、と言うなら無理は言いませんが……」
「いえいえ。ダメと言うつもりは無いです。ただ、この奈落は恐ろしく広大なダンジョンですから……」
後日。
ハクはライトに願い出た。
『奈落』のダンジョンを冒険してみたい、と。
冒険者として踏破してみたい、と。
ライト自身もハクの願いならば聞ける事なら何でも聞き入れたい。簡単には返しきれない程に恩義があるから、と思っていたのだが……、まさかその願いがこの奈落ダンジョンの踏破だとは思いもしなかったから、呆気に取られてしまっていたのだ。
「やっぱり、僕も男ですからね。『世界最大』のダンジョンが目の前にある……となったら潜ってみたい! と思っちゃったんです」
ぐっ、と拳を握って何より爽やかな笑顔でそう言われては……断るに断れないと言うもの。
ハク自身の力量を疑う訳ではないし、鑑定で分かった面もあるにはあるのだが……、今持ちうる戦力を賭したとしても奈落の制覇は未だ敵わず、エリ―が1年以上の時を費やして漸く転移阻害をコントロール出来たからこそ、地上に降り立つ事が出来た。
それが出来なかったらいまだに外に出る事は叶わなかった事だろう。
「はっはっはっは。確かに気持ちは解る。奈落は男心を擽るものがあると言うものだ」
「ですよね! ジャックお兄さん」
ハクと拳をこちんっ、と合わせるの長身金髪ツーブロックの男ジャック。
『Lv7777 鉄血鉄壁 ジャック』
奈落には女性比率が圧倒的に多くて、数少ない男性の内の1人。ゴールドと一緒に酒を酌み交わしていた時に話をして意気投合。
兎に角男気ある兄貴肌で面倒見の良い人だ。
「うーん、ジャック兄が言う事も解るんだけど……、僕としてはもっとこう……お礼! って言える事をハクさんにはしたいんだ。でも、こう―――なかなかコレって言うのが無くてちょっとやきもきしてて」
「いえいえ。そんな風に思わないでください。僕自身はこれでも凄く感謝をしてますから。まだここにきて日も浅いのに、沢山の世界を見せてくれたんですから」
ライトと知り合えた事で、沢山繋がる事が出来た。このジャックもその内の1人なのだから。
「ご主人様が心配なら、あたいもハクについていくぞ!! まだまだ案内出来てない部分だって沢山あるからな!」
どんっ! と胸を叩くのはフォーナインの一角
『Lv9999 真祖ヴァンパイア騎士 ナズナ』
背が低く銀髪に深紅の瞳、アンバランスだと言える程の立派な二つの巨峰。奈落最高戦力と呼ばれ、奈落一の元気美少女である。
「ご主人様の大恩人なら、あたいにとっても大恩人! しっかりバッチリ守ってやるぜっ!」
「ナズナ様がそういうってんなら、俺様も兄貴分として同行したいな。弟分の戦いってのをしっかり目に焼き付けときたい」
「あははは。お二人とも凄く光栄ですが、お仕事の方を優先させてくださいね?」
本当は1人でダンジョン探索、ダンジョン冒険に出る気満々だったが、なんだか大所帯になりそうな予感。ハクにしてみても、パーティで奈落ダンジョンに赴くのは好ましい限りではある……が、皆にもそれぞれの仕事がある。それを自分の願いと言うだけで、中断させてまで~とは流石に思ってなかったから。
「うーん……。その辺りはハクさんの言葉じゃないですが、気にしないでください。調整は全然効きますし、何より――――」
ナズナはめちゃくちゃウズウズしている。まてと言われている子犬の様だ。
行く気満々なのがよく解る、と言うモノか。
「ハクさんは、ソロで潜りたい、と言う訳ではないんですよね? 迷惑だったりは?」
「そんな迷惑だなんてとんでもない。ここにきて皆さんには良くして貰っているので、こちらがかけている~と思ったとしても、その逆はあり得ないです」
ナズナとジャックの2人が同行する事に関しては問題はなさそうだ。
「それじゃあ、ジャック兄とナズナ。よろしく頼むよ」
こうして、急ごしらえ感はあるが、前衛2人とヒーラーの3人パーティが結成したのだった。