職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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限界突破

 

 

「ヤナークの情報は絞り出せても、カイトの情報は未だ兆しが見えない……ね」

「はいですわ。……整合性を取る為にもカイト本人の情報も掘り起こそうと躍起になっておりましたが……。本当、申し訳ありませんわ。(………あの方の力、ほんっと妬ましいですわ!!)」

「エリー……そこまでにしておいて下さい。ヤナーク自身の記憶と質疑判明の魔術・詰問による確認作業でも新たな情報は得られているじゃないですか」

「わ、解っておりますわ!」

 

 

ムキーーー!! とエリーは歯を喰いしばって悶えた……が、メイの言葉でどうにか平静を取り戻す。

 

ライトはそんなエリーを見て朗らかに笑う。他の妖精たちが話している通り、エリーがライト自身以外にこうまで数多の感情を顕にして、話をするなんて本当に珍しい事なのだ。ライトからすれば、自分以外の男と———と少々邪な感情を抱きそうな気もしなくもないが、実はそうはならない。あまりにも新鮮であることと、やはり自分自身も彼には想う所が多く有る為逆に嬉しかったりするのだ。

 

それがエリーにとって良いのか悪いのかは別にして……。

 

メイ自身は飄々としている。エリーが彼の方に目が向いてくれているのなら、或いは好都合とも思っている節があったりするとかしないとか。その辺りはメイド道を極めしメイのみぞ知る内、である。

 

ライトは纏められた資料をメイから受け取って目を通した。そして、顔を顰める。

 

 

「……ある程度、予想はしていた事が多いけれど、こっちは予想外だったね」

 

 

カイトが言っていた『さぶますたー』と言う単語、それについてはヤナークも知っていた。

 

カイト自身の記憶から揺り起こし、掘り起こしたかった、と言うエリーの気持ちも解るが、ヤナーク自身がダークエルフ種の中でもトップの研究者を自称していた所から解る様に、ただ虚栄心の塊と言う訳ではなく、それなりに情報は持っていた様だ。

 

 

『さぶますたー』とは『ますたー』の血を引く子孫。

強い力を持っていたり、魔力が高かったり、レベルが上がり易かったり、と言った特徴があり、それをヤナークは人為的に、意図的に種族による成長限界の突破を目論んでいた。

つまり『ますたー』や『さぶますたー』に匹敵する猛者(バケモノ)を量産しようとしていたのだ。

そして研究の段階で人種(ヒューマン)を実験台にして、非人道的な実験を行い続けた結果、突き進む道は破滅への一本道となってしまったのである。

ただ、ハクが犠牲になってしまった人種(ヒューマン)達の無念を、怒りを、悲しみを晴らそうとしてくれた。それが少しでも届いてくれたら、と切に願う。……いや、届くとライトは信じている。

 

 

それはそれとして、特筆すべき点は資料にかかれている事。

 

 

「各国が『ますたー』を警戒している理由が、『野放しにした場合、世界が滅ぶ可能性があるため』? ……正直、よく意味が解らないな。「国が滅ぶ」なら解る。けど、「世界」ともなれば話は別だ」

 

 

ヤナークだけの情報。真偽のほどは確かではないのは間違いないが……それでも、まるっきりの虚言であるとは到底思えない。少なからず、『さぶますたー』を名乗るあのカイトと共い居た男なのだから。

 

 

「推測の域は出ませんが、私達の予想は『ますたー』が強い力を持つため、各国が軍事バランスをとる目的で探し、懐柔しているものだと考えていました。例えばますたー疑惑が当初あったあのハク殿の力。あの蘇生術は類を見ぬ魔術。戦地にあの力が加わればまさに『不死の軍勢』『不死身の兵士』が誕生します。例えますたーでは無かったとしても、各国の首脳であれば存外無視出来ない存在かと」

「うん。ハクさんの力は確かに無限ガチャで力を蓄えて、レベル9999まで上げた僕でも凄いと思うよ。……そのクラスの力を持つ存在が現れて、それを恐れた外部が、【ますたー】と呼び始めた。――位には想像はしてた。………でも、どれだけ強くてもそれはあくまで個人の話だ」

 

 

ライトは少しだけ考えを纏める。

確かに凄いのは凄い。自分の求めるますたーとハクは絶対に違うし、同系列に見たくもない、とも思っているが、仮定の話。あのレベルの力を持つ者だと仮定して考えてみれば、色々と推察が出来る。

 

けれども、世界が滅ぶ~~と言うのはあまりにも荒唐無稽だ。

 

 

「―――つまり、ありとあらゆる命を根絶やしにする、って事。……そんなのあり得るのかな? それを行うって言う『ますたー』の目的や必要性もよく解らないし……、にわかには信じがたい話だね。……2人はどう考えてるの?」

「はい。私達も同様の意見です。ヤナーク1人の記憶である事も考慮し、現時点では情報が不足して判断はつきかねるかと」

「私は引き続き、可能な限りカイトの記憶の中を網羅してみますわ。……ただ、それよりも情報の根源であるエルフ女王国へテコ入れした方が早い………とも進言しておきます」

 

 

魔術で後れをとってしまったエリーは断腸の思いなのだろう。

でも、有益性を鑑みれば間違いなくカイトの最低でも億を超えると言う時の記憶を掘り起こすより、同じエルフ種である国に情報収集した方が大分早い。

メイも何とか頑張った、と一定の評価をエリーにあげていた。……エリーは嬉しくないと思うが。

 

 

「特に、エルフ女王国の最上位にいる『白の騎士団』団長の名です。ヤナークの記憶によれば、カイトはその団長から聞いた、とありました」

「うーん………、正直エリーが何度も禁術で記憶を探そうとしても広大な海を漂う一枚の葉を探す様なもの。……難しそうだし、術者本人であるハクさん自身にも出来ないって言われてる。ヤナーク自身ももう何も出てこないなら———対処した方が良い、って思うんだけど、エリーはまだ粘りたい?」

「う………」

 

 

これ以上時間をかけるのは不利益……。

 

 

「あはは。聞いてみただけだよ。大丈夫。エリーのしたい様にしてくれて良いから。……そもそも、ハクさんによれば完全に精神は擦り減って消滅。全く無反応。どんな痛みにも答えない。完全な抜け殻だけが残されている様な状態らしいから、これ以上の痛みはカイトには無用だ。放置していても何ら問題は無いしね。……無痛が何よりの拷問になりうる、か。……うん。今回のは僕も勉強になったよ」

 

 

ありとあらゆる痛みを、その極限を、死にたくても死ねないように。ライト自身が復讐対象である獣人ガルーに施した。それを超える苦しみを与えるにはどうすれば良いか? 

それを考えていた時期もあった。でも、ハクが齎した無の絶望はまた一線を博す。

 

 

「―――それはそれとして、カイトは兎も角ヤナークには最後の罰が必要だ」

 

 

そう言うと、エリーは解っていたと言わんばかりに指を鳴らせて空間を繋げた。

茨の地獄で磔にされているヤナークとカイト。カイトはライトが言う様に完全に無表情。痛いのか痛くないのかさえ解らない真っ白な状態。ヤナークは時折痙攣し、顔中、身体中から体液をまき散らしている所を見ても、まだ精神は残っているだろう。

 

 

「――—ハクさんが救ってくれなかったら、多くの人種(ヒューマン)が犠牲になっていた。でも、それはヤナークの罪とは関係ない。人種(ヒューマン)大量殺人の罪を以て、ヤナークに死を与える」

 

 

ライトは1枚のカードを取り出す。

 

 

「解放『SSR 亡者たちの宴』」

 

 

召喚された人非ざるものたち。

それらが一斉にヤナークへと迫る。生者を求めてその身体を貪り始める。

生きながら喰われる苦痛は世の地獄と言って差し支えないだろう。

 

 

「……亡者たちに見向きもされない、とは」

 

 

カイトは直ぐ隣でヤナークが喰われ続けていると言うのに、何ら反応をみせる事は無い。

亡者たちも同じくカイトには一切興味が無い様だ。攻撃の対象をヤナークに絞ったとはいえ、飢餓状態に等しい亡者たち。流れ弾の様にカイトに少なからず向かうかな、と踏んでいたライトは肩透かし状態だった。

 

 

 

「……これで、殺された人達の無念。生き返らせる事が出来なかった人達の無念が少しは晴れてくれれば……と願うよ」

「「……はい」」

 

 

 

 

沈痛な面持ちで黙祷を捧げるライト。メイとエリーも同様だった。

 

 

 

「さて、他にも得られた情報が色々あるが、これらも吟味していかないとね」

「ライト神様。お耳に入れたいご報告があるのですが」

「報告? なんだい? 話してくれ」

「はいですわ! 以前、ライト神様から————」

 

 

エリーが笑顔で話しかけようとしたその時だ。

 

 

 

 

 

 

「ご主人様ぁぁぁぁ!!!」

 

 

ばぁぁんっっ!!

 

 

 

 

と、執務室を蹴破らん勢いで扉を開いて入ってきたのはナズナ。

エリーが意気揚々と煌々とライトに話そうとした矢先に、思いっきり背中から突き飛ばされた様な感覚に見舞われる。

 

メイも、似たような事はこれまででも何度か合ったので、『またですか……』と、頭を抱えるだけに留まっている。

ムードメーカーでその明るいナズナの性格は良い雰囲気を齎してくれるのは間違いないのだが……、礼節と言うモノをそろそろ覚えて貰いたい。……と、普段なら幾ら何度もあったとはいえ、注意をするメイだが、今は一呼吸置いている。

 

 

「ナ・ズ・ナさんッッッ!! あなたと言う人は!! そこになおりなさい!!」

 

 

エリーはただただ憤慨。

ライトとのひと時の邪魔、何よりカイトの件で不甲斐ない結果を見せてしまっている事を挽回する最高の報告が出来る~と思っていた矢先にこの暴挙? なのだから。

いつものナズナだったらエリーに怒られたら多少は委縮するんだけれど、何だか聞いていない様子だ。

 

それも不思議なのだが、それ以上に思うのはナズナは別仕事中だと言う事。

————まだ未踏破の奈落ダンジョンへ赴いている筈だったからこの場に現れたのがおかしい。

ハクとジャック、ナズナの3人で攻略に向かっていた筈だったから。

 

 

「え? ナズナ? どうしたの?」

 

 

ライト自身もメイと似通った感性である。

因みに、慕ってくれているのも、傅いてくれているのも、好ましい反面、もっと自然体で接してくれても良いのに、と日々思っているライト。

復讐の邪魔さえしなければ大体の事に目をつむるつもりだった。

 

一応、体裁があるので注意の1つや2つするつもりも無い事はなかったが……、冒頭にもある通り、ナズナが何故ここに居るのか? の方が気になっている。

 

 

「ご主人様!! ごめんなさいっ! ちょっとエリー貸してくれないか!!」

「はぁっ!? ライト神様の前で粗相を働いただけでなく、いきなりやってきて何を言っているのですか!!」

「凄いんだって!! ほんと、いつもよりもメッチャあたい力が出せて、それで手応えが無くなったんだけど、なんか相手モンスターもメッチャパワーアップしてきて! それでも手応えが欲しかったから、ここはあのエリーの【どこでもなドア魔法】が必要なんだ!!」

 

 

ハッキリ言って何をいっているのか解らない。

エリーは憤慨、ライトは苦笑い、メイは呆れ顔。ここにアオユキが居たらどういう対応を取るか気になる所でもある。

 

 

「ちょっと取り合えず落ち着いて。凄く興奮してるみたいだから、僕も気になってきたよ。エリーも今はナズナの話を聞く方向で纏めようか」

「……はい。ライト神様がそう仰るのなら」

 

 

まだ憤慨し、正座をさせようと実力行使に出ようとしたのだが、そこはライトが諫める。

ナズナがエリーを使って何をしたいのか、ハッキリさせるために。

 

 

「そもそも、ナズナはハクさん、ジャック兄と一緒に奈落のダンジョン……G-650番ルートを探索していたんじゃなかった?」

「あ、その……し、仕事はちゃんと出来たぞ!! ちゃんとしてきた筈………です」

 

 

ハクと一緒にダンジョン巡り。

これをナズナたちに一任した以上、仕事に分類されている。(と、本人もそう思っている)

なのにも関わらず、、ダンジョンではなくこの場に居るのは仕事の放棄ではないか……? と今更ながらライトに改めて聞かれてナズナは顔を青くさせたのである。

 

そして遅れた形でジャックも執務室へと到着。軽くノックをして、ライトを始め皆がジャックの訪問を視認したと同時に、少しほっとした。

これで、ナズナが何を言おうとしているのか、何がしたいのかがハッキリする、と思ったからだ。

 

 

「それは俺様の方から説明をしよう。ナズナ様は興奮しっぱなしで中々細部まで説明しきるのが難しいかもしれねぇからな」

「うん。ジャック兄。よろしく頼むよ。……あれ? それでハクさんは?」

「ハクは、今妖精メイドたちに捕まってる。何でも料理の審査をして貰いたいとかなんとか。何でも熟すあの姿は兄貴分としても鼻が高い」

 

 

あぁ~~、と皆が苦笑い。

ハクが妖精たちに捕まって色々使われているのは、最早奈落の中では周知の事実。最初こそ迷惑じゃ? と気を使ったりもしていたのだが……本当に楽しそうにしてくれていた。自然体だったから、何もしない、聞かない様にしている。

 

 

「じゃあ説明するぜ」

 

 

ハクの場所も解った。特に問題がある、と言う雰囲気でもない。

だから、安心してジャックの話を聞く事にした。……しっかり落ち込んでしまったナズナにフォローを入れ直して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈落 最下層近郊 G-650ルート

 

 

主にモンスターはスネークヘルハウンド、モルターバイソン、クリムゾンレッドの3種を中心に、たまにプチオロチ。Lv1000~4000。個体によってLvはまちまちだが、大体その辺りで頭打ちだ。

 

確かに、地上のダンジョン、山岳、森林、砂漠地帯等で出てくるモンスターとはレベルの桁が違う。流石は世界最大最悪最強を冠するダンジョンだろう、と思うんだけれど……。

 

 

「あははは……。前衛の2人が強過ぎて、歯応えがありませんね」

 

 

ハクは非常に楽をさせて貰っていた。

ナズナが先陣切って突撃していってしまって、その余波で大体が爆散する。時折その暴風の如き攻撃から逃れる事が出来た個体も、ジャックの拳で爆散させられる。

あまりにも2人が強過ぎるのだ。

 

 

「うーん、ここ以上に歯応えのある相手ってなると、ご主人様を含めたフォーナイン皆との模擬戦くらいだと思うぞ! 帰ったら頼んでみるか? ハク! あたいも付き合うぜ!!」

「あははは。ありがとうございますナズナさん。でも僕は別に戦闘狂(バトルジャンキー)って訳じゃないし、強敵との戦いに餓えてる!! と言った訳でもないので、大丈夫です。ただ、ちょっと口に出しちゃっただけで……」

 

 

ここは世界最高のダンジョンだ。

それも未知のダンジョン。どうしても楽しみ、好奇心が出てくると言うモノで、その楽しみの1つが敵モンスター戦だった。だから……まぁ仕方ないのである。2人が強過ぎ。

 

 

「戦いで手ぇ抜くのはオレ様の主義に反するからなぁ。ま、弟分の気持ちも十全に解るってなもんだ。……んで、次の獲物は譲るって形でどうだ?」

「いえいえ、1つアイディアが浮かびましたので、そっちを試そうかな……と」

 

 

ハクは少しだけ考えた後———ナズナとジャックに向かっていった。

 

 

「モンスターたちにバフを掛けても良いですか? 高難易度仕様にしてみたい、って思いまして」

「ばふ? 支援を賭けるって事か! ……モンスターたちに??」

「ほう? そりゃ想像してなかったな。相手が弱過ぎるなら逆にこっちに見合う様に強くしてやろう、って事か。少々強引な気もするが、合理的でもある手法だな」

「はい。後はモンスターのレベルも上げれる(・・・・・・・・・・・・・・)ので、それも良いかもですね。実は、この手法はちょっとしたレベル上げにもなるんですよ。地上で一緒に居た人達と戦った時も……ちょっとズルな感じがしましたが、こそっとモンスター相手にレベルアップのバフを掛けて倒して経験値を頂いたりしてまして」

 

 

面白そうだ、と笑っていたナズナ———だったが、ジャックがこの時表情を変えた。

 

 

「あん? ハク。お前さんの支援(バフ)は、攻撃力・守備力・俊敏性と言った基本ステータスの上昇だよな?」

「?? はい、そうですよ。用途用途に応じて重ね掛けしたり、全体効果を仕掛けたり~って感じです」

「じゃあ、聞き間違えか? レベルを上げる、ってなんなんだ?」

 

 

ジャックが聞きたかった事。

それは、ハクが言っていたモンスターのレベルを上げれる。と言う話だ。

地上では馬鹿で外道なダークエルフ種のヤナークが意図的に才能限界値突破を掲げて狂気の実験を多用していた、と言う話だが……、ハクのそれはどういう事だろう?

 

 

支援魔術はこれまでに何度か受けた事がある。ハクの専売特許と言う訳ではなく、簡易的なモノからエリーの様な高度な魔術、そしてライトのカードの様な術。多岐に渡って経験があるが、一様に言えるのは、それは能力値を底上げする事であり、ステータス レベルそのものを上昇させるなんて事は出来てなかった。

同じ能力・同じLv1000同士の戦いで、バフを掛けているか居ないかで勝敗は大きく変わるモノだが

Lv1000(バフ有)vs Lv1000↑(バフ無)だったら確実にレベルが高い方が勝つ。

 

それくらいにはレベルの差は重要な要素。そこに付ける為に創意工夫、戦術を以て攻略をしていくのだが……。

 

 

「そのままの意味ですよ—————っとと、論より証拠、ですね」

 

 

ハクはきょとん、としつつも新たなモンスターが湧いて出てきたのを確認して手を掲げた。

 

 

 

「――漲る力よ、内より湧き上がれ」

強制強化(ジ・エネル)

 

 

 

モンスター……スネークヘルハウンドの群れ。

数が多いのも丁度良い。多少レベルが上がる程度では、焼け石に水なくらいの力量差があるから。

 

身体が金色に光ると、まるでパンプアップしたかの様に身体が盛り上がった。それは不自然な強化……では無い様にも見える。いわばあのスネークヘルハウンドが出来る出来ないは置いといて、身体を鍛え上げレベルを上げたならあの姿へ進化してそう……な気がするのだ。

 

 

「こういった感じで、相手のレベルを一定期間上げる事が出来ます。流石に永続的なレベルアップは出来ませんが、上がってる間に倒すとそれ相応の経験値を得られるんです。……正直、先ほどズルだって言った通り、この手のレベル上げはレベルが上がったとしても本人の為にはならないので、地上ではあまり使ってません、と言うのが本当の話です」

 

 

ハクの言葉を耳に入れつつ……ジャックは相手を『鑑定』をした。

スネークヘルハウンドは基本Lv1000。多少前後してもその程度。だが、この相手は———。

 

 

「こいつは驚いた……。Lv1500だ。あの蛇の同種で見た事無ぇ数値だ。凡そ1.5倍上昇か」

「お、おお! 何かちょっぴり強くなった感じ? がするかもだぞ! わからんけど!!」

 

 

ナズナは難しそうな話をしている~~と判断していたので、頭に幾つもの【???】を浮かべていたのだが、ジャックが鑑定してそのレベルを口にした事で大体何をしたのかを察した。

 

 

「あはは。術のデメリットなのか、そう言う仕様なのか……、この魔法はモンスター相手だと効力が伸びるんですよね。その辺はよく解ってないので」

「へーー。ん? ちょっと待てハク! あたいのレベルは9999のカンストだけど、ハクのばふなら更に上がるかも、って事なのか!?」

「ん………、基本青天井なので………多分、ですが」

 

 

 

実はレベルの仕様が以前の世界とこの世界とでは違う。

ハクが居た世界では際限などない。アップデートを繰り返した結果、どんどん上方修正されていき、結局はカンストする機会が無かったから。

だから、絶対とは言えない、とハクが言うと、ナズナは目を輝かせた。

 

 

「ものは、ためし! ってヤツだな! やって見せてくれ!!」

「え? ただでさえ無敵状態なんですけど、更に力を入れます?」

「おう! 試してみたい!!」

「わかりました。やって見ますね」

 

 

ダンジョンの難易度を上げよう! と言う話から派生したのに、元々最強な自陣前衛を鍛えたら本末転倒……だと思うんだけれど、ナズナは物凄く楽しそうにしているから、とハクは承諾。

元々最強の力を持つナズナだ。……その更に上を見てみたい、と言う向上心もあるのだろう。その気持ちはハクにだって解るつもりだ。

例え短い時間だったとしても、レベルと言う枠を超えて強くなると言うあの感動。……2度目だけど解っているつもりだ。

 

 

 

 

 

 

「―――お、おお、おおおお!!!??」

 

 

 

 

 

 

そして、ナズナを強制レベルアップ。

元々Lv9999のカンスト状態だったステータスは、『Lv*****』となってしまった。

 

 

 

「あ、ジャックお兄さんにもバフ掛かってますよ」

「……ああ、実感してる。感じた事ねぇ程の力だ」

 

 

 

鉄血鉄壁ジャック そのレベルは Lv7777 のラッキーセブン。

だが、鑑定結果は『Lv*****』である。単純にモンスター同様に1.5倍上昇であるなら

 

ジャックは『Lv11700』

ナズナは『Lv15000』

 

大体この辺りとなるだろう。

詳細がハッキリしてないので確実にとは言えないが。

 

 

 

「うわあああ! すげーーすげーーー!!!」

「あ、ちょっとナズナさ—————」

 

 

 

 

興奮しきったナズナが突っ込んでいってしまった。

確かにスネークヘルハウンドたちは強化された。

強制レベルアップに加えて、その他バフも機能している。

 

でも、多少強めの蟻がいた所で鬼神の如き強さを得たナズナに敵う訳もなく……、奈落モンスターたちにとって、Lv9999で無双していた時よりも更に悲惨な結果になってしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があってな。ナズナ様はより歯応えのある相手と戦いたい、と言ってエリー様の禁忌魔術を思い出したそうなんだ。あの『悪夢召喚(カシマール・サモン)』で召喚された相手に、ハクの出鱈目な超強化(バフ)をかけたら面白い事になるから、……との事だ」

 

 

「「「………………」」」

 

 

 

話を聞いた皆は暫く思考停止してしまった。

その中で一番先に始動出来たのは当然エリー。

 

 

「あ、あの方は、あの方はぁァァァ……!!!!」

 

 

自分にも出来ない支援魔術。いや、支援魔術なんてカテゴリーに入れたくない部類。

 

 

「ナズナさん!!!」

「うぅ……、ご、ごめんよぉえりぃ……。ちゃんと、ちゃんと仕事する、ってご主人様と約束したのに……」

「はやく行きますわよ!! ハクさんの事ですわ! どうせ食堂ですわね!!?」

 

 

エリーは首根っこを引っつかまえた。

 

因みにハクの事~と言うより、妖精たちが連れ込むのは大体そこだから、とだけフォローを入れておこう。

 

 

「ライト神様とわたくしたちフォーナインのレベルがカンストだと思っておりましたが、それを覆す定説が起こりましたわ。故に、確認をしたいと進言致しますがいかがなされましょう?」

 

 

ライトに許しを得ようとしているエリーだったが、本人の中では最早決定事項になっている様にしか見えない。

 

でも、ライトは勿論、メイでさえも驚愕の事実を知って、それを体感したいとも思っているので断る理由が一切ない。

ただ、物凄く興奮しているのが解る。この目は、初めてハクの蘇生魔法を知った時に匹敵する。いや、それ以上かもしれない。

極上の餌を前にした捕食者の様な目をしている様にも見える。

 

 

 

 

「あ、うん。でも無理強いは駄目……だよ? 優しくね?」

「当然ですわ!! 全身全霊を以て、接し対応させて頂きますわ!!」

 

 

 

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