職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件 作:やっくんYU
「えええッッ! ハクさん!?」
「……………その、捕まってしまいました………」
「お越し頂き、感謝致しますわ! ライト神様!」
ぐーるぐる巻きの簀巻き状態の様にされてしまっているハク。
何処か哀愁を漂わせている様にも見える。
そんなハクを魔法で捕縛しているのはエリー。物凄く良い笑顔だった。
そんな彼らをライトが目撃したのは訓練所での事。
そこにはエリーを始めとして、ナズナ、メイ、ジャックとあの場に居た面々が揃っている。
加えて何処からか聞きつけたのか、アオユキもいつの間にかやってきて、ただただ苦笑いをしていた。
流石にライトは慌てている様子。
何せ、ぐーるぐる巻きの簀巻き……
「ちょ、ちょっとエリー! 僕は優しくって言ったよね!? なんで捕縛して連れてきてるの!? しかも【
「ええええ!!?」
まさかエリーは怒られるとは思いもしなかった……のは少々どころかメチャクチャ可笑しい。勿論いつものエリーであれば、の話だが。
魔術……それも
これは単体しか拘束出来ないが、その力は凄まじく、エリー曰くフォーナインのメンバーでさえ一時拘束出来る代物。
それを恩人であるハクに対して使った~ともなれば流石のライトも心中穏やかではいられない。
いつものエリーじゃないとはいえ、ライトのその心の機微を感じる事は出来たらしく、慌てて弁明を始めた。
「ち、違いますのです、ライト神様! そ、そう! ハクさんはその、喜んでおられたのです! 今もまさにそう!! 最大級のご対応をしようと模索していた矢先のこの提案————………実はこのお方は縛られる事で快感を見出す特殊な癖の方だった、と言う訳で————」
「え? 特殊な癖?? そうなんですか……?」
とんでもない事をエリーは言い出した。
哀愁を漂わせていたハクだったが、即座に覚醒する。
「ちょっ!! えええ!! なに言っちゃってるんですか!?」
覚醒と同時に慌ててハクはエリーの拘束を解いた。
するり……と、突然軽くなる感覚に驚く間もなく。
「ちがいます!! 僕はそんな趣味持ってませんから!!」
ライトに近づいて顔を赤くさせながら必死に叫ぶハク————。
そんな彼を背後で見ていたのは妖精たちである。
一体いつの間にこの場までやってきていたのか……集団で動いているのにも関わらず見事な隠形である。
「あのエリー様の拘束魔術をあんな簡単に抜けましたわっ!」
「という事は、きっと間違いありませんわね! 拘束を解けるのにそのままにしていた、と言う事はそう言う事ですわ!」
「全員一致故に賭けとしては成立致しませんが……、良いモノを見せて頂きました。凄く
「なるほどなるほど、あの方はMの属性強し……ふむふむ。ライト様がもしもS————ならば……フヘヘ」
「グヘヘ……はかどりますわぁぁ~~、暫くの間、実にはかどりますわぁぁぁぁ~~~」
キャーキャーとナイショの話~とは思えない程の声量で黄色い声を上げ続ける皆さん。隠形で付いてきたのではなかったのか? 隠れているつもりなのか?
と、思う間もなく、ハクは更にギョッ! とした。
「ちがっ! ま、まって! ほんと違いますからっっっ!!」
ぴゅ~~!! と蜘蛛の子を散らす様に逃げて行かれた。
もう明日には……、いや、今日中には奈落中に広まっている事だろう。ハクの属性が一体なんなのか。
「ぅぅ………ち、ちがうのに」
がっくし、と肩を落とした。
哀愁が再び周囲に漂う。実はこういう時に止める術がない事くらいハクだって解っている。
かと言って、実力行使で強引に止める~と言う空気じゃないのも解っている。
そう言う系統の
でも、それはあくまでゲームの世界で役割を持って行ったイベント。
ハクとしての役割を全うしている今の自分は決してゲームなどではなく、リアル。
変な性癖を流布するつもりは毛頭なかった。あの手の女性らの拡散能力は現実世界でのSNSに余裕で匹敵しそうだから、もうどうしようもない……と、項垂れた。
「ち、違う~って事は無いでしょう? ハクさん!! 彼女たちではありませんが、こんな簡単に私の魔術を抜ける事が出来るのであればわざわざ捕まらなくても良かったじゃありませんか!!」
「…………いや、それは、そのぉ………」
エリーの言い分も尤もだ。
拘束魔術から逃れられると言うのなら、わざわざ捕まって大人しくしたりはしないだろう!? と言う疑問点は御尤も。
勿論、それ以上に悔しく腹立たしく思っている~と言うのは当然の話。
でも……ある種仕様が無い、と言うハクの判断も間違いではなかったりする。
「エリーさん相手だったら、大人しく従ってた方が良い、って僕なりの経験則と言うか……色々と総合的に判断した結果……なんですよ。だから嬉々として受け入れた訳じゃなくてですね……、そもそも会話もそこそこにいきなり魔術使ってきたの、エリーさんの方じゃないですか」
「ぅ……」
色々と論破出来た気はするが……それでも、どよよ~~~ん……とするハク。
流石にいたたまれなくなったのか、その後暫くはハクのフォローに回った。
その後は、アオユキに背を叩かれ、慰められたり? ナズナの元気? に救われそうになったり、ジャックやライトも同じ様にフォローに回るのだった。
『ハクさん!! お話がありますわ!!』
『うへぁっ!!? エリーさん!!?』
『ハク~~………あたい、しごと、できてなかったのかなぁ……?』
ばばんっ! といつも通り現れたエリーとナズナ。
例によって、エリーには苦手意識を持ってるハク。
ナズナの悲しそうな表情が入って来ずに、兎に角エリーに身構えている。
また色々と無理難題を~やら、色々研究を~~となるのか、と。
『ハク殿! こちらを御賞味あれ!』
『今度こそ!!』
料理の味を見てもらう~と、待っていた妖精たちが夫々持ってきてくれた。
これはチャンス! とハクは思って。
『えっと、少し待っててもらえませんか。エリーさん。ちょっと僕は皆の監督をしないといけない————』
『そんな暇はありません!! 今すぐですわ!!
『ふげげっっ!!』
無数の茨がハクの足に絡まり、そのまま顔面強打。おまけに吊るしあげられる。
『では皆さま。ハクさんを借りていきますわね!』
問答無用のエリーの迫力。
有無を言わさぬエリーの迫力。
それはLv9999の迫力。
普通に弱いレベルであればそれだけでも心臓停止してもおかしくない位の圧力なのだが……、ここに居る面々にはノーダメージ。
『『『ごゆっくり~~~』』』
何なら笑顔。物凄い笑顔。料理を出して味を見て貰おう! と意気込んでいた者達でさえ、くるっ、と掌を翻す。
こんなやり取りがあったのである。
「それで、どうしました? 僕になにか?」
その後は、ハクもある程度落ち着けたので空気を読んで復活。
何より、あまりにも落ち込む時間が長くなり過ぎたら、ライトが責任を感じそうだし、ライトの権限で色々と皆に叱責。それで物凄く悲しそうな目に遭う子らが続出しそうだったから。
確かに、ある程度は勘弁して貰いたい面はあるのだが……ガチ路線までは考えていない。ライトもその辺りの機微を読み取る事は中々年齢的にも世界線的にも難しい様だったから。
「それが、かくかくしかじかでありまして—————」
超端折るが、取り合えずライトが説明してくれてハクも納得した。
どうやら、この世界にはレベル強制アップのバフは存在しないらしい。マジックプラネットでは、レベルダウンの状態異常を仕掛けてくるBOSSもいたし、ドラゴン●ワーと言う調合系の力でレベルを上げてくる敵も居た。
だから、特に気にせず披露したのが不味かった様だ。
……信頼している人たち以外には仕掛けるつもりは今後も無いし、別に秘密にするつもりも無かったけれど。
「それで、是非とも私たちにもその力を拝見させて頂きたく思いまして! 是非、是非とも!!」
「………」
血走ってるのが解る。
所謂 こんな顔で ⇒(;゚∀゚)=3 ハァハァしてるのが解る。
これは断ったらヤバいヤツだと直感している。
それに加えて、エリーの頼みはあまり無下にはしたくない、と言う深層心理もあるから特に断るつもりも無い。
「はい。良いですよ」
さらっと、あっさりと、言い切ったハクに少々驚く者も居た。
秘奥に相応しき魔術をこんなにさらっと披露するものか? と。自分達でさえ、ライトと言う絶対神の下に集っているので、不敬に当たる事は一切せず……なのだが、胸の奥に秘めているものの1つや2つ、あるのだから。
淡い光が周囲に散りばめられたかと思えば、その光の粒子たちがハク以外の全員に集まり————『
「お、おお………」
猫声のみで対応していて表情を殆ど変えなかったアオユキでさえ、目を丸くして驚いていた。自身が持つ力は当然把握している。だからこそ、この力には驚きを隠せれない。
「体感的には……確かに、ナズナやジャックの言う通り、倍増しまでとは行かずとも、それに近い能力値上昇が実感できますね……」
メイも、自身が使用する力『
間違いなくパワーアップ、レベルアップをしている。
その糸の強度、持続性、その他諸々全てが比べ物にならないくらいに向上しているのだ。
「―――――……」
そして当然ライトも己の手を見ながら……内なる力が溢れ出てくるのを実感していた。言葉にならない、とはこの事なのだろうか、と。
「(……バフなら僕も沢山持ってる。SSSR、SSRカード。
自身を強化してくれるカードを総動員させる。
それは以前Lv9999まで上げる過程で試した力だ。
それらを思い返しながら、現在ハクが齎した強制レベルアップからくるパワーアップと比較してみると…………。
「――――まさに桁違いですね。凄まじい力だ……」
「あはは……恐縮です。でも以前いた場所では割とマイナーな力なんですよ。……と言うより、元の皆さんの力が高過ぎるので、相乗効果で僕の術も~~と言った感じかもしれませんが」
絶対神と呼ばれるライトが目を見開き、そして何より目を輝かせながらそう断言する姿は圧巻の一言。
或いはこの瞬間により、ハクと言う人物はライトの大恩人ではなく、同格足る存在である……と、認識をしたのかもしれない。
「ハクさん? 割とマイナー……とおっしゃいました?」
「……え? 僕そんな事言いました? 言った覚えがありませんが……」
「嘘をおっしゃい!! さ・き・ほ・ど! ライト神様にそうおっしゃったじゃありませんか!!」
エリーの前では本当に失言だった……、とハクは不覚。
世界線が違うが故に、ある種のプロテクトの様なモノが掛かっているとでもいうのか……、若しくはここへ送り込んだあの神(笑)が何か干渉しているのか……、正直ハッキリと解らないが、この世界の全ての術を極めた~と言うエリーでさえも核心に触れる事が叶わないところを見ると……やはり後者。あの神の様な世界と世界の理を繋げる超常的な力をもって阻害しているとしか思えない。
「……その、えと………ガンバッテクダサイ」
「むきーーーー!! なんですの! その《どうせ無理だと思うけど》みたいな顔つきは!!」
「わーーー!! ヘッドロックしないでくださいーー!!」
えいっっ! とエリーのヘッドロックがハクの頭を捕える。魔術で後れを取ってしまっている事実がエリーを体術へと誘った。
……そんな事はさておき、スタイル抜群な彼女がそんな大胆な技を繰り出したらどうなるか、火を見るよりも明らかだ。思いっきりその豊満な巨峰の1つに顔半分が埋まってしまったのである。
「やっぱショジョのくせに、チジョだな!! エリーは」
「ッッ!!」
暫くヘッドロックをして、皆も和やか~な雰囲気になっていたのだが、ナズナの一言でエリーが固まった。
「ななな、なにを言うんですの!! また、意味も解ってない癖にそんな言葉ばっかり使って!! はしたない!!」
「確かにナズナは解ってない。故にエリーの発言は正しい。が、エリーのそれは説得力が無い。自身の行動を振り返ってみる事を推奨する」
「はぁ……、アオユキに同意します。全くです」
「う、うぐぐぐぐ……」
「むー……むーー……(い、いき! いきが………)」
力を固定したまま、エリーは固まってしまったので、必然的にハクの締まる首もそのまま。
最後は、赤面しながら きゅ~~~…… と気絶してしまうのだった。
その後は只管検証したり検証したり検証したり……、殆ど実験紛いな事をしていたのだが、ハクは別に文句1つ言う事なくエリーがある程度満足するまで頑張った。
がんばってがんばってがんばって—―————漸く一息。
「本当にごめんなさい、ハクさん。エリーに付き合って貰って……」
「いえいえ。ライトさんが謝る事じゃないですよ。僕の意志でお付き合いをしてますので……とと、出来れば謝らないで欲しいです。その姿を皆が視たら、また結構大変なので……」
「あ、あははは………」
主の頭を下げさせてしまった!! ともなれば、一騒動、一大事件だ。最初は本当に大騒ぎだったのだ。軈てハク自身の位を、その認識を改め初めてからはある程度マシにはなってきたとはいえ、それでも彼女達はオーバーリアクションをする。
ジャックやゴールドと言った男性陣の様な臨機応変に対応するのは難しい様だ。と言うより、ライト関係では暴走してしまうので仕方がない。
「なので、謝罪の言葉ではなく、お礼の言葉が好ましいです。……あ、これも、僕の願いの1つ,、と言う事にして貰えませんか?」
「………本当に敵いませんね。ハクさんは」
あまりにも優し過ぎる性格。これは聖人の類の人種だと理解した。以前の世界の話を聞いても間違いなくソレ。
その優しさは、あまりにも眩しくて……眩しくて……復讐と言う黒までも白で照らされそうで逆に怖くなってくる。
だから、少しだけ目を閉じて―――思い返してみる。根源部分を何度も何度も。
「でも、僕だって優しくない時もありますからね? ……ライトさんたちにはもう見られちゃってますが」
ハクは拳を前に突き出して、そして苦笑い。
それは、カイトを叩き潰した時のソレを言っているのだろう。
確かにあの時のハクは優しさとは皆無。口調も変わっていて完全なる無慈悲。カイトに至っては未だに精神の罰を与えられている可能性もあるらしく………敵側からすれば鬼か悪魔だろう。
「優しさだけじゃ、何も救えない事も十全に知ってます。果たさねばならない、晴らさなければならない―――前に進む為に。それも、知っています」
「…………」
「以前、ライトさんが動機について。目的については僕にはあまり言いたくない、と言ってましたが、僕だって理解出来ますからね。……簡単に、ライトさんの痛みや苦しみ、怒りを知れるなんて事言っちゃ駄目かもしれませんが、それでも」
ハクは白の魔術を手のひらに乗せた。
瀕死のケガ、末期の病魔、……そして死。
ありとあらゆるモノを癒す最上級治癒魔術……白の極致の1つ。
それが一点して黒に染まって行く。
「僕は聖人君子じゃありません。仲間や友達、……家族の為になら悪にも鬼にも成れます。……例え相手が神だとしても、思いっきりぶん殴ります」
ライトにとって怖かった、と称した優しさが……その白が……安心できる黒へと代わる。
自然と笑顔に成れる。
「ハクさんって実は読心術を使えたりしません? と言うより今使ってませんか? 僕はしっかり
「え? 別に使ってませんし、してませんが。……どうしてそう思ったんです?」
「だってハクさんの言葉。僕がここ一番で、最も言って欲しいタイミングで言ってくれるんですよ。そう思っちゃっても仕方がありませんって」
「えーー、そんな大層な事言いました? こんなの普通ですよ。普通」
隣り合って笑い合う2人。
まるでずっと昔から知っている様な……まるで友達の様な、そんな空気だった。