職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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遅くなりました………
忙しい&超暑い


奈落③

 

 

 

「ウホーーーッッ!!」

「ほいっ! えいっ! っと」

 

 

襲い来る奈落モンスターのヒューマンドリル。

異様に学習能力の高いゴリラ・ゴリラ・ゴリラである。奈落モンスターの中でも一筋縄ではいかないモンスターであり、どういう訳か仲間内で学習し合ってる面もあって、意思疎通・意識共有もしている。だから安易な単調攻撃は学習されて通じない事も多々ある。

 

 

 

―――まぁ、圧倒的なレベル差に物を言わせて殲滅する人達にとっては、殆ど大差ないモンスターではあるが。

 

 

「うずうず!」

「ナズナ様。うずうず言いながらウズウズさせてますがここはどうか堪えてください。こいつらは弟分が戦いたいみたいなんで」

「解ってる! 解ってるぞジャック!! 違うんだよ! モンスターをやっつけたいんじゃなくて、あのハクの動き、ハクの戦い方を見て、ハクと戦ってみたい! って思っちゃっただけだぞ!」

 

 

ナズナの心からの本心はジャックにも通じる面がある。

阻害しているのであればまだしも、【鑑定】のスキルが通用しない相手がハクなのだ。

ハクのレベルをナズナも確認した事があるのだが………、ナズナやジャックがハクのレベル上げバフを受けた時と同じ様な黒塗り(バグ)表示。

今のステータスが一切解らない仕様になっているのだ。

 

【迷い人】と言うハクの言葉が間違いなく真実である証明、と同時にハクの居た世界の異質さ、異常さにも気付く。

アレほどの実力者が跋扈している世界……正直笑える気分だ。

 

 

「弟分の居た世界……か。オレ様も行ってみてぇな」

 

 

ジャックは拳をばしんっ! と合わせて筋肉を隆起させた。

血が騒ぐ、とはまたこの事を言うのだろう。

 

ナズナもナズナで、ただただハクの戦いの一挙一動を見逃さずにウズウズ言いながら身体をうずうずさせているのだった。

 

 

「ふぅ……」

 

 

そして暫くしてハクが戻ってきた。

粗方モンスターは撃破していて魔石回収も済。扱えそうな素材も回収済。大体の価格も把握。

勝利のファンファーレの1つや2つ奏でられでもすればテンションが更に上がると言うモノ。

流石にそこまでは求めていないが、それでも懐かしいと感じるのはもう前世が遠い昔だと感じるくらいには、この世界に馴染んだからなのだろう。

 

 

「これぞダンジョンの醍醐味!」

 

 

腕をぐるんっ、と回しながらガッツポーズをして、ハクはナズナやジャックの元へと戻る。

 

 

「ゴメンなさい。少し時間が掛かっちゃいましたね」

「良いって事よ。オレ様もじっくり弟分の戦い方、実力を目に焼き付けたからよ。今度手合わせしねぇか?」

「あ、ズルいぞジャック! あたいもだあたいも! ハクと戦うの楽しそうだ!!」

 

 

まさかそっち方面に目をつけられていたとは思いもしなかった。戦闘狂の毛は感じていたが、それはモンスターや敵相手~くらいに考えていたから。

 

 

「あはは。お二方にそう言って貰えて恐縮です。でも、一応僕の本業はヒーラーなので楽しめるかどうかは微妙ですよ?」

 

 

勿論、嫌だ~と断固反対! とつもりも無いが……、社交辞令位の感覚でいて貰いたい、と言うのもまた事実。特にナズナはこの世界でも恐らく最高峰の実力を持っている。そんな彼女と手合わせ~なんかした日には、疲労感が突き抜けてしまう事間違いない。

あのエリーと付き合っている面を鑑みたら……、アレの戦闘Ver だと考えたら……やっぱりゲッソリする。

 

 

「なーに謙遜してやがる。いや、実際実に見事なモンだったぜ? お前さんの実力なら正面衝突で捻じ伏せる事なんて余裕だと思うが、面白ぇ戦いかたしてたじゃねぇか」

 

 

ジャックは、わっはっは! と腰に手を当てて大笑いすると同時に、ハクの肩をバンバン!

と叩いた。

ナズナもナズナで、うんうんと頷きつつ……そこまで解っていなかった様なので疑問を口にする。

 

 

「そういやそうだな! ハクは何であんな戦い方してたんだ? えっと、相手に合わせる? みたいな感じで」

 

 

最後に戦ったのは体躯の差があまりない類人猿の類。大型の魔獣タイプならまた違った戦い方、砲台的な力で戦うだろうけれど、体躯の近いモンスター相手では別の戦闘を採っているのである。

 

 

相手の攻撃に対してのカウンター。身体強化は最低限。的確に要所要所を見極めての攻撃。

ハクの実力を知る者からすれば、理に適ってない戦い方であり、言わば縛りプレイ。

何故その様な戦い方をするのか? が気になっている様子。

 

 

 

「うーん……色々と理由はあるんですけど、その1つが……」

 

 

ハクは少しだけ考えて、人差し指をぴんっ、と立てて説明をする。

 

 

「【ステータス】に頼り過ぎない様にするため、ですかね?」

「「???」」

 

 

ハクの言っている意味がイマイチ解らないのか、ジャックとナズナは同じ様に首を45度傾ける。

 

 

 

「ここの世界ではまだ経験が無いんですが、ステータス弱体化するアイテムや固有空間と言ったトラップに似たモノを僕は経験した事がありまして――――」

 

 

 

そんな2人にもう少しだけ踏み込む形でハクは説明を始めた。

それは以前の世界VRMMOの世界での娯楽の1つの闘技場。

公平な戦いを期すために、レベルの強制調整や武器装備の指定等々を課せられつまりは能力値が全く同じもの同士の戦い。純粋なプレイヤースキルを競う闘技場で力を競った事がある。

 

実はこれはかなりの好評であり、ゲームの世界が現実世界により近づけたと大絶賛させられた。数値にだけ囚われて優劣をつけるのだけでなく、個々の技・創意工夫などスーパープレイが沢山生み出され続けて、話題のコンテンツになったのだ。

 

それに伴ってダンジョントラップやダンジョンBOSS戦などで強制レベルダウンや調整等が入ってきて、レベル・ステータス頼りに無双してきたプレイヤーたちはそこで篩にかけられる事になった。長い時間をかけてレベルを上げに上げて無双するスタイルを否定する訳ではないが、真の上を目指すのであれば。VRMMOと言うジャンルの頂点を目指すのであれば、システムだけにかまけてはならない。それは二流三流だと言われ続けた世界で頂点を取った事があるハクだからこそ、例え異世界に飛ばされたとしても初心を忘れずに、なのである。

 

 

「もしも、ステータスが失われたとしても、魔術が使えない状態になったとしても、培ってきた技術は思考は必ず自分の中に残ります」

 

 

数多の経験を元に打開策を見出す。

幾度となく繰り返してきた事だ。

 

 

こればっかりは奪わせませんからね? 例えレベルで劣る様な事になったとしても、僕は負けない、って気概を持って時折色々と試してるんです」

「………成る程な」

「ほーーー。ほーーー。兎に角ハクは頑張り屋さん! だって事は解ったぞ!」

 

 

ジャックも己が防御力、鉄血鉄壁の力で奈落内でもトップクラスの防御力を誇っている事を思い返していた。

そう、最高硬度(それ)にかまけて疎かになってないか? と自分を振り返る良い切っ掛けになっていた。

勿論、そんなつもりは更々ないが、ハクの戦い方を見て自身を振り返る良い切っ掛けになったと言って良い。

 

 

「やっぱ、ハクよ。オレ様ともいっちょやらねぇ? お前さんのカウンター主体の戦い方見ていてナズナ様じゃねぇがウズウズしてきた」

「あっ! ズルいぞ!! あたいが先に目ェつけてたんだからな!!」

 

 

ダンジョン探索そっちのけで、手合わせ願いが矢継ぎ早。

流石にそれを全て断る~と言うのは悪い気がするので……。

 

 

「―――えーっと、取り合えず、目標地点まで攻略後。戻ってからにしません?」

 

 

断るのは悪い気はする

ダンジョン内で闘気を出しながら、ジャックは拳を鳴らし、ナズナは剣をぶんぶん振りながら迫ってくるのは軽くホラーかもしれないが……。

 

 

 

そして、ダンジョンを後にし、奈落の訓練所へと足を運ぶ事になる。

その後は只管手合わせを続けて―――――ダンジョン探索時間よりも長い長い1日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ぁ………、つかれた。めちゃくちゃ、つかれた………」

 

 

ぐでぇ……、と食堂で突っ伏しているハク。

ジャックとナズナには本当に仲良くして貰って光栄の極みなのだが、如何せんあの2人は戦闘狂(バトルジャンキー)が過ぎる。加えて2人とも徒手空拳もそれなりに得意ならしく、色々と噛み合ってそれなりに面白かったりもするのでついつい夢中になってしまう自分もいて………。

 

つまるところ、疲れるし大変なのは間違いないが、ハクもハクで加減を知らなかったので自業自得感が否めないのである。

 

 

「ケケケケケケ。いつもいつもまぁ、良く体力が持つってなもんだ。ほんとスゲー」

「コラ! メラ! ハク殿はライト様の御恩人であられる方だぞ! ちゃんとした言葉遣いをしろ」

 

 

突っ伏していて、行儀悪い場面をどうやら見られてしまった様だ。

普段はそんな隙は見せない様にしているのだが……、流石にナズナとジャックの2人と訓練所で手合わせした後の疲労感は半端ないので、油断をしてしまった様子。

 

そして、その見られた2人はと言うと。

 

 

『UR キメラ メラ Lv7777』

『UR 炎熱氷結のグラップラー アイスヒート Lv7777』

 

 

ジャックと同じく縁起の良い数字 フォーセブンのメンバーの内の2人だ。

 

 

「あ、ああ。いえいえ。アイスヒートさんもお気になさらず。僕の方からフランクに接して欲しい、いつも通りな普通に〜と頼んだんですよ。ダーク……ライトさんにもその辺りの許可を貰った上での頼み事なので」

「ケケケケケケ。そう言うこったそう言うこった。つまりだ。クソ真面目なアイスヒートには無理な任務をアタシは御主人様から承った、って訳だな」

「な、なに!!?」

 

 

注意をしていたアイスヒートが拳を震わせる。

そんなアイスヒートを見たメラは、特徴的な笑い声で更に続けた。

 

 

「だってそうだろう? アイスヒートはクソ真面目で、良い子ちゃんだ。幾らハクがフランクに接して欲しい、って懇願した所で受け入れるのは至難の業だろうさ」

「ば、バカにするな! 私だってご主人様の命令ならば例え火の中水の中だ! 至難でもなんでもないっ!」

 

 

アイスヒートは胸を叩いているが……内心少々冷や汗モノだったりしていた。

アイスヒート自身も自身の得手不得手はある程度理解している。

なので、ハク自身からライトを通して『願う』形になっていないからまだ大丈夫なのだが……、これがもしもライトにハクが『願い』そしてそれが実行されたとしたら、アイスヒートもメラの様に砕けた口調で話さなければならないだろう。

それが自分に実行できるか? と自問自答する。自分なりに出来る事はするつもりではあるが………、それがハクの願うフランクで話しやすい間柄になれるだろうか?

 

メラはそう言った方面は大得意らしくて、最初こそそれなりに敬意を払った対応をしていたのだが、ハクからお願いされた形になるとサラッ、と態度を変えて見せた。

 

ハク自身も、メラは奈落の仲間内でさえも一部怖がられている人物ではあるのだが、初対面からかなりフレンドリーに話を進めている。

その方面でも、ハク自身の奈落での評価が爆上がりされている要因の1つだったりするのだが、それはまた別な話。

 

 

因みに、ハクとメラが楽しそうに話をしている所を沢山のメイド妖精たちに見られていて、大丈夫なのか? と色々質問されていたが、ハクはあっけらかんと一言。

 

 

『怖い……ですか? 僕はメラさんと話しているととても楽しいですし、何より素直な性格なので寧ろ可愛らしい、と思ってますが……』

 

 

臆面もなく平然と言ってのける天然ジゴロっぷりをここでも発揮。益々メラはハクの事を気に入り、ご主人様であるライトと言う決して超えられない壁が存在しているのだが、その次点でハクが来る、と言い切るくらいには信頼関係を構築させていたりする。

因みにメラの事を可愛い、とハクが言った時に少なからず表情を赤く染めたメラの姿を見て、また色んな意味で盛り上がったのは言うまでもない。

 

 

 

「ケケケケケケケケ! ならもしハクがご主人様に『アイスヒートのストリップ見たい』って願って、それを『了承』したとしたら出来るのかい? メイド服を脱いでのストリップショー! 面白いかもしれないね」

「ご、ご主人様がそんな破廉恥で規律違反な命令を許可する訳がないでしょ!! それにそんなものはハク殿にも失礼に値するわよメラ!!」

「ケケケケケケケケケ! それは解らないかもよ? 何せハクだって男だ。奈落の美女たちに囲まれてそのオスの本能を、獣欲を刺激されてたとしても不思議じゃない訳で―――――」

 

 

 

メラがいつも通りアイスヒートと戯れているのはよく解る。

この2人、真面目と不真面目そうな印象を持つので色んな意味で正確真逆の相性悪い~と思いがちだが、それは全く違う。よく2人でいて、この様に食事だって一緒にとってるくらいには仲が良い。

いつも通りな光景に疲れも忘れて温かい目で―――――と言う風に、いつもならなるんだけれど、生憎今回はそうは言ってられない。

ハク自身が物凄い勢いで巻き込まれて行ってるから。

 

 

「違いますよね!! ハク殿!!」

「ケケケっ。たまには人種(ヒューマン)の三大欲求発散しても良い、ってアタシは思うよハク」

 

 

ずいっっ、と2人して物凄い事を言ってくる。

勝手に明後日な内容になって、最後は自分に跳ね返ってくるのでどうしたものか、と思考停止状態になりそうなのだが……、ここはハッキリと片をつけておかないと後々に大変になってくるのが解っているので、ハクは早速始動。

 

 

「もぅ、メラさん。アイスヒートさんを揶揄って遊ばないでくださいよ。僕の方に来る流れ弾がすんごいんですから」

 

 

慌てて否定しては思うつぼ。

今も面白情報を、ネタを仕入れようと躍起になってる奈落の妖精たちは居るのだ。変に慌てて否定したり、色んな反応を見せたりもしたら、また色んな性癖……こほんっ、勝手でテキトーな設定付け足したハクが作られてしまうので、あくまでここはクールに対処するに限る、と言うのがハクの答えだ。

 

メラはそれなりに怖がられてると言う事もあり、この面子に限って言えば対処し易いと言えばそうだが。

 

 

「僕は極自然(・・・)に~を求めてるんで。無理にはさせたくないんです。なので、アイスヒートさんはアイスヒートさんの自然なままが良い」

「……ハク殿。流石は御主人様の大恩ある方。このアイスヒート、感服致しました」

 

 

そう言うと、くるっ、とアイスヒートはメラに向き直る。

メラは、ハクだったらそう言うよなぁ、とある程度の答えが解っていたのか少々つまらなさそうに左右に首を振っていた。

 

 

「と言う訳で、メラには規律の何たるかを叩きこんであげましょう!!」

「ケケケケケケ! いいね! アイスヒートが遊んでくれるならアタシはいつでも大歓迎だよ!」

「遊びじゃないわよっ!」

「ケケケっ。それにさっきハクはこう言ったよ。『自然なままのアイスヒートが良い』って。つまり、それは『生まれたままのアイスヒートの姿が良い』、って暗に言ってる訳で―――――」

 

 

いつの間にメラはエロ系要因になってしまったのか……? そんなにアイスヒートをひん剥きたいのか、と何か対応の仕方が悪かったのかなぁ、とハクは考える。

或いは、エリーに色々とヤられた自分に新たなる付加価値を付与したいとでも言うのか……。

 

 

「だから破廉恥な事を言うな! 今日と言う今日は大説教だ!!」

 

 

その後はメラとアイスヒートのアソビが開催されて……食堂では大盛り上がりするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数日後……【ダガス】

 

 

ハクは、久方ぶりにドワーフ王国のダガスへと足を運んでいた。

それには1つ訳があって、ライト達に伝言を承ったからだ。

 

 

「ハクさんっっ!!」

「っとと」

 

 

あのメンバーがハクに会いたい……と言っている、と。

 

 

あのエルフ種カイトが引き起こした冒険者殺しの一件で、ハク自身はかなり派手に動いたので一定期間身を隠そう、と判断していた。

それもそうだ。ダンジョン内でモンスターに変えられてしまった人種(ヒューマン)達の蘇生。一連の事件を一蹴。ダンジョン運営始まって以来、前代未聞な事をやり過ぎてしまったから。

世界をゆっくりと見て回って、困っている人達が居たら助けて―――な旅スタイルをしている身としては、そこまで過剰に目立つのはあまり宜しくないかもしれない、と思った時にライトに相談して奈落へと招待して貰った、と言うのが彼が奈落に滞在している理由だったりする。

 

 

それはつまり、あの人種(ヒューマン)のパーティメンバーからすれば、別れを意味する。

説明短いが円満に別れたつもり……だったのだが、ミヤはどうしても寂しいらしくて、時折黒の道化師として冒険者業をしている皆にその手の情報が入ってくる。

 

 

『わっはっはっは! あまり少女を悲しませ過ぎるのも騎士道に反すると思うぞ』

『一途に想い続けている彼女を視たら、成就させてあげたい、と思うのが女と言うモノだハク殿』

 

 

と、ゴールドとネムムに言われて……、元々今生の別れにするつもりは毛頭なかったので、それとなく気には留めていたのだが、想像以上に慕われてしまった、と見誤っていたのは落ち度だ。年齢を考えた彼女はまだまだ10歳と子供。親を失った子供。冒険者として色々覚悟しているとはいえ、あまりにも短い説明だったので……、それも不味かった。

 

 

「皆さん、お久しぶりですね」

 

 

抱き着かれたミヤの頭をそっと撫でると、その後ろで笑っているあの3人の方を向いてハクは笑いかけた。

 

 

「お久しぶりです、ハクさん」

「やーー、ほんと会えるとは思ってなかったっスよ~~。ミヤちゃんじゃないっスけど、オレっちも涙目に」

「………オレも、です」

 

 

エリオやワーディ、ギムラも涙の再会。

命を賭けて、気を張って生きてきたのだ。改めてたまには、彼らの傍に居なければと思う今日この頃である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~~、今度はエルフ女王国の方で活動、っスか」

「ええ。流石にあそこに皆を連れて行く訳にはいきませんからね。推奨レベルで言えば。うーん……」

 

 

エルフ女王国は人種(ヒューマン)を奴隷のように扱っている……と言うか、大体の種族が人種(ヒューマン)を劣等種扱いして虐げているので、如何に冒険者とはいえ人種(ヒューマン)だけのパーティで、平均レベル50程度だったとしたら、抗う事が全く出来ず何も出来ずに奴隷狩りに有ってしまうのが目に見えている。

彼らが挑戦するにはまだまだ遥か先の高難易度ダンジョンなのだ。

 

 

なので、ハクは解りやすく難易度を言うために、少し考えて……思いついた様に指を縦にたてて言った。

 

 

「以前、ダークさん達と一緒に狩ったあのカマキリをソロで撃退する位のレベルは必要になりますね。つまり平均レベル500程度、でしょうか」

「そ、それは流石に………」

「ぅぅ……」

「ムリ、っスねぇ」

「(……こくこく)」

 

 

ここで改めて、ハクと言う男がどの位置に居るのか。

どれ程の高見に居る存在なのかを理解する。

そんな人に、いつまでも縋り続けるのもいけない、と思っている。

 

どれだけ会いたかったとしても……それに見合う様にならなければならない。少なくとも『大人』にならなければならない、とミヤは思ったりもした。

会えなくて会えなくてとても寂しくて悲しくて……でも隣に立てるだけの資格が無くて、とミヤはまた涙を流しそうになるが、そんな思いは次のハクの言葉で払われる事になる

 

 

「ああ、勿論拠点にしているのは別の場所なので、その王国範囲外の活動、このダガスの活動などで、推奨レベルに到達している場所であれば、手が空いてる時、が条件ですが連絡をくれれば幾らでも協力しますよ」

 

 

資格はない……とミヤは思っていた。ミヤ程の想いは無いのかもしれないが、他の面子も同じ様に思っていた。世界を股にかけて冒険をする様なハクの重荷になりたくない、と。

 

そんな想いを他所に、ハクは高見に居るその場所から笑顔で降りてきて、同じ目線で笑ってくれた。そんな感じがした。

 

そしてハクは懐から丸い水晶玉の様なモノを取り出してミヤに渡す。

 

 

「わ、わっ、……綺麗————! これ、何ですか? ハクさん」

 

 

淡い光を放つ水晶。それは魔力の光である、と魔術師であるミヤは直ぐに気づく。

 

 

「それは魔法陣を水晶刻みこんだもの【通信石】とでも言いましょうか。僕と連絡が取れる様になるアイテムです。……詳しい話もせず、連絡手段も残さず消えてしまったお詫びに受け取って下さい」

「え、え、ええ!!??」

 

 

とてつもないアイテムを渡されてしまった。

遠く離れていても通信が出来るアイテムなんて聞いた事が無いからだ。

 

 

「あ、僕の魔力に呼応して、反応する仕組みなので、申し訳ありませんが応用はあまり利きません。僕と皆さんだけのホットラインだと認識してください。なので、変な悪事には使えませんよ?」

 

 

ぱちんっ、と片目を瞑って言うハクに、皆は驚く以上に肩の力が抜ける。

色んな意味で驚きのアイテムなのだが、ハクだったらと納得できるし、安心も出来るのだ。

 

 

「超恩人のハクさんにそんな事する訳ないじゃないっスか~! もししたら最早外道っスよ外道」

「(こくこくっっ!!)」

「本当に心強いです! ……でも、ハクさんにもハクさんの使命がある。俺たちも頼り過ぎないように、ハクさん頼りになり過ぎない様に精進していきます!」

 

 

男性陣はニヤニヤ笑いながらミヤを前に出した。

 

 

「良かったな。ミヤ。これでハクさんとは何時でも繋がってられる。……安心、だろ? お兄ちゃんも安心出来た」

「っっ~~~~~!! お、お兄ちゃん! 頼り過ぎない様にって言ったばっかりじゃん! 何舌の根も乾かない内に~~!!」

「そりゃ出来る事と出来ない事、頑張れる事とやっぱりハクさんじゃなきゃ絶対無理な事って言うのはやっぱりある訳で……」

 

 

楽しそうにケンカをする皆を見て、心が温かくなる。

慕われているのは純粋に嬉しい。その好意が恋心になる―――と言う気持ちも解る。

 

 

この光景は、あの時選択を誤っていれば。あの時ハクがついていかなければ。あの時ハクが彼らの傍であの気配を読み解き、視なければ齎せなかったものだ、と思えば感慨深くなる。

 

あのカイトの凶刃が彼らを傷つけさせないで本当に良かった、とハクは再び安堵する。

 

 

 

 

 

その後、ハクとエリオパーティは久しぶりに合流。

その日の内に、何と、未踏破階層である2階を突破し、3階まで到達するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして―――物語は先へと進む。

 

 

 

 

「本当に最高でしたわ。あたし達に騙されたと知った時の【ライト】の絶望の表情」

 

 

 

 

黒き風が―――エルフ女王国に吹き荒ぶ。

 

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