職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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蘇った故郷

 

 

「………ほん、とうだった」

 

 

嘗ての故郷を目の前にして……その今の光景に言葉を失い、ただただ立ち尽くしているライト。

ほんの少し前までは、ここには何もなかった(・・・・・・)

何者かに村は滅ぼされてしまった後。風化が激しく、生きていた最後の残り香とも言える死臭でさえも、自然によって還されているそんな状態。

村人全員を丁重に、丁寧に葬り、村の入り口に墓を造り———花を供えた。

 

破壊の限りを尽くされた村は……少しだけ片付けるだけに留め、誰にも荒らされない様にと結界を施した。

外観を変えなかったのはこの怒りを、苦しみを忘れない為にだ。

 

 

村はライトが奈落に閉じ込められた約2年半の間に滅ぼされ———復元されているのだ。

 

 

「おーーい! もうそろそろ昼にしないか?」

「はーい、おとーさん!!」

 

 

外で遊んでいる女の子が目に入る。

あの子は———自身の妹であるユメの友達のメルだった。確かに亡くなってしまった筈なのに、今目の前に居る。……生きている。

 

 

「村の中に、入るよ。……存在隠蔽はしっかりかかってるよね?」

「うむ問題なく。吾輩も共にゆこうぞ」

「ゴールド!! ライト様には敬語を使えといつも言っているだろ!?」

 

 

全身黄金の輝きを放つ甲冑に身を包んでいる騎士の男の名はゴールド。

そして、褐色の肌、速度重視故にか軽装に身を包んでいる女の名はネムム。

 

ライトの冒険者計画の一端。彼の護衛兼冒険者仲間、と言う任務を担って、共にこの場に来たのである。

 

 

「ネムムよ。敬語なぞ堅苦しくて親しさが感じられんだろう、と何度もいっておる。……それに、今はそれどころではない、と言う事くらいお主にだって解っているだろう?」

「ぐ、むむむ……」

 

 

事実、復讐関係は例外として、いつも皆に気にかけ、聡明であり、等しく慈悲をくれるライトなのだが、今は別。ネムムとゴールドの会話も耳に入っていない様だ。

ただただ、無心で村の中へと歩を進めている。

存在隠蔽の力で、自分自身の存在を、ネムムとゴールドの存在を隠したままで。

 

 

「……エリー様、メイ様らの調査通り。何者かに操られている……と言った残滓は感じられないな」

「……ええ。死者を冒涜し、その人の尊厳をも貶める。意のままに操る禁呪 『屍術士(ネクロマンサー)』の存在を疑ったけど……これは」

 

 

そもそも、完全に白骨化し、朽ちて土に還った人に対してここまでの受肉を施し、生身を与えた上で操るなんて事出来る訳がない。

仮に屍術士(ネクロマンサー)が居たとして、出来る事は精々【スケルトン】を量産する事くらいだろう。

 

 

「うん……。僕もそう思うよ。2人と同意見だ。……それに、何よりここの皆の事は誰よりも知ってるから」

 

 

未知の技術、魔術。仲間の1人である禁忌の魔女エリーでさえも知らない業を使って……と言う可能性も頭の片隅にあったが、実際に目の当たりにして、その可能性は頭の中で消した。

 

だって、あやつられている様な様子は一切視えないから。

あの表情、あの笑顔、あの声……生まれ育ったこの村で、毎日の様にみてきた。見間違える訳がないから。

 

 

そして――――。

 

 

 

「!!」

 

 

 

目的地へと……着いた。

 

 

 

「とーちゃん……、かーちゃん……」

 

 

 

死んだ筈の両親の姿が、そこに在った。

あの時にみた破壊された家、父が母を護る様に……抱き合って亡くなっていた2人の亡骸が、今この瞬間吹き飛んだ。

 

存在隠蔽が切れるのも構う事なく、ライトは飛び出した。

 

 

 

「とーちゃん!! かーちゃん!!」

 

 

 

2人の事を呼ぶ。

存在隠蔽されていた姿がハッキリと映り、軈て2人の目にもその姿が止まる。

 

 

 

「ん?」

「え?」

 

 

父と母がほぼ同時にライトの姿を確認。

その場に突然現れた事に対して驚きはした。母を自身の後ろにやると父が真っ直ぐに見据える。警戒心を以て対応をしようとしたのだが……、眼に涙を溜めるその姿を、少年の姿を見て……今にも泣き出しそうな子供の姿を見て警戒心を解いた。

 

 

「えっと、どちら様……かな?」

 

 

そして、その2人から返ってきた答えは、ライトの心を深く傷つけるモノだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうかそうか。遠路遥々よくやってきたな。何にもない所だが、ゆっくりしていってくれ」

「今、お茶を入れますね」

 

 

そして、ライト達は家に招待された。

最初こそは動揺し、中々言葉を出す事が出来なかったライトだが、持ち前の能力の1つを使って精神を身体を落ち着かせ……この現状の意図が解るかもしれない、と悲鳴を上げる心をどうにか抑えて……両親? と話をする事を選んだのだ。

 

そして、ネムムとゴールドは存在を隠したまま、外で待機をして貰っている。何かあったら飛び出して来る事に対して咎める事はしないが、両親に対しての対応は自分に任せてくれ、と念押しをして。

 

 

「もう無くなった故郷に似た村———か」

「世界には似ている顔を持つモノが3人は居る、って何かの本で視たけれど、似た村って言うのは初めての事ね。……思わず泣いちゃうくらいに故郷が恋しい。貴方くらいの歳の子なら猶更よ。……正直、慰めになるかは解らないけれど、いつでもここにきて、いつまでもいてくれて良いからね」

「ッ……………」

 

 

本当に優しい。

ライトがよく知っている両親そのものだった。誰に対してでも分け隔てる事なく……気を抜いたらまた涙が出てしまうのをどうにか堪える。

 

暫く他愛もない事を話して………ライトは本題に入った。

 

 

「……でも、本当に……驚き、ました。この村が滅ぼされたと言う情報・報告を聞いて僕は調査にやってきたんです。……僕の故郷の様な村がもう二度と出ない様に、と活動をしてきましたから」

「「……………」」

 

 

 

【村が滅ぼされた】

 

 

その単語を聞いた途端に、2人から表情が消えた。2人の変貌にライトは当然気付いたが……、特に何も言う事なくただ2人からの答えを待った。

 

色んな可能性を考慮する中で、何かがトリガーとなって、この世界が、この村が解ける可能性……と言うのも考えていた。

つまり、調査してくれた皆は勿論、奈落最強の魔女エリーをもってしても看破出来ないレベルの幻覚魔法の可能性だ。

 

 

でも、それならば何故自身の事を両親は覚えていない、と言うのだろうか?

幻覚ならば……覚えていてもおかしくない筈なのだ。惑わす為の術で使われる事が多いのが幻覚魔法。対象者の心に反応して映し出されたと言うのなら……自分の事だって覚えている筈なのだから。

 

 

 

「ひょっとしたら、になるし。正直眉唾な話になるが……聞いてくれるかい?」

「!」

 

 

 

ここで口を開いたのは父だった。

この村で何が起きたのか、この村は一体何なのか。その答えを知りたい、と言う強い念をもってライトはまっすぐにその目を見据える。

 

 

「君が聞いていたその報告は————本当、なのかもしれないな」

「え……?」

 

 

少し、お茶を口に含むと……母も口を開いた。

 

 

 

「―――この村は一度滅ぼされているかも、って事だよ」

 

 

この時の両親は如何とも形容しがたい表情だった。

本当ならば苦悶に満ちた表情、辛く苦しく……そんな表情をしなければならない様な内容である筈なのに、何処か他人事の様な……そんな顔をしていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての話を聞き終えた後、ライトは村の入り口へと戻ってきていた。

忍び込む様に入ってしまった事を村人たちに詫びた後で。

 

 

皆、ライトの話を聞くとすぐに納得して許してくれた。……いや、そもそも最初から怒ったりはしていなかった。大らかで誰にでも優しく、手を差し伸べてくれる……。そんな優しい皆がライトは大好きだったから。

 

 

でも、皆の記憶の中に……自分が居ない。

唯一死を免れる事が出来た兄と妹の事も……誰も覚えていなかった。記憶障害の類だと言えば良いのだろうか……、ある期間の記憶がごっそり抜け落ちていたとの事。

ただ、この世界の成り立ちや生活力の類を忘れていた訳ではなく、この村で暮らしていく事には何ら違和感はないらしい。

戸惑いや混乱はあったが何とか生活していく事が出来たとの事。この辺境の村が壊滅したと言う情報は特に広がっていない為、騒ぎになる事は無いだろう。

 

 

だけど、それでも良いと思った。例え自分の事を知らなかったとしても、ここに居る皆は間違いなく生きている。笑顔でいてくれている。このまま幸せに暮らしてくれているなら、それでも良いと思った。

 

 

だから自分がすべき事は、真っ先にすべき事はこの故郷を護る為、悪意に反応する結界を施す事。……例え、以前までの皆とは違ったとしても、その心は変わらない優しいままの皆だから。

どういう理由で村を滅ぼしたのかは解らないが、状況から察するにライトの存在、彼の故郷である事と、更に何かとてつもない悪意と憎悪があったからだろう、と判断している。

 

絶対にもう二度と滅ぼさせたりしない。……させない。

 

 

 

「もういいのか?」

「うん。挨拶も終わったしね。それに手がかりだってある。このままジッとしてたら……あまりに居心地が良すぎてダメになっちゃうかもしれないから」

 

 

ゴールドはライトにそう聞いた。

名残惜しそうにしている姿。……でも、その瞳の奥に宿る黒い炎はハッキリと視えて取れる。

 

 

「ならばさっさと出発するぞ! 今のままでは次の町に着くまでに日が暮れるやもしれぬ。―――初日からの野宿とか嫌だぞ」

「コラぁぁァァ!!!」

 

 

ゴールドの物言いに大声と共に割って入ってくるのはネムム。

眼を吊り上げ、怒りの表情を向けてゴールドに詰め寄った。

 

 

「ライト様に対してなんだその言い草は!! 貴様には解らないのかライト様のお気持ちが!? 少しは考えて発言しろ!!」

 

 

そんなネムムの一瞥に一笑すると、ゴールドは言葉の真意を伝えた。

 

 

「全く解っておらんなネムムよ。主の快適な睡眠環境を鑑みるなら、野宿を避けようとする配慮は当然であるし、主は言っておるだろう? 【この場は居心地が良すぎる】と。故に歩み出そうとしているのだ。その主の背を押す事に何を躊躇うと言うのだ?」

「ぐ、ぐぬぬぬ! そう言って貴様は単に野宿するのが嫌なだけではないのか!? 自分はライト様と一緒なら草だろうが泥だろうが塵の中でさえお供する所存なのだぞ!」

「その辺りは言いがかりだ。吾輩とて一切変わらぬ。我が主と一緒ならば極寒の冬山でも灼熱のマグマでも共にすると誓っておる。それこそが黄金の忠誠。【黄金の騎士】の騎士道精神なのだからな」

 

 

もう1つ、ゴールドはため息を吐いた。

 

 

「あまり言いたくはないが、エリー殿を筆頭に、忠誠心をひけらかし過ぎるのも考えものだ。ジャックの兄貴も言っておっただろう? ……過度な忠誠心、そのひけらかしは真の意味で、主を孤独にするやもしれんと。結果主から嫌われても知らぬからな」

「んあ!!?」

 

 

ライトの為を想っての行動だった。

ライトの為を想っての進言だった。

ライトの為を想っての戒めだった。

 

ゴールドの戯言……と切り捨てたい所だが、その結果が……万が一、億が一にでも主に嫌われると言う結果に繋がると言うのなら……。

 

 

「い、いや! そ、そんな訳あるはずが……! ライト様が自分達を嫌うなどと……。い、いやしかし、例え嫌われても敬虔な従僕として尽くすのみ!! 死して魂になっても只管尽くすのみ!!」

「やれやれ……」

「む、むぅぅぅ……」

 

 

そんな2人のやり取りを聞いていたライトは笑みを零した。

何も悪い結果は1つもないのだ。

 

村が……復活した。

例え覚えてなくても、例えどういう理由か解らなかったとしても、皆が生きている事はライトにとって喜ばしい事。

無論、よく解らないまま置いておく事はしない。皆にも手伝って貰い、この復讐の道中にこの謎も追い求めるつもりではある。

今はただただ心が晴れ晴れとしている。もう二度と会えないと思っていた皆と会い……両親と話をしたからだろう。

 

 

「大丈夫だよ。僕が皆を嫌いになる筈がないだろう。ゴールドもあまりイジメちゃ駄目だよ」

「ふぐっっ、ら、ライト様ぁぁ!」

「主は優し過ぎる。ちゃんと口にせんと駄馬には伝わらぬぞ」

 

 

何はともあれ、此処から冒険の始まりだ。

 

 

「さて、一度整理しようか」

「うむ。冒険の始まりともなれば当然だろうな。わくわくと胸が躍る!」

「うん。そうだね。僕も同じ気持ちだ。……今回の目的。情報収集以外にも新しいのが出来たから特に。……皆もしっかり覚えててね? 村で聞いてたと思うけど、少ない手がかりだ」

「はい! 勿論です!! 忘れてないだろうな? ゴールド!」

「忘れる訳がなかろう。お主こそ浮かれるあまりに失態を犯すなよ」

 

 

目的は殺そうとしたかつての仲間———いや、仲間だと思っていた敵への復讐。

獣人種のガルーはもう既に仕留めた。

次なるターゲットはエルフ種のサーシャ。その前段階、と言った所だ。

 

そして新たに出来た目的について、この村で起こった事の解明についても調査する必要がある。

 

 

「色んな所で皆が諜報活動してくれてるけど、こればかりは僕たちがやらないと危ないかもしれないから。……手がかりは【歌】」

「うむ。少年の歌、であるな。村人らの意識がハッキリした時に耳にしたのがその歌である、と。本来であれば混乱の渦中に居る筈なのに、それだけはハッキリと耳に残り、覚えていると言っていたな」

「ひょっとしたら、歌が何かの能力(ギフト)の発動条件なのかもしれないね。……女神様の讃美歌、と言った所なのかな? 皆が生き返った、と言うのなら」

 

 

ふむ。と考えを巡らせる。

生き返らせてくれた結果だけを見れば、神如きの能力を宿した超人が人種(ヒューマン)の味方をしてくれた~と考える事も出来ない訳ではない……が、先ほども言った通り安易な考えは危険だ。

 

とてつもない巨大な、強大な力が小規模の村とはいえその命を蘇らせた。……ライト自身の恩恵(ギフト)でも出来ない事がらだ。滅ぼす事は出来ても……1を0にする事は出来ても、それは出来ない。出来るのなら、もうとっくにライト自身の手で村を救っているから。

 

明らかに完全なる上位種である、と見立てた方が良い。そんな力が自分達に悪意を持って向けられたとしたら? 復讐所の話じゃなくなる。

 

 

「各国を巡り、同じ様な事案が発生していないかどうかの調査も重要になってきますねライト様」

「うん。そうだよ。そう言う意味でも冒険者計画は重要になってくる。諜報活動に加えて、名を上げる事で耳に入ってくるかもしれないからね。……僕以上の(・・・・)規格外の恩恵(ギフト)を持つ者の存在を」

 

 

ライトこそが唯一絶対であり、神である事に疑う余地はない。だから、普段のネムムであれば即座に否定する所———だが、この認識は、ライトの村の事を知った時に奈落全員が認識し、共有しているものだから。

 

 

「《復讐》と《ますたー》について知る事と《村を蘇らせた存在》の調査。確実に事を勧める為にも情報収集をしっかりしないと」

 

 

そう言ってライトは道化師の仮面を取り出し、顔に装着した。素顔は隠す必要があるからだ。

 

 

「折角の地上任務だ。冒険を楽しもうではないか!」

「楽観視し過ぎるのもダメだぞゴールド!!」

「あはは。じゃあ、行こうか皆。……冒険者としての旅へ」

 

 

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