職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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白の聖域

 

今日も賑やかな声が村に響く。

だが、そこは一見すると廃村。恐らくは火を放たれ、村ごと焼き払われたと一目で解る様な場所だった。

 

でも、実は違う。

 

その村は廃村ではなく、今日も賑やかに、何より幸せに、日々感謝を忘れずに過ごしている人種(ヒューマン)の村だった。

 

 

「んっ――――ん~~~ッ」

 

 

そんな村の1つの小屋の中から姿を現し、背伸びをする男の姿がある。

小鳥のさえずり、照らす朝日、それを一日の始まりの合図とし、目を覚まして起きてきた男の名は【ハクレン】、またの名を【ハク】。

 

この村の復興者であり、村では守護神とも呼ばれたり、再生の賢者、救世の導き手、創造主―――などなど、色んな異名で言われるが、本人はそう呼ばれるのを辞退している。

 

普通に名前で呼んで欲しい、と。

 

 

「「「ハクお兄ちゃ~~~ん!!」」」

 

 

朝の一番に、元気の良い声が、一声聞けば賑やかになると確信できるような声が何重にも織り交ざって聞こえてくる。

村の子供たち。……奴隷商人に捕まり、連れ去られそうになったところを助けた子供たちだ。

 

 

「みんなおは――――よう゛!!??」

 

 

どぼんっっ! とヘッドスライディングをその腹部に食らって思わずくの字に折れ曲がるハク。

 

口々に遊んで遊んで! ときゃっきゃと燥ぐ子供たち。

昨日約束したから~~と持ち出されてしまっているので、約束を反故にするのは主義に反する、と言う事でされるがままになっているのだ。

 

 

「ハクお兄ちゃん! もっともっと高く上げて!」

「いやダメダメ。このくらいで我慢して」

「ぶーー!」

「ぼく、お兄さんだからもっと高くても平気だもんっ!」

「あ、じゃあ私はおねえさんだから! 大丈夫!!」

 

 

魔術を使って軽く空中遊泳を楽しませるハク。

安全性には気を使っているが……やはり、地に足をつけてない状態が危ない事には変わりないので、あまり強請られても、頬を膨らませても、あきらめる様にハクは言い聞かせている。

 

無論、それもまた結構な重労働の1つなのだが……。

 

 

 

 

 

 

「……ふふっ」

 

 

そんな子供たちと救世主様が遊んでいる所を、朝の支度をしながら眺める主婦が1人いた。

本当に一緒に遊んであげてる姿は、ただの優しいお兄さんにしか見えない。

でも、彼がこの村を再生させて、更にはこの村を守ってくれている人でもあるのだから、何だか不思議な気分だ。

 

 

「やっぱり、神様なんだよ。ハクさんは。うんうん、間違いない」

「ふふふっ。私もそう思っちゃうんだけど~、ハクさん、そう呼ばれるのは嫌だ~って言ってるからね。嫌がる事は流石にしない様にしないと」

 

 

同じく洗濯物を干しに来た主婦の1人が話しかける。

そう、この村は今も尚、ハクの力によって守られている。

 

外観的には、完全に廃村の仕様。余程の事が無い限りどの種族も立ち寄らないだろう。仮に立ち寄ったとしても、一切問題ない。……神である、と言い切るのに相応しい御業でこの村を守ってくれているからだ。

 

 

人種(ヒューマン)に悪意ある者は一切全てを阻む】

 

 

ただ定めた結界のルール。

ハク曰く、対象範囲が狭まれば狭まる程に強力な仕様となっていく力らしい。

 

 

【人間全てを阻む】

 

 

と言った様に効果範囲を広げれば広げる程に、その威力は下がってゆく。

限定すればそれに見合っただけの力となるとのことだ。

 

でも、ここで疑問に思ったのは人種(ヒューマン)に悪意ある者など幾らでも居るではないか? と言う点だ。他の8つの種は明らかに見下している。ある程度の自制はしている様だが、それは殆ど建前の様なモノ。……奴隷として囚われていた自分達が嫌と言う程それは理解できるから。

 

でも、ハクは大丈夫だと笑っていた。不安もあったが、一度は死んだようなモノ。なら、それを信じる以外ない、と腹をくくったのだが、蓋を開けてみれば本当に大丈夫だった。何ヶ月も魔獣すら立ち寄らない。

一度は滅ぼされた廃村だから、目につくのは時間の問題だと思っていたのに。破壊した筈なのに復活していたら絶対にまた襲ってくると思っていたのに、大丈夫だった。

 

ハクが立ち寄る度に、人種の数が増えた。

小さな村が、徐々に大きく、活気に満ちていくのは見ていて涙が溢れた。またここから精一杯生きようと言う希望が見えたのだ。

 

 

「見た事の無い魔術―――。当然不安もあったけど、もうオレはオレの責務を全うするだけだよ。こんな風に生かせてもらったんだ。少なくとも、ハク様が居ない時はオレが、オレ達が守っていかないと、だな」

 

 

朝の見回りに行く男が数人、その主婦たちの話に入ってきた。

朝食のパンを齧りながら。……こんな幸せな世界がこの世にあるなんて、奴隷生活をしていた時は心にも思わなかっただろう、と今をかみしめる様に、美味しいパンを頬張る。

 

 

「ふふふっ。ああ、そろそろ朝食の時間、だね。あの子たちは遊ぶって言ってきかなかったけど」

 

 

コトコトコト~ と煮込んだスープの美味しそうな香りがここまで届いてくる。

ハクがやってきた時は、村総出で大パーティをする様に広場で食事を皆で取る様にしているのだ。

今、手が空いている主婦たちは総出で準備に取り掛かっている。その間、各家を空けてる訳だから、あり得ない話だが一応防犯の観点で見回り、ついでに村の外でちょっとした狩場があるので、獲物がとれてないかの確認を男がする。

 

 

「ハクさーーーん! そろそろ朝ごはんですよーーー!」

 

 

彼女の一声で、美味しい楽しい朝食の時間の始まりを告げるのだ。

……因みに、子供たちは皆まだまだ遊んでいたい! と言った意見の方が強く多いので、いつも不満顔だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ここ、だよな??」

「ああ、間違ってない。情報では間違いなくここだ」

「リーダーの言う事に間違いない! と言うか、情報源を鑑みても間違ってる訳はない! って言い切る所なんだけど……、どうみても廃村。滅ぼされた村にしか見えないな……」

 

 

村から数百m離れた場所にて。

目的地へと派遣され、向かっていた面々が、その姿を視界にとらえてからそれぞれが村に対しての感想? を言い合っていた。

 

情報通りに村はあった。……但し、情報通りの廃村。滅ぼされて一体どれくらいたったのか、解らないレベルで朽ちた村があるだけだった。

 

 

そんな場所で、人種(ヒューマン)が消えた。なんて情報が出てきたら、色々と疑うだろう。奴隷商人か、はたまた他種による快楽……虐殺の場にしているか否か。

でも、この話は少し妙なのだ。ギルドに来た依頼の中でも大した金額じゃないし、場所を考えたら位置的にリターンも無くメリットも全くない場所。そんな場所にわざわざ出向く他種族は少ないのだが、皆口をそろえて断言していた。

 

 

【何故だか村に近づけない。……でも、どうみても滅んでる】

 

 

そう言っていたのだ。

それでも、そこから人種が出てくるのを見ている者も居る。……ゴースト系のモンスターの類か? とも思ったし、ゴースト系モンスターの対処はそれなりに難易度がある、と言う理由で干されたクエストだった……が、それに目を付けたのが彼ら【モヒカンズ】である。

 

 

ライトの無限ガチャより排出されたカードの1つ。

 

 

【Lv20~25 モヒカンズ】

 

 

5人のちょっと、少々、ほんの少し……容姿が世紀末? なパーティである。

主に情報収集、諜報を生業とし、調査を続けているパーティだ。

 

 

「取り合えず進むぞ。ライト様のカードも頂けた上での調査だ。絶対に無駄にせず、必ず成果を残す! 良いな!」

「「「「はい! リーダー!!」」」」

 

 

ビシッ、と統率のとれたパーティであり、色々と訝しむ様子があっという間に切り替えると、村の方へと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃村改め、【白の聖域】 より。

 

※ 止めた方が……とハクは言ったがノリノリで命名されて皆も盛り上がってしまっていたので、止めるに止めれなかったりする。(白であり、ハクではない。……音読み訓読みとか関係なく、自分の名前じゃないので、取り合えず良しとしたのは別の話)

 

同じ白は白でもエルフ女王国にあるような白ではない。

本物の、本当の慈愛を持った白だ、と涙を流す者もいたから。

 

 

 

 

 

「エルフ女王国に巨塔が出現したって? んぐ、んっ」

 

 

スープを頂いている最中に、外での交易を賄っている商人の1人が情報の1つとしてハクに教えてくれた。

それはエルフ女王国についての大きな情報。ハク自身も拠点にしている国である為、大変有意義な情報の1つと言えるだろう。

 

 

「はい。商人たちの話では、エルフ女王国からそれほど遠くない原生林奥地に突如出現した、とのことで。……あまりの事に、首都周辺は大変混乱してる、と」

「ん―――」

 

 

ごくんっ、と最後の一口を流し込み、ハクは考える。

 

 

「それ、何だかおかしいね。ついこの間、エルフ女王国の……それなりに位の高そうなメンバーたちの話も聞いてたんだけど……、そんな事、一言も言ってなかったんだけどなぁ」

 

 

ぽりぽり、と頬をかきながらハクは言う。

 

 

「ソーシャさんも、何か聞いてないかな?」

「いいえ。……その、私はその時、それどころではなくて……、申し訳ありません」

「あ、ごめん! それはそうだよね。大変だったんだし……。ちょっとデリカシーが無かったよ」

「ええ! いえいえ!! ハク様、お顔をおあげください!!」

 

 

エルフ女王国での情報収集の際に、それなりに奥へと諜報で赴いた時に助けた人種の1人であるソーシャは、頭を下げるハクにぎょっとして直ぐに頭を上げてもらおうと声を出した。

 

因みにソーシャは朝っぱらからエルフ種の1人に娼婦の様な真似事をさせられていたのである。……その傍らでは、人種(ヒューマン)を的にしたやり投げが行われており、正直血なまぐさい現場、以外の何物でもないと言うのに、そのメンツの名は〈白の騎士団〉だと言うのだからお笑い種だ。

 

 

「でも幾ら欺瞞(デコイ)とは言え、噴き出る血や臓物まで再現されてるからね……。目の前で見せられても、ソーシャさんには我慢させちゃったし」

「……それでも、です。ハク様は私を、そして彼を助けてくれたんです。ハク様がいなければ、私も、彼もきっともう生きてはいないと思います。ですからどうか頭を下げないでください。ハク様には感謝する以外ないのですから。……寧ろ、私の全てを貰っていただきたいのですが……」

「はいはーいちょっとストップ! ダメですよーダーーメ! 沢山の女性の方々の目の色が変わっちゃうような発言はNGでお願いしますよーー!」

 

 

ハクはぱんぱん、と手を叩く。

この村の女性比率は結構高めだ。結婚している者もそれなりに多いが、独身者も多い。独身男女は共に比率で言えば5:5で良い具合なのだが……、皆一律にハクの事を慕っていて、頬を染める者が多い。心から安心できる相手である、と認識し、更には低姿勢。敬う崇める等をさせずに自然にフランクに接する様に~~とまで言われては、所謂アタックしない訳がないのである。

ソーシャもその1人になりつつあり、元々散々醜いとエルフ種たちに罵倒されてたが、はっきり言って容姿は普通に綺麗な分類に入る。それに加えて、かなりの凶器をその肢体には備わっているのだから高威力だ、と言えるだろう。

 

 

「残念です。私はいつでもハク様の為なら、ですよ?」

「私も私も!」

 

「ハクお兄ちゃんと私、けっこんするーーー!」

「あ、ずるい!! わたしもわたしもーーー!」

 

 

こんな感じで、発情期? と思ってしまう様な場面になってしまうからなるべく気を付けて欲しいのだ。何よりも子供の前で言うものじゃない、と年長者たちに注意して貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

「それはそれとして―――、その巨塔の事だけど、他に何か情報はあるのかな?」

「はい。実際に自分が確認をした訳ではないのですが――――」

 

 

 

断りを1つ入れて、説明をしてくれた。

 

何でも、その謎の塔が出現した事で、原生林奥地にて生息していた高レベルモンスターが押し出されてしまい、だからこそ首都周辺が、細かく言えば首都と港町を繋ぐ街道が大パニックを起こしている、とのことだった。

 

港町との物流が阻害される、と言うのは無視できない事態だろう。

 

エルフ女王国の主戦力は出張ってないらしいが、それに準じる騎士団は派遣されて安全確保に努めている様なのだが、そこで高レベルのモンスターたちは【巨塔から逃げてきた】と言う事が判明した。

 

安全確保が出来ても直ぐにモンスターたちがわいてくる。元の場所に戻る気配が無いのでかなり手を焼いている。

物流を途絶えさせない為の護衛任務を主にし、それが手一杯なために今はギルドの冒険者間では【謎の巨塔の調査】のクエストが大人気らしい。

 

 

どんな些細な情報であっても高額報酬が出るので人気なのだ。

……が、そう甘い話でもない。

逃げてきたとはいえ、高レベルモンスターが跋扈する街道を抜け、それらが恐怖して逃げ出さない程の強大な何かが居る場所へ赴くのは並大抵じゃないだろう。

腕に自信のある冒険者が集っているのか或いは………。

 

 

「………(また、黒い風が吹いてる可能性がありそう、だね)」

 

 

人種を使った非人道的な手段を用いれば、情報の1つや2つ、危険を冒しても持ち帰る事は出来るだろう。……そんな手段を安易に考えて、想定してしまえる様になってしまったのは、正直恥じたい所ではある、がこの世界にきて知った以上は仕方がないし、直ぐに行動が出来るからハク自身はある程度割り切っている。

 

 

「ん?」

 

 

そんな時、だ。

ハクは何かに感づいた様に背後を振り返った。

 

そんなハクの行動に皆首を傾げる。

口々に、どうしたか? と聞く。

 

 

「来訪者みたいだよ」

 

 

ハクはそういうと、笑っていった。

普通なら、皆驚き、且つ緊張が走る場面である……が、ハクが居る事と何より結界についてちゃんとハクに聞いて習っているので、不安は無い。

 

 

「ハク様。我々が行って確認をしましょうか?」

「ん。大丈夫。この気配、僕が知ってる人のものだから」

 

 

村の男衆が名乗りを上げたが、ハクは笑顔で手を振った。

この村を守り、皆を護る様に仰せつかった男たち。こういう時こそ、出番だと意気込んだが、ハクの知り合いと聞けばそうはいかないだろう。

 

 

でも、その気概はハクは好ましい、と思っている。

何故なら、いつでもハク自身がここに滞在しているとは限らないし、世の中には絶対はない、とも教えている。……あまり想定したくない事態だが、結界が破られる可能性だって0とは言えないから。そういう時の為の避難訓練の様なモノはしっかりして貰っているし、自分達で出来る事はする。依存し、ただ寄りかかるだけにはしないその姿勢は大変素晴らしいの一言。この世には自分達よりも桁が1つも2つも違う程の強さを持つ存在が多く、危険な世界だと言うのに、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――村に近づいた先には、不思議がありました……ってか?」

「リーダー! 現実逃避はしないで欲しいっスよ!」

「間違いなく現実。それに、謎は解けました。……廃村に消える理由、実は廃村なんかじゃなく、1つの村だった、って事か」

 

 

モヒカンズの5人がこの白の聖域に足を踏み入れて、境界線を越えて、村の真の姿をはっきりと見た瞬間、電流が走った様子。

朽ち果てて見えていた筈の建物が、焼け落ちてしまった家屋が、一瞬の内に修復? されたかの様に復元し、それどころか家々の数が明らかに増え、雰囲気、空気までもが変わった様に見えたから。

 

 

「まさか、ダンジョンの類に飛ばされた可能性は……?」

「空間から隔絶された世界って感じか。……どうやら、出入りは自由で入ったらもう出られない、って感じじゃないから違うと思うが」

 

 

ダンジョンとはもう1つの世界。

世の中には突然飛ばされてダンジョンに入れられる~なんてことも起こりえる。

だが、大体は悪意に満ちていて、一方通行だったり、抜けた先は危険だったり、と言ったパターンが多いのがダンジョンだ。

 

そういった意味でも、ここは違った。

何ていうか……一言で表すなら【平和】な世界だったから。

小鳥の囀りや、深緑の葉の隙間から差し込む朝日は幻想的で何よりも癒される。

 

 

でも、だからと言って警戒しない訳にはいかない。

モヒカンズは気を新たにしながら、村を調査しようとしたその時だった。

 

 

「おーーーーい! やっぱりそうだった! モヒカンさんたち~~~!!」

 

 

聞き覚えのある声を聴いたのは。

 

 

 

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