職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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猛省します……

 

「成る程……、噂の巨塔はやっぱりライトさんたちだったんですね。……ほっ、良かった」

 

 

ハクは、モヒカンの説明を聞いてほっと胸を撫でおろした。

エルフ女王国の原生林奥地にて突如発生した白い巨塔。それで国は大パニックになってるとの事。でも、大変なのは主にエルフ種だけであり冒険者にとっては高額な緊急クエストが発生しているので、稼ぎ所でもあるからある意味嬉しい悲鳴もあるとの事。

 

 

「ハク殿? どうかしたのですか?? 何やら安心した様な感じ、ですが」

「ああーー……、その、今回は感情的に動いて邪魔しなくて良かった……、って安堵してるんですよ。……だって、エルフ種ってマジで酷いですから。酷かったですから」

 

 

うーーん、と頭を掻きながら、ハクはそう告げた。

そして、一連の出来事をモヒカンたちに説明をする。

 

 

ハク自身は次はエルフ女王国を拠点とし、色々と冒険しようと思っていた。

そしてライト達の、ライトの目的は解っているが実際に次の標的にするのは何処になるかまでは解らなかった。

でも、ハクの眼で見える【黒い風】で恐らくエルフ種が次のターゲットだとは思っていた。

※黒い風の件はハク自身にしか見えない為、説明しても説得力を持たせるのが難しい、と判断して割愛している。

 

 

色々と紆余曲折があって、エルフ女王国の王宮内部に入った所で……。

 

 

「あそこに居るソーシャさん。それにあっちで畑仕事をまだ頑張ってくれてるダイヤンが酷い目に遭ってまして……」

 

 

目撃した時狂気の宴がそこには開催させられていた。

エルフ種女王国は全体的に白を強調されていて、一見綺麗に見えなくもないが、内情は本当にどす黒く薄汚れている。この場所でどれだけの人種(ヒューマン)の血が流されてきたか? と想像するだけで吐き気を催す程だった。

仮に、現実世界で言うルミノール反応を試してみたら、トンデモナイ事になるんじゃ? とも思った。

見ていられなくなって、直ぐに【虚構の咎人(ファントム・オーラ)】【認識阻害(ミスディレクション)】【大地浸透(アース・ハイド)】の魔術を併用で発動させて確保と同時に、彼を密着状態が条件で発動させる事が出来る最上級統回復魔術の【完全回復(フル・ケア)】回復させた。

 

ソーシャに関しては、エルフ種の1人に娼婦の様な扱いをされていた。それはそれで人種(ヒューマン)にとっては大出世? 色々安泰で頑張ってその地位に昇りつめたのでは? と彼女の努力を考えてみたのだが、その後の連中の会話でそれは無い、寧ろ最悪だ、と思って彼女も救出する事に決めた。

 

捨てられない様に必死になるのを嘲笑い、飽きたら処分する。何故自分が殺されるのか、裏切られたのか、と言う絶望と共に獲物を狩る様に殺す。

エルフ種は例外なく、満遍なく、人種(ヒューマン)を人扱いしていない事が解ると言うものだった。だからこそ、エルフ種に変身して、人種(ヒューマン)の助けになっていた自分が異質で異彩だったのだろう。そしてあの時のカイトが表情を極限まで歪ませ、憎々しい目で見ていた理由も何となくわかると言うモノだ。

 

 

欺瞞(デコイ)は彼らには見破れない様で、別に気にする事なくナイフを投げては人形を傷つける、と言った行為を止めない。

 

 

 

「……正直、あの場で全員処理しようと思ったんですが……、《カイト》の名も出していたんで。これ、また色々とやっちゃうとライトさんたちに迷惑かもしれない、と我慢してたんですよ」

「……白の騎士団、っスか?」

「えっと、確かそう言ってましたね。カイトは白の騎士団の元団員——とか、言ってましたから」

 

 

ハクの話を聞いて、モヒカンたちは改めて戦慄する。

 

『エルフ種のカイトが所属してたトコの事じゃないよ!!』

 

 

と、思わず言いたくなるくらいに。

ハクは我慢していた、との事。我慢してなければ……殺っていたであろう事は想像できる。そもそも、気付かれずに白の騎士団メンバーが連れていた奴隷を解放している離れ業を見せているのも驚愕の一言。

 

因みにモヒカンズはハク自身との付き合いはほぼ無いに等しい。

※エリー、妖精メイド、そして ナズナたちに殆ど独占されていたから。

 

話を聞いて一言二言話をした程度だ。それで覚えていてくれてるのは光栄だが。

※モヒカンたちの格好を一目でも視れば、その非常にインパクトが強い容姿なので早々忘れる事は出来ない。 ハク談

 

白の騎士団はエルフ種最強戦力。中でも団長である【静かなるハーディー】は隣国に名が轟く程の実力者。人外の力を有する。とある。

 

でも、そんな連中を相手にしてハクは全く問題ない、相手にならない、と言わんばかりな様子だ。……仮に自分達の主であるライトと出会うのが遅れていたら? 恐らくエルフ種は壊滅していた可能性だって十分過ぎる程ある。

 

 

 

「シャンプーだかハットだかの名前の男と言い、なんか子供……無邪気に甚振る子供と言い……。ほんと、どうなってるんですかね?」

 

 

 

心底嫌悪する様に、それでいて空気が悪くならない様に時折笑顔も見せるハクを視て、戦慄する以上に改めて頼もしく思うのだった。

モヒカンたちはライトの指示で冒険者兼情報収集の諜報員兼人種(ヒューマン)救助隊も担っている。

だから、1つでも人種(ヒューマン)が安心して良い場所が出来るのはありがたい、と心から思っている。

 

そして、そんな心をまるで見透かしたかの様にハクは言った。

 

 

「―――この村の皆は受け入れてくれます。急ごしらえだった駆け込み寺みたいな感じ、になっちゃったんですが、みんなみんな頑張ってくれましたからね? だからモヒカンさん達も、困ってる人種(ヒューマン)の人達がいたら、ここを紹介してあげてください。僕の名前を出してくれれば皆受け入れてくれると思います。人が増えれば規模も大きくなる。……結界の調子や調整も考えておかないと、ですね」

 

 

ハクはそう言って村の外を眺めた。

眼には見えないが、村を覆っている光の膜がハクの眼には見えるのだろう。

ライトが奈落の絶対神である事に疑いの余地はないが、今この場に居る人種(ヒューマン)にとっての神は紛れもなく……。

 

 

「ハクにいちゃーーん!」

「あーーーそーーーぼーーー!!」

「うわっっ!」

 

 

ハクの背中に跳び付いた子供たちが居た。

慌てて引きはがそうとする親たちも居るが、ハクは笑顔で手を振っている。

 

 

「よっし。またちょっと用事が出来たから、今日いっぱいは全力で遊ぼうか」

「えーー! 明日も明後日もその後も一緒がいいーーー!」

「ハク兄ちゃん兄ちゃん!!」

 

 

慕われているのが解る。

それでいて偉ぶる訳でなく何者にも分け隔てなく接するその姿には好感しかない。

 

 

「では自分達はここで。ハク殿の事を知れて良かったです」

 

 

モヒカンのリーダーは席を立った。

ハクもそれを視てニコリと笑う————が。

 

 

「現在巨塔にはエリー様がおられます。エリー様が巨塔の魔女として君臨し、今後の作戦に繋げていく予定、とまでは聞いてます」

「げっ。エリーさん……かぁ」

 

 

笑顔だったのだが……一気に顔を引き攣らせたハクだった。

それはまぁ……ある意味仕方がない事かもしれない。

 

特殊な性癖と言われたり、なんやかんやで玩具にされたり、色々あったから。

因みにそう言った内情は、奈落では光の速さで情報共有されるのでモヒカンズの皆も周知している。

 

 

「はははは! ハク殿はエリー様が苦手ですかな?」

「い、いえ。ニガテ~と程の事では無いのですが」

 

 

あはは、と苦笑いした後『色々ありましたし……』とボソッと呟いたのは聞き逃さないモヒカンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ~~~」

『はい。はい。それでハク殿が創り上げた村がありまして。人種(ヒューマン)たちの身の安全は間違いなく保証されてます』

 

 

モヒカンの肩に青い小鳥が止まっている。

まるで、小鳥と会話をしている様に見えるが、それ間違いだ。この小鳥はアオユキが契約しているモンスターの一匹。そしてライトの【無限ガチャ】カード【SR 念話】を併用して小鳥を媒介にして会話をする事が出来るのだ。

 

 

そして、本日アオユキにも伝わる。

ハクが人種(ヒューマン)の村を創ったと言う事実を。

 

 

元々完全に滅ぼされた村1つを完全復元させているのだから、今更驚く事は何もないが、やはりある種の尊敬の念を送りたくなるのもまた事実。

アオユキにとってはライトが全てで絶対なのだが、次点くらいにはハクを置いても良いだろう、と思っている程だ。

 

結構辛辣で強気な物言いかと思われるかもしれないが、これは実はトンデモナイ事だったりもする。

ライト以外は基本有象無象。害を成すと言う訳ではないが、心を開いたりする事は誰も無い。ライトの【無限ガチャ】から出てきたカードだから、と言う事もあるだろうが、何より他8種族たちがあまりにも酷すぎて、醜過ぎて、と言う理由も間接的にはあるかもしれない。

 

エリーやナズナは当然好感度が上がっているし、唯一平静としているのはメイくらいではないか? とも思う。……無論、だからと言ってライトを想う気持ちが揺らぐ事は一切ないから、その辺りは勘違いはして欲しくない。

 

 

『あの、アオユキ様??』

 

 

モヒカンがまるで不穏な気配? でも感じ取ったのか、と思える程のタイミングで、声をかけてきた。

無論近くに居る訳ではなく、念話なのでそう言った機微を感じ取れる訳ではないのだが……と思いつつも、アオユキは少し咳ばらいをしたのちに『にゃ~~』と返事をかえした。

 

 

「今後、是非頼ってくれても良い、と言って頂けてるので。今し方保護した人種(ヒューマン)の少女にもハク殿の村へ向かって貰おうかと思っております」

『にゃ~~』

「はい。勿論その辺りは皆に伝えて貰っても良い、と。……それと言伝がありまして。『是非遊びに来てください』との事でした」

 

 

奈落で世話になった事に対する恩返し~と言った所だろうか。

アオユキはそう思ったが……。

 

 

「『あ、でも居ない時の方が多いと思うので……ぼくが居る時がありがたいですね』 とも言っておりました。ハク殿も世界を駆ける冒険者。故に仕方がない事ですよね」

『……にゃ』

 

 

詰めが甘いと言うかなんというか……、そう言う意味でも人間味があって良いと言える点なのかもしれない。完璧超人と言う訳ではない。そんな人種(ヒューマン)は我が主、ライトだけだろう、と。

 

 

 

そんな時だった。

 

アオユキの頭上からふわりとスカートを広げて舞い降りてきたのはエリーである。

 

 

「首尾はどうですの?」

「にゃ~~」

「……順調、でいいのよね? ライト神様はこれでちゃんと会話できるのが凄いですわ」

 

 

にゃー言語で意思疎通が出来るのはライトと、そして念話で通じ合ってる相手だけだ。何となく心情を読み取る所作が出来るハクは、そう言う仲間(・・・・・・)が居たからある程度慣れてる、との事。

生憎、エリーにはそんな類の事は出来ないからお手上げである。……いや、そこまで理解しよう! と思っているワケではない、と言うのが正しいだろうか。

 

 

「まぁ、何にせよ。アオユキさんの実力は疑っておりませんわ。ですが、地上で実際に多数の種を相手に多くのモンスターを操作して取捨選択する判断技能、疲労、細かい問題等 【奈落】原生林調査とはまた違った問題が出るでしょう。その問題点の洗い出しには丁度良い機会ですから、存分に楽しんでくださいましね」

「にゃ」

 

 

エリーはそう言うと同時に———『それと』と付け加える。

 

 

「妙な空間の揺らぎ、歪さを感知致しましたの。場所は人種(ヒューマン)王国内。地上で諜報、情報収集してくださってる皆さんからの情報でも危険度はあまり無いとの事ですが、アオユキさんの使役するモンスターで危険が無いかある程度の調査をして貰いたい、とライト神様から承っておりますわ」

「……にゃ」

 

 

この時、アオユキにしては返答に時間がかかった事に違和感をエリーは覚えた。

自分からの指示ではなく、ライトからの指示だ。ノータイムで頷く事こそが普通だと言うのに、これは何かある? とエリーは直感した。

 

 

「何だか歯切れが悪いですわね? 何かあるんですの? ライト神様からの指示ですわよ」

「―――別に何も無い。ただモヒカン達の通達がまだ主に届いていなかった。それが悔やまれる、と思っていただけだ」

 

 

突然のアオユキの台詞に少なからず驚きを見せるエリーだった……が。

 

 

「そうなのですか。……では、アオユキさんやモヒカンさん達は、揺らぎの調査をもう終了させている、と?」

「つい今し方報告があった。終わると同時にエリーが降りてきた」

「それはそれは申し訳ありませんでしたわ」

 

 

形だけの謝罪だが、エリーの本心はそこには無い。

 

あの揺らぎについて、空間の歪について気になっているのだ。

魔術か何かの干渉であるなら、禁忌の魔女と呼ばれるエリーが興味を持たない訳がない。ただ、ライトからの命令が絶対だから、直接指示をされない限りは後回しにしているのに過ぎないのだ。

 

 

「それで、そのお話は私に聞かせてくれませんこと?」

「構わない。……が、主を不快にさせないとここで誓えるのであればだが」

「――――は?」

 

 

ここでまさかの暴言。エリーにとって何よりも超えてはならない一線を、悠々とアオユキは踏み越えてきた。

主、ライトに対して不遜を働く訳がない。ソレを否定すると言う事は、存在そのものを否定するに同義だ。

 

 

「怒ってる様だが、理解できない。自身の胸に手を当てて考えてみれば解ること」

「おっしゃってる意味が解りませんが? それに私も理解が出来ませんわ。私がライト神様に不敬を働く? 随分と面白くないジョークですわね」

 

 

レベル9999の強さを誇る2人の威圧し合い。それは空間を揺るがせる程の見えない圧力となって周囲に吹き荒んだ。

ここが巨塔、エルフ女王国首都から離れた場所で良かった、と彼女達を視ている者が居れば誰もがそう思うだろう。

それ程のぶつかり合いだったのだから。

 

だが、そんな空気も次のアオユキの雰囲気で、言葉で霧散する。

 

 

「はぁ。この単細胞」

「んな!! 誰が単細胞ですか! 誰が!!」

「何故解らない? 空間の歪はハクが齎せたモノ。かの存在が、人種(ヒューマン)を護る為に、小さな理想郷を創り上げた。例え人種(ヒューマン)王国であっても外部にバレる事は危険と判断し、己が結界を以て周囲への認識を阻害させた。その歪を感知したんだろう」

「――――はぁ!??」

 

 

アオユキの説明を聞いて、エリーはまた憤慨する。

今までアオユキとエリーののぶつかり合いだったが、ここへきてエリーだけの舞台になってしまったのである。

 

 

「私の感知魔術でもある程度しか判明せず、これ以上は現地に赴かなければならない、と判断しましたのに、あの方の魔術は本当に、本当に—————」

 

 

爪を噛みながらぶつぶつと呟くエリー。

知らない魔術が存在する。知らない力が存在する。魔術に限っては知識欲の権化でもあるエリーにとってそれは到底納得しがたいモノなのだ。

 

 

「だから胸に手を当てて考えれば解る、と言った。今の自分自身を客観的に見てみろ。……そして主を不快にさせるな。これ以上ご迷惑をかけるなら殺すぞ」

「……それこそ面白くないジョーク。アオユキさんが私に勝てるとでも? ……と、言いたい所ではありますが、その辺りは私にとっても猛省すべき点に他なりません……。申し訳ありませんでしたわ………」

「!」

 

 

特徴的なとんがり帽子の縁を持ってエリーは蹲る。

 

アオユキの言う通りだ。

あのハクと言う男のコトになってしまったら……何故だかブレーキが外れてしまう。

ライト自身は笑顔で許しているのだが、それはハクが許して欲しいと言ったからだ。もしも、あの時も————戦術級(タクティクス・クラス)捕縛魔術(ドルン・フェッセル)を使って有無を言わさずハクを捕縛した。

 

アレに対してハクが激怒していたとしたら?? と後々考えたら身が縮みあがると言うものなのだ。

 

 

そしてアオユキはアオユキで、エリーの反応に対しては想定外だったようで、目を丸くさせていた。

ここでもなんやかんや言って燥いで誤魔化して、と色々と予想していたが、悉くが外れている。

恐らくはハク本人が此処に居ないから、なのだろうか。

 

 

「―――天然のたらし属性、と言った所か。それも高レベル。阻害不可」

 

 

アオユキはそう判断した。

それにエリーの事ばっかり言える程、自分自身が出来ているワケではない、とも実は思っているからだ。

完全に棚に上げてる自覚はある。猛省すべき、と言うなら自分もそうだし、そう思っていたつもりだった。

 

 

ハクを視る為に、モンスターたちをけしかけて調べさせようとした。ライトはハクの事を恩人だと言っていたし、信じるに足る人だとも言っていた。……故に、その行為は裏切りに等しい行為だと言える。

 

 

エリーとアオユキは暫く互いに項垂れるのだった。

 

 

 

ただ、これだけは言えるだろう。

恐らく、きっと、間違いなく————。

 

 

ライトが2人に対して本気で怒るか、若しくはハク自身がライトに本気で不快だった、とするかしないと、エリーは勿論、アオユキも所々でハクに絡んでいくだろう、と。

 

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