職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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運勢を語るひととき

エルフ女王国首都 冒険者ギルドの扉をダーク達3人はくぐる。

これまでドワーフ王国のギルドしか赴いていない為、他国のギルドは初めてだった。

そして、エルフ女王国のギルドはどんな風だろうか? と疑問に思っていたが、それは直ぐにも解消される。

 

 

「流石はエルフ種の首都、と言った所かな。冒険者ギルドも大分お洒落だね」

「主の言葉通り。洒落ているな。国によって意外とギルドも内装が変わるのだな」

「ダーク様ダーク様! クエスト依頼の貼り紙があっちにあります。どうやら、基本的な運用方法は変わらないみたいですよ」

 

 

ネムムの言葉を聞き、ダークは貼り紙のあるギルドの象徴の1つである掲示板を目にする。

内装などは随分と違うが、根幹部分の運用は同じだった、とネムム同様の感想を得た。恐らくは他の国でも同じだろう、とも思えた。

 

そして、口元をマフラーで隠したネムムはまるで仔犬が飼い主に褒めて貰いたいかの様に指を示しては興奮気味に身体を揺らす。そのマフラーも宛ら仔犬の尻尾の様に見えた。

 

ライトはそんなネムムに微笑みを向けるのと同時に、提示版の一番目立つ場所にある【謎の巨塔】についてのクエスト内容が貼られてあるのを確認した。

現在時刻は丁度正午―――を過ぎた辺りだろうか。

冒険者たちは皆で払っている様で閑散としている。そのおかげであまり騒ぎにならないのも良かったし、何より目当てであった【謎の巨塔】のクエスト内容を楽に確認する事が出来た。

 

 

「なるほど。噂通り【謎の巨塔】について、どんな情報でも持ち帰るだけで結構な良い値段になるようだね」

「わはははは! 主よ。活動場所を変えて正解だったな!」

「ダンジョンでの狩りも悪くはありませんでしたが、雰囲気が悪くなったのと、同じことの繰り返しで単調になってしまっていましたからね」

 

 

因みにこの会話の殆どが(プラフ)だ。

実際には雰囲気は悪くなってなかったし、単調化したから場所を変えた訳でもない。

何なら、黒の道化師パーティは大分有名になっていて居心地の方は悪くは無かった。人種(ヒューマン)に対する扱いも、他国から見て見れば十分過ぎる程改善の兆しが見えていた事もあったし、見下してる感はまだまだ否めないが、殆ど無視出来る程度の威圧に収まっているので、今後あの場所の治安は外部干渉さえなければ良くなっていく事だろう。

やはり、中でも【孤高の白】事、エルフ種のハクの活躍やその姿勢が皆の意識を変える一助になったとも思っている。……少なくとも、ギルド関係では皆平等である、と。

 

そして彼は今も彼の赴くままに世界を旅して———その過程で皆に幸せを齎している。

心から尊敬できる人であり、……奈落や自分の村以外では初めて出来た友達————。

 

 

「ふふふっ」

 

 

ライトは朗らかに笑って見せた。

先ほどの会話から色々と連想し、思い出し、そして報告内容も同時に頭の中で再生されて————心地良くなったのだ。

 

 

「楽しそうで何よりです! ダーク様!」

「わははは! 未知との遭遇だ。心躍ってこその冒険者! 吾輩にもよく解るぞ主よ!」

 

 

微妙にゴールドは外している様だが、この場で本当の意味を言ってもあまり意味は無いし、何より会話内容からズレてしまうのでライトは修正する事は無い。

実際にゴールドのネムムも、何となくではあるがライトの考えている事は理解できる気がしていた。主であるライトの思考をよもうなどと不敬に当たるとは思うが、それでもそれを口に出さないくらいには、罪悪感ある顔にならなくなるくらいには、良しとしている。

何故なら楽しそうに笑っているライトの表情を少しも曇らせたくない。

 

 

ほんのひと時だけ、穏やかな気持ちでいられた事に感謝をしつつ、改めてスイッチを切り替えた。

 

 

今回の目的。

冒険者の出で立ちをし、エルフ女王国首都にまで来た理由はただ1つ。

 

【サーシャへの復讐】

 

その為に冒険者ランクを上げて実績を作り、この場へとやってきたのだ。

 

 

あの巨塔はエリーの発案であり、作戦。

現在も尚、あの【謎の巨塔】へは1人の冒険者も辿り着けていない。

 

未だ誰も到達していない【謎の巨塔】へと至り、人種(ヒューマン)で構成された自分達が誰よりも早く情報を持ち帰ったとすれば、その成果は間違いなく冒険者ランクを更に押し上げる実績になり、エリー曰くサーシャ及び【白の騎士団】を引っ張り出す事になる、との事だ。

今のところ、ライト自身にはこの行動がサーシャと白の騎士団を引っ張り出す事になるのかは解らないが、エリーに関しては全幅の信頼を寄せている。故に全面的に任せているのだ。

 

 

「じゃあ、このクエスト内容も確認出来たし、そう暗くならない内に宿屋を探しに行こ———」

「こんにちは、彼女、めっちゃ可愛いね!」

 

 

ライトが2人に対して指示を出そうと振り返ったその時、若いエルフ種冒険者2名がネムムの前に立ちはだかっていた。

エルフ種男性というだけで、相応の容姿が備わってると言われる程に美形な種族ではある……が、真なる意味でエルフ種(・・・・)の格好良さ、気高さ、その知性や慈愛に満ちた心を目撃した自分達からすれば(実際はエルフ種に変身していただけなのだが)、あの程度、不快な有象無象としか思えなく、寧ろ軽薄で不快さを倍増しにさせる分類の男だと言える。

 

ネムム以外のライトやゴールドをあからさまに下に視ている、その態度を隠さない様子もまたよく視えると言うものだ。

 

 

「オレ達ここで冒険者やってるんだけど、人種(ヒューマン)なのに君みたいなカワイイ子、初めて見たよ。ねぇねぇ、名前教えて貰えない?」

「マジカワイイねぇ、君。劣等種(ヒューマン)にしとくには惜し過ぎるぜ」

 

 

人種(ヒューマン)ではなく劣等種(ヒューマン)

発声こそ同じで違いなど普通解る筈もないが、この2人の態度を視てみれば一目瞭然と言えるだろう。

ネムム自身もダークが見下されているのが解ったので、即斬首———とする訳にはいかないので、取り合えず牽制。

 

 

「ダーク様のお言葉を遮って話しかけてくるとは……不敬が過ぎるぞ」

「ふけい? ナニソレどういう意味?? キミ、可愛いだけじゃなく随分面白いね! クエストを探していた様だけど、良かったら俺たちと一緒にパーティ組まない??」

「こう見えてオレ達、レベル150を超えてるんだよね。だから一緒にパーティを組んでくれたら君の事、お姫様の様に守っちゃうぞ♪」

「ふふふ♪ それにオレ達エルフ種だから、イケメンズ! 人種(ヒューマン)なんかとは比べ物にならないくらいのハンサムだろ? 一緒にパーティ組めばいつだって君にイケメンパワーを注入しちゃうぞ☆」

 

 

たかだか150程度で。そこらへんの石ころの方がまだ脅威だと思える程の分際でよくもまぁ、ここまで大口が叩けるものだ、と眼前で言ってやりたい衝動に苛まれてしまう。イケメン? 醜いと書いてイケメンと読むのか? とも言ってやりたい。何なら実際そのイケメンと呼ぶ顔面をボコボコに破壊したい、と思ってしまうがそれも我慢するネムム。

 

………人種(ヒューマン)と見下している連中の中での絶対の常識は必ず人種(ヒューマン)は下。劣等種とかいてヒューマンと読む様にとなっている。

それ以外の例外は一切ない、と信じて疑わないのだ。自らの命が危険にさらされてるなど、夢にも思っていない。

 

 

「ぶふぉっっ、イケメンパワー(笑)」

 

 

因みに、ゴールドは先ほどの2人の勧誘台詞がどうやらツボだった様で、必至に笑うのを堪えている。……ちょこっと声に出ていたが、直ぐ隣に要るライトにしか聞こえないレベルのものだったので、あの2人には聞こえてないだろう。

聞こえていたら絶対にケンカになるだろうから。

 

 

「――――」

 

 

ネムムはそんな我慢しなければ爆笑しそうなゴールドと違って、殺してしまわない様に。真逆の感性を以て自制している。

何せ、ネムムはレベル5000だ。彼女が本気で威圧したともなれば、この場に居る全員が昏倒……所ではなく、肉体そのものが死を選ぶ。その方が幸せだと判断し、心臓が停止しかねない。

それを解っているから懸命に耐えているのだ。

少なくとも殺気、威圧は開放したりしない。

 

 

「ダーク様と一緒に居る以上、貴様達と話すつもりもパーティを組むつもりも無い。失せろ」

 

 

怒りを抑えながら、どうにか声を出す事が出来た自分をほめてあげたい気分だ。

奈落でここまで自制出来る者が他に居るだろうか? と思ってしまう。この時ばかりはレベル差関係なく、ライトと共に冒険者となる、パーティメンバーと選ばれた自分こそがトップだ、と胸を張って言える……かもしれない。

 

 

そう気を落ち着かせていたのだが、この2人はそれで止まる訳もなく。

 

 

「だーく様って、この変な御面付けたヒューマン(劣等種)のガキのこと?」

「いやいや、こんな子供と一緒に居るよりオレ達と一緒の方がマジで安全だし、君も幸せだから! エルフ種のオレ達がこんな声を掛けられるなんて一生に一度あるか無いかだよ? マジで今がチャンスだから!」

 

 

ネムムが拒否しても食い下がるエルフ種の2人(バカ)

頑張って自制するネムムには悪いかもしれないが、ライト自身もそろそろ行動に移したい、と思ってるので、間に割って入った。

 

 

「申し訳ありません。ネムムは僕達の大切な仲間なので、これ以上勝手な勧誘は止めて頂けませんか?」

「だ、ダーク様………ッッ」

 

 

一瞬。本当に一瞬でネムムの表情が変わったのを、この至近距離で視ていたエルフ種の2人(バカ)は嫌でも解った。明かに嫌悪している表情だったのが、ほんの一瞬で一転。ライトに庇われた事で顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、恋する乙女に一変。ここまであからさまな態度の違いを見せつけられたら、プライドの高さは天井知らずなエルフ種が、この2人(バカ)が黙ってられる訳もなく。

 

 

「こ、んの、ヒューマン(劣等種)が下手に出てれば調子に乗りやがって……」

「餓鬼もしゃしゃり出てくるんじゃねぇぞコラぁ!!」

 

 

激昂したバカの内の1人がライトに向かって拳を振るおうとしたその時だ。

 

ぱちんっ……と、何処か、指を弾く様な音が聞こえてきたかと思えば、突如眼前の男は真っ赤にさせていた顔を真っ青に変化させる。

 

 

「あ? おい、何がどう……ッッ!!」

 

 

そして同じく隣で激昂して拳を振るってきた男程ではないが、相応に顔を赤くさせている男も同じく顔を青くさせる。

 

すると————ぎゅごるる………、とみょうちくりんな音が聞こえてきた。それが腹を下した時の音だと解るのにそうは時間がかからなかった。

何故なら、バカ2人は腹を懸命に抑えているからだ。

 

 

「こんにち————おや?」

 

 

いきなり腹を押さえ、蹲る寸前の所の男たちとライト達一行の前に、新たな来訪者がギルドの扉を潜ってやってきた。

 

 

「ホウアさんと、ケーボさんじゃないです……か、って大丈夫ですか?」

 

 

「ッ、ッッ」

「は、腹、が……」

 

 

誰なのか確認したが、それどころではなく。冷や汗脂汗を流して項垂れている。

ギルド内に御手洗いは存在するが、そこまでもつだろうか。ここで粗相をしようものなら、直ぐに国中にその失態、恥部が晒されてしまって良い笑いものにされるだろう。

 

 

「はぁ、どうやら。今回の占いも的中のようですね。……変な結果だったので、私自身が半信半疑だった。……でも、もっと忠告して、しっかりとクギ刺さなくてごめんなさい」

 

 

タロットカードを取り出して、パラパラパラ、とシャッフル。そして取り出したカードを目にして……つまりは占いの所作だろう。

ライトとネムム、ゴールドもその人物の一挙一動を視てそう判断した。

 

 

「【女難の相】。エルフ女王国の占いにおいて、そんな結果が出たの初めてでしたから」

 

 

そう言うとタロットカードを全て収納。そして懐から小瓶を二つ程取り出した。

 

 

「恐らく食物系の中毒。これで幾分かマシになる筈です」

 

「「ッッ!!」」

 

 

2人(バカ)はそれを引っ手繰る様に受け取ると直ぐに口の中へ、腹の中へと放り込んだ。

 

 

 

「(鑑定————)」

 

 

 

そんな3人の、いや、1人の行動を鑑定を使って確認するのはライトである。

突然の腹痛。……無いとは言えない。病気に関してはある程度の予防を張っていたり、相応の魔道具、魔術等で備えておかない限り、どんなレベルの者であっても罹患する事は多々ある。このタイミングで起こるのも……可能性と言う意味ではゼロではないが、如何せんタイミングがあまりにも良すぎるのだ。攻撃が当たる寸前に、ライト自身は痛くもかゆくもなく、余裕で受け止める事が出来ていたが、それでも当たらずに蹲ってしまうなんて。

 

 

鑑定の結果は、確かに2人(バカ)のステータスは、【腹痛】となっている。詳細を確認するには少し時間は掛かるが……、解るのは彼が言う通り食物由来の中毒症だと言う事くらいか。

 

 

 

 

 

「うひぃ……、す、すいませんでしたぁ……」

「マジだ。マジでハクレンさんの占い……マジなんだ………」

「女難の相なんて聞いた事ねぇ結果だったし。エルフ種(オレら)がそんな災難に会うなんて想像なんか出来ねぇし。………それにヒューマン(劣等種)の中にあんな上玉が居るんだってのもありえねぇ……。……って考えりゃそーいうのも有りえる……のか?」

 

 

まだ少しは腹が痛むのか、時折表情を歪ませている2人(バカ)

そんな2人(バカ)に向かって彼は続けていった。

 

 

「ちゃんと水分取って休息を、ですよ。この手の由来の中毒は中々出て行ってくれない上に、回復魔術でも取れるもんでもなく、しっかり出すもの出さなきゃダメですから。……天下の往来で、そんな盛大な事やったら、一生ものでしょ?」

「「…………」」

 

 

ぞぞぞ、と顔を青くさせている。

今回は傍に対処してくれる人がたまたま(・・・・)通り掛かったのが良かったが、もしも居なかったら? と考えたら魂から震える。あの時、1歩も歩ける自信が無かったからだ。身体の穴と言う穴から出ちゃ駄目なのを噴出させてしまう事待ったなし、な状態だった。

様々な種の居る場所で。……それも、中でも人種(ヒューマン)にそんなのを視られた日には、(出来る出来ないは置いといて)王国中の人種(ヒューマン)を根絶やしにして、人種(ヒューマン)王国も滅ぼすくらいしないと、プライドを保てなくなってしまう所だったのだ。

 

 

恰好を気にしている場合じゃない。

今日は大人しく引き下がる事に決めた様だ。

 

 

「(……だが、絶対)」

「(後日。全快したら目に物みせてやる……)」

 

 

その眼は黒く染まっている。

粗相をした訳ではないが、目の前で無様を晒した事実には変わりない。劣等種と揶揄し、見下してる人種(ヒューマン)の前で腹を抑えて蹲るなんてその時点で恥以外の何物でもない。事実は消し去らなければならない。散々口説いていたネムムに関しても同じ。その命を以て贖う他ない。

 

 

「(————って顔してるね。……まぁ、結局は彼らが選択した行末。ちょっとだけ好転する様に手助けしてあげたけど、もうこれ以上余地は無いよ。……精々、地獄へ良い旅路を)」

 

 

薄れゆく黒い風……だったが、再び纏いだしたのを視て呆れる様にため息を吐くと同時に、ライト達の方を視て、片目を閉じた。

 

 

「!」

 

 

ライトはその所作を視て、そして改めて人物鑑定をする————までも無かった。

 

今昼下がり。数が少ないとはいえ、ギルド内には何人か残っている。それぞれが目の前の人の事を【ハクレン】と呼び視ている。

そんな人達に見えない様に、身体のほんの一部を解除した途端に、彼の正体が解った。

 

 

「うおっ。我らの【鑑定】スキルを持ってしても看破出来ぬとは。そら初見じゃ解らんわ」

「自分も同じです。ゴールドと同意見と言うのは聊か不快ですが、どうしようもなく」

 

 

ネムムとゴールドも同じ。目の前の男、ハクレンの正体が解ると同時に驚愕していた。

それはそうと、当の【ハクレン】は元に戻して改めて3人に声をかける。

 

 

「どうも初めまして。噂はかねがね。ドワーフ王国のダガスにある冒険者ギルドで活躍された【黒の道化師】一行様ではありませんか。この辺りの冒険者界隈ではかなり有名になってますよ」

 

 

ハクレンがそう言うと同時に、【あのハクレンが知ってるなんて———】と言った声があちらこちらから漏れ聞こえてきた。

 

これ以上無い程に目立ち、そして冒険者としてこれ以上ない程に印象付ける事に成功した、と言えるだろう。

 

一言二言、軽く挨拶を交わした後、まずはライト一行がギルドから出ていき、その暫く後にハクレンが外へと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエルフ女王国宿屋にて。

 

 

「「お疲れ様でーーす!」」

「わははは! 想像以上に早い再会であったな! ハク殿!」

「あ、あうぁぅあぅ……」

 

 

【かんぱーーい!】

「……かん、ぱい」

 

 

周囲にしっかり防護壁を張り、外部に漏れない様にした状態でしめやかにそれでいて賑やかに宴会が始まっていた。

このメンバーの宴は、あのミヤ達と一緒にダンジョンを冒険していた時ぶりになるだろうか。奈落では他にも沢山いたし、乱入するものも居た。同じくライトも忙しいのもあるが、ライトと共に食事を食べたい! と願う者は後を絶たないので、誰かしらは一緒に居た。

 

だからか、かなり懐かしいとさえ思える。

 

 

「これネムムよ。貴様凝りもせず飽きもせずまだ男子に嫉妬の念を向けると言うのか? 多少なりとも我慢と言うモノを覚えたと思ったが気のせいだったか」

「ち、ちがう! そんな事誰も言ってないだろ!!」

「嫉妬の念と言ったのだ。誰が言った(・・・)、などと言うか」

「あははは。ゴールドさんとネムムさんと一緒に、ってほんと久しぶりですね。奈落で再会した時は、お二方別行動ばかりだったので」

 

 

ハクレン事、ハクは2人をじっと見て、そしてニコリと笑った。

 

 

「やっぱりお2人はお似合いだと思いますよ」

「誰がだ!!」

「断じて違う」

 

 

2人の息の揃った否定の一言に、『やっぱりです』とまた笑顔になるハク。

そしてハクの出す変なペースに巻き込まれて、このままじゃちょっとヤバい、と思い始めたのはネムムの方だった。

 

 

「それよりハク殿!! あの時の格好、『ハクレン』とは一体なんなのですか!? 占い~と聞きましたが!!」

 

 

聊か強引ではある。

でも、疑問に思っているのは間違いないので誰もそれに対してツッコミを入れる事は無く、ライトもライトで。

 

 

「ハクさんは占い師としての技能も持ち合わせていたのですか?」

「あはは。ちょっとした特技の様なモノですよ。大それたモノではなくて、ですね————」

 

 

ハクはそう言うと、懐からあのタロットカードを取り出した。

それは所謂魔道具の様なモノ。収納魔術で取り出せたあの世界のアイテムの1つである。

取得にはかなり苦労したが、その苦労に見合うだけのアイテム……とは正直言い難い。あくまで占いは占い。100%の的中率と言う訳ではないからだ。

ハクの場合、『黒い風』を併用して占ってるので、相応の的中率を誇るからまるっきり全てアイテムのおかげと言う訳でもないのだ。

 

とまぁ、苦労したのは間違いないが、それもまた良い前世の思い出となっているので文句はない。

 

 

「折角です! ライトさんたちも占って差し上げましょうか?」

 

 

ぱらぱらぱら~~とカードをシャッフルするハク。

それを視てライトは頷いた。

 

 

「僕は視て欲しい、と思いますね。2人はどう??」

「吾輩に異論は無い。主の御心のままに、と言いたいが吾輩自身も興味がある。この黄金の精神の行く末———うむ」

「自分もです。……因みに、占いの種類は如何ほどでしょうか?(ダーク様との将来を占って貰いたい)」

 

 

ライトとゴールドは純粋にハクの占いを視てみたい、結果も気になる、と言った所だが、ネムムはライトの方をちらちらと視ているので、間違いなくライトとの関係性、今後の進展を占って欲しい、と言う所なのだろう。

 

 

「この国で活動する際は、細々~とやる予定だったんですけどね。占いだと言って披露してそれなりに成果を上げれば皆口が軽くなって色んな情報を聞けたりしますから」

 

 

ハクはそう言って頭を掻いた。

【でも、こんなに人気になっちゃったのは想定外ですが……】と。

 

王政までにはいかないが、市井ではそれなりに名の通った存在となってしまい、人気コンテンツにもなってしまったのだ。この世界は娯楽がそこまで多くないからなのかもしれない。それを考えたら前世の世界は本当に充実していたな、と改めて実感しそうだ。死と隣り合わせ~みたいなのも無いし。

 

 

「じゃあ、始めますね。まずはゴールドさんから———」

 

 

ハクはそう言うと、タロットカードを宙へと投げた。

すると、カードは面白い様に円を描き、綺麗に均等に回り始める。

 

軈て高速回転を始めて、腕を左に素早く振る———と、ハクの人差し指と中指の間に、1枚のカードが掴まれていた。

 

 

「おおっ、【戦車】のカード!」

「うむ! ……うむ? せんしゃ、とは??」

 

 

戦車と言う単語はこの世界には存在しないらしい。

けれど、それを説明するのは大変なので、所謂【そう言うモノ】だと理解してもらい、その内容だけはしっかりと説明をする。

 

 

「ゴールドさんにピッタリなカードです。強い意志・行動力、どんな困難だろうと突き進む力を持つ事を象徴としてるカード。幸先は間違いなく良し、ですね」

「わっはっはっは! 流石は吾輩だな。だが、それも当然と言える。この黄金騎士道。主の為ならばどこへでも突き進み、何人たりとも邪魔はさせぬ」

 

 

意気揚々と胸を張るゴールド。

ハクもゴールドの強さは十分知っているので、エルフ女王国を視てきた眼からすれば何ら問題なし、とも思っている。寧ろ大切なのは武力と言うより精神面の方か。

 

 

「次は【正義】のカード」

 

 

同じ所作で、ハクはもう1枚カードを掴んだ。

 

 

「正義は伴う。時には冷徹さも必要———そんなカードですが、その辺りは全く心配してません。だって、ゴールドさんですから」

 

 

ハクがそう言うとまたゴールドは胸を張る。【当然】と。

ライトの為ともなれば、何でもできるのがスタンダードだから。

 

 

「無暗に突っ走ってはならない、と言う意味を持つカードでもあります。冷静に、状況を見極めて。……如何なる事が起きたとしても、一息置く事。ゴールドさん程の力量(レベル)のカードです。……武力云々とはまた違うのかもしれません」

「ふむ」

 

 

小首を傾げ、腕を組むゴールド。

どの様な場面が来ても、何があったとしても自分の成す事は決まっている……が、ハクの占いに関してまるっきり無視する訳にはいかない。

 

 

「深く考え過ぎも良くないですよ。あくまで占いですから」

「うむ! 深過ぎず、心に留めておく事にしよう」

 

 

続いてハクは最後のカードをとる。

 

 

「【運命の輪】。……予期せぬ事態、運命の波が待ち受けてる可能性が高い、ですね。先ほどの正義との組み合わせを鑑みても、何かが起きる可能性はある、とだけ言っておきます。不安にさせて申し訳ありません」

「いや、良いのだ。ハク殿も言っていただろう? あくまで占いだ、と。そもそも何かに縋らなければならない程の若輩ではなく、弱卒でもない。吾輩は全てを糧として精進し、騎士としての使命を全うするのみだからな」

 

 

力強くわっはっは、と笑っているゴールド。正しく騎士として一切ブレる事が無い事がよく解ると言うものだ。

 

 

「ゴールド。運命の波とやらが来てしまったらお前の格好じゃおぼれて沈んでしまうかもしれないな」

「わっはっは。何を馬鹿な事を。吾輩はどのような環境でもこの姿を維持する為、備えてきたに決まっているだろう?」

「……どーだか」

 

 

揶揄ってるつもりだったのだが、ゴールドの解釈は違った様で当てが外れた~と言わんばかりに顔を顰めるネムム。

それも仕方がない。これ以上、ライトの前でゴールドと仲が良い~みたいな事を言われる訳にはいかない。あくまで仲間として、その腕に関しては信頼しているがそれどまりだ。断じて違うともう一度言いたいが、黙っておく事にした。

 

 

「じゃあ、次はネムムさんの方を占ってみましょうか」

「ああ! その……ダーク様との関係を占ってもらえると————」

「????」

 

 

ネムムはしゅたっ! と素早くハクの前に行くと、次の瞬間には頬を赤く染めて、ライトの方をちらちら見ながら悶えていた。

勿論、基本的に行為を隠す様な事をせず、全てオープンフリーにしている奈落の皆だ。ネムムが何に対してどう思ってるかなんて、どんな鈍感でも解ると言うモノ。ただ、認めたくない一定数が、イチャモンをつけてきて、結局他人の恋路を邪魔するから馬の脚に蹴られて~なのだ。……今回は腹痛退場と言う正直情けない姿での退場だが。レベル150のイケメンパワー殿(ゴールド命名)

 

 

ハクは朗らかに笑うと、再びタロットカードを宙に放って回す。

高速回転し、軈て同じような所作で1枚のカードを掴みだす。

 

 

「えっと、これは———【運命の輪】」

 

 

続いてカードをもう1枚。

 

 

「続いて【恋人】………」

「!!! 運命、に……恋人!!?」

 

 

最後まで説明していないのに、ワードとワードに跳び付いて目を輝かせるのはネムムである。ライトとの関係性を占ってもらった結果が、運命に恋人。これはもう確定なのではないか、と期待に胸を膨らませる。

 

 

「(や、やった!)そ、それはつまりダーク様と自分が————!」

 

 

ものすごーく喜んでいる所、非常に申し訳ないのだが……とハクは苦笑いをしながら続けて言った。

 

 

「えと……確かに恋愛に関する良いカードだって言えるんだけど、この次のカードが、……【塔】で……」

「とう? それはあの所謂塔? エリー様が御創りなられた巨塔、の様な?」

「はい。そうですね。……ただ、塔の意味は【崩壊】の象徴でもあるんです」

「ほ、ほうか!!??」

 

 

目に見えて解るレベルで、ネムムに衝撃があったのが解る。

わなわなと身体を震わせる。

 

 

「は、は、ハク殿!! まさか貴殿は自分に恨みがあるのですか!!? さ、散々邪険に扱ったから、ですか!!? じ、自分はそんなつもりじゃないのです!!」

「お、おおお、落ち着いて落ち着いて!」

「これこれ。先ほどの吾輩の言葉はネムムには伝わらんのか? あくまで占いだと言っただろう?」

「ぅぅ……」

「そ、そうですよ。それに多くの試練がある、って言う意味でもありますし、乗り越える事が出来たなら、きっとより良い未来があるかも? って感じです! つまり自分次第な、と言う!! それと特別にもう1枚!!」

 

 

カードを切るのは基本1人3枚まで、としている。以前の世界では枚数を重ねるにつれて占いの効力、実現度が増すオプション付きだったが、こちらの世界ではどうでるか解らない。もしかしたら打開策があるかもしれない、と念を入れてカードを引き抜く————と。

 

 

「………死神のカード」

「あああああぁぁぁぁ……………」

 

 

死神、と言う単語を聞いただけで説明を聞くまでも無い、と一気に項垂れてしまったネムム。

ゴールドもだから占いだ、と言い聞かせるが、如何せんゴールドの内容が相応に良かったもので、自分のと比べて扱いがおかしい、と言う理由もあるかもしれない。

 

 

「ちょっと待ってください! 【死神】のカードは必ずしも不吉と言う訳ではありませんよ! 寧ろこのカードは【変革】【再生】の象徴とも言えるんです」

「!!」

 

 

死神のカードの意味。それを解ってなかったネムムは、ハクの説明を聞いて目を輝かせる……が、。―――でも、と続けるハクの台詞を聞いてまた力が抜ける。

 

 

特に、【やっぱりその……ライトさんの周りには沢山の女性の方がいらっしゃいますから】と言う最後の言葉を聞いて。

 

そうなのだ。占い云々前に、ライバルと言える相手があまりにも多すぎるのだ。それに強さ、と言う意味では天井知らずな面々も揃っているのだ。

 

基本皆、奈落の皆は男女問わずにライトの事が大好きだ。神の様に崇め—————るよりも、恋人の様に家族の様に、妻の様に恋愛対象で~と言う層が多い。見守る派閥も居るには居るが………、何をどう考えても勝算が見えてこない。

 

 

「あ、諦めちゃダメですよ! ネバーギブアップ、です!」

「うぅぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何とかネムムを元気づける事に成功した。やっぱりライトからの言葉がネムムにとっては一番の薬。ちょっぴり褒める? だけで即座に回復し、その回復速度はエリクサーも真っ青だ。

 

 

「では! 漸くライトさんの番になりましたよ~~ ……と、言いたいですが、大丈夫ですか? 占っちゃっても……」

 

 

ネムムの事もあり、占いなんてやって上げる~って言わなかった方が良かったかな? とハクは思い始めていたのだ。

必ずしも良い方向へ向かうだけじゃない。険しく苦しく、大変な道筋を示す場合だってある。

 

この国では基本 比較的良い意味の占いばかりを公表して、悪い方に関してはあまり言わない様にしてきたから。だから、国全体が黒い風に覆われていても、エルフ種自身の占いで不吉は届けていなかったりする。精々、女難の相程度なものだ。

 

 

「是非よろしくお願いします。僕自身も興味がある事なので。ハクさんの占いは」

 

 

ライトは別に気になってない様で、寧ろ楽しそうに眼を輝かせていた。

 

これは節々で伝わってくる事だが、ライトはまだ10代後半。まだまだ子供な部分があるが、酷い裏切りにより復讐に生きる道を見出してしまった為、歪な成長の仕方をしている、と言っても良い。

でも、ある種年齢の近く、更に自分のカードの力以外で出来た仲間……友達を前にしたら、普段の自然な、普通に暮らし、普通に成長してきた場合のライトが顔を出す事があるのだ。

 

それは喜ばしい反面、復讐心を消すかもしれないライトにとっては毒……な危険性も考えていたが、ハク自身が復讐を肯定する事と自分も同じだ、と目線を同じにしてくれたおかげで大丈夫だと安心も出来た。

 

 

———果たさなければ、本当の意味で前に進む事は出来ないから。

 

 

 

「こほんっ! ではいきますよー!」

 

 

ハクは気を取り直して同じ様にカードを回し、一気に3枚のカードを引き抜く。

 

 

 

「……【太陽】」

 

 

 

その名を聞いた途端、わっっ! とネムムは歓声を上げる。

そう、ダークと呼んでいるが、神であるライトは正しく太陽が相応しい! と思ったからだ。

でも、ゴールドがネムムに自制を促した。

 

先ほどの死神の件もある。絵柄が全てじゃない、と思っているからだ。

まずはハクの説明を聞くのが先決、と。

 

 

「凄く良いカードですよ! 初めて出たかもしれません! これは進むべき道が輝きに満ちている事を示すカード。どんな困難があったとしても乗り越えて行ける運命です。うん、次に続くカードも———」

「おお~~~」

 

 

ライトも感嘆とした声をあげた。

特別感のある結果と言うモノは、それが良い意味でと言うなら心躍ると言うものだ。

 

【太陽】【運命の輪】【皇帝】

 

正しくライトに相応しい、予め出るカードが決まっていたかの様に思えてしまう程だった。

勿論、ハクは不正操作はしていない、と断言しよう。

 

 

 

 

その後は大いに宴会が盛り上がった。

暫く続く宴は、後々に参加していない他のメンバー達が間違いなく嫉妬する程には、ライトの笑顔が輝いていたのだった。

 

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