職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

24 / 29
こつん、な訳も 一発、な訳もない。

 

 

エルフ種女王国 最上クラスとなった冒険者【ハクレン】と今最も勢いがある新進気鋭の新参者(ニュービー) 黒の道化師の対面は、相応なインパクトをエルフの国のギルドに残した。

あの場面を目撃して尚、ダーク一行にちょっかいを掛ける者が居るとしたら、やはりエルフ種の中であっても限られてくるわけで……

 

 

「オレ達から逃げられると思うなよ!」

「昨日の借りを返させてもらうぞ! その金ピカはさっさと殺して、ガキと女の劣等種(ヒューマン)は甚振りながら殺してやるからな!!」

 

 

想像を絶する馬鹿だと言う事。

特に、現在森の中を移動中に追いかけてきてるエルフ種の2人は以前、ネムムをナンパした時に、ダークらに一方的に叩きのめされていると言うのに、何故たった2人で敵うと思うのだろうか? と問いたくなるレベル。

只管に天井知らずなプライドが、圧倒的弱者と思っていた相手に叩き伏せられた事実を認めたくないのだろう。

 

だが、そのプライドは命を粗末にしても良いと思える程に大切なのかは甚だ疑問である。

 

 

「はぁ、想像通りの展開になってきたね」

「うむ。少し違う点があるとすれば、少々遭遇するのが早かった点、だろうか」

「……ハク殿に譲った手前、ぐむむむ……」

 

 

ライトらは、追いかけてきてる完全悪役な台詞が出しそうな定型文を喚いてる2人に哀れみさえ覚えていた。ネムムを除き。

 

謎の巨塔調査のクエストを受注。その後は森の中での素材回収を勧めつつ、巨塔の手前辺りで、ハクレンと合流する手筈になっているのだが……、あの連中は最早国ギルド一の有名人、そろそろ王国から個人的にお呼びがかかるのでは? と思われてるハクレンと合流すると言うのに、その辺りを解っているのだろうか?

友好的な所作をした場面、公開シーンは相応に衝撃を与えたし、それなりの抑止力は確実に効いている。陰口が圧倒的に少なくなったのだから、実感している……が、アレはそんな事もどこ吹く風。

 

 

「しかし、無鉄砲と言うか前が見えておらんと言うか。ハク殿が仕留めた大物、LV1000をも超えるモンスターが生息している、と言う厳戒態勢が引かれていると言うのに、あの程度のレベルでよくぞ踏みこもうと決断したものだ」

「ただのバカで能無しなだけでしょ。よくぞも何も無い。使える脳みそがあるなら、こんなバカな真似はしない」

 

 

ある意味その勇猛な姿には尊敬の念すら覚えそうになるゴールドと実に対照的で即刻切って捨てるネムム。

本当に許可さえ下りれば、あの汚らしい唾を飛ばしながら喚いている耳障りな不協和音を即刻止めてやる事が出来るのに、と思ったりもしている……が、主の命令は絶対であり、ネムム自身も主が絡まない案件での約束事の反故は信条に反するので手が出ないのである。

 

 

「まぁ、一応警告だけは出してあげようか」

 

 

呆れながらも、最後の慈悲、情けと言う事でライトは振り返りながら言う。

 

 

「ついて来てる2人。一応、言っておくけどこれ以上先は危険地帯。―――死地だよ」

 

 

ライトからの警告は、当然意味を成さない。

ただ、無駄なプライドを更に刺激するだけなのだ。

 

 

「これ以上ついてくるなら、間違いなく死ぬ事になるよ」

 

「「んだとぉ!!!」」

 

 

下にみていた、弱者にみていた人種(ヒューマン)からの警告。

当然聞き入れる訳もなく、ただ我武者羅に走り続ける。追いかける。自分達は息を切らしているのに、ライト達は全くと言って良い程息を切らせてない。その状態だけでも客観的にみれば敵対しちゃ駄目な相手、と解りそうなものだが、完全に血が頭に昇っているのもあり、そんな判断絶対出来ない。

 

 

「ふざけるな!!」

「逃がすか!!!」

 

 

ある程度早く移動しているライト達を見失わない様に奥へ奥へと走っていく。

追いつけないまでも、見失わない位置をキープし、荒い息を吐きながらも————軈て、3人が目的地へと到着した。

足を止めたのを見て、大きく息切れを起こしつつも、その強気な姿勢は決して崩れない。

 

 

「このオレ達から逃げようなんて不可能なんだよ! ばーか!」

「は、ははは! 昨日の借り、万倍にして返させてもらうぞ!」

 

 

最早子供のそれだ。言い方が完全に幼稚そのもの。

その態度にライトも呆れ顔、でもゴールドの様に感心も少なからずあった。

 

 

「……はぁ、やれやれ。直ぐに追跡できずに脱落するかと思ったけど、ここまでついてこれるとは驚きだよ」

 

 

ネムム、ゴールドもライトに続いて言う。

 

 

「少なからず、驚いた———が、その優秀さを別の事に使えばここで死なずに済んだものを……」

「中途半端な優秀さが身を亡ぼす事になるとは皮肉だな」

 

 

ネムムまでもがやや感心よりになっていたのに少なからず驚く……が、それ以上に馬鹿だ、としか思えない様で、ゴールドも甲冑の中では苦笑いをしていた。

 

 

「はぁ? 死ぬのはお前らだよ」

「手間取らせやがって、いたぶりながら殺してやる!」

 

 

実力差も解らない、まさに獣のソレだ。この森の奥まで逸れずに追ってきた点だけを考慮すれば、優秀なのかもしれないが、心技体揃ってこその優秀。残念ながらその他が落第点以下。

 

 

「忠告はした。本人たちが選んだ道だ。……それに、正直話を聞いて(・・・・・・・)、僕の方もかなり頭にキてたのも事実……か」

 

 

ライトはネムムとゴールドの方を見た。

 

 

「2人とも。解ってるよね? こいつらは譲る(・・)

「「ハッ!」」

 

 

ライトの迫力。

それは怒りからくるものである、と解る程の空気の揺れに、ゴールドとネムムは間髪入れずに頭を垂れた。この瞬間だけは、同じ冒険者パーティではない。主とその忠実なる僕の2人なのだ。

 

そして、ここからは————2人の辞世の句。

 

 

「何わけわからない事いってやがる! つまらんハッタリしやがって!」

「そもそもお前らの事は調査済みなんだよ。新鋭の3人パーティー『黒の道化師』さん達よぉ!」

「ドワーフ王国のダンジョンでちょっと活躍したからってエルフ女王国で粋がったのが間違いだったなぁ!! あんなドワーフ如き、足元にも及ばないってのによぉ!!」

「そうだそうだ。劣等種(ヒューマン)劣等種(ヒューマン)らしく、オレ達に頭下げ、大人しくしてりゃ死なずに済んだのになぁ! 女ぁ、お前も股ぁ開いて服従してりゃ、今頃天国気分だったのに、残念だよなぁ!」

「ほらほら、命乞いくらいしてみろよ。オレ達が憐れに思う命乞いをすりゃ、助けてやるかもしれねぇぞ? ………ん?」

 

 

息巻いて、肩で息をする程には息切れを起こしていたのも忘れて、延々としゃべり続ける2人。

喋る事に夢中で……本当に気づかなかったのだろうか? 

明らかに周囲がおかしくなってしまった事に。

 

今の今まで、木々に生い茂り、先が中々に見えない~事はあっても、一寸先まで危うい程に白いナニカで視界が染まっていく事に。

 

 

「なんだこ————りゃぁっっ!!?」

「うおっ! どうし————がっっ!!」

 

 

白いナニカは、まるで2人の顔面を握り持ち上げるかの様に、宙に浮かせた。

呻き声は出せる様だが、僅かな隙間しか存在せず、上手く言葉が離せない。

 

 

「一応、周囲に誰かいたらまた面倒なので、ちょっとばかり趣向を凝らしてます」

「ありがとうございます、ハクさん。こちらとしても助かりますよ」

「あははは。何を言いますか、ダークさん。ダークさんならこの辺りは大丈夫だって事くらい簡単に解るでしょ? ……僕が心配性が過ぎる、ってだけですから」

 

 

そんな時、だった。

いつの間に現れたのか解らない。

あの子供の隣に、いつの間にか男が立っていた。そして、その容姿はよく知っている。

 

 

「はぎゅ、げん———!!??」

「ぎゃんげ、ぎゃんが!!?」

 

 

何を言っているのか解らないが、恐らく【ハクレン】と【なんで、なんで?】と言った様子だろう。

楽しそうに3人と話しているハクレン? だったが、2人の様子に気付いたのか、話を切り上げて、2人の前に立つ。

 

 

「お生憎様。僕はこういうもの———でして」

 

 

ばちっ、ばちっ———と、稲光がしたかと思えば、これまではエルフ種のその容姿だった姿が、(見た目)人種(ヒューマン)のその姿へと変貌していた。髪は黒く染まり、どこまでも温和だったハクレンのその眼は、どこまでも凍てつく様な冷徹なモノへと代わっている。

 

 

「こつん、と一発のつもり———だったんですが、ちょっと忘れてた事がありまして、ね。一発じゃ到底足りなくなりました。あ、いやただの言い訳です。……元々そんな訳無かったんですよ」

 

 

指先をひょい、と動かすと———そこには映像? 絵? が映し出される。

楽しそうに笑って遊んでいる……男の子と、女の子、複数のそれだ。

突然見せられたゴールドとネムムは、驚きを隠せれない。

 

ライトにしても、未知の技術に目を躍らせた。

所謂、ちょっとした魔法、魔術。あの村の光景を生中継! しているのだが、テレビと言った技術はまだこの世界には存在しない様で、ロストテクノロジーに分類するのかもしれない。それ以外の技術はかなり傑出していると思うのだが……それはそれ、である。

 

 

「ニィナ、リカン、アマナ、セイ——————」

 

 

映像が映し出される最中、1人1人の名を、ハクは言っていく。

男たちは言っている意味を解っていない様だ。

 

 

「この名……は知らないかもしれないが、顔は覚えはないかな?」

 

 

そう言うと、ハクは右手を操作して、2人の自由を縛っている一部分を操作。口だけは開放して喋れる様にさせたのだ。

 

 

「ぷはぁっっ!! き、きさま!!! ハクレンさんを模した劣等種(ヒューマン)だったのか!!」

「ぐえっっ、ぶあああっっ!! ご、ごほっっ、ど、どおりで、劣等種(ヒューマン)と友好結ぶみたいな、馬鹿で血迷った真似をすると思った!! ぜんぶ、てめぇらの自作自演だった、ってんだからよぉ!!」

 

 

完全にマズイ状態だと言うのに、悪態をつくことを止めない2人。

 

 

「未知の力に翻弄され、未知の力に縛られ、生殺与奪をも握られ、……圧倒的存在感を前にしても、ああも啖呵きれると言うのは……一体どういう訳であろうな」

「ある種、勇者と呼べなくもない。無謀で無鉄砲、馬鹿(そっち)方面にステータスが振り切ってる勇者だ」

 

 

ゴールドとネムムは呆れる様にため息を吐く———が、ハク自身の力を前に、少々戦慄を隠せれない。一体どういう理屈で、どういう力で、2人を拘束しているのか、【鑑定】でも見えないのだから。

 

エリーであれば見破る事は出来るのかもしれないが、自分達のスキルを以てしても、見破る事の出来ない力。……恐らく、この白の範囲。結界に居る範囲内であれば、何でも思うが儘に出来る不可視の拘束……と言った所だろうか。

 

 

「———その気になったら、直ぐにでも握りつぶせるだけの力を持ってそうだよね。あの捕えているハクさんの力。……本気で怒ってるのがよく解る」

 

 

それを、その怒りを心地良く感じるのはライト。

あまりにも眩しく思うハクの姿だったが、怒りを顕にしてくれる事で、ハッキリと輪郭を帯びて、身近に感じる事が出来る、と思えたからだ。

 

村を救ってくれた時から、時を戻し、村を再生させたと言うあの御業を知った時から、ハクと言う存在は恩人———と言うより、別世界から来た《神》に近しいモノを感じていたから。

この世界で、善神にでも悪神にでもなってやる、と意気込んだ事がある。……でも、ハクの姿に本当の意味で神を彷彿させてしまった自分が居たのだ。

 

でも、ハクはしきりに大層なモノじゃない、と連呼している。楽しそうに話をしている姿を見ても、本当にただの人である、と言う事も解る様になっている。だからこそ、自分を含め奈落の皆はあんなにも楽しそうなんだ、と。

 

 

 

 

「なんだその汚らしい劣等種(ヒューマン)のガキ共は! そんなもの知る訳が———「極限再生(エクス・レクション)」!!」

 

 

 

 

ハクが手を翳した瞬間、喚き散らしていた男たちから言葉が消えた。

 

 

「皆の痛みを知る良い機会だ。……しっかり思い出すまで、続けようか。再生(・・)を」

 

 

ハクのその言葉が始まりだった。

嘗てカイトに仕掛けた《お前は死すら生温い(オンリーアライブ)》でも良かったが、アレ以上に罰を与えたいと思った。此処に映る彼らの苦しみを味合わせる為に。

 

男たちの身体が、徐々に変化していく……。

 

 

「あ、あがっっ! うがが、アァァァ!!」

「がっ、うがっっ、い、いてぇッ!! いでぇよ!!!」

 

 

まるで、鎌鼬にでも見舞われたのか? と思える様に、その身体の所々に()が現れ始めた。

 

 

「ハク殿の魔術……。風を使った魔術?」

「否。攻撃をしている様には感じぬぞ。……む?」

 

 

ネムムは、ハクがあの男たちを切り刻んでいるのでは? と思ったが、ゴールドは違和感をそこに感じていた。そして、それはライトも同じようで……。

 

 

あれは(・・・)、昨日僕達がやった時の傷、じゃないかな?」

「然り。違和感の正体はそれであったか」

 

 

某ギルドにて、絡まれた時。盛大にサンダーアローで撃退した時。

あの男たちはサンダーで痺れてしまった身体のせいで、無防備で地面に倒れてしまい、丁度両手両足に切り傷を負ってしまった様なのだ。倒れた場所が悪かった。椅子やら机やらがあった場所だったから、そこの木片のバリ部分で身体が切れてしまったのだろう。

 

 

それを、ライトは勿論、ゴールドもハッキリ見ていた。だからこそ、寸分違わぬ場所に、同じような傷が増えて違和感を覚えたのだ。

ハク自身が攻撃してついている傷のようには見えない。まるで、今の今まで塞がっていた傷そのものが—————。

 

 

()は、恐い使い方だってある。……お前達がこの世に生を受け、今日までその身体に印したすべての傷を、再生させる事だって出来るんだから———。あ、でも再生速度も極限に抑えてるから安心して? 存分に堪能する事が出来るよ。……生きてきた証を(・・・・・・・)

 

「ギアッッ!!!??」

「グがァァッッ!!」

 

 

冒険者として生計を立ててる者であれば、傷は大なり小なりつくものだろう。

いや、怪我や傷に無縁な者なんて、恐らくこの世の何処にもいない。小さな打撲や切り傷、ちょっとした筋肉痛等々。生まれてきている以上、傷とは隣り合わせであるもの。

だからこそ———その恐ろしさが直ぐに理解出来た。

 

 

「……(仮に僕がアレを受けたとしたなら、恐らく世の地獄を味わう事になるだろう。いや、地獄と言う表現さえも生ぬるい)」

 

 

ライトは少しだけ冷や汗を流しながら、そう呟く。

 

つい数年前。あの奈落で殺されかけた。それまでの種族の集いでのパーティーでも、仮初とはいえ守って貰った時でさえ、傷が絶えなかった。

加えて、奈落での特訓の日々。皆気を使ってくれていたが、温い修行を好まなかったライトはLvをカンストさせるまでは、生傷が絶えず、回復魔術で補って過ごしてきた。

 

それらの傷を一気に全て開くとすれば……?

無論、抵抗(レジスト)は出来るとは思うし、自信も相応にある。……でも、それらを全て貫通してきたとすれば……?

 

 

どうなるかは想像だに難くない。

 

ネムムやゴールドであってもそう。思わず息を呑んだ。

 

 

 

 

それでも、男たちは彼らの顔さえも思い出せない様だった。

 

ただただ、目から血を流し、涙や涎、失禁に脱糞、ただただ汚物に塗れながら命乞いをするだけ。

 

 

「———この子は、ニィナはね。目の前で母親を失った子だ。こっちのアマナはずっと一緒に居た友達を目の前で失った。お前達の言う娯楽の為に」

 

 

白を極めたハクとはいえど、万能と言う訳ではない。

あのライトの村を復活させる事が偶然の産物+副作用増し増しだったとしても復活させる事が出来たのは、座標がしっかり解っていたからだ。

いつ、どこで、何時に殺されてしまったのか。子供たちの記憶頼りに彼らの魂を現世に復活させる事は……出来ない。

子供たちは最後まで視る事は出来なかったが……いや、視なくて良かった。その後の死体の扱い方も悪魔そのものだったから。

 

 

 

「親の前で子を、子の前で、親を—————。何をどうしたら、そんな真似が出来る?」

 

 

 

こつん、と一発。

その程度に済ませようか、とライトの前で言っていた少し前の自分を殴りたくなってくる。

 

ハクレンを演じていたから、憑依させる程までに演じていたからこそ、感性が鈍っていたのでは? と自身で思い切り弁明したい気分になってくる。

 

 

「いがっっ、いがっっ!! ッッッ!!!?」

 

 

痛みにのたうち回ろうにも、身体を完全に空中で固定されてしまっている為出来ない。

ただ、視線がとある部分を捕え————痛み以上の驚愕に見舞われる。

 

身体の四肢の先端————足先から、自身の身体が白い粉? の様なモノへと変貌していっているからだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。