職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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巨塔へ

白闇虚無(ホワイト・ヴォイド)

 

その力がハクから発せられると、空間が歪み、周囲の空気がまるでひんやりと凍りつくような感覚が広がる。

それにハクの手のひらがわずかに震える様に見えた。

その震えを感じ取った者は、誰もが理解する事だろう。

今のハクの心境を。

 

そして、それが一手に向けられた相手は、憐れにも確実に来る死の恐怖に支配されることになる。

 

 

「あがっっ、ああっっっ!!!」

 

 

涙と涎をまき散らしながら、必死に懸命に逃れる事の出来ない死から逃れようと藻掻きに藻掻く。

 

 

「うあっっ、いやぁっ、いがぁぁぁぁ!!」

 

 

話す事は出来ない……が、心の底から恐怖をしているのは見て取れる。

それでも、人種(ヒューマン)を殺めた事実を悔いる様な様子が一切見られないのはなぜだろうか?

 

ただただ、『死にたくない』『なんで劣等種(ヒューマン)を狩ったくらいで』と、醜い思考が見て取れる。

 

 

「うむ? 消滅していくのは一体どういう原理か?」

「―――――ッ」

 

 

消滅していくエルフ種の憐れだが一切の同情が出来ない2人をじっと見据えるゴールド。

ハクの魔法を、エリ―ではないが興味があって、解析もしようとしてみたのだが、よく解らない、と言う事が解った。

つまり解らない。

 

 

「白い何かが……、身体を蝕み、消滅させる? でも、下からゆっくり消滅してるのに、血の一滴も出ないのは……??」

 

 

ゴールドと同じ様にネムムもその魔法についてじっと見据えているが……、同じ様に解らないのが解った。ハクから放たれるその光が対象の肉体を食んでいく。

空間が歪み、静かな破壊の前触れが漂っているが、損壊部分はまるで最初から存在しなかったかのよう。人体欠損時に飛び出る血や骨、臓物に至るまでが存在していないかの様だった。それでも手のひらから放たれた純白の閃光は、目を奪うほどに鋭く、同時に恐ろしいほどの静けさを保っている。

 

下半身が消し飛び、軈て上半身になってももだえ苦しみ続けていると言う事は、まだ生きていると言う証拠だろう。

 

 

「――――」

 

 

ライトも同じ様に興味がある様で、じっと見据えて、自身の考えを構築していく。

 

 

「(正直、最初はまったく理解できなかった。…ただの消失じゃない)」

 

 

ただ消えるのであれば、幾らでも手段はある。ライトに持つギフト、無限ガチャのカードを用いれば、似た様に対象を消失させることだって出来るだろう。

だけど、ハクのそれはどの力とも違う。これが異世界の魔法の力、と言うものなのだろう、とライトは改めて思う。それでいて、エリ―の気持ちも何処となく理解できる。

メイやエリーほど、とは言わないし言えないかもしれないが、ライトにだって探求心はある。冒険者となった時も色々と不思議を追求した事だってあったのだから。

 

 

「(単な崩壊でも、エネルギーの転送でもない。まるで、あの存在そのものを無限に分解し、無から無へと解き放ったような、そんな感じ……)」

 

 

軈て、2人は頭を残すだけになった。それでも生きている。摩訶不思議だ。

でも、最後の最後まで、肉片となるまで、骨一欠けらとなるまで、苦しみに苦しみ抜いて死ぬ、と言うのは大いに好ましい事だ。

 

ハクの怒りがライトにも手に取る様に解るから……猶更思う。

 

話を聞くに……いや、聞くに堪えない事を、この二人は何度も何度もしていたのだろう。そして、以前ハクが話していた蘇生魔法の定義。

 

 

【魂まで消失した者は蘇生出来ない】

 

 

と言う基本的な縛り。日にち換算で約49日。十分過ぎるほどに破格な力だが、それ以前に殺された人は戻らないのも事実なのだ。

 

唯一の例外が以前、ライトの村を時を巻き戻したかの様な力。

 

でもそれは安易に繰り出す事が出来ない魔法であり、ライトの村を結果的に救えたのは恐らくは偶然の産物。そして、ハク自身が意図してやったわけじゃないと言うのも聞いている。

 

 

……つまり、あの男たちが奪った命は、もう帰ってこないと言う事。

 

 

 

 

「―――地獄で反省すると良いよ」

 

 

 

ぱちんっ、と指を鳴らすと……漸く死ぬ事が出来たのか、顔半分上、目がぐるんとひっくり返った。そして影も形も無く―――消失した。

 

 

怒ったハクだったけど、その顔は正直似合わない、と思うのはライトである。

無論、何度も何度も本人は自分は聖人君子でもなんでもなく、怒るときは怒るし、ムカつく事だってあるし、普通ですよ、と言ってるけど、やはり優しい時の彼が一番彼らしい、とライトは思っているのだ。

 

 

「ハクさん、今の魔法ですが――――僕なりに、答えが出たので聞いてもらっても良いですか?」

 

 

エリーの様な魔術に対する探究心を理由に、ハクの怒りを取るつもりだ。……無論ライト自身が気になってるから、本当の所を知りたい、と言う面もある。

ハクは一瞬きょとん、としたが直ぐに笑顔になって『良いですよー』といった。

それを聞いて安心したように、ライトは人差し指を頬に添えて、考えをまとめ始めた。

 

 

「……あの魔術、確か、ホワイト・ヴォイド、って言いましたが。正直視た事無いです。………が、きっと霊的でも呪的でもない。恐らく……物理に近いものだ、と推察します」

「ふむふむ」

 

 

ライトの回答に対して、ハクだけでなくゴールドもネムムも同じ様に聞き入る。

 

 

「最初は単なる“消滅魔法”かと思いました。けどやっぱり違和感があって。……あれは多分――極小の粒子、そう、肉眼では絶対に捉えられないような微細な“白い素粒子”を光に変えて、一秒間に億、兆、それどころじゃない数で、対象に無限に打ちつけてる。しかも、対象の構成要素に完全に干渉できる波長で。だから、骨も、肉も、霊子すらも砕けて、全てが分解されて……最終的に、身体を構成するそのものが消える。血液や臓物が出てこないのも、多分同じ理由。流れ出る血でさえ消滅しますから」

 

 

1つずつくみ上げていく。

 

 

「――つまり、塵にさえなれない存在を消されるも同じ。“白”という名の嵐に削られ尽くして、最小単位で分解されて、無かったことになる。それが、あのホワイト・ヴォイドの正体」

 

 

そして最後に仕上げる。

 

 

「最後の最後まで、あの2人に【命】があった理由まではハッキリと解らないけど、……理由は、ハクさんは『別の世界で白を極めた』と言ってたからに尽きるかな。どれだけ身体がバラバラでも最後の最後まで生かす苦しみを与える為に生かす。『癒しの魔術』を使用し続けた。………どうかな?」

 

 

頭上を見上げる様に回答を重ねていき、最後にハクの方を見るライト。

ハクは、まるでもったいぶる様な仕草で、それでいてドラムロールでも奏でているかの様な雰囲気で……、最後はびっっ! と親指を突き立てた!

 

 

 

 

「流石ライトさんです。初見で看破するとは……御見それいたしました」

 

 

 

つまり、正解という事だ。

あのエリーをもってしても、ハクの未知なる魔術、異世界の力の解明は難しいと言うのに、本業ではないライトが導き、当ててきた事は大いに盛り上がると言うものだ。

 

 

「流石は、ら! ダーク様!」

「うむ。我らは正直、毛ほども当たらなかったが、その慧眼には感服だな」

 

 

ネムムやゴールドも大いに喜んだ。

ライトの博識な頭脳とその全てを読み取る眼。異なる魔法をも解明出来るのだ、と本当に誇らしくなったのである。

 

そして、改めてハクの力、えげつなさがつわたってくる。

死ぬに死ねない、カイトに使った無痛地獄(ホワイトアウト)もそうだが、無限の痛みを延々と塵芥になるまで続けさせるあの力もえぐい事極まりない。

 

 

「実のところ、神経も使いますし、範囲がかなり狭い力なので、限定されますがね。なのでこれは殆ど拷問に近い魔術ですよ。身動きを封じた上で発動させるので」

「うわ。更にえぐい事を言うな、ハク殿。まさに一切の容赦無しか」

「勿論ですよ、ゴールドさん。……アレに、容赦なんていります? ネムムさんに譲ってもらった事もありますし、生半可じゃ済ませませんよ」

 

 

ネムムがあの視線や言動に対して一番苛立ってたのは解る。

で、ネムムも連中を排除するのは簡単だが、ここまでの極限の痛みを与えつつ、死なせないと言うのは無理なので、ここまでやってくれれば留飲が下がると言うものだ。

 

 

「私の事は良いですハク殿。……ハク殿も、相応の想いを持って、あの連中を始末したかったのですから」

「……………ですね」

 

 

奪われたモノは帰ってこない。

最愛な者たちは、帰ってこないのだ。

 

その憎しみを恨みを、預かり――――文字通り骨の髄まで刻み付ける事が出来た。もう、これ以上は無いだろう。

 

 

そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

「ケケケケケ! 何か急に眩しいと思ったらやっぱりハクだったか」

 

 

 

 

 

 

がさり、と木々の隙間を縫う様に現れたのは2mはあろう長身の女性。

そう、メラである。

 

 

「我が主に無礼を働いた輩を排除。感謝するよ」

「メラさん!」

 

 

大きな大きな手が、ハクの肩に触れる。

そして、メラはライトの元へと駆け寄った。

 

 

「メラ。ごめんね。ちょっと時間遅れちゃったかな?」

「ケケケケケケ! 気にする必要はありませんよご主人さま。主が求めるものこそがもっとも最優されるもの。それにアタシも傍で見ていたかったくらいですですから」

 

 

確かに指定した時間よりかかってしまったのは、一重にハクが拷問? をしていたからだ。極限の苦痛を与える為に~~とは言え、時間外になってしまったのはあまり見過ごせない事で――――。

 

 

「ご、ごめんなさい。僕のせい、ですね」

「いえいえ。ハクさん。本当に気にしないでください。メラの言う通り、僕も良いものが視れた、と思ってますので」

「……ぅぅ、でも社会人として……」

 

 

異世界に社会人の概念があるのか? とも思ったが、これでもゲームをするためにしっかりとお金は稼いでいた。ちゃんと時間厳守、と言う嗜みは持っていた筈なのに、と猛省するハクである。

 

 

「わははは! 変な所でハク殿は律儀だな! 元々は我らが設定した時刻。故に我が主が許す以上、ハク殿は気にする必要は無いぞ」

「自分もそう思います。……と言うより、事前にハク殿と細かな時間のやり取りはしてなかったと思いますし」

「あ、そう言われてみれば………」

 

 

森の中で合流しよう。

ハクレン、と言うキャラは一端森の中で解除して、ハクとして《巨塔》へ赴こう、と言うのが元々の流れ。いつ頃に、メラ達と合流する~的な話はしていなかったのだ。

 

 

 

「ケケケケケ! 珍しいハクの天然、垣間見たねぇ。また良いものみれたよ」

「ぅ……」

 

 

笑う笑うメラに対して、ハクは少し顔を赤くさせた。

邪魔した~~と言うのがまだまだ尾を引いているのかもしれない、と自分を戒める様にハクは顔をぱちんっ、と挟み込むように叩くと。

 

 

「そ、それより、メラさんだけなんですか?? ここに来てるのって―――」

 

 

と、ハクが話題逸らしのように聞いてみると―――、それに呼応するかのように、がさりと森の木々が揺れた。

 

 

「無論、メラだけに大役を譲る訳は無いですね。ご主人様のお役に立てる事こそが存在意義。そして何物にも勝る喜びなのですから」

「ッ………!」

『あいすヒートノ、姐サンノ、仰ル通リカト。うちノ相方モソウ思ッテイルソウデス』

 

 

2人の美少女たちが一斉に現れた。無論、奈落での顔見知りの2人、アイスヒートとスズ、恥ずかしがり屋なスズに変わって代弁してくれているインテリジェンス・ウエポンであるマスケット銃のロック。

 

そして、その奥から更にもう1人。

 

 

 

「弟分たちが頑張っているのに、兄貴分の俺様だけが引っ込んでいる訳にはいかないだろ?」

 

 

 

奈落でパーティも組んだ事があるジャック兄さん事、ジャック。

久方ぶりの再会で頬も緩むと言うものだ。先ほどまでの怒りは取り合えず霧散した様である。

 

 

「皆、久しぶりだね! アイスヒート、スズ、ジャック兄!」

 

 

ライトがそう言うと同時に、レベル7777メンバー4人が横並びになる。

 

 

「ご主人様! 改めましてごあいさつが遅れて申し訳ございません。アイスヒート、メラ、スズ、ジャックの4名、お迎えに上がりました」

 

 

これで本当に皆と合流した、と言う事だろう。

不思議と、ハクは頬が更に緩む。

それは何故か? 勿論決まっている。

 

何だか、皆との距離が奈落の時よりも縮まった様に思えたからだ。

 

ライトと相対している時は、何よりもライトが最優先で、対応は後にする~と言う事がおおかった当初の時と比べたら、やっぱり嬉しいんだ。

 

 

「じゃあ、皆。巨塔までよろしく案内を頼むね? では、ハクさんも皆に任せて後衛に下がって貰って――――あれ? どうしました?」

 

 

笑顔なハクを見て、ライトは首を傾げる。

何か面白い所でもあったのか? と。

 

 

「あはっ、いえいえ。なんでもないですよ、ライトさん」

 

 

ハクはただただ笑顔を崩さない。

それを観ていたアイスヒートは。

 

 

「ハク殿、ご主人様へ隠し事は感心しないわよ」

「ケケケケケ。そこ突っ込む所か? 固すぎるだろ、流石に」

 

 

生真面目なアイスヒート。

これはハクから、自然体に、過剰に反応せず、いつものアイスヒートとして相対してほしい、とハクが願った結果だ。だからこその反応なのである。

メラはメラで、ハクを見て色々と思う所があるのか、少しばかり呆れ気味で言っていた。

 

 

「まぁ、ハクも俺様達にまた会えた事が嬉しい、って事だろう。兄貴分として、弟分と再会した、と言う感動も一塩だ」

 

 

ジャックのその言葉に対して、ハクがいう事は最早決まっている。

 

当然、ジャックの言葉に全肯定、である。屈託のない笑顔と心の底から喜んでいるその様は、まさしく奈落で色々と猛威を振るった天然ジゴロそのもの。

流石にライトがすぐそばに居るので、効果は半減したが……ある意味笑顔が一番の凶器になるかもな、とメラはケケケケケ、と笑うのだった。

 

 

 

 

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