職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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黒と白

「本当に街の入り口までで良いのですか? 他に何かお礼を―――」

「いえいえ。十分です。ギルドの場所も教えていただきましたし」

 

 

冒険者計画を進める道中、人種(ヒューマン)の馬車 を狙うドワーフの盗賊と遭遇した。

初日でいきなり盗賊と出くわすなんて、地上は世界最強最悪とも呼ばれる【奈落】よりも物騒ではないか? と思わず笑ってしまうと言うモノだ。

奈落に関しては、あまりにもライトらの軍勢が強すぎて、ダンジョンのモンスターなど有象無象、塵芥に過ぎないから言えば世界一安全な場所ともいえるからある意味当然ともいえるが、何にせよ人種(ヒューマン)の親子を助ける事が出来た、と言うのは良かったとライトは胸をなでおろしていた。

 

 

そして、助けた彼らに乗せてもらう形で、【ダガス】へと到着したのだ。

 

 

「それでは、私はここで人種(ヒューマン)向けの宿屋を経営しておりまして、街一番だと自負しております」

「ほう?」

 

 

ドワーフの盗賊に襲われた時は死を覚悟した。子供だけでもどうにか助けてもらおうと懇願したが……自身が殺されれば間違いなく殺される。良くて奴隷に落とされる。……死よりもつらく苦しい事になりかねない。命乞いはしたが、半ば生を諦めかけていた自分たち親子を助けてくれたのが、この目の前の規格外の冒険者たち。

 

命の恩人にどうか報いたい一心―――と、何より経営者としての手腕も同時に唸る。

 

 

「どのような事情にも対応させていただきますので、宿をお探しの際は是非いらしてください」

「………わかりました」

 

 

無限ガチャの能力を使った訳ではない。単純な洞察力でライトは彼の考えを推察した。

彼は自分たちの力量を把握している。

駆け出し冒険者も同然だと言っているが、それでもあのドワーフの盗賊はLv200を超えており、人種(ヒューマン)が太刀打ちできる相手じゃないと言うのにも関わらず、ライトらは一蹴したのだ。間違いなくここから名を上げる存在となるだろう……と先行投資もかねて自分の宿の名を売った形となっている。

 

勿論、思惑は理解できるし、それ以上に敬意と尊敬の念も十二分に伝わってくるので、不快感は一切ない。機を逃すまいとする手腕。良い腕の経営者だと感心もした。

 

 

「それでは失礼します」

「ばいばーーい! お姉ちゃん! お兄ちゃんたち!!」

 

 

親子は最後に礼をするとそのまま街の門を通り、内部へと消えていく。

 

 

「宿屋の亭主だったのですね」

「うむ。アレはなかなかのやり手だと言えるな」

「うん。力強く生きている、って言うのが伝わってきたよ。……良い出会いだったね」

 

 

第一の目的、目標は復讐なのは間違いないが、酷い差別を受けている人種(ヒューマン)を助けたいと言う気持ちも当然ある。

だからこそ、こんな世界で力強く生きている人たちを見ると……心が温かくなってくるんだ。

 

 

「それじゃあ僕らも街へ入ろうか」

「うむ」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日同刻ダガスにて。

 

 

「本当に良いんですか!? ハクさん!! 一緒にダンジョンへ潜ってくれるんですか!??」

「はい。折角のダンジョンですし、僕も一緒に……。えーーっと、そんなに驚く事ですか?」

「だって、最初はこのダガスまで一緒に~~って言ってましたから、此処に来たらその……もうお別れかな……って思っちゃって」

「そう言えば……そう言う契約でしたね。では延長でよろしくお願いします。この街のダンジョンは初めてですから、やっぱり経験者の皆さんと一緒の方が1番良いかな? って言うのは建前で。もう少し見守りたいですから」

 

 

1日前にこのダガスへ到着していたエリオ達。

目的地と定めていたのがこの街であり、ここに来た以上はギルドの仕事で言えばクエストクリア。……契約終了でお別れだと思っていた節があった。

ミヤも道中は楽しそうに笑っていたが……街が近づくにつれて、お別れが近づいている~と感じて表情が暗くなっていっていたりしたのだが,ハク自身はそれに気づいた様子もなく、ただただきょとん、としていたが、思い出して契約変更を申し出た。

 

それに1番喜びを見せるのは当然ミヤ。別れるかも? と思ってた時は目に涙を浮かべてたのだが、今は頬を赤くさせながら喜んでいるのだから。

 

そんなミヤを見た他の面々は……同じ様に嬉しいし、頼りない! と思われたも同然なので不甲斐ない〜と思うのが定番なのだが……少々違った。

 

 

「ミヤちゃんもそーゆーお年頃っスからねぇ~」

「種族の垣根を超えた想い―――! いいな! お兄ちゃん超応援するぞ! 絶対応援するぞ!!」

 

 

ミヤをからかう事。

勿論応援すると言うエリオのそれも本心だ。それほどまでに、ハクの事は信頼しているし、打ち解け合っていると思っているから。

 

 

「!! な、なにを言ってるの!!?」

「うんうん」

「お! ワーディが喋ったの久しぶりっスねぇ~~。激しく同意してくれたのが伝わるっス」

 

 

 

やいのやいの~と街中で騒ぐ4人。

メチャクチャ目立っている。

ただでさえ、人種(ヒューマン)は劣等種だと見下されて、疎まれているのに、こんな目立つ真似をしたら。

 

 

「っち、うっせーな……」

「なんだあの人種(ヒューマン)。黙らせてやろうか……?」

「ケッ。劣等種が騒いでんじゃねぇぞ」

 

 

こういう感じで一切隠す気配のない殺気を出されてしまった。

 

流石に大っぴらに襲ってきたりは出来ないとは思う。

ギルドそのものを敵に回してまで、イラつくからと言うそんな幼稚な理由で手を出したりはしてこないと思うが……、軽く見ただけで、殺気を向けてきている3種族のパーティらは、エリオ達よりも遥かに強い。……文字通りLvの桁が違う。あまり変に目立ってダンジョン内で事故(・・)でも起こされては危ないのでそろそろハクが止めに入った。

 

 

「皆皆、そろそろ宿に戻りませんか……? ……こんな往来で騒いだら目立つ~~って言うか、もう既にメチャクチャ目立ってるんで」

「「「「!!!」」」」

 

 

漸く4人は悪目立ちをしてしまった事に気付く。

微笑ましそうに見ているのは同じ人種(ヒューマン)だけで、その他はもれなく全員等しく侮蔑と苛立ちの視線を向けている。

 

 

「す、すみません! ほら皆いこっ」

 

 

ハクは、フードを深く被っているので、エルフ種だとバレてなく同じ人種(ヒューマン)だと認識されている事だろう。……だからこそ、ハクまでその対象に見られてしまっている事が何よりも嫌だった。だから、強引ではあるがリーダーであるエリオ……ではなく、ミヤが周囲に頭を下げながら足早にこの場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

―――そして、その道中……事態が動く。

初の邂逅……、黒と白が交わる事となる。

 

 

 

 

 

 

「知識としては地上を知ってましたが、知識だけなのとやはり実際に見てみるのとは違いますね!」

「うむ。見たところ武器・防具の店が多いな」

「ここは冒険者が集う街だからね。ドワーフ王国の領土とあって、鍛冶も盛んらしいよ」

 

 

ライト達はまずは教えてもらったギルドへと向かう。

地上に出て街は初めてなので、ネムムは興味津々と言わんばかりにキョロキョロと周囲を見渡していた。

 

 

「キョロキョロして迷子になるなよネムム」

「なりません! たとえ逸れたとしても無駄に目立つ目印あるし!」

 

 

いつも通り、楽しそうに絡んでいる2人を見て頬が緩む。こうやって楽しく――――復讐を完遂出来ればいう事は無い。

身内にはこうやって優しくして、優しくされて、心地よく日々を過ごし最後は幸せになる。

復讐対象には……悪認定した相手には世の地獄を見せ、死にたくても死ねない、死以上の絶望と苦しみを与え続ける。

 

そう――決めているんだ。

 

 

 

街中ではなるべく抑えている復讐心。

闇よりも深い――――奈落の底から戻ってきた黒い殺意。

 

その一部が……ほんの一部。常人ならば気づく筈のない程の揺らぎ。ゴールドに言われて頑張って抑えていたほんの少し漏れた殺気が―――届く。

 

 

 

 

「ミヤ!! ちょっと早いって!」

「早くて良いの!! 早くいこっっ!!」

「あーもう! って、何あれ! スゲーー人? が居るぞ」

 

 

街中だろうが外だろうが、嫌でも目立つ黄金の輝きを纏う騎士の姿に目が留まり、足も止まった。

慌てて戻ろうとしていたミヤも、思わず足を止める程だ。

あまりにもキラキラピカピカと輝いているから。

 

 

「凄いピカピカ。あんなの見た事ないなぁ。ハクさんは見た事あります?」

「………黒い風が……」

「え?」

 

 

ただ唯一ハクだけは、その目も眩む程の黄金の輝きに注目する事は無い。彼らよりも先を歩く仮面をかぶった少年に注目していた。

 

目立つと言えばあの黄金の騎士と先ほどのミヤらと同じくらいの声量で騒いでいる女の人の方が遥かに目立つと言えるだろう。

でも……ハクの眼にはあの2人よりもあの仮面の少年の方に目が奪われる。そして、困惑してしまう。

 

 

何故――あの少年の周囲が()で包まれているのか。

まだ日も昇っている時間帯だと言うのに、彼の周囲あるのは深い深い闇。

 

どこまでも深く、深淵が見えない底なしの……闇。

 

 

この世界にきて、いきなり邪神にでも遭遇したのか? と思わされる程の深い深い闇。

 

少なくとも、駆け出しから一人前までが揃うこの街で出くわして良い存在じゃないだろう。

 

 

 

そして――その気配(・・・・)に気付いたのは何もハクだけじゃない。お互い様だった。

 

 

 

仮面の少年ライトもとい、仮面の冒険者ダークもこの一瞬でその存在(・・・・)を感知した。

 

異質な気配を、感じた。

思わず考えていた事を全て放棄。思考を一点に集中させてしまう程の……ナニカを感じた。

 

少し零れていた笑みは完全に消え、ギルドに向かって歩いていた歩を止めて、思わず振り返る。まだ口喧嘩をしているゴールドやネムム……には目もくれず、周囲を見渡した。

 

 

「ら……ダーク様?」

「む?」

 

 

そして、そんなライトの様子を。明らかに変わったライトの様子に気付いたゴールドとネムムも同じく周囲を見渡す。自身の持ち前のスキルを活かして索敵を開始した。

 

この街で、我が主があからさまに警戒する様な事がありうるのか? と僅かにだが疑問を持った……が、主の意向を無視する訳がない。何よりライトが反応する以上……間違いなく何かがあるのだ、と2人は解っているから。

自分たちよりも遥かに高いLv9999と無限ガチャより出された無限の能力を持つ至高の存在なのだから。

 

 

「ハクさん?」

「………」

 

 

臨戦態勢になる―――つもりは無い。鬼が出るか蛇が出るか……と言った冒険心が無い訳ではないが、この場で事を起こして皆を巻き込むような事は出来ない。

 

でも、念には念を入れて、護らなければならないだろう。それは間違いない。

 

 

「《絶対防御(エンペラー・プロテクト)》」

 

 

限りなく早く……それでいて限りなく静かに目立たずに。

神の加護とも呼べる最上位の魔法の衣を4人に備えた。

 

それは、かけられた4人も知覚することが出来ない防護壁。

 

 

「ん。何でもありませんよ。……では、宿の方に戻りましょう。お腹すきましたし」

 

 

正直、気になる存在ではある。もしも、ここにいるのが1人であったら間違いなく接触していたくらいだ。

 

黒い風……。それはありとあらゆる負の感情が内に内包している者が纏うモノ。

 

その身に宿す負の感情が強ければ強い程……、何よりその身に内包する力が強ければ強い程……、より濃い色となって周囲に現れる。

そして彼が纏っている風は完全なる黒。……闇そのものだ。

 

彼は間違いなく人種(ヒューマン)

なのにあの色は人外そのもの。気にならない訳がない。

 

 

「(少し安心できるとしたら……彼らじゃない(・・・・・・)って事くらいかな)」

 

 

安心できること。

このパーティの死の気配について彼らは何も関係ない、と言う事だろうか。

神眼で見た気配と彼ら、死の因果は繋がっていない。

 

 

少しだけ安心したその時だ。

突然、突風が出現したのは。

 

 

解放(リリース)、R一陣の風」

 

 

ライトは自身の直感に身を委ねて行動を開始した。

いきなり攻撃を仕掛けよう、と言う訳ではない。R 一陣の風はその名の通りの能力で、風を少しだけ操る事が出来る。

攻撃魔法クラスの風ではなく、濡れた衣服を乾かしたり、猛暑日で涼んだり、と使い所があまりない言わばハズレ能力(ガチャ)

 

でも、今はこれで良い。

傷つけたり攻撃したりするのが目的じゃないから。

 

ほんの一瞬だけ感じた気配……。出所が掴めないが、可能性として真っ先に上げられるのはあの人種(ヒューマン)のパーティ。

鑑定スキルで夫々確認したが、その中で唯一解らなかった人物がいたからだ。阻害されている様には思えないが、あの被っているフードが何等かのアイテムの可能性がある。

素顔をさらしたくないから仮面をかぶっていると言うのに他人の素顔をさらすような真似をするのはどうなのか……? と思わずにいられなかったが、それ以上に好奇心が勝ってしまった。

 

 

それは、過去感じた事のない気配だったから。

あの奈落でさえ―――――。

 

 

 

ライトが生んだ風はエリオらの身体を横切る。

少しだけ強めの風……と言うくらいで普段なら特に気に留めない。寧ろ最近熱いので心地よいとも思えるくらいの風だった。

世に防げないモノはない、とかの世界では謡っていた《絶対防御(エンペラー・プロテクト)》。

それは悪意ある攻撃、身体に損傷を負わす攻撃には反応し、遮るが、事自然の風のような無害なモノに対しては素通りする。

 

素通りした結果―――。

 

 

「あ」

 

 

ハクの備え付けが甘くなっていたフードを捲ってしまった。

露わになるその容姿。

でも、直ぐにかぶりなおした……が、その一瞬をライトは勿論、ゴールドやネムムも見逃さなかった。

 

 

そして……トップクラスの疑問が頭の中に流れる。

諜報員として、地上の色んな場所に派遣している仲間の皆から届いている情報を鑑みても……明らかに異常な光景。

 

 

「なぜ……人種(ヒューマン)のパーティに……エルフ種が?」

 

 

万にも届く報告書の中にも一切なかった。

ライト自身が所属していた《種族の集い》以外無かった。

 

人種(ヒューマン)を奴隷として扱う冒険者は数いれど、人種(ヒューマン)冒険者たちの中に異種族が居るなんて事は……。

 

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