職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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ぽんぽん更新出来てるのはストックがあるからです。


ダンジョン前での一悶着

 

 

今日は実にダンジョン日和。

そして間違いなく今日何かが起こる———と言うのは、朝目が覚めて皆を見た瞬間解った。

 

 

死の気配がとんでもなく濃くなっている事に。最早死臭まで漂ってきそうな勢い。

かの世界の魔王襲撃前夜祭に参加したに見たソレと何ら遜色ないレベル。

 

 

「じゃあ、今日は2層目指して頑張るぞ!」

「「おおーーー!」っス!」

「(こくこくこくっっ)!!」

「頑張りましょう」

 

 

でも、だからと言って止めにする~と言う訳にはいかない。

そもそも彼らは人種(ヒューマン)。例えこの場所じゃなかったとしても、いつどのタイミングで死の気配が迫ってくるか分からない。

 

物理的に離れて回避をする~と言うのは、あまり良い手段ではないのだ。死の因果を解かなければ、まるで魅入られたかの様に付け狙われ、軈て似た様な死が訪れてしまうから。

 

能力の説明書きにも有った。云わば死の運命に取り込まれたも同然。その運命を回避するには、相応の力が必要である、と。そしてそれは神眼を持つ者の責務でもある。と記してあった。

 

【半端な覚悟で助けるとか言ってんじゃねぇよ!】

【世の中綺麗事だけじゃ済まされねぇんだよ!】

 

 

みたいなしめ台詞でくくられていた。最後のソレは製作者の趣味か? と頭を抱えたが……、実に意地が悪いとも思った。何度か面倒だからと気配が消えていないのに中途半端にしてしまった事が幾つかあって……結果説明書通りの死が訪れてしまったから。

 

希望から絶望のどん底へと落とされるその瞬間は、本当に残酷そのもので、何も知らないまま死ぬ方が良かったと言う者さえ居た程だ。

かなり、心を抉られた。作った者は本当に性格がねじ曲がってるとしか思えなかった。 

 

 

「(どこからどこまで再現されているかは解らないけど……。兎に角せめて消えるまで(・・・・・)頑張ってみようかな)」

 

 

前へ前へと進む彼らの背を眺めながら……、死の気配に包まれた彼らを見ながらダンジョンへと目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝御飯に串焼きはいかがですか!?」

「保存食! 保存食が今ならお安いですよ! ダンジョンのお供にどうぞ!」

「回復ポーション! 傷薬! 弓矢まで何でもそろっていやすよ! ダンジョン前の装備の確認は確実に!!」

 

 

ダンジョンに近付くにつれて、屋台・売り子らの数が多くなっている。

ここのダンジョンの出入り口は街の最奥。

そこは一見すると洞窟の様な場所。

ドワーフ王国は山に囲まれているので、このダンジョンも山裾で発見されたものなのである。

 

 

「ふむ……。人種(ヒューマン)、獣人種、ドワーフ種がメインで他の種は殆どおらぬな」

「昔からこの場所はダンジョンの取り扱いで2種間で問題になってるからエルフ種が少ないのはそのせいだよ。他の種族は単純に地理的要因だね。人種が多いのはダンジョンがあるからそれ目当ての人が多いせいかな? 初心者ならまずここ、とも言われているし。勿論浅い層は、の話だけど」

「流石はダーク様。素晴らしい見識ですね」

 

 

ライトら一行も朝一に出発し、ダンジョンへと潜る為の列に並んでいる。

そして偶然なのか、或いは狙っているのか……、殆ど居ない、種族間の問題で少ない、と言ったばかりの種族《エルフ》が目の前に居るあのパーティの直ぐ後ろになった。

 

ライト自身がそれを狙った訳じゃないく、そして前に並んでいる以上、ライト達がいつ宿を出るかは解らない筈なので狙える訳がない。

だからこそ……偶然だろうか。

 

 

「(黒い風……、流石に今は無い……ね)」

 

「(あの得体のしれない気配。その根源は? 一体なんのタイミングで漏れでた? 僕の様な殺気じゃない。……何かのマジックアイテムか、若しくは……恩寵(ギフト)か)」

 

 

互いに意識をしていた。

互いが互いを探ろうとしていた。

 

でも間違いなく言える事は2人のそれが火種となり、たちまち周囲を焼き尽くす様な業火に———は決してならない、と言う所だろう。

互いが互いを警戒する、と言うより興味津々である、と言う方が正しいから。

何か切っ掛けがあれば仲良くなれる……。そんな感じなのだ。

 

 

そして、その切っ掛けは意外と早く訪れる。

 

 

 

「すげぇな」

「何だあの鎧」

「それより見ろよあの女」

「メッチャ美人だ」

「その美人に抱えられてるあのガキはなんだ?」

「気味悪い面だなぁ」

 

 

まず目立ったのはライト一行。

元々、目立つ事は好ましく、計画を進める上で重要な要素だと考えていたので別に問題ではない……が、少々鬱陶しい視線があるのが鼻につく。

 

無論、それは人種(ヒューマン)を除いた他の種族らの視線。劣等種だと見下している者達の視線。不快じゃない訳がないのだ。……でも、目的の為ならば、と考えればこの程度微風に当たる様なものだ、とライトはため息を吐いていた。

 

と言うより、護衛として背後から抱きかかえてくれているネムムの柔らかな膨らみが後頭部に当たっていて、ふにふにと形を変えるそれが後頭部に感じられて……何だか恥ずかしいから、不快な視線どころではなかったりもする。

 

目の前のエルフ? の彼の事を考えている間は、恥ずかしい気持ちもなくなるので丁度良かったりもしていた。

 

 

そして、ここから切っ掛けが訪れた。

 

 

「ん?」

 

「!」

 

 

何の遠慮もなく、さも当たり前の様に強引に入ってくる3つの陰があった。

3人ともフードをかぶり、素顔は晒さないが、その佇まい、体幹のブレが無い事を見ると相当鍛えている者達である、と理解できる。

 

流石にこうも堂々と横入りをしてくるのだ。注意の1つや2つ、してやろうか……と思ったエリオだったが、一先ず止めた。

ハクが、それを制したからだ。

 

一目で眼前に居る男の力量に気付いたのか、変に注意し、変に目をつけられてしまえば後々厄介な事になりかねない。良い手段だ、とも言えるが聊か情けなくも感じる。

 

 

「(いや、彼は切り抜けれたとしても、他の子達が無事じゃ済まさない、って考えたら最善なのかもしれない……か。仕方ない)」

 

 

ライトはここで助け船を出す事に決めた。

と言うより、自分の前にマナー違反者が居れば気分が悪くなるから、助け船~と言いつつ自分の為だ。

 

 

 

「皆は順番をちゃんと守ってますよ。君たち」

「そこのフードの人、横入りは止めましょうね」

 

 

 

ほぼ同時だった。

ライトとハクは同時に、モノ申したのだ。そして今気づいたが、いつの間にかハクと他の冒険者たちの間に僅かだが隙間が出来ていた。丁度1人で並んでます。と主張するかの様に。

 

でも、心配そうに……辛そうにしている女の子の様子は見ていていたたまれない。

 

 

「僕様に注意するとは……。この僕様が誰か知っての狼藉か!」

「ぼ、ぼくさ……ぶふぉっっ!!」

 

 

聞きなれないどころか、聞いた事が無い一人称に思わず笑ってしまったのはハクだ。

僕~なら解る。自身が自身を呼ぶ一人称は僕だから。ワシ、オレ、拙者、わたくし、わたし、あたし、あーし、あたい、小生、ミー……等々それなりには知ってるつもりだったが、まさか俺様ならぬ僕様。幼稚、図体は大人だけど、背伸びしきれてない子供の様な感覚? だろうか。

 

 

「……貴様!! 何を笑っている!!」

 

 

明かに憤慨しているのが解る。

煽るつもりは毛頭なかったのだが、こればっかりは仕方がない。本当に不意打ち気味に食らってしまったから。《僕様》。

 

 

「彼が笑ってしまうのも仕方がない事だと思いますよ? フードで顔を隠している相手をどうやって知っているのか、とね」

「ッ……!!」

 

 

ライトがそこで助け船を出した。

因みにライト自身は、別に僕様~がおかしいと思った訳ではなく、そこがツボった、とも考えてなく、ただ単純に自身が思っていた通りの事を言っただけなのである。

 

 

「こほんっ。いきなり笑うのは確かに失礼でした。そこは謝罪いたします——が、だからと言ってあなた方が他人に迷惑をかけている、と言う事実は変わりませんよ?」

 

 

笑ったのを謝罪はしたけれど、それが形だけの謝罪である事は明らかだった。

呆れている雰囲気は一切隠していないのだから。

 

やれやれ~~と言わんばかりな雰囲気。

ハク自身もフードで顔を隠していると言うのに、表情までは見えないと言うのにその雰囲気は誰にでも解る程あからさまだった。

 

 

「(挑発? ………いや違う)」

 

 

ライトは最初こそは好戦的な性格だから挑発の類をしたのか? と考えてたが直ぐに改めた。

 

彼の事を心配しているのだろう、あの女の子を見て、確信が持てた。少し震えていて、自分も前へ出ようとしているが、直ぐ側の男の子にそれを制止されている。

 

あの絶妙な隙間は、ハクと人種(ヒューマン)冒険者パーティは全く関係の無い間柄である、と訴えている様にも見える。

 

 

「(成る程成る程。……やっぱり彼は優しい人だ。彼がエルフ種だなんて本当に信じられない)」

 

 

ライトは思惑を大体察して笑顔を作る。

 

でも、取り合えずは目の前のマナー違反者に対しての対応が先だ。

 

 

「わははははは! 主とそ奴がまさに正論。同じ様な装備をしていると言うのに、こうも品格の差が出るのは実に珍しいと言わざるを得ないな! フードをかぶった他者の正体を具体的に知っていたとしたら? それは逆に恐怖を覚えるモノではないか? いいからこれ以上恥を晒す前に大人しく最後尾に並べ。吾輩たちだけではなくちゃんと並ぶ他の者達にも迷惑だろう」

「その通りだ。ゴールドと同意見だと言うのはアレだが、ダーク様のおっしゃる事が全て正しい。そっちの彼もね。さっさと最後尾へ並び直せ。これ以上駄々を捏ねるとただの糞餓鬼だと思われるぞ。……まぁ、もう手遅れかもしれんがな」

 

 

ゴールドとネムムも加勢に入る。

これで多勢に無勢。数の有利はこちら側にある、と言わんばかりに。

 

 

「確かにあいつらの言う通り! 正体を隠すお前の事を知ってたら逆に怖いわ!」

「そうだそうだ! ちゃんと並べ! 恥知らず!」

 

 

他の冒険者らも騒ぎ立てた。大ブーイングだ。

こうまで彼らがブーイングを飛ばすのには理由がある。勿論数の有利が出た、と言うのもあるが、それ以上にライトの存在だ。ライトが人種(ヒューマン)だからこそ。ハクについてはフードをかぶっているが故に、種族は解らない。でもライトは違う。人種(ヒューマン)が声を上げているのだ。勇気を貰った、と言っていい。

 

更に人種(ヒューマン)だけでなくドワーフや獣人までもが冷めた目で見ている。無論、騒がしい人種(ヒューマン)に対して五月蠅い劣等種! とも思っているのかもしれないが、その切っ掛けになったあの横入り連中に対しても憤慨している様子だった。

 

 

「こ、この———僕様たちに踏みつぶされる虫けらヒューマン(劣等種)の分際で……」

 

 

明らかにプライドが高い男だ。沸点も然程高くない、と言うのが解る様子だ。

これ以上何か言えば暴れるかもしれない……と思ったが。

 

 

「生憎、ですね。僕は人種(ヒューマン)じゃないですよ。そして、人種(ヒューマン)は劣等種だとも思ってません。――――ソロで冒険者をしているハクと申します。以後お見知りおきを」

 

 

ここで、ハクがフードを取った。

その素顔を見て———彼の正体を知っているライト達、そしてエリオ達以外は皆等しく絶句する。

 

何故なら、その姿はエルフ種のソレだからだ。

 

人種(ヒューマン)に肩入れしているエルフ種なんて聞いた事も見た事もない、と思わず皆が時間が止まったかの様に固まったのである。

気付いたらブーイングの声も鳴りを潜め、冷めた目で見ていた筈のドワーフ、獣人たちも表情が固まっていた。

 

 

「な、な……き、貴様! 同じエル—————「いけません!」ッ」

 

 

いの一番に激昂し、剣を抜こうとしたが、後ろの同じくフードを被った男に止められた。

 

 

 

「落ち着いてください。こんな目立つ場所でそれを使うのは得策ではありません。―――それに以上に、あの男がエルフ種ならば正体を晒すのは非常に危険です。……潜り込ませている可能性(・・・・・・・・・・・)も否定できません」

「ぐッ……ぬッ………劣等種(ヒューマン)……、裏切り者の屑が………」

「裏切り者? ……ふむ、ひょっとして貴方は—————」

 

 

 

最後までハクが言い切る前に、彼は歯ぎしりの音と共に駆け出した。

 

 

「後悔させてやる! 必ずだ!! 覚えていろよ!!」

 

 

悪役丸出しと言った感じで、捨て台詞を吐くと列から抜けて後方へと向かい始めた。

それを見届けた後。

 

 

「加勢に入ってくれて感謝致します。僕1人じゃこうも早く追い払う事が出来ませんでした」

「いえ。正直僕の方も余計な真似をしたかな? と思ってしまいました。凛とした佇まい、素敵だと思います。こちらこそありがとうございます」

 

 

ハクとライトは握手を交わした。

人種(ヒューマン)とエルフ種が……がっしりと握手を交わす光景。

こんな光景は見た事がない、と息を呑み———軈て大きな歓声となって場が一気に湧き上がる。

 

 

「よくやってくれた!! すげぇぞボウズ!!」

「お嬢ちゃんの啖呵も良かったぜ!!」

 

「エルフの兄ちゃんもカッコイイ!! 惚れた!! 男なのに惚れた!!」

「素敵!! 誇りを胸に抱いて~って感じで素敵でした!」

 

 

一瞬でライトは人気者になり、ハク自身にも大称賛が起こる。普通のエルフ種なら、称賛した所で侮蔑されたり、はたまた力で排除しようとしたり———が常なのだが、ハクは困った様な照れた様な顔をして頭を掻いていた。

 

 

「僕よりも人種(ヒューマン)の彼の方が凄いと思いますよ。……物凄い勇気だと思います。まさに勇者様(・・・)、と言った感じでしょうか」

 

 

ハクの謙遜する言葉。人種(ヒューマン)であるライトを立てる様に言った事。こんなエルフ種見たこと無い、と更に盛り上がる。

 

 

「わはははは!! スゲースゲーー! 今日はなんて日だ!!」

「エルフの認識変わっちまうよ!! ……でもまぁ、アレだと思うけど」

 

 

盛り上がりはするのだが……一部は冷静にモノを見ていたりもする。

エルフ種は確かに少ない……が、居ない訳ではない。

人種(ヒューマン)に味方するエルフ種など信じられないのか驚愕したままの者や、心底軽蔑している者、凄い形相で睨んでいる者とハク以外の全てのエルフ種が、敵意を持っていたのだから。

 

だが、これこそ多勢に無勢。このまま殴りこんでくる様な者達は折らず、ただただ面白く無さそうに、別に横入りした訳でもないのに後ろへ下がって言ったり、店の中へと入って行ったりして、この場から消え去っていった。

 

 

「は、ハクさん。大丈夫、なんですか……?」

「はい? 何がですか?」

 

 

ミヤの言葉にハクが首を傾げる。

ライトは、そんなミヤを代弁する様に続けた。

 

 

「ハクさんの方こそ素晴らしい勇気だと僕は思いました。僕の事も褒めてくれて凄く光栄で嬉しい———ですが、その……エルフ種の中で立場が悪くなったり、とかしないかと心配にもなります。ここはドワーフ・エルフ・人種(ヒューマン)の国境付近の街。情報が回るのは早いと思いますし……」

 

 

ミヤも手をぎゅっ、と握ってブンブンと首を振った。

心の底から、ハクの事が心配なのだと言う事が解った。

 

そんな2人をぽかん———としていたハクだったが、直ぐに笑顔になる。

 

 

「別に悪い事をした、と言う訳じゃありませんし、僕は僕の考えがあります。なので全く気にしてませんよ? そもそも、立場も何も、そんなエルフの国で位を持っている、と言う訳じゃないただの冒険者ですから。大丈夫です。安心してくださいミヤさん。それと……」

 

 

ハクはダークの方を見て言った。

 

 

「ダークさんも心配をありがとうございます」

 

 

屈託のない笑顔をみせるハク。

その笑顔に……ネムムは圧された、と言うのは秘密の話だ。

 

 

次の復讐計画の標的は————エルフ種(・・・・)のサーシャだから。

 

 

エルフ種だといって、ひとくくりにしてはいけない。ハクの様な人も存在するんだ、と改めて戒める。

ライトが……あんなにも笑顔で話しをしているから。

人種(ヒューマン)であるライトと話をしているハクも同じ屈託のない笑顔なのだから。

 

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