職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

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ダンジョン攻略

 

「あ、あの!!」

 

 

ミヤが一歩前に出て、ライトら3人の方を向いて勢いよく頭を下げた。

 

 

「助けて頂き、ありがとうございました!! ハクさんの味方になってくれて………本当にありがとうございました!!」

 

 

呆気に取られていたエリオもミヤに続く形で頭を下げ、軈てギムラ・ワーディも頭を下げる。

そしてライトの考えていた通りの事が有ったのだ、とここで確信が出来た。

 

 

「は、ハクさんは、私達を巻き込まない様にって1人で注意をしに行ってくれたんです……。もしも、相手が激昂してきたら大変だから、って。目を付けられたら危ない、って……」

 

 

ハクは少しだけ慌てて両手を振って大丈夫ですよ。と言っていたがミヤが頭を上げる事は無かった。

 

 

「恥ずかしい話、本当に突然の事でどう対応して良いか解らなかったんです。……そんなオレ達の為にハクさんは身体を張ってくれました。貴方たちも一緒に助けてくれました。オレの方からもお礼を言わせてください」

 

 

続く形でエリオもそう言って感謝の意を伝えた。

 

 

「いえいえ、お気になさらないでください。当然のことをしたまでですし、横入りされて困るのは僕達も同じですから。……それに」

 

 

ライトは頭を下げ続ける皆に対して少し照れたり、慌てたりした様子で対応していた。

 

 

「とても良いモノをみせて頂いたのは僕の方だとも思っていますよ」

 

 

その姿を見たら……本当に本心で、仲間の為に行動をしたのだと言う事が解る。

初見で解る程の実力者。……あの日、種族の集いのメンバーが例え束になってかかっていったとしても恐らく及ばないであろう実力者に対して真っ向から盾となったのだ。

 

何かがある人だとは思うが、その気持ちに、その優しさには嘘は無いとライトは思ったのだ。

 

 

ライトの最後の言葉の意味はいまいち解らないが、特に高圧的になる訳でもなければ恩に着せる様な物言いでも態度でもないので、エリオ達も緊張感が抜けて互いに話せる様になってきた。

 

 

「改めて、本当にありがとうございましたっス! その仮面、すげー格好良いっすねーー! そっちの騎士様も、全身黄金でスゲーーっス! ……まさか、全身くまなくマジで黄金なんっスか?」

「お、おい! ギムラ! 失礼なことを聞くなよ!」

「いやでもやっぱし気になるっしょ?」

 

 

緊張感が解けて、ある程度砕けた会話をする事が出来たのは事実だが、いきなり聞く事ではないのでは? と思う反面————あの騎士の甲冑、あの黄金が本物であるか否か、は周囲の冒険者らも皆気になっていた様で、聞き耳を立てていた。

 

 

「わははははは!」

 

 

ゴールドは腕を組み、高らかに笑うとその真偽に対しての説明をする。

 

 

「吾輩の黄金の甲冑が気になってしまうのは当然のことだ! ちなみに、この甲冑が本当に黄金なのか、と問いに対しては————」

「全く違う。ただそう見えてる偽物。普通に考えれば全身を覆う黄金なんてあり得ない。なにより硬度の低い金で甲冑を造る意味も無い。頭が悪い」

 

 

何故か、説明はネムムの方が実に辛辣気味に……最後なんてただの罵倒で締めくくって説明をしてくれた。

大多数がその説明に対して【常識で考えればそうだよな】と納得した様な気配が伝わってくる。

 

 

「確かに、金剛石(ダイヤモンド)希少金属(ミスリル)なら硬度的に使えると思いますが金は—————ん? あれ? これって色々と混ざって……」

 

 

ハクもその説明に対してある程度の納得……はしつつ、少しだけ目を凝らす表情をした。

まさか、目視だけでこの甲冑の秘密に気づいたのか? と罵倒をしてきたネムムに一言でも文句を言ってやろう、と思っていたゴールドは思考を止める。

 

 

事実、ゴールドの黄金の甲冑は、黄金と希少金属を混ぜて防具としての防御能力を高めつつ、あの黄金の輝きを失わせなかった甲冑。……それは目で見て判別するモノではない。かなり高度な鑑定を使っているのか……? いや、力が発動した気配も無かった。

 

ハクの力について色々と思考を巡らせていたその時だ。

 

 

「す、すみません! うちのパーティメンバーが失礼な事を……」

 

 

エリオが謝罪を口にした。

なので、一度考えるのを止める。

 

 

「あはは。それも気にしないで良いですよ。これはゴールドの趣味、と言うかこだわりで着用していて、よく勘違いをされるので。もう慣れてますから」

「…………」

 

 

ライトはそう説明をしつつ、ハクの方を見た。

ハクもライトと目が合う。そして、ライトが片眼を瞑って少しだけ頷くと———その意図に気付いた。話を合わせてください、と言っているのだ、と。

 

 

「好奇心は身を滅ぼす事だってありますから。今回はダークさん達が優しいから良かったですが、もしも相手が違ってたら大変な事に繋がっていた可能性だってありますよ? ギムラさん。……冒険者として、その辺りも自制・見極めは極めて重要な点です」

「―――――っス………。また、怒られちゃったっス……」

 

 

ギムラはかなり好奇心旺盛な性格。それが先行してしまって、旅先でも色々とピンチを呼び込む事が何度か合った。幸いにも対処できるレベルの相手だったから良かったんだけれど、もしも、危険な相手だったら? と考えたらどれ程の事が起きてしまうか解るだろう。

 

まぁ、今のギムラの場合はある種の安心感があるから緊張感が揺らいでしまっているのかもしれないが。

 

 

「ギムラ、もどったら反省文だからな?」

「うぅ~~、これ以上書いたら手が、指がツっちゃうっスよ……」

「だから学習してって、って何度も言ってるじゃない。しっかりしてよ。切り込み隊長!」

「はいっス……」

 

 

一番身軽で軽快に俊敏に動けるのがギムラなので、ちょっとしたアソビ心で切り込み隊長(斥候(スカウト))と呼ぶ。ワーディがガード、エリオがアタッカー(物理)、ミヤがアタッカー兼補助(魔法)、そして臨時で入ったハクがヒーラー。

ハクが入るまでは、そうやってダンジョン等を切り抜けてきた……が、如何せんLvがまだまだ低いので無理無茶は禁物。なので、言い聞かせているんだけど、生来のおちゃらけお気楽な性格がある故に、なかなか難しい。……でも、それ以上にムードメーカーとしてパーティを明るくしてくれる所もある。

 

……でもやっぱり命が一番大切なので、しっかりと頑張って貰いたい。

 

 

 

取り合えずギムラにペナルティを施した後、エリオはライト達を見た。

 

 

「先ほど、助けて頂いたお礼ではありませんが、皆さんはこのダンジョンに潜るのは初めてですよね?」

「! それは見て解るものなんですか?」

 

 

エリオの指摘にライトは首を傾げて問う。

その反応にエリオはより確信を持って頷いた。

 

 

「ダンジョンには色々な種類があるじゃないですか。ここのダンジョンは他のとは違って兎に角1階1階が広大なんです。なので、ここはダンジョン内で宿泊するのが一般的なんですよ。皆さんは野外用品を一切持っていないのでそうなのかと。なので、次に潜る際は野外で泊る用品を一緒に持っていく事をお勧めしますよ」

 

 

エリオの指摘に、合点がいった様にライトは頷いた。

周囲を改めて見まわしてみると、一目瞭然。武器防具だけでなく、野外で宿泊する為の荷物を手にしている。

一般的なダンジョン深部に潜るのなら当たり前だが、浅い部分での日帰りならあり得ない姿だろう。

 

無論、ライト達にはそれでも構わない力がある。

彼らは全員《アイテムボックス》を所持している為、亜空間にストックしている荷物・アイテムをいつでも取り出す事が出来るのだ。……なので、手荷物の概念が抜け落ちてしまっていた、とも言える。

 

教えてくれたエリオに改めてライトは頭を下げてお礼を言った。

 

 

「ありがとうございます。教えてくださって。今回は様子見で潜るつもりだったんですが、次からは僕達も宿泊用品を準備した方が良いかな?」

「いえいえ! 寧ろ助けて貰ったのにこの程度しか教えられる、逆に申し訳ないです……」

 

 

感謝されたが、施してくれた事を想えばプラマイ0とはいかない。

何かないか……と試行錯誤していたのだが、それもも敵わなかった。

 

 

「次のPT!!」

 

 

呼び出しがかかったかだ。

 

だから慌てて皆はダンジョン内部へと歩を進める。しっかりと感謝の言葉を残して。

 

 

「ふふふ」

「ハクさん?」

 

 

ハクは何だか笑っていた。

その声はライトの耳にも届いてくる。

 

 

「ダンジョンに対して過信している訳でも傲慢な訳でもない。ただただあるのは絶対的な自信のみ。つまりアレくらいの軽装でも何ら問題なしである。……それ程までに、力を有している、って事なのかもしれませんよ」

「!! は、ハクさんがそこまで言うんだからやっぱり凄い人達なんだ……」

「いえ、ただの予想ですから、話半分で聞いててくださいね? そんな感じがした、と言っただけですから」

 

 

ダンジョンの出入口に差し掛かる所で、ハクは空を見た。

 

 

 

 

「地上の空とは、少しばかりお別れ、かな」

 

 

 

 

そして小さく……鼻歌を奏でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひょっとしたら、僕達の力量を正確に見抜いたかもしれないね。彼は」

「うむ。吾輩のこの甲冑に対して無礼を申したネムムに疑問をもっておったしな。エルフ種にも素晴らしい若人が居たものだと感心している」

「ゴールドの言う前半部分は兎も角、私もです。底知れない何か、を感じます。肌で」

 

 

ぴり————と少しだけ視線を鋭くさせるネムム。

ライトの斥候役であり、アサシンブレイドのネムムは人一倍強さに敏感だ。幾ら主が強くても関係なく、危険には近寄らせない、危険を排除するつもりである事もあるが故に、あのハクと言うエルフ種は、仲良くなっているかもしれないが、主には申し訳ないが警戒対象になってしまうのだ。

 

 

「……(それに、今の()も気になる……かな)」

 

 

ライトは僅かに聞こえてきた彼の鼻歌が妙に耳に残っている。

自身の故郷の皆が言っていた。

 

 

滅ぶ以前の記憶が殆どなく、どうやって、どうなったのかもわからず……ただただ覚えているのは綺麗な歌声だったと。……男のモノであるが、まるでセイレーンに誘われるかの様な綺麗な歌声だったと。

 

 

勿論、歌に村を復元した……村ごと蘇生した力が備わっているとしたら、今この場でも何かが起きていないとおかしい。単純に歌をうたう事が好きな人は幾らでも居るだろうから、一概に決めつける事はしないが……、未知の力、本当にエルフ種なのか? と言う疑念。そして歌。

 

色々と符号が揃ってしまっていて、少し過敏になったのかもしれないな、とライトは頭をかいた。

 

 

解らない事は多い。……でも、ハッキリと解っているのは彼はとても優しい人なのだと言う事。

人種(ヒューマン)差別がヒドイこの世界において……自分が受けた仕打ちが当然の様に、当たり前の様に存在するこの世界において、唯一無二の光になるのではないか? と思えてしまう程に—————優しい。

 

 

「……眩しい、な」

 

 

復讐に身を滾らせ、漆黒の炎を身に宿す自分とはまるで対極に位置する様に感じてしまう。だからこそ、あの笑顔がとても眩しいんだ。

 

 

 

「じゃあ、皆。僕達もいこうか。アイテムボックスの件は帰ったら検討しよう」

「うむ。吾輩ら全員が所持しているのは、吾輩の黄金以上に目立つやもしれぬな」

「偽装用の荷物を所持するか、若しくは誰か1人が《アイテムボックス》持ちと公表するか、ですね」

「うん。そうだね」

 

 

持ち帰って検討する程の事じゃないな、この場で決まってしまいそうだとライトは笑って歩きはじめる。

 

 

 

ライトにとって奈落以外のダンジョンは久方ぶり凡そ3年ぶりだろうか。

 

ハクにとってこの世界にきて初めてのダンジョン。

 

 

故に、2人に共通するのは少し高揚している所、だろうか。

 

 

 

ダンジョンとは地下に行けば行くほど、魔物が強力になっていくと言う構造は何処も同じ。

深く、深く潜る事で、邪神の力に近付く為だと言われている。

そして、そのダンジョンの最奥には『ダンジョンコア』と呼ばれるなにか(・・・)が存在している。

 

ダンジョンコアをなにか、と呼ぶには理由がある。

 

曰く邪神の力の塊。

曰く命の一部。

 

呼び名が様々だからだ。

 

 

ライトの仲間の1人である奈落一の魔法の知識を有する禁忌の魔女エリーはこうしめる。

 

 

『何故このような事が出来るのかは不明だが、ダンジョンコアは星のエネルギー・魔力を吸い上げ、ダンジョンを形作る。鉱物や素材を引き寄せ、宝箱やアイテムを作り出し、魔物を生み罠を造り、多種多様な環境を作る』

 

 

つまり……ダンジョンとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおお………凄い、ですね」

「えへへ。私も初めてここに来た時はハクさんと同じ感じでしたよ」

「ああ。それはオレも同じ。……圧倒されるよなぁ」

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

「これはなんと……」

「オープンタイプか。……すごいね」

 

 

 

 

 

 

そこはあまりにも広く、あまりにも高く……、建物の中に入り、地下を潜っていた筈なのにそこには空があり、地平線が広がっている。

 

 

 

————つまり、ダンジョンとは地上とは全く異なる魔物のためのもう1つの別世界なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一面の草原、山、川……確かに広大なダンジョンだ。

これで第1階なのだから目標である第2階に辿り着くのは骨が折れる事だろう。

移動手段が徒歩である事を考慮すれば当然だ。

ついでにいえば、モンスターだって黙ってくれている訳じゃないのだから。

 

 

「じゃあ、打ち合わせ通り。ここからは僕は最低限しか手を出さない様にしますが……大丈夫ですか?」

「もっちろん!!」

「大丈夫っス!!」

「!(こくこくこくこく!!)」

 

 

元気いっぱいの返事で実に頼りがいがある——と言いたいが、彼らは平均Lv15以下のパーティなので心配だ。

だからハクは観察眼(ライブラ)を使用して、周囲を確認。大体のモンスターのLvも把握した。1~15の群れが殆どで、取り合えず彼らの連携ならば大丈夫だろう。

 

 

「でも、危なくなったら回復はしますからね? 回復もしなくて良い~なんて事は言わない様にしてくださいね。ギムラさん」

「ええ! なんで名指しっスか!?」

「危機管理能力を高める為には、僕の回復補佐がない方が良い~~って力強く言ってましたから。……流石にそれは危ないので、もう少しLvが上がってからの方が良いと思います。僕の回復があれば、格上にも十分勝機がありますし、何なら倒しきる事だってできますから」

 

 

ハクの言葉に異議を唱える者はいなかった。ギムラの主張も勿論有効かもしれないが、命を落としてからじゃ遅いし、命の方が大切だから。

だからまずはレベリングを行いつつ、第1階を散策する事に決まったのである。

 

因みに、Lvシステムだがその仕組みについては解明されてない。

でも馴染みのあるシステムなので、ハクは戸惑ったりはしない。何せ所謂この世界のレベリングは在り来たりなゲームシステムと同じだから。

少しでも戦闘に参加していれば、モンスターを倒した時に経験値が入る。

戦闘貢献度にそって分配されるから、多少のばらつきがあるかもしれない。ハクが戦闘に手を出す事によって得られる経験値が低くなるのは当然だろう。

 

ただ、そこはハクは回復役に徹するので、分配が戦闘役に向かう様に心がけるつもりだ。

 

戦闘では攻撃・回避・防御等の大部分を彼らが担う事でより貢献度を高めると言うのが狙いだ。

モンスターのLvによって得られる経験値はピンキリだが、貢献度を考慮したら間違いなくハク以外の全員が高め+等しく分配されるだろう。

 

多少時間がかかるかもしれないけど、全体的な底上げと、戦闘での反射神経・反応速度も鍛えられる。

Lv上昇によって得られる身体能力に乗じて、Lvとは関係ない考える力も養える。

 

初心者が潜るダンジョンとはよく言ったモノで上手く出来ていると何処か感心してしまった。

 

 

「じゃあ、じっくり攻略していこう! 皆! 目指せ! 第2階!!」

『おおおー!』

 

 

彼らの目標は第2階到達。ハクも付き合うと明言している。……死の気配は恐らくその辺りと因果で繋がっているだろうから、それを断ち切る為にも。

 

 

 

「さぁて、早速オークの群れが来ましたよ」

「わっ! 結構数が多いよ!?」

「せ、戦闘開始! 散開!!」

 

 

 

木々が生い茂る森の中へと足を踏み入れ———最初は定番のゴブリンではなくオークが先にやってきた。

ゴブリンより体力はあるが、図体があるので俊敏性は無く、初心者でも借りやすい最初のモンスター。

 

 

「皆、頑張って!」

 

 

そんな皆の背を見て……何処か親心を感じるのはハク。

 

ぱちんっ、と指をならして皆にバレない様に『領域展開(フォースシールド)』を発動させる。

所謂来るもの拒み、去るモノ追わず、の結界魔法である。

逃げの意志がある者は素通り出来るが、攻撃の意志がある者、迫ってきている者は絶対に侵せない自分の領域。

繊細なコントロールで絶妙なモンスター数に抑えて、成長を促す。

 

 

「―――何だか、懐かしいなぁ」

 

 

こうやって、皆の成長を促して、ヒーラーとしてだけではなく、教官として鍛えた事が有ったな、ともう無い前の世界に想いを馳せた。

完全なVR世界だから、感情移入凄い。もう1つの世界として、全力で皆をサポートして、全力で守った。

 

する事は、この世界でも同じだ。

 

 

 

ただ———思い出に浸ってるばかりではいられない。

 

 

「あ……」

「「「!!」」」

 

 

領域展開(フォースシールド)』の効果範囲は使用者の力量に左右されるが、かなり広い。そしてその範囲は空高くにまで昇っている。飛翔タイプのモンスターに対しても対応をする為に、だ。

 

そして更に言うならあまり目立っても困るので、隠蔽も施している。だから、目視でも解りにくいし、触れて初めて気づくと言うのもザラ。

 

———触れられたら、術者であるハクに伝わる。

 

 

 

「む。これは、結界か」

「魔法には詳しくありませんが……かなり高度な魔法だと言うのは解ります」

 

 

 

空を飛ぶ者に対しても反応してしまう。

幸いな事に、悪意の欠片も無かった為、拒絶される様な事は無かったが、違和感として相手に伝わっているのだろう。

 

 

 

「……彼、だね」

 

 

 

空を飛び、ハクたちパーティを飛び越えて向かおうとしていたのはライト達だった。

地上までは距離がある。更に生い茂っている木々が邪魔でハッキリと視る事は出来ないが、ライトにはハッキリと視える。

 

 

「(あのパーティが戦っている。彼は手を出さずに後方で控えている……ッ!)」

 

 

見据えていたその時、ハクと目が合った。

地上側でも空から同様に木々が、その生い茂る葉が邪魔で肉眼では目視出来ない筈だが、彼はしっかり、真っ直ぐにこちらを見ていた。

 

軽く頭を下げて、手を……指を軽く回す。

すると、展開をしていた結界の領域が徐々に高度を下げて言った。

 

 

「主よ。一応、聞いておくが、《存在隠蔽》は」

「うん。間違いなくかけてるよ」

「ライト様の存在隠蔽を看破してくるなんて………」

 

 

ライト以外の2人は絶句してしまう。

 

《SSR 存在隠蔽》

 

その能力はその名の通り存在を隠蔽する。五感、魔術的な力、マジックアイテム。……どれを使ったとしても、その存在を認識する事が出来なくなる。と言うもの。……筈なのだが……。

 

 

「多分、彼の仕掛けた結界に触れたから、かな? でも彼なら普通に看破してきそうだって自分で思ってしまってるのが驚きかもだけど」

 

 

存在隠蔽がこうもアッサリ見破られてしまう様なら、これからもより慎重に行動をしなければならなくなる……と思うのは当然の話だ。

 

場合によっては世界を相手に攻勢を仕掛けるつもりで作戦を立てて遂行していっている。その入り口も入り口で、信頼しているSSR級の力を看破されたとなったら……根底から変える必要性が出てくるとさえ思っている。

 

でも、それがあのエルフ種ハクが相手だったら、変わってくる。

上手く説明する事は出来ないけれど、……つまりある種信頼している、と言った感じだろうか。

 

 

「(……領域展開(フォースシールド)。見た事の無い魔法だ。今度エリーにも見せてみようか)」

 

 

鑑定でこの魔法について解析し———仲間の中でも一番魔法知識に長けている禁忌の魔女エリー今回の鑑定内容をみせよう、とライトは思った。ひょっとしたら、彼の正体に近付けるかもしれない、と思ったから。

 

 

「ゴールドと私が触れてしまったから……」

「すまぬ主よ。……面目ない」

「いやいや、良いよ。まさかこんな高くに結界が伸びてるなんて思っても無かったし。それも第1階で。……僕も2人が言ってくれないと気付けなかったと思うよ」

 

 

もうあの結界は高度が下がっていって触れる事が出来ない。

だから、2人に聞いてみる事にした。

 

 

「結界って偏に、色んな種類があるからね。2人は、今のに触れてどうだった? ……あまり考えたくないけど、身体の方は大丈夫?」

「は、はい!! 自分は何ともありません! ご心配をおかけして申し訳ございません!!」

「うむ。吾輩も同様だ。違和感があった、程度だな。恐らく何かの条件が整う事でその効力は発動する———と言った具合であろう。眼下の若人らを見ても解る」

 

 

あのパーティを補佐する為のモノである、と言うのが結論だ。だとすれば、外部からの進入禁止~くらいがその効力だと思うが。

 

 

「でも、ネムムやゴールドは普通にすり抜けれたんだよね?」

「うむ。新たなモンスター侵入阻止。小隊ずつに分けて撃退、と言うのであれば、吾輩らも弾かれてしまう筈……だが、そう言った気配は無かった」

「自分もです。……Lv5000の高レベルだから阻害出来た、と言った感じではない、と進言します」

 

 

能力が高ければ高い程、低い相手の攻撃法、その手段を看破出来る事が多い。

例えば、Lv100の魔法使いが、相手の自由を奪う《拘束》の魔法を使う。Lv1000の者に仕掛けたとする。……でも、簡単に突破されてしまうだろう。魔法をかけられた認識すらないのかもしれない。

それ程までにLvの差と言うものは絶大なのだ。

 

だから、彼のLvが幾らかは解らない。でもネムムがそう言うのなら自分達が高レベルだから突破出来た、と言う線は薄いのだろう。

 

 

「……なら、ひょっとしたら細かな条件を織り交ぜる事が出来るのかもしれないね」

 

 

1つの魔法に幾重もの演算を施せば、様々な効果となって現れると言うのは定番の話だ。

ただの水の魔法だけなら、手を洗ったり身体を洗ったりと生活の魔法になるが、そこに水圧を施すと敵を穿つ弾丸となる。雷を織り交ぜると相手を感電させる効果も追加出来る。

 

こういった様に、この結界にも色々な情報を織り交ぜて、効果を発揮する様に施している、と言う線が妥当だろう。

 

 

「……恐ろしく高度な魔法って結論になるね」

 

 

そもそも結界の魔法自体が高度なモノ。広範囲である事を考慮すれば更に倍増し。更に発動条件も自由に組み替える事が出来るとなれば、難しさの桁が跳ね上がると言うものだ

 

ライトはそう結論付けると、眼下で軽く頭を下げて謝罪をしている様に見えるハクに対してこちらも手を振り答える。そして先へと向かう。

 

 

「彼には興味が尽きないけど、まずは目的を達成する事を優先させようか」

「うむ。冒険者として名を、位を上げる以上、必ずあの若者と交わるだろうな」

「彼も高みへ昇ってくる……からか。ラ、ダーク様に届くわけは無いが、相応の冒険者として大成するんだろうな」

 

 

 

 

 

 

ライト達は第3階を目指す。

 

 

そして奇しくもゴールドが言った通り、また交わる事になる。思ったよりも早くに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某場所にて。

 

 

 

「クソが! クソが!! クソがぁぁぁぁ!!!!」

 

 

荒ぶる憤怒を周囲にまき散らし、モンスターらで発散している男が居た。

 

 

「虫けらどもの分際で!! この僕様を誰だと思っている!!」

 

 

モンスターの身体を粉々に切り刻み、最後は周囲にまき散らした。

気取ったポーズをしながら剣を大地に突き刺し、誰に紹介する訳でもなく、高らかに言う。

 

 

「僕様は! エルフ女王国最強の【白の騎士団】に最年少で入団を許された、天才!!」

 

 

最後に切り離されたオークの頭を足蹴にして……空に向かって吼えた。

 

 

 

「勇者で英雄の『ますたー』の血を引く———エルフ種の英雄で勇者のカイト様だぞ!!!」

 

 

 

虚栄心の塊であり、異常なまでにプライドが高く、早朝の事がどうしても忘れられない小さな男。フードで顔を隠していた男は、ハクと同じ(厳密には違うが)エルフ種だった。

 

 

そしてそれは、エリオ達のパーティに死を齎す存在。死の運命の因果でもある。

死の運命を変える為に、エリオ達のパーティに入っているハク。

その運命そのものが、この男カイト。

 

その時点で、自称・英雄で勇者のカイトの運命が決まった。

 

更に、何のめぐりあわせか……、ライト達が探している存在。

ますたーの情報も持っている男でもあった。

 

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