職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件   作:やっくんYU

8 / 29
合流&レベリング

 

 

「さぁ、カイトさん第3階へ赴きましょう。―――当方たちは手を結んだ同志、研究結果を振るう事には何のためらいもありません」

「ちっ。解っている。さっさと研究を完成させて僕様をレベルアップさせてくれよ」

 

 

この2人はエルフ種とダークエルフ種。確執のある種族同士だが、この様に手を組んでいた。……とは言っても、ただ利害が一致しただけに過ぎないが。

 

カイトは色々と自称をしているが《ますたー》の血を受け継いでいるのは事実。

現在、エルフ種の一般的な上限Lv1000を優に超えたLv1500。通常のエルフ種と比べたら規格外と言っても良いレベルなのだが、それをヨシとはしていない。

 

自身よりもレベルの低い者達には何も言われないが、カイト程度のレベルを超えている者はエルフ女王国には何人も存在している。……故に傲慢で幼稚な性格故に、本国では馬鹿にされていたのだ。

 

それを見返す為に、このダークエルフと手を組んでいるのだ。

そう、レベルアップさえすれば英雄。真の意味で英雄。自称ではなく、エルフ女王国の誰もが英雄であり、勇者であると崇め奉る筈だ、と信じて疑っていない。

 

 

「(クソ。何でこの僕様がこんな胡散臭いダークエルフ種なんかと………いや、これは女神が僕様に与えた試練なのだ。乗り越えてこその英雄だ)」

 

 

憎悪と歪んだ承認欲求を胸に、カイトは第3階を目指す。

 

 

「僕様が女神に勇者、英雄と認められたあかつきには、本国の奴等も、今朝の裏切りのエルフも、あのヒューマン(虫けら)共も……皆殺しにしてやる!」

 

 

再燃する怒りが咆哮となって周囲に轟く。

ただの怒りの声だが、Lv1500の猛者であればそれだけで低いレベルのモンスターは委縮し動けなくなる。先ほどまではストレスを解消しようと弱いオークを嬲っていたが、もう目的地へと直ぐに行く為にはこれが丁度良かった。

 

 

「―――あの銀髪の女だけは殺さず飼うとするか。劣等種(ヒューマン)の分際で本国でも中々の部類に入る美貌の持ち主。僕様、英雄で勇者の僕様に奉仕出来るのだ。あの女もきっと涙を流して喜ぶだろう。……全て蹴散らした死体の上で見下ろせば……な」

 

 

頭が春。色々と屈折している……と言いたい所だが、実はエルフ種と言う存在は、人種(ヒューマン)を相手取ったとすれば似たり寄ったりの反応をみせる。

エルフ種とは顔の造形が整っている。男女問わずに美貌の持ち主。

声をかければ簡単に靡く~と言うエルフ種内での常識は、そこから来ているのだ。

 

——エルフ種に愛を囁かれて靡かない人種(ヒューマン)はいない。

 

これは自意識過剰などではなく、圧倒的な力で絶望的な力を前にして、抗う気力も根こそぎ取られ、生き残る為に人種(ヒューマン)達は靡いているだけに過ぎない。

 

そしてたまたま、カイトがますたーの血を受け継ぎ、他者より力をつけているからこういう性格になった、と言えるのだ。つまるところ、自身よりも強大な者には尻尾を振る若しくは逃げる。そして格下を見下し、嘲り、傍若無人に振舞う。

 

だからこそ、あのハクの存在は異端にして異常なのだ。エルフ種の突然変異では? と思えてしまう程に。

 

 

「いや……、試練を終えるのなんか待ってられない。アイツだけは、次に出くわしたらその場で絶対に殺す……。秘密裏に処理をすれば、バレる事は無い。僕様は英雄で勇者。それにこの聖剣だってあるんだ」

 

 

カイトは最後にそう呟くと、奥へと歩み始めたのだった。

ある筈のない女神の試練とやらを達成する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――その先で己の運命のなれの果てを知る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3階 沼地

 

 

そんなカイトよりも遥かに早く、第3階に辿り着いていたのはライト達。

今日ダンジョン内に入った冒険者の中ではダントツであり、周囲に同業者が居ない事も確認出来ているので、大っぴらに、大胆に動く事が出来るのだ。

 

今も、トロールの討伐が完了した所である。

 

 

「これで全部かな?」

「うむ。周囲に気配は無いな。して主よ。このトロールの素材はどうする?」

「ゴーレム同様、魔石の回収だけにしようか」

「トロールの様な低級素材を持ち帰っても仕方ありませんしね」

 

 

一般的な考えでは第3階のモンスターの素材は高級の分類に入る———が、ライトらにとっては道端の石ころ程度の価値しかない。

 

 

「それに今も《奈落》では僕の恩恵(ギフト)【無限ガチャ】が絶えずカードを吐き出し続けているから、物資の供給は十分だしね」

「必要なのは『2・3階層まで到達した証拠』だしな」

 

 

冒険者としての実績は十分。

極端に目立つつもりは無いが、それでも十分過ぎるくらいには目立つだろう。到達までの速さ、魔石の種類。これらを鑑みたら、相応の評価が得られると踏んでいる。……勿論、相手が信じる事が大前提だが、1度で信じなかったら2度、3度と信じるまで続けるだけだ。……持ち込まれる魔石やある程度の希少価値のある素材を見れば手のひらを返して来る、なんて想像し易い。人種(ヒューマン)である、と言うだけで低く見られている筈だから。

それを覆すと言うのも中々気分が良いと言うものだ。後々の人種(ヒューマン)に対しての見る目と言うのも少しは改善されるかもしれないから。

 

 

「じゃあ、結構魔石も回収できたし、一度地上に戻ろうか。荒野の層と沼地の層で随分と汚れたしね」

「で、では! 地上に戻り次第お風呂に入らないといけませんね!! こ、このネムムめが汚れを洗い流すお手伝いを!!」

 

 

これこそが至福、これこそが最上。……地上部隊として選ばれたこともそうだが、ネムムが待ち望野でいた瞬間でもあった。

ライトのお風呂の世話、である。

 

これは奈落全体メンバーを見ても、恐らく経験しているのは一握り。……あのLv9999の最強戦力の4人。フォーナインのメンバーくらいではないだろうか?

この世の最上を、この世の極楽を心行くまで堪能したい———とネムムは思わず鬼気迫る顔になる。

 

そんなネムムの心情を理解したゴールドは茶々を入れ始めた。

 

 

「わははは! 心配いらぬぞ。吾輩の鎧はどんな汚れも寄せ付けず、黄金の輝きを保ち続けるからな!」

「馬鹿!! 気持ち悪い事いうな! ゴールドじゃなくてダーク様だああ!!」

「あはは……。ほらほら、2人とも。遊んでないで帰るよ? あ……そう言えば」

 

 

ライトは少しだけ思い返した。

このまま地上に帰って終わり~と言うのは中々味気ない。

折角戻るのであれば、あのパーティ(・・・・・・)の様子を見てこよう、と思ったのだ。

 

 

「今朝の5人のパーティ、彼らはどのあたりに居ると思う?」

「うむ」

 

 

憤慨するネムムをあしらうと、ゴールドは少しだけ考える。

 

 

「あのエルフの若人は兎も角、他の人種(ヒューマン)の若人たちの力量を鑑みれば、まだ第1階だと予想が出来るぞ」

「やっぱりそうかな。うん、よし。ちょっと様子を見に行ってみようよ。気になるし」

「はッ! 自分が先行して捜索致します!!」

 

 

気を取り直したネムムが、ライトの役に立つ! と手を挙げて空を飛んだ。

ゴールドとライトも苦笑いをしながら、後に続く形でダンジョンの空を飛ぶのだった。

 

 

 

 

第2階……第1階。

 

 

 

予想通り、第2階には到達していない。気配探知で何組かはいる様だが、あのメンバーは来てなかった。ダンジョンにまだいるのであれば、存在隠蔽に似た力を使って無ければ第1階が有力だろう。

 

 

 

「しかし、ダーク様の御力をもってすればこの広大なダンジョンの探索もあっという間ですね」

「わははは! 所詮張り切ったネムムが居たところで意味は無かったな」

「う、うるさい!!」

 

 

ネムム自身にも索敵能力が備わっている。

だから、例え広大なダンジョンであっても、人種(ヒューマン)パーティを見つける事は可能なのだが、やはりライトの千里眼には敵わない。

 

 

「まぁまぁ、あまりイジメないでよゴールド。この千里眼のカードはとても優秀なアイテム。細かな所を見るのは難しいけど、よく見知った彼らの事は見つけやすいから」

 

 

きょろきょろ、と周囲を見渡して————そして見つけた。

 

 

 

ゴブリン5体と戦っているエリオのパーティが。

 

 

「へっへん! 今日はレベルアップも出来たっスから、この程度もう余裕のよっちゃん、っスよ!」

「バカ。油断するなよ。過信は隙を生む、って聞いてただろ」

「解ってるっス!」

 

 

彼らの声も聞こえる。

朝見た時と同じだ。ハクは手を出さず、全体を見ていて、他の4人が攻勢に打って出てる。

数的に不利な状態だが、的確な指示も飛んでいるのだろう。動きに無駄があまりない。……あるとするなら、少々調子に乗りやすいあのギムラが前に出過ぎる、と言った所か。

 

でも、その辺りは共に戦っているエリオが上手くフォローをしている。

 

 

「えい! アイスソード!!」

 

 

そして、稼いだ時間を使って魔術を詠唱・行使して一気に大ダメージを与える。

 

 

「うん。上手く連携出来てるね。魔術も無事決まった」

「―――ほほう。あのエルフの若人、教官にも向いているのかもしれぬな。実に的確だ」

 

 

ゴブリンに集中し過ぎて、そろりと忍び足で近づく蛇……ブッシュスネークに気付いてなかった。

基本はトドメはミヤ。高威力の魔術を打てるミヤを守りつつ、剣で削り、仕留めれる所は仕留める。と言うのが彼らのスタイル。そのミヤが崩れたらハクは手を出してないから4人パーティは崩れてしまうかもしれない。

 

それを見越して、叱咤激励をしている。

 

 

 

 

「ほらほら。油断ですよ皆」

 

 

 

 

ハクの声に皆が反応して振り返った。

それは丁度、ゴブリンたちを討伐し気が緩んだタイミングでもあったのである。

 

でも、そんな余韻もハクが見せてくれた光景を見れば……引っ込んでしまうと言うもの。

 

 

「危なかったですね。この蛇の毒は確か麻痺毒。噛まれたら動けなくなってしまいますよ」

 

 

実はこの蛇は狡猾なのか、ゴブリンらを囮に回り込んでいたのだ。ハクとの距離もそれなりにあったし、獲物にしたのはミヤ。

だが飛び掛かった瞬間———何か見えない壁? に阻まれてしまったのである。

結果ミヤに届く事はなく、更に拘束もされたのか空中で固まってしまっていた。

 

 

「しっかり後方にも目を届かせるのは戦闘の基本です。開けた場所であれば尚更」

「ぶ、ブッシュスネークが回り込んでいたのか……!」

「き、気付かなかったっス……。申し訳ねっス……」

「ッ……」

 

 

前衛職の3人は解りやすく落ち込んでいて、ミヤ自身もそれは同じようだった。

 

 

「私も、前ばっかり気にして。魔術を当てる事だけを意識し過ぎてしまいました……。これでもし、ハクさんが居なかったら……」

 

 

ミヤが噛まれて動けなくなり、突然の光景に驚いて体勢が崩れて、それが総崩れに繋がっていたかもしれない。

顔を青くさせる。それはミヤだけでなく全員だ。全員が最悪の想定をしたからだ。

 

それを見て、ハクは続けていった。

 

 

 

「――はい、そうですね。でも、そう考える事が出来るのは、良い事、良い傾向だと思いますよ?」

 

 

 

皆が一通り反省する、表情に出してるのを見届けたハクが笑顔で、明るく言った。

その言葉の真意を理解出来ずに、何故良い傾向なのか? と首を傾げる。

 

 

「これまで通り、僕が支援して回復役に徹していたら。《当たっても大丈夫だから》と自分の実力以上に慢心し、結果油断も生まれやすくなってしまうでしょう。精神面が脆くなるかもしれません。……でも、この状況を見て真っ先に僕が居なかったら? を想定出来てました。実はそれって、中々出来る事じゃないんですよ。だから、驚きました」

 

 

強い武器があれば。強い仲間がいれば。全滅の危険性が無くなれば。

もしも———? と言う考えに至らなくなる事が多々ある。それはハク自身も前の世界で何度もあった事だ。

訓練をかしていたパーティと長く共に居た事が有ったが、そのせいで、危機感が不足しつつあり、ハクが居ないパターンの場合を想定出来ずに大怪我に繋がった。死ななかったのは奇跡だと言える程に。

 

だからこそ、ハクは彼らを見て何だか安心する事が出来たのである。

 

エリオは、ハクの言葉を聞いて合点がいくと同時に、それは当然だと言わんばかりにハッキリとキッパリと言い切る。

 

 

「それは当然です。オレ達はずっとハクさんに頼ってばかりじゃいられないから。そんなので、オレ達は冒険者なんだ~って胸を張れないから」

「そっスよねぇ。ハクさんと一緒に居ると麻痺っちゃう感覚はメッチャあるっスけど、実際にやべータイミングと光景見せられたら……やっぱし、ハクさんいないパターンを想定しちゃうっス。こう……身がひゅんっっ! ってなっちゃうっス。って言うか、4人パーティの期間の方が長いから当然と言えば当然、なんスけどねぇ」

「………同じ、です」

 

 

各々の思いを聞き、そしてミヤもしっかりとした表情で、決意ある表情で言った。

 

 

「お兄ちゃんたちと私も一緒です。いつか、いつの日か……絶対に届かないって解っているけど、ほんの少しでも、ハクさんに近付いたい。って思ってるんですから。しっかり反省しないと……」

 

 

ここまでは文句なしの合格点。

ダンジョンの最序盤とは言っても心構えも良し、学習能力だってあり、反省する事も知っている。……後、やれる事があるとするなら……。

 

 

「ふふふ。では、皆さん。パーティ外からの意見も聞いてみましょうか? ちょっぴり僕には身内びいきが入ってるかもしれませんし。外から見た意見……、パーティの外って言う意味でもかなり勉強にあると思いますよ。……あ、でもご教授を引き受けてくれるかどうか、頼んでみないとですね」

「へ?」

 

 

ハクが何を言っているのか解らない————と思っていたが、ハクが振り返った背後を見て、ビックリ。

 

背後は観ていた筈だった。

あの蛇を見る為に振り返ったのだから当然だ。

なのにも関わらず……、後ろに居た存在が解ってなかった。

 

あんなにも目立つと言うのに。ピカピカと輝く黄金が何で目に入らなかったのか? と大混乱だ。

 

 

 

 

「うわわっっ!!」

「きゃっっ!!」

「えええ!!?」

 

 

 

 

 

ライト一行が、直ぐ後ろにまで来ていたのだ。

いつ来たのか解らなかった。本当に解らなかったんだ。

 

でも一切慌てる様子の無いハクを見て、少しだけ落ち着く事が出来た。

 

 

 

「お疲れ様です。ダークさん、ゴールドさん、ネムムさん」

「お疲れ様です。ハクさん、皆さん」

 

 

ハクは笑顔でライトと挨拶。ライト自身も屈託のない笑顔で挨拶。

ゴールドは若人感心! と言った様子で頷き……ネムムは何だか嫉妬していた。

 

あの屈託のない笑顔を……ライトの笑顔を引き出しているあのエルフのハクを見て……うらやまけしからん!! と思っていたのである。……そう言う意味では、実はもう殆ど危険分子だと警戒はしていなかったりする。

 

 

「コラコラ ネムムよ。挨拶をされたのだ。返事をするのが礼儀と言うものだぞ。主に恥をかかせる気か?

「あ、うぐっっ、そ、そんな訳ない! しようと思っていた所だ!!」

「ああ、いえいえ。そんな……そこまで気になさらずに」

「これに関しては僕もゴールドと同意見だよネムム。ちゃんと敬意を払わないと」

「は、はぅっっ!! も、申し訳ございません!! お、お疲れ様でございました!!!!」

「ッッ!!! い、いえいえいえ。恐縮です……」

 

 

ゴールドだけでなく、ライトからも苦言を呈されてしまった。痛烈の一言……と判断したネムムは勢いに任せて急接近&平身低頭。あまりの圧力に思わず後ずさってしまう程である。

 

 

「おお~~。あのお姉さん、ハクさんを圧倒してるっス!!」

「鉄壁防御のハクさんが……。ミヤ。大丈夫か? アレくらい頑張らないとハクさんには届かないかもしれないぞ?」

「な、何言ってるのよ!! もうっ! 変な事言わないでお兄ちゃん!!」

 

 

 

やんややんや~~と人種(ヒューマン)同士のパーティ故か直ぐに場は賑やかになった。

 

 

 

 

「―――と言う訳で、外からみた批評をしていただけたら~と思いまして。彼らの成長にも繋がりますので。よろしければ……ですが」

 

 

 

話は言われる前から解っている。その会話内容はライトにも届いていたから。

そして笑顔で頷いた。

 

 

「それくらいお安い御用……なのですが、ご期待に沿えるかどうか……。僕の意見もハクさんと然程変わりはしませんでしたから」

 

 

ダークは、ゆっくり歩くと、未だに空中に拘束されて忘れ去られて、何処か哀愁漂ってそうな雰囲気を醸し出しているブッシュスネークに近付くと、手に持っている杖で突き落とした。

 

 

「目の前の敵に注意を払うのは基本ですが、背後にも注意が必要、ですね。もう十分過ぎる程理解し、反省もしているとみられます」

「うむ。反省出来る精神は良き事だ。それは必ず次の糧になる故に、な。常に前を見続ける事だ若人たちよ」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

 

期待に応えれるかどうか……とライトは言うが、4人は揃って返事をし、頭を下げた。

 

 

「例え同じだとしても、ご指導ご鞭撻は嬉しいモノなのですよ。……彼らは駆け出しで、これからですから。より大きくなるために」

「……ですね。何だかハクさんはまるで彼らのお父さんの様に見えますよ」

「あははは」

 

 

言い得て妙。

そう言う感覚……親心的な感覚で見ていた事もあったから。だから否定もせず。勿論肯定する事もしない。……いつかは、離れる時が来ると思っている。運命に抗って、未来へと歩き出す事を見届けた後にでも。

 

 

一通り、反省会を終えて、魔石回収も終了した後。

 

 

「じゃあ———」

 

 

ミヤは魔術を発動させる為に詠唱を開始した。

 

 

「―――魔力よ。顕現し水を造り形をなせ。ウォーターボール」

 

 

すると、空中に水の塊が姿を現した。基礎的な水魔術だが、これはある意味必須。命の源でもある水の確保が出来るのだから当然だろう。

 

 

「騎士様、ダークさん、ネムムさん。よろしければお手を洗って下さい」

「なんと。わざわざ済まぬな」

「ありがとう」

「貴重な魔力を使ってまで……すみません」

「そんな。私達に色々と教えていただけましたし。これくらいしかお礼は出来ませんが、受け取ってください」

 

 

ミヤはそう言うと少しだけライトに近づき、小声で話をした。

 

 

「それに、今朝の感謝も兼ねているんです。……ハクさんと一緒に助けてくれた、って思っていますから。どうか受け取ってください」

「―――では、お言葉に甘えますね。ありがとうございます」

 

 

水を使って手を洗う。ゴールドは汚れなどつかない! 黄金の輝きのまま! と豪語していたが、やっぱり水で洗う方が良いのでライト同様感謝をして手を洗い、ネムムも同じように洗わせてもらった。……ライトにちょっと近づいた様なので怪訝な目を向けたが、話の内容を聞いて、それを止める。

 

 

「あなたは彼の事が好きなんだな」

「ッッ!! えと、その、ちがっ、い、いえ違うと言う訳では! た、ただ憧れてるというか」

 

あたふた、と慌てる所を見ると……よく解る。と言うか、誰が見てもよく解る。

ハクに想いを寄せている、と。異種族間の恋愛事情は……特に人種(ヒューマン)との事情は殆どないのが現実。……唯一の例外になるかもしれないな、とネムムは笑った。

 

 

「―――っと。ダーク様。敵が来たようです」

 

 

穏やかな空気が流れていてほのぼの~ともしていたのだが……、そんな淡い空気感は消え去る事になる。

 

 

「折角貴重な魔力で水を出していただいたのに。……仕方ないか」

 

 

ライトは振り返り、背後を見た。

 

 

「うーん……、今日の所は……と思ってたんですが、中々の上物相手なので迷ってしまいますね」

 

 

ヴンッッ!! と空間をなにかが走ったかと思えば、あの結界が一気に領域を広げた。

 

 

「!(詠唱破棄でこれ程の結界を……?)」

 

 

これはライトも驚いた。

高度な魔術結界だと言う事は解っていたのだが、まさか瞬時に、詠唱もなく張ってしまうとまでは思っても居なかったからだ。多少なりとも準備時間は必要だろう、と思っていたから。

 

ハクが仕掛けた結界が周囲を囲い、バチンッッ!! とその結界に衝突したであろう快音が周囲に響き渡る。

 

 

「皆、どうしますか? レベルアップチャンスです。少し強めのリフレッシュを駆けて、挑戦してみますか? 今回は格上なのでしっかりとバフは掛けてあげます」

 

 

これまでは、必要最低限のサポートしかしてこなかった。それで十分だと思ったし、それだけでも十分レベリングが出来ると思っていたからだ。でも、今近づいてきて、結界に触れた相手は明らかに格上のモンスターだと分かった。……ならば、経験値を得る為にも戦った方が良いと踏んだのである。

ハクに頼り切っては駄目だ~~~的な反省をしていたんだけれど。バリバリに手を貸して戦えば、やはり頼り切ってしまってる~~となっちゃうのだけど、それを鑑みても、魅力的な経験値だと、ハク自身が判断したのである。

 

 

「ぐ、グレートブッシュウルフだ! しかも群れで!!」

「うわっっ!! た、確かにかなりの経験値が得られる相手っスけど……。挑戦するの早くないっス? そもそも何でこんな浅い場所にあいつらが湧いてくるんだ~~って話っスけど」

「もう、情けない事言わないでよ。……大丈夫です。私は挑戦したいです! ね? お兄ちゃん!」

 

 

実はあのモンスターはこんな浅い所にいるモンスターじゃない。

レベリングを重ねて重ねて、倒せる様になったら挑戦してみよう、とエリオの中では思っていた相手。

 

ミヤが一番最初に挑戦すると名乗りを上げるのが少々情けない気もする。

ハクが支援をしてくれたら大丈夫~だと言う事はこれまでで解っているが、実は本当に格上相手とはやってないので、確信はないのだ。

 

心の底から信じている。と言う事は解る。……自分も信じている筈なのに、何だかやるせないし情けない。

 

 

「勿論、挑戦します!!」

 

「解りました」

 

 

いつの間にか、ハクは手の中にライトの様な杖を持っていた。

 

 

「すみません。この狼狩り、僕達もご相伴に肖っても宜しいでしょうか?」

 

 

そこで思いもよらない提案をしてくれた。

 

 

「実戦の中でも伝えれる事があると思いますし———正直な所、先ほどのアドバイスはハクさんとまったく同じ内容だったので、アドバイスと言えず……水も出してくれましたし、僕達からも何かを返せないかな、と思ってますので」

「! はい、心強いです。皆もきっと同じだと思います。―――じゃあ皆! ダークさん達も一緒に戦ってくれるみたいだから、しっかり学ばせて貰おうね」

 

「「「「はい!!」」」っス」

 

 

 

神霊の加護(マイティ―ガード)

 

 

戦う意思を示したのを見計らって、ハクが支援魔法を発生させる。

対物防御力・対魔防御力・状態異常無効・思考加速・身体能力向上……早い話、戦闘で必要な能力(アビリティ)をもれなく全て向上させてくれる極めて優秀な支援(バフ)魔法だ。

ハクは心配性だと思われるかもしれないが、初めての格上との一戦。慎重を喫したいのである。

 

 

 

「――――凄い」

「うむ。ただでさえ固く輝く吾輩の黄金の甲冑が喜びに耽っているかの様だ」

「僕達も大体の耐性は備わってるし、防御力も高い方なんだけど、持ってるもの関係なく引き上げてくれるんだね……」

 

 

バフの重ね掛けと言うモノは基本的に難しい。

重ねれば重ねるだけ簡単に強くなるのであれば、世界には支援魔術師で溢れている事だろう。

重ねれば重ねる程、有効時間が短くなる、副作用が現れる、消費魔力が高い、とデメリットがかなりあると言うのに、平然と全てを引き上げてくる。

 

 

「すみません。正直ダークさん達には必要ないかと思いますが、個別にかけるより、こちらの方が効率が良かったので」

「いえ。……凄まじく優秀な支援術士(バッファー)ですね。感服致しました」

 

 

ライトはそう言うと前を見据えた。

 

 

 

 

「では、仕掛けて頂いた支援魔術以上の働きをみせなければ、ですね。ゴールド。ネムム」

「うむ、了解した」

「了解致しました!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。