職業はヒーラー。気付いたら復讐【ざまぁ!】系主人公の邪魔をしていた件 作:やっくんYU
「ごめんね、皆。ちょっと無茶させちゃったみたいで………」
「「「「……………」」」」
只今、
その理由は、ハク以外の4人が完全に放心状態となってしまっているからだ。
しっかりと料理は食べてくれているので、取り合えず大丈夫だとは思うんだけれど、なんだかまるで人形になってしまった? かの様だ。……つまり魂が抜けてしまった、と言う表現が一番しっくりくる。
なので、あまりにもスパルタ仕様をし過ぎたのだろうか? あまりやり過ぎない方が良いな、と今更感はあるが自分を戒めつつ……とっておきの野営料理を振舞ったのだ。
因みにこの料理は何かの記念にとっておいた『料理スキル』を存分に発動させていたりする。
疲労回復は勿論の事、成長を促す効果ももれなくついてくる。
隠し味~と言う邸で振舞っているが、これもかつての世界、マジック・プラネットで使えた力だ。こちらの世界では恐らく浸透はしてないだろうから、色々と追求されればどうしようか? と思ったがそれはどうやら杞憂だった。
「凄いですね。こんなに美味しい料理……初めてかもしれませんよ」
「っっっ!!! じ、自分も教えてください! ハク殿!! らい―――ダーク様が喜ぶ料理を、私も極めたいです!! 奈落の皆よりも一歩先に――――」
「こらこら、なにを馬鹿な事を言っているかネムムよ。それにさらっ、と重要機密情報を言うんじゃない。それはそれとしてハク殿、吾輩も大絶賛だ。これはこれは、我が主を慕う数多の女人たちの嫉妬の視線が目に浮かぶと言うもの」
「あははは。お粗末様でした。沢山ありますから存分に堪能してくださいね? ……正直、今の彼らの傍にいてくれてるの物凄く助かってますから……」
一応警戒するならライト達だろうと思ってたんだけど、彼らはただただ初めて食する、美味しい、と絶賛してくれているから。
彼ら程の実力者たちが知らない、気づいていない、と言う。だからこそ、知られていない料理効果なのだ、と確信が出来たとハクは思った。
因みに、今更だがこの野営にはライト達も一緒にいる。
戦いが終わって、そこで一応お別れ~~と言う流れにしようとしていたのだが、エリオ達が戦闘終了後に放心状態になってしまったので、心配して一緒にいてくれているのだ。
ヒーラーな自分だが、この状態異常を解除する事が出来ないみたいなので……、ちょっぴり自信喪失をしてしまいそうだった。
そして、ネムムは思わず口走った機密。ゴールドに言われた様に、重要な機密を口走ってしまったことを今更ながら後悔。
そう、奈落という単語。あそこで居を構えている事実は今は伏せなければならないのに、ハクに話してしまった、と冷や汗をながすが、それは杞憂となる。
「ああああああああああああ!!!」
「!!??」
「「「!!!」」」
まず、ミヤが大絶叫してそれどころじゃなくなったから。
ミヤだけでなく、続いて。
「わあああああああああ!!」
「うひゃあああああああ!!」
「やあああああああああ!!」
エリオ、ギムラ、ワーディ。
4人そろっての大絶叫である。
「どどど、どうしたのどうしたの!? マジで大丈夫!!?」
流石に心配を通り越しそう。物凄く心配になってきた。
フルパワーで回復魔法を全力でぶち込もうか!! と発動させようとした……が。
ミヤが、ハクの腕をとってぶんぶんぶん、と振り回してきた。
「お、お、落ち着いてなんていられないよ!! だ、だってだって、わ、わ、わ、わ、わたしたち、あの
「ふぉーさいす? まんてぃすって……、ああ、さっきのカマキリ?」
ミヤをどうにか抑えようと、頭を撫でたり落ち着かせる様に、メディック・オーラを仕掛けたりしたのだが……ここら辺で、何となく察してくる。
「お、オレ達、あの
「ご、50超えたっス!!? 大人の領域に入れたっすよ!!」
「げ、現実感無い。ほんとない。一体何がどーなってこーなって……」
「お、おお。ワーディさんが声出してるの初めて聞いたかも……」
状態異常等ではなく、兎に角興奮しているらしい。興奮しすぎて、一周回って放心状態になっていた様だ。その原因が先ほどから話題に上がっている名前。
「成程。若人らは現実感が無い討伐戦に参加でき、更には撃退まで出来た事実に驚愕し、最早思考停止状態になっていた、と言う事か。わはははは!」
「あの程度のカマキリ相手にしたくらいで情けない。もっと堂々とするべきよ。特にリーダーでしょ? 貴方は」
「は、はぃぃ!!」
ある程度思考が戻ってきたようなので、見事なネムムの苦言がはっきりと耳に入ってきたので、エリオは身を正した。
「で、でもやっぱり未だに現実感がなくて……。あのモンスターは約30年に一度の周期で姿を現すレアモンスターなんですよ? それもLv500を超えるバケモノで、現在攻略中の第7階クラスを超えるとも言われていて……、そ、それを…………」
改めて自分が口にした情報が………、あまりにも凄すぎてまた放心しかけてしまった。
頭から、湯気が出てきそうになった。
「30年の周期で、ですか……。いや、本当に運が良い。はぐれメ〇ルの群れ……いや、プラチナキン〇の群れを倒せたレベル~……でしょうか? 皆のレベルの上昇具合を鑑みたら、それ以上かな? 時の砂とか無しの一発勝負。うん。やっぱり皆凄いですよ。強運に恵まれてると思います」
「なんですか!? それ!? 普通、アレに遭遇したら悪運と言うか凶運なんですよ、って話で――――」
「……いやぁ、オレ達だけだったら絶対全滅してた………。間違いなく」
「っス。ちょこちょこ殆ど無意識で手は出してたっすけど、ほぼダークさん達がやってくれてたっスからねぇ……」
「無我の境地………動けてただけでも奇跡だよ……」
ゴールドらの指南を受けつつ、あの狼の群れは順当にやっつける事が出来て、ある程度の自信につながっていたのだが、流石にエリオが言う様にLv500超のモンスターを、自身のレベルよりも20倍近いモンスターを相手に出来るとは思いもしてなかったらしく………現実離れし過ぎていて、白昼夢でも見ていたのかな? と思っていた程だ。
「成程。やはり、ダークさんやゴールドさん、ネムムさんの実戦形式の指導が良かった、って事でもありますね。無心状態でも、少なくとも出来うる最適な動きは出来てましたから。改めて、お三方。ありがとうございました。皆の糧になりましたよ」
ぽんっ、と手を叩くハク。
何だか色々とズレている。間違いなくずれている。現実離れしたような状態に一度も陥ってなかったから全然判らなかったが……、実はハクと言う人はかなりの天然さんなのかな? と思わずにはいられなかった。
「いえいえ。ハクさんの支援あっての事だとも思ってますし。何より、彼らは無意識下であっても信じていたから。信じていたからこそ、出来たんだと思いますよ? ……ですが、しっかりと受け取っておきます。あまり否定しては逆に失礼になってしまいますからね。ゴールド、ネムム。2人ともありがとう。お疲れ様」
「わはははは。十分に報いる事が出来たのであれば、これ以上無い」
「ダーク様の為なら幾らでも頑張れます!! 今からでもビシバシ! できますよ!!」
ゴールドは満足そうにうなずき――――ネムムに至っては近年稀に見る自然体なライトの笑みを見て大興奮。これを甘受出来ると言うのなら、どんな事でもしよう! 今からでも指導しよう! と立ち上がった。
……でも、流石にもうお腹いっぱい、な皆は勘弁してください! と辞退したのだった。
「ダークさんの魔術もとんでもなかったですね」
暫く食事を楽しみ談笑している間にミヤが口を挟む形でライトの方を見て言った。
あのカマキリを相手にして、相手に出来て、無傷で立ち回れている時点で現実離れをしている。つまり放心状態~となっている様だったのだが、ミヤはしっかりと目で見た光景を覚えていたのだ。
衝撃度合で言えば、決して引けを取らないレベルの光景を。
「僕ですか?」
「はい!
「み、ミヤ!!? 何を突然叫んでるんだ??」
「お兄ちゃんも見たでしょ!? ギムラもワーディも、みたでしょ!!?」
「見たも何も……今日のはもれなく全部ビックリ箱ひっくり返したようなモンだったっスから。何に驚けば良いのやら~~~で、思考定まんないっスよ」
「………右に同じ」
思い出し興奮しているミヤに対して、他のメンツはそこまで盛り上がっていない。
それは仕方がない事。ミヤは魔術師だ。魔術の事をあまり知らない騎士・前衛職についている3人とっては、あれを討伐出来た以上の光景とは思えず、なんとも言えなかった様子。
「
「伝説って……マジっすか?」
「街総出でレイドを組んで、討伐編成しなきゃダメなレベルのヤツをやっつけちゃってるから……。伝説って言われても全然信じられるけど、やっぱり魔術には詳しくないからピンとこない、かなぁ……」
「もうっ! しっかり勉強してよ!!」
ライトへの大絶賛大会がミヤ主宰で開催された。
ハク関連以外で、ここまでミヤが興奮する事はこれまでに無かった事だ、とそれだけでも凄い事だと分かる……かもなのだが、如何せん先の戦いの余韻があまりにも凄すぎてやっぱりパッとしない、と言うのが本音か。
「確か、エルフやダークエルフ、魔人、竜人たちの様に寿命が長くてLvも高い種族ならまだしも、寿命もLvも
ハクはにっ、と笑みを浮かべるとライトに向かって続ける。
「名実ともに、
枕詞に《一般的に》を使ったハク。
その一般的な枠内に、このライトが当てはまるとは思えないのでそうつけたのだが、分類上は間違いなくライトは
「僕がですか? いえ、そんな大層なものじゃありませんよ」
「お目が高いな、ハク殿! ダーク様は偉大なお方ですから当然です!」
「ネムムよ。主が褒められて嬉しいのは解るが、勢いよく立ち上がってデカい声とは品位に欠けると思うぞ。まだ食事も途中。無い胸を張ってないで黙って食え」
「誰が無い胸だ! 胸くらいある! 私は普通だ!!」
胸ネタでゴールドはよく揶揄っているんだけど、この世界にはセクハラと言う概念は無いのかな? と割とどうでも良い事をハクは考えたりしていた。
「それに、ミヤちゃんの方も素晴らしいと思いますよ。僕のアドバイスに対しても直ぐに順応出来てましたし、その歳で立派な魔術を使っている。今回僕が講師をし、採点をしたとするなら文句なしの合格点です」
「あ、ありがとうございます!! ……でも、正直ダークさんやハクさん達が傍にいますから、比較にならない人と一緒にいるとやっぱり霞んじゃうって言うか……、詠唱破棄どころか、
ミヤは少し熱が冷めてきたのは、己の力量がまだまだ及ばず、遥か先をゆく2人が眩しく感じ、顔を俯かせた。
「でも、皆のそうだけどミヤちゃんも今回の一戦でLvが上がっている筈だから、魔力の総量も上がって、今後使える様になるかもしれませんよ? ミヤちゃんなら直ぐにでも」
ライトは鑑定をしながらそう告げる。
ミヤのレベルが上がる前のステータスは知らないが、現在Lv51となっている。一般的には
「あ、でも私は……」
「才能に胡坐をかかず、鍛錬と勉強を忘れず。日々鍛錬以外に近道はなく――――向上心を持って頑張ればきっと高みにたどり着けます。私からも太鼓判です」
ダークに続く形で、ハクもミヤに言った。
先の見えない遥か彼方にいる2人からの言葉に、思わず感涙しそうになる。
「ミヤさんと皆で頑張って強くなって―――皆さんの目標を叶えて、他の
最後の言葉に、ミヤは少し寂しさを覚えた。
頑張りましょうね、ではなく、頑張ってくださいね。だったから。特に意識をした訳じゃないかもしれないが……やっぱり遠くない未来、ハクはこのPTを抜ける。少し延長したかもしれないけど、やっぱり抜けてしまうんだ、と思ったから。
それをかんがえたら やっぱり寂しくなる。
「目標……ですか?」
ライトが首をかしげると、ハクは自然とエリオに目配せをする。ハク自身は皆から聞いているから、答える事は出来る。……でも、これはエリオらの目標。だから自分たちが答えるべきだろう、と思ったから。
「ミヤを公国の魔術学校に通わせる事、です。だから冒険者となって必要資金を稼ぐんです。元々ミヤは推薦を貰えるくらい優秀でしたから。両親が流行り病で死別しなかったら、きっと今頃は――――」
肉親の死とは身を切られるよりも苦しい事だ。
これくらいの子供が親から離れて兄妹で冒険者をしているから、ライトも察していたが、改めて聞くと心が痛くなる。……ある意味、自分は例外となってしまったかもしれないが、その死を目の当たりにしているから。
「公国。9種族が出資し、運営している共同国家【ナイン公国】ですか」
だから、両親の死についてはこれ以上触れる事なく、ナイン公国に照準を合わせた。
「ほう。公国の魔術学校は魔術を研究する者にとっては云わば最高峰の場ともいわれる。そこへの推薦がもらえるとは凄いではないか」
「あ、ありがとうございます」
騎士であるゴールドにとっては縁のない魔術の話ではある……が、ある程度の知識は有しているし、身内にとてつもない魔術師が居るから、基準の程度くらいは解る。
だからこそ、本心で、、心から賞賛をした。この歳で推薦枠を勝ち取るなんて並大抵では出来ない事だから。
でも、ミヤは少しだけ寂しそうな顔をしながら言った。
「私は、その……皆で一緒に居られるだけで満足だから。……だからずっと、ずっと……皆と一緒に」
エリオ、ギムラ、ワーディと見て……最後にはハクを見た。ひと月くらい一緒にいて、もう自然に話す事が出来て……、初めての異種族の友達が出来たと思って……憧憬を持ち……軈て……………。
「ほら、ミヤ」
エリオはミヤの頭を撫でた。
まだまだ幼く、モンスターと戦える勇気はもてても、
「頑張ればきっと叶う。……オレ達だってもっともっと頑張る。だから、ミヤも頑張ろう。一緒に、な?」
「――――うん」
ライトは、そんな兄妹の姿を見て、自分にも妹がいる事を思い返し……夢想した。少々複雑な想いをもってしまったのは、想像上の妹が、他の人を好きになる……と言う場面まで想像してしまったからだろうか。
簡単には妹は渡せない!! と思う反面、ミヤが憧れている相手……、彼なら安心して任せれる……かも、と思い色々と勝手に葛藤してしまった。
「人には色々と戦う理由がありますよね。……ダークさんはどうです?」
「……僕は、見分を広げる様にと今は亡き両親に言われていまして」
ライトは……ダークとして考えていた身の上話を始めた。
生前はこのゴールドとネムムも世話になった偉大な魔術師であった事。世界を巡る旅に赴け、と言われどうか見守ってほしいと言われた事。
「(仮面については火傷の事を話したいんだけど、ハクさんが治してあげる~って言ってくれたら……危ないから言わないなぁ……)」
因みに、仮面をかぶっている理由に、顔面の殆どが火傷をしてしまって、普通の治療法じゃ治らず、世界を巡る過程で治せる術、治せるポーションを探す、と言う名目もあった。
だけど、それを聞けばこの優しき人は自身が治すと手を上げてくれそうなのだ。ヒーラーとしての実力は確かだし、仮面の力で火傷の幻想を作っている事もバレるかもしれないから言えないのである。
嘘をつく事は心苦しいが、これも目的の為だから、と堪えた。
復讐を達成する為にも、素顔を堂々とさらして地上で活動するなんて出来ないから。
「成程……そういう事情が」
両親との死別、と言う意味ではエリオとも似ている。その痛みは十分知っている。でも、しっていても、どう声をかけて良いかが解らないのがもどかしい。
「では、僕も話をしたので次はハクさんの事が聞きたいですね」
「僕ですか?」
「ええ。丁度良い話の流れになってますし、無理でなければ見分を広げる為に聞いておきたいな、と」
ライトの言葉を聞いてハクは少しだけかんがえて――――言った。
「僕のは少々特殊事例ですし、中々信じてもらえないかもしれませんが、それでも良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ。ハクさんの人成りは十分過ぎる程解ってるつもりです。そんな人が嘘をついたら、逆に解りやすいかもしれませんよ」
ライトはあはは、と笑っていった。
ハクの事が気になっているのは事実だから。優先しなければならない程ではないが、聞けるのなら聞いておいた方が良い、と言う考えだ。
「そういえば、細かな話はオレ達も聞いてなかったね。旅をしている途中~って言ってたくらいで」
「っスっス! ダークさんじゃないっスけど、話の流れでオレっちも気になっちゃいましたっス」
ハクはふむ、とひと頷きすると……続けていった。
「実を言うと、僕は《迷い人》なんです」
ハクとしてこの世界に来た。
だから、嘗ての世界のハクの事を―――