白い狐は何を与えてくれる。   作:きらりんぱ三上

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え・・・狐さん?

 

 

朝7時、五月蝿い程に鳴る目覚ましの音によって叩き起こされた。何時もの様に携帯の終了ボタンを押しすぐに二度寝の体勢に入る。五分毎ごとに鳴るように設定してあるため安心はしているのだがこの目覚めを何度も続けていると三度寝辺りまで起きないことがしばしば起こる。

 

クーラーのお陰で冷えた部屋に凍え、足先を布団の中に収集させ、ほんのり一肌に暖まった空間が心地いい。

 

 

 

しかし、ここで異常に気づく。

 

部屋の中の匂いが妙に味噌汁の臭いで充満している。

 

 

 

「ん…。」

 

 

 

上半身を起き上がらせて五分程ボーッとしていると頭の回転が徐々に良くなってきた。

 

それに伴い匂いやある音がどこからするのかもハッキリとしてきた。

 

 

 

匂いの原因は台所からしている様でカチャカチャと鳴る音も台所から聞こえてくる。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

泥棒か?とも思えたが玄関の鍵閉めたはずだし窓もちゃんと閉まっている。泥棒ではない、じゃあ誰だ?大家さん?いや、ソレもない。あったら困る。

 

 

 

友達?いいや、地元から離れたから友達近くには住んでいないはずだ。

 

考えど考えど答えが出てこない、それが逆に恐怖心と好奇心がわき出てくる。

 

得体の知らない者だったら物凄く怖い、でも気になる。

 

 

 

「・・・。」

 

 

 

静かに音を立てずにベッドから降り、廊下に向かうドアをゆっくりと開けて観察する。念のためすぐに逃げられるように玄関の鍵を開けておく。

 

物騒な世の中とはいえまさか自分がなんて思ったが…。

 

しかし泥棒は夜に侵入するって言うし人殺しや化け物だったらなぜ寝ていた自分を襲わないのか不思議に思う、悪の存在なのでは無いかもしれないな。

 

 

 

「あら?さっきまでいたのに…。」

 

「(!?…女の子の声…?)」

 

 

 

予想外だ、あまりの衝撃に完全に目が覚めた。

 

頭も冴えてきた、いやいやまてまて。なぜ女の子が俺の家にいるんだ!?ここは俺の家であり、女など一度たりとも入らせなかった。もとい入る予定はなかったはず。

 

いや、まあ…一度デリバリーしようとしたけどさ…。

 

 

 

そんな領域に女の子とは…。

 

しかし

 

女の子と分かれば逃げる必要は無くなったわけだし、危険な感じも無い。じゃあ一体どうすればいいのだ、声をかける?いや、逆に叫ばれるかも。このまま仕事にいく?寝巻きだ。もう声をかけることしかできないじゃないか…。

 

 

 

「あのー…どちら様?」

 

 

 

玄関の方から声をかけた後、ソロリソロリとリビングに向かう。あちらは無反応、自分の声が小さすぎたか…?

 

あ、そういえば狐も多分ベッドの中に居るなこれ、昨日と今日は本当に不思議なことばかりで困る。

 

 

 

「あの、すいません。どちら様でしょうか…?」

 

「きゃっ!?…何だ…居るじゃないの、ビックリさせないでよ。」

 

「えっ…み、巫女!?」

 

 

 

何故か怒られる俺、その前に巫女だっていう事に驚いた、。実際に見たことはないがどこだかの写真で見たことがあるため巫女なのは気づいたが…。

 

その風貌は整った顔にさらりと綺麗な少し長めの黒髪、そして脇の空いた巫女のような服。

 

 

 

「コ…コスプレイヤーさん?」

 

「は?」

 

「え?」

 

 

 

少し怒った声色でもう一度言ってみろと言わんばかりの形相。何か可笑しな事を言ったかな…脇の空いた巫女なんて聞いたことも見たことも無いしなぁ。

 

 

 

「いや、まぁいいや。君は誰なんだ?」

 

「はぁ…まだ気づかないのね…」

 

「え?」

 

 

 

呆れ顔でジーっと見てくる女の子。

 

まだ気づかないとはどう言うことなのだろう、気付かないも何もこんな子とは会ったことがないし…いや、でも思い当たることはあるっちゃあるんだがそれは流石にあり得ない、あり得ないが…。ダメもとで聞いてみるか…。あの動物も見当たらないし…。

 

 

 

「ま、まさかだとは思うけど…狐さん…?」

 

「あら、よく気づいたわね。先に言おうかと思ったけど。」

 

「まじですか…?」

 

「ま…?取り合えずはそれで合ってるわよ。」

 

 

 

嘘だろ…とばおもったがこの状況を考えたらマジなのだろう。にわかには信じがたいが…。

 

 

 

「と…とりあえず会社に連絡しないと…。」

 

「???」

 

 

 

携帯を手に取り、電話帳から上司の名前を選択する。

 

接続音が鳴り響いた後、コール音が三回程鳴った後「もしもし?」と聞きなれた声がする。

 

 

 

「もしもし」

 

【もしもし?あぁ、お前か。どうした?】

 

「朝早くに申し訳ございません、急なお願いで申し訳ないのですが…三日程休みを頂けませんか?」

 

【困るよ、休みを取るのは一週間前にって決まってるだろ?しっかりしてくれないと困るんだよね!】

 

「はい…存じてます…」

 

【なんてな、お前働きすぎだからこっちが無理矢理休ませようとおもっていたんだよ実は。】

 

「へ?」

 

【流石に120日以上連続で仕事されるとこっちも労基がうるさいんでな、三日と言わず一週間位休んでくれとの事だ、分かったか?】

 

「いいんですか?」

 

【いいんですか?じゃなくてこっちが頼んでるんだ。まぁ今日言おう思ってたから別に支障はない、ゆっくり休んでくれ。じゃあな】

 

「はっはい、失礼します。」

 

 

 

素っ気なく電話を切られ、ぺこぺこと下げていた頭をあげると目を丸くした少女が笑い出した。

 

 

 

「あっははは!何よあんた、私以外誰もいないのに何回も頭をさげちゃって!」

 

「癖なんですよ…。」

 

 

 

日本人の癖なんだよなぁこれ、取り合えず思いがけない休みが取れた。最初は怒られるかと思ったがそうでもなかったな…。

 

 

 

「と、取り合えず狐さん。君は何処から来たんだい?」

 

「狐じゃないわよ、私の名前は霊夢、博麗霊夢よ。」

 

「れ、霊夢さんは家に戻らなくていいの?」

 

「私だって戻りたいわよ、戻れるならね。」

 

 

 

その前にご飯食べましょと、並べられた一汁三菜に驚きを隠せずに居る。今の子でもこんなきちんとした食事は作れないというのに…。

 

 

 

「それで?何処から来たってあんたは言ったわね?」

 

「え?あっはい。」

 

「私が元いた場所は幻想郷って言うところよ。」

 

「幻想郷?」

 

 

 

幻想郷…聞いたことない場所だな…日本の何処かの村の名前かな?しかし幻想郷というところから来たとしてどうやって京都まで来たのだろう、そして何故狐の姿で居たのだろうか。

 

 

 

「言葉にすると面倒臭いから端折るけど、色々あってここに来てしまったのよ。」

 

「一番重要な所を端折りましたね…。」

 

「だって本当に面倒臭いんだもの。」

 

 

 

がくりと肩を下ろす、かといってしつこく聞いた所で言ってくれそうでも無いし…そのうち話してくれると有り難いのだが…。

 

しかしこの料理、本当に旨い。昔お婆ちゃんの家で食べた味に似ている。

 

子供の頃は料理が古くさくて嫌いだったけど今になって体の芯にまで響く。

 

 

 

「で、どうせ紫が迎えに来るだろうから当分の間ここに住ませて欲しいのよね。」

 

「ゆ…?別に構わないけど…」

 

 

 

食住は別にいいんだけど一つ足りない、服だ。

 

女の子の服なんてなに買ってくればわからんしなぁ・・・。そもそも法律的に大丈夫なのかねこれ・・・。

 

 

 

「なんで俺について来たんですか?」

 

「そうねぇ・・・なんとなくってのも合ったけど一番の理由は不思議だからかしらね?」

 

「不思議?」

 

「この世界は霊力をこれっぽっちも持っていないのに対してあんたは私の霊力を遥かに凌ぐからかしらね。興味もあったけど普通の男の人って感じよねぇ・・・。」

 

「霊力・・・?」

 

「霊力っていうのはね・・・あぁもういいわ、全部話してあげる。」

 

 

 

何も知らないのかという顔をした後、諦めたように話してくれた。

 

幻想郷と言うのはこの日本の中に存在している結界によって隠された場所。

 

そこには妖怪と人間が共存していてそこの巫女をしていた事。

 

そしてある妖怪の戦いで狐にされてしまい、その際食らった攻撃によって結界の外を飛び越えてここに来てしまったこと。

 

霊力とは人間そのものが持つ魂の力。

 

 

 

「と・・・言われても・・・。」

 

「ま、信じてくれなくてもいいけどね。そういう訳だから。」

 

「信じてないわけじゃないけど・・・俺は健全な男の子ですよ?」

 

「・・・?だから何だってのよ。」

 

「いやいや!男にはこう・・・!ねぇ・・・?そもそも男と暮らすとかいいんですか!?」

 

「男も女も関係ないわよ、とりあえず宜しくね。」

 

「あ、はい・・・」

 

 

 

あぁ、この子純粋な心をもってらっしゃる、男が何たるか分かってないぞ・・・。

 

男ってのは野生に近い生き物、欲に忠実。三大欲求ともなれば従ってしまうのが宿命さだめである。

 

食欲・睡眠欲・・・そして、性欲である。

 

 

 

「(二人で住むともなれば一人の時間が無いってことは・・・ひとり遊びが出来ない)」

 

 

 

齢は二十三、もう立派な大人であると共に遊び盛りでもある。

 

健全な男子ならば川辺に落ちてあった如何わしい本を見つけたら中身を見るものだ。その後はバレないように持ち帰るか、遊びと称して如何わしい本を蹴り、人の居ない所でゆっくりと拝見し、何処かに隠すだろう。

 

そこまで幼稚ではないが、それ位に男というものは欲に弱い。

 

 

 

「(まずい・・・まずいぞ・・・)」

 

「考えている所悪いんだけど、ちょっと外に行ってくるわよ。」

 

「え!?何でですか!?」

 

「何でって・・・元の世界に戻る為に手掛かりを探しにいくのよ。」

 

「ちょ・・・!ちょっと待ってください!」

 

「何よ?」

 

 

 

その格好で出られたら職務質問待ったなし、直に自分の所に何かしら来るだろう。

 

それはご勘弁願いたい、近所の目もある。

 

 

 

「と、とりあえずその服装は目に付く所があるんで自分が服買ってきます!これでも見てて待っててください!」

 

「むぅ・・・分かったわよ・・・。」

 

 

 

テレビを付けて財布と携帯を手に取り、ダッシュで外に向かう。救いなのは20分も歩けばファッションセンターが二つもあるという立地。

 

 

 

「はぁ…はぁ…疲れた…。」

 

 

 

走り走って約十二分、以外にも早く着いたなと携帯を見ながら思う。そして気づいたのだが自分の服装が寝巻きだということ。こてこてのパジャマじゃなく、ジャージに近いので気にはならないと思うのだが少し恥ずかしい。

 

 

 

更に歩いて五分、ようやくファッションセンターに着いたのだが何を買えばいいのかが分からない。如何せんファッション何かには微塵も興味がないし女性の関係も皆無な為何がいいのか、何が可愛いのかなんて知りもしない。

 

 

 

「(できるだけ似合う服の方がいいよなぁ・・・。)」

 

 

 

少し長い黒髪で幼いが顔が整っていて、かつあの性格となると・・・。和が似合ってて、これぞ昔ながらの日本人女性だなと思う服装等一つしかない。着物である。

 

しかし近代化しすぎたこの世界に着物かぁ…。似合っていても外観が似合わん!ギャップで似合うとは微々たるながら思うが…。

 

 

 

「駄目だ…いくら考えても着物しな思い付かん…、女性店員に聞いてみるか…?」

 

 

 

俺よりもよっぽどお洒落に関心があり尚且つ、服を扱う仕事をしているのだしこれが一番いいと思う。

 

そう思った俺は、吃りながらも笑顔の耐えない女性店員に話しかけることにした。

 

 

 

「あ、あの…すいません。」

 

「如何されました?」

 

「ちょっとこれくらいの身長で、これくらいの細さの黒髪が似合う服装を見繕って欲しいのですが…。」

 

「彼女さんへのプレゼントですか?」

 

「え!?あっはい、そんなものです。」

 

「では、こちらへどうぞー」

 

 

 

さすがにプライベートに首を突っ込みすぎだろと思ったがまあ女性は話好きが多いって言うししょうがないと思いながら店員についていく。

 

 

 

「此方など如何でしょう?この夏若い子達流行りですよ?」

 

 

 

差し出されたのは薄ピンクを下地に赤よりのピンクでチェック模様が入ったワイシャツとその上に着る明るいチョコ色のシャツ。そして、それに合うように選ばれた白のスカート。

 

うん、この服ならあの子にも似合いそうだ。

 

 

 

「じゃあこれと、これ以外の服も適当に見繕ってください。サイズはこれであってると思いますので。」

 

「良いのですか?私が選んでも?」

 

「そうですね、結構似合いそうなのを選んでくれているで別に構わないです。あ、あと…。」

 

「あと…?」

 

「し、下っ下着何かもお願いします。」

 

 

 

店員は少し考えた後、ニコリと笑い嬉しい言葉を出してくれた。

 

 

 

「分かりました、当店総力を持って彼女さんにお似合いの服を何点かお見繕いいたしますので少々お待ちください。」

 

「は、はい。」

 

 

 

店員は小走りで他の女性店員に歩み寄り、少し話した後他の女性店員も此方を見てニコリと笑ってくる。

 

それを見て安堵した俺は少し疲れたと思い、外の自動販売機で缶コーヒーを買い、ちかくに置いてある灰皿の近くで煙草を取りだし一服。

 

 

 

「あ、煙草も家の中じゃすえなくなっちゃったな…。」

 

 

 

思い出したかのように気付く。

 

これから大変になりそうだ…。

 

 

 

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