「はぁ・・・!はぁ・・・!!巫女さん!」
ファッションセンターから足早に自宅に帰宅し自室に戻ると巫女さんがいない。
辺りを見回すが人の気配さえ無い、あれほど外に出るなと言っておいたのに。
「・・・やばいやばいやばい、巫女さんがあの格好で出たとなるとかなり変に見られる・・・!最悪職務質問・・・!どうすれば・・・!」
リビングに置いてある机に項垂れながら最悪な展開を考えていると何処からか水の滴る音と少しの物音が聞こえる。
「・・・?何だ?」
聞こえている音を辿ると物音のする先には風呂場であった。
ドアを閉めていたせいかシャワーとその他物音は微かに聞こえる程度だったために入浴中という事に気づかなかった。
「は・・・ふぅ・・・よかった・・・外に出た訳じゃなかったんだ・・・」
先程まであった焦燥感と切迫感はあさっての方向に飛んでいき今は安堵と安心が駆け巡る。
大量の服と小物を入れた買い物袋を開き整理しているとガラリと浴槽のスライドドアを開ける音がした。
「あら?いつの間に帰ってきてたのよ、おかえりなさい」
「わわ!?」
バスタオル一枚羽織る巫女さんが出てきた。
見てはいけないという衝動と見てしまいたいという欲求でごちゃごちゃになり変な声を出してしまう。
「・・・?何を変な声を上げてるの?」
「ちょっ・・・!とり・・・とりあえず服を着てください!買ってきたんでこれとこれを!」
ファッションセンターから買ってきた服一式と下着を渡すと不思議な顔をする。
「・・・?わかったわよ?」
浴槽室に再び戻り買ってきた服を着てもう一度僕の目の前に現れた。
「変な服ね、幻想郷では見たことがない服だわ」
立ちながら自分の着た服を再確認し少し気恥ずかしそうに笑う。
やはり自分が選ぶよりも店員さんに選んでもらった方がベストチョイスらしくとても良く似合っていた。
一見すると清楚で笑顔が似合う女の子なのだが一日一緒に過ごしただけで分かる性格の持ち主で、中身は自分の思った様に動き面倒臭がり屋で酒の肴が好きな女の子である。
「しっかしこの世界はすごいわね、火を起こすのも行水するのも楽でありがたいわぁ」
濡れた髪をタオルで拭い、未だお湯で温まった身体からはほんのりと湯気が出ている。
女の子特有の座り方で黒く整った髪を拭う姿は自分の中で神格化してしまう程見ていられない。
「それで・・・霊夢さんはこれからどうするんです?」
「どうするってそれは勿論幻想郷に戻ることよ、紫が来てくれたら早いんだけど望み薄ね」
紫さんという人が来てくれれば簡単に幻想郷という場所に戻れると言うのだが望み薄という事はそれ以外の方法で戻らなければいけないという事は把握したが・・・・。
「どうやって戻るんですか?」
「そうよねぇ・・・そこなのよねぇ・・・」
手で顎を支えうーんと考えるが解決案がでない様でさらに深く深く塞ぎ込む。
すると予想外の言葉を出してくる。
「ま、なんとかなるでしょ。それまで居候になるけど良いかしら?」
「僕は構わないけど・・・」
「そっじゃあ改めて、博麗霊夢よ」
机を対面に手を突き出してくる霊夢さん。
しどろもどろになりながらも手を出すと微笑みを浮かべそれまで無愛想だった霊夢さんは年端もいかない少女の純粋な笑顔を漏らした。
「
強く固い握手を交わすとまた、少女は微笑んだ。
「外に行きたい・・・ですか?」
「えぇ、この家の中に居ても幻想郷に帰れる方法は見つからないのだし外に出た方が分かると思うのよね」
チョコスティック菓子を咥え上下に揺らしながら幻想郷に帰る方法を模索しているともう一度外に行きたがる。
「う~ん・・・まあ今なら奇抜な服装でもないですし・・・大丈夫でしょうけど・・・」
「ちょっと、奇抜な服って何よ」
「す、すいません」
現代の人に取ってみたら脇の空いた巫女服なんて奇抜以外の何者でもないんだけどなぁと少し思いながらも謝ると「ま、いいわ」と話を流した。
「とどのつまり外で幻想郷へ戻る方法を探そうっていう訳よ」
「言ってることは理解してますよ、ですが霊夢さんの話を聞くと空を飛んだり魔法を撃ったりするらしいじゃないですか。今の時代そんな事すれば一発で人目に付きますよ・・・」
「なら使わなければいいんじゃないかしら?」
「まぁ・・・それなら大丈夫ですけど・・・」
「なら善は急げ、今から行くわよ」
「はぁ・・・分かりました、いいでしょうお供しますよ」
若干外に行けると分かるとテンションを上げていく。
それでも霊夢さんが幻想郷に戻れるならとこれもなにかの思し召しだと思って協力する事にする。
「ほら、行くわよ」
「ちょっちょっと待ってください鍵を掛けますんで」
玄関を出てドアの鍵を閉める途中早く早くと腕を引いてくる。
カチャリと軽快な音を鳴らしポケットに鍵を入れて腕を引く霊夢さんと今、幻想郷に戻る方法を探しに行くのだった。
「もー張り切り過ぎですって霊夢さん!」
「何言ってんのよ、こんな所に来れる事何て無いんだからちょっと位探検させなさいよ」
アパートを出て歩くと腕を軽くひっぱりつつ前に前にと移動する。
人通りは少ないがチラホラといるため軽く一瞥してくる、まるで暴れ馬を制御する様に気分が高揚している霊夢さんに注意するがまったく効力なし。
すると目の前に見慣れた人物が此方に向かって歩いてきた。
「月見里さんこんにちは・・・彼女さんですか?」
彼女は宇佐見蓮子という名前の少女で大学生である。
以前真夜中に彼女を見かけその時は何も思わなかったのだが歩くに従って後ろを見てくるようになり僕も後ろを向くと一人のお兄さんが居たのですぐに不審者だと察知した僕は早足になり彼女もそれに釣られるように走り最終的には僕との距離がかなり近づくと大声で叫ばれ蹲り「大丈夫ですか!?」と声を掛けると後ろにいたお兄さんに「てめぇこのストーカー野郎が!」とぶん殴られるという事が起きた。
そう、不審者は僕の事だったのである。
後に勘違いだった事が彼女によって理解され、保釈された後土下座をする勢いで謝られたのがきっかけで彼女とは顔見知りなのである。 勿論お兄さんからも謝罪を頂いたが勘違いするのもしょうがないですよと言うとホッとした顔でコーヒーを奢っていただいた。
「宇佐美さんこんにちは、此方は僕の彼女ではなくえーっと・・・叔父の娘でちょっとした事情があって今は一緒にいるんですよ」
「あ、そうなんですね。初めまして宇佐見蓮子って言います」
「えぇ初めまして、博麗霊夢よ」
「はく・・・?珍しい名前ですね」
「良く言われるわ」
ほぇーっと不思議な顔をする宇佐美さん、確かに博麗なんていう苗字は珍しいしむしろそんな苗字あるのか?と当然不思議に思うがバカ正直に狐を拾ったらなんと次の朝には少女に変身していて今は元の場所に帰る手伝いをしている・・・だなんて言ったら不審者所か警察に通報されるかもしれないので心苦しいが嘘をついた。
「宇佐美さんは今日は大学ですか?」
「いえ、講義が早く終わったので帰って友達と遊ぶ予定なんですよ!」
「成る程、友達っていうのは・・・マエリベリーさんですかね?」
「はい、月見里さんも一度見たことがありましたね!」
マエリベリーさん、それは僕が保釈された後、一度宇佐美さんと話し合いをするときに同席した宇佐美さんの友人。異国の人らしかったが日本語も流暢であった。
その時に宇佐美さんに謝られたのだがマエリベリーさんもなぜか謝っていたのを思い出す。
「余り夜遅くにならないようお気をつけくださいね、最近物騒ですから」
「はい!月見里さんもお気をつけて!それでは失礼します!」
此方が会釈をすると手を振って別れた宇佐美さん、いつ見ても元気でいい娘だ。
最近の娘にあんなに元気な娘はいないので微笑ましく思えてくる。
「ほらっ翔さん行くわよ」
「あいたたっ分かりましたから霊夢さん腕を引っ張らないでください・・・」
さてさてそんなこんなで繁華街へと飛び出したのだがあちらこちらに目を輝かせる霊夢さん。
「ねぇ翔、さっきから気になってたんだけどあの動く鉄の塊は何なのよ?」
霊夢さんの指さした方向を見るとそれは車の事であった。
「あれは自動車と言って人の移動手段の一つですよ」
「へぇ~便利ねぇ」
熟思うがやはり霊夢さんはこの世界の住民ではないのだと再確認する。
自動車も知らないとなるとやはり信じざる追えない。
「あの食べ物は何かしら?」
「どれですか?」
「あれよあれ」
霊夢さんの目線に合わせるとそこには移動販売と思しき物が止まっておりクレープとアイスが同時に売っていた。
「食べてみます?」
「私お金なんて持ってないわよ」
「気にしなくても大丈夫ですよ」
「そう?じゃあお言葉に甘えるわ」
移動販売の車の目の前にいくと爽やかなお兄さんが小窓から出てくる。
この甘ったるい匂いに女性は何故、好むのか少し理解しがたい。
「霊夢さんはアイスとクレープどちらを食べます?」
「何よアイスとクレープって」
「あ~・・・・氷菓子と洋菓子かってことですね」
「うーん・・・悩むわね、じゃあ洋菓子でいいわ」
「味はどうします?苺とかバナナとかあるんですけど・・・あ、これメニュー表です二つ選べるそうですよ」
メニュー表を手渡すと霊夢さんはさらに悩む。
一分程経ちようやく決まったのかメニュー表から視線を外し、僕を見てきた。
「これとこれにするわ」
「苺とチョコですね分かりました」
移動販売前の椅子に霊夢さんを座らせてお兄さんに注文を頼むと頷いた後作る作業に入っていった。
「はい、苺とチョコのクレープですね。代金480円になります」
「あ、はい」
財布から千円札を取り出し渡すとお釣りとクレープを渡される。
クレープはほんのり暖かくそしてチョコの匂いがする、少々甘ったるすぎて顔を逸らしてしまうほど。
「はい霊夢さん、これがクレープです」
「へぇこれが、初めて見るわね」
クレープを手渡すとまず先に匂いを嗅いでいる。
「この白いのは何かしら?」
「生クリームですよ、凄く甘いですよ」
「・・・どうやって食べるの?」
「かぶりつくんですよ」
ジーッと見ると意を決したかのように小さい口を開けてかぶりつく。
そして口の中に広がる甘さに少し驚いたのか目を一瞬大きく開けたがすぐに収まり飲み込んだ。
「美味しいわね、翔もどうかしら?」
「いえ、僕は・・・」
「遠慮するんじゃないわよ、ほら」
クレープをこちらに向け食べろと意思表示してくるが、それ以前に恥ずかしい。
少し顔が熱くなっているのが分かる。
「じゃっじゃあ少しだけ・・・」
顔を真っ赤にしながら女の子からクレープを貰うのは非常に痛々しいだろう。
口に含んだ生クリームとチョコと苺が甘すぎて少し戻しそうになったが何とか堪え、飲み込む。
「はぁ~・・・甘いですね」
「もうあげないわよ」
さらにかぶりつく霊夢さん、「ん~!美味し!」と体全体で表現する。
それ見て笑ってしまう僕にムッとなり少し怒った表情になるが甘いものには目がないらしくすぐにクレープの方に意識を持っていった。
「そういえば霊夢さん、最初に僕の体には霊力があると言ってましたがどういう事何ですか?」
「え?そのままの意味よ、翔以外の人を見てもほんの少しの霊力しか無いんだけど翔の体をみるとやっぱり私より霊力があるのよ」
「何故ですかね?」
「私が知るわけないでしょう?でも心辺りはあると思うわよ?疲れた後、寝たり休憩すると疲れがどこかに飛んでいったりしないかしら?」
「確かに・・・激務で疲れても寝れば次の朝になったら疲れはないですね」
「そういうことよ」
どういう事なのだろう、だが確かに疲れやストレスなんかは一日経てばスッキリしているので同僚からは羨ましいといわれた事はある・・・がそれと霊力の関係性が見つからない。
「ごちそうさま、さあ次はどこに行こうかしら」
「(元気だなぁ)」