たったひとつの願い   作:Jget

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捜し者

「はあ……はあ……!」

 

非常灯のみがうっすらと点滅する、明らかに作りの悪い廊下にもたれかかり、男は痛みを感じながら、ゆっくりと歩いていた。

 

「う……く……!血が……」

 

さらに痛みが強くなる。

 

痛みを忘れるために、腕を強く握る。

体中から、撃たれたことで流れた血が……その血を流させた存在から必死に逃げるために滝汗が……際限なく、流れていく。

 

「おーい!おーい!!……さーん!どこですかー?」

 

まるで、子供に視線を合わせるかのように芝居がかった声が追いかけてくる。

俺は、彼女に撃たれた。

 

「く……」

 

「あなたの可愛い娘が探してますよお?もーいいーかーい?」

 

足音が近づいてくる。

今は暗がりのお陰で見つかっていないが、いや……こちらは血を流している、血跡を見つけてすぐに追いかけてくるに違いない。

 

ここから、抜け出さないと。

抜け出すことが出来たら、ここから離れることが出来ると指令をもらった。

逆を言えば……ここから、抜け出せないとどうにもならないという意味でもある。

 

「まーだかな?まーだかな?あなたを八つ裂きにするのまーだかな?」

 

クスクスと裏切りと嘲笑が混じった笑い声が近づいてくる。

色々考えている暇はない、とにかく今は……ここから、抜け出すことを第一にしなければ……!

 

「く…ぅ…!」

 

痛みがさらに激しさを増す。

傷つけられた痛みのせいなのか、それとも追いかけてくる娘に裏切られた事実による傷心の痛みなのか……どちらなのか、あるいは……どちらともか?

 

ぱちん!

 

廊下の明かりが一瞬だけ、元に戻ってしまった。

機械仕掛けの紅い瞳と重なり合う。

 

「みーいいつけたあ!!」

 

今まで以上に狂気を孕んだ声で、勢いよく追いかけてくる。

その動きは、人間ができる動きを凌駕していた。

それもそうだ。

彼女は戦術人形。

第三次世界大戦でより、自分たちが勝利に近づけるために作り上げられた人以上の肉体を持つ、ロボットなのだから。

 

「あはははあああ!!」

 

傷ついた肉体では、走ることもできずあっという間に追いつかれ首を掴まれて、勢いをつけて地面にたたきつけられた。

 

「あ……!?……が、は……!」

 

「みーいいいつけたああ!”パパ”みいつけた!!」

 

目の前の人形が自分を父親と呼ぶ。

そんなのは、彼女が勝手に自分につけた称号だ。

そもそも……今の彼女に親子の概念を理解できているのなら、殴ってもいない父親にこんな殺意を持って襲い掛かるわけがない。

 

「遊びはおわりよお!」

 

首を掴む力が一気に強くなる。

へし折るどころかつぶす気らしい。人間に似た見た目をしても、人形は人形らしい。友情や信頼など、容易く裏切られる。

人形は人ではないのだ。

どんどん声が狂気に侵され行く。

 

このまま、つぶされるのだろうか?

そう、お互いが思った瞬間……

 

「は……?あ?」

 

いきなり、彼女の腕の力が弱くなった気がした。

 

「なんで……?あ!?ぐ、ぐ、あああああ!?」

 

一番驚いていたのは彼女自身だ。

そして、いきなり頭を押さえてのたうち回り、苦しみだした。

 

「に、にげ……て!……は、やく!!」

 

紅い瞳が消えて、紫に戻っている。

まるで、自分と自分が戦っているみたいに。

彼女の必死の訴えに応えるように、自分は彼女からまた、逃げ延びることに成功した。

 

「はあ……はあ……」

 

互いが互いを信頼しない世界で裏切られても逃げられる。

そう思って、作られていたであろう隠しで出口を知っていてよかった。

ようやく、ここから、脱出することが出来た。

 

脱出して見えた光景は、ごうごうと燃える炎上した基地が見える。

今日まで、家代わりに過ごしていたねぐらが……こんなにも、あっさりと。

 

「俺の……せいか」

 

脱力した様子で、腕を抑えながら座り込んでしまう。

少なからず、ここで多くを得た。

だけど、失った。

自分よりもさらに上の人間を追いつめるための嫌がらせで、自分のねぐらを失った。他の帰る場所もなくなっているんだろう。

 

……迎えが来たらしい。

数人の男たちによって止血をさせられて、モニターのある後部座席に乗せられた。

 

<手ひどく裏切られたようだな>

 

モニターが点灯し、電子処理された声が社内に響く。

自分はこの声の主と脱出するための取引をした。

 

<あれだけ愛情を注いだのにな、人形というのは薄情だ。……いや、失礼だったな忘れてくれ>

 

「いえ……私のミスですから」

 

<謙遜だな。まあよい、そんなところをこちらも買っているんだ。さて……私に助けを求めた、ということは決心はついたのかな?>

 

本当はなし崩しの形なのだが……。

だけど、決めてしまった以上は仕方あるまい。

 

「ええ……」

 

<それはよかった!君のような人材はこちらも欲しくてたまらなかったからな!>

 

色よい返答を聞いて、相手は喜んでいた。

俺は、モニター越しの方の期待を添える仕事をしないといけない。

それこそ、今日裏切ったあの女とは違って、裏切ることのない忠実な人間としての仕事を期待されている。

……望むところだ。

もともと、彼女のところに行くのは決めていたことだ。

それが、少し早くなっただけだ。

 

<仕事はしばらく療養してもらった後に、追って指示をする。だが、その前に聞きたいことがある>

 

「はい。なんでしょう?」

 

<なに、大したことではない。”ユーリ”お前は……奴らの新ソ連保安局による政争の一環ですべてを奪われた。あいつらが憎いか?>

 

「それは……」

 

 

相手から、自分の名前を読み上げられながら、彼女のことが憎いか?と聞いて来た。

そのことを思い出すと、また腕の傷がうずいた。

 

 

 

数年後……

 

I.O.P本社にて

 

「だから、いらないって……言ってるじゃん」

 

そう端末越しに喋っているのは戦術人形の売り上げの中でも最高のシェア誇る、I.O.P社の中でも最高の技術がひしめく、16LABの主任研究員ペルシカリアだった……

 

「うちの"AR小隊"は指揮官無しでも長時間の間作戦を続ける事が出来るんだよ?クルーガー、人間の指揮官が必要な場合でも、今まで通り少しの間だけ、基地に駐留して必要な命令を受けるだけで十分だよ」

 

端末越しに移る50は過ぎたであろうだが、老いを感じさせない程、屈強な感じを漂わせて話を聞いているのは、そのI.O.P社と密接な関係を持つ世界でも有数なPMC企業G&K(グリフィンアンドクルーガー)社のCEOペレゾウイッチ・クルーガーだ。

 

「確かにお前の言うAR小隊はスペックは非常に良いものだ……だが、ペルシカ……貴様はそのスペックを過信し過ぎている」

 

「当たり前じゃん、私のAR小隊に敵う奴なんてグリフィンの中にいる?いないでしょ?」

 

「今はその通りだ。だがよく考えろ、もしそのAR小隊の誰かが問題を起こした時にその責任は誰が負う?隊長の"M4A1"か?」

 

ペルシカは顎に手を当て少し考えた……そして回答した……

 

「スケープゴートがいる……か」

 

「名目上必要なのだ。グリフィンが本当にAR小隊に指揮官をつけたい理由は"AR小隊が独自の判断で人類の考えを離れ、自分の意思でに人類に反逆が起きるのを阻止したい"……と言うのがグリフィン全体の意思だ」

 

「グリフィンも随分と心配性だね……」

 

「"蝶事件"の事が無ければこんな話も議題に挙がったりはしなかっただろうな。それに……明確なものはないが、彼女たちがイジメを受けたといううわさもある。もし、彼女たちがそれにしびれを切らしたらどうする?」

 

「…おのれ、リコリス」

 

グリフィン全体の意思とはいえクルーガーも呆れた表情で今回の決議を話していた。

 

「しょうがない……分かったよ……AR小隊に専属の指揮官をつける事を認める」

 

「仕方がないな」

 

「でも、こっちもヤワな指揮官なんてお断り、いっぱい条件もつけるよ?その条件に合う指揮官に頼むよ?それでいい?」

 

「結構だ」

 

確かにそうでなければI.O.Pの中でも最高機密であるAR小隊の奴らを任せる事は出来ないだろう……

 

基本的に彼女達はグリフィンの所属ではあるが実態はI.O.Pのテストヘッド……

 

グリフィンが彼女達を有用に扱う事が出来なければ、彼女達はI.O.Pに戻る事になるだろう……

 

それはグリフィンとI.O.Pとの関係が悪くなる言う証明でもある、お互いにそれは望まない……

 

ならばお互いにとって有用な存在を持って来なければならないのだ……

 

「来たか……フン、本当に妥協がない奴だな」

 

そこに書かれていた条件は

 

・最低でも東側、西側両方合わせて300丁以上の以上の銃器に対する知識を持ちかつ問題なくその場で使用、及びメンテナンスが出来ること。

・1000ヤードの狙撃で90%以上の命中率を持つこと

・空挺資格を保有している事

・体力テストで220ポイント以上を獲得している事

・もしもAR小隊が取り残された場合、確実に救いに行くという決断ができる事

・実務で150回以上、部隊を指揮したことがある事

・AR小隊とのコミュニケーションにおいて好感度90以上の好意的な関係をを築ける事

・以上の事を踏まえた上で人形と一緒に戦闘する際に足手まといにならない、レベルの戦闘力をもつ存在する場合のみAR小隊の指揮官に指名する事に同意する

 

という普通の正規軍の軍人でも中々クリア出来ないような課題がずらりと並んでいる……この条件をクリア出来る奴など"今の"グリフィンの中には存在しない……だが、

 

「奴なら……やれるだろう。ふん、下げたくもないあの男に頭を下げる日が来てしまうとはな」

 

 

 

2週間後……

 

スペアタウンのとあるアパートの一室……

 

「ん?……これは、あぁ……クソ、やっぱりか……」

 

……20代始め頃の男性がレミントンACRの分解をして、うなだれる。

 

仕事の最終段階辺りで愛銃の内部から、嫌な音を聞いたので家に帰った後、直ぐに分解して調べてみると……

案の定ボルトがスプリングとベタついてくっついていた、おそらく加熱したせいでオイルが接着剤の様になってギチギチにくっ付いんたんだろう……

ショートストロークガスピストンという機構を、信用しすぎたかもしれない。

 

「修理をするには、ボルトとスプリングを替えとかないと、だな……」

 

机に端末を開き、連絡を待ちながら……適当に前回の仕事で拾った、銃器のパーツの中から使えそうな物を漁っていた

 

「ダメだ……やっぱり合うわけないか……」

 

使えると思ってAR-15系統のボルトなどで代用しようとしたが、もともと口径が合うだけで別に銃としての互換性なんてあるわけない。

そうこうこの後どうするか悩んでいたところ、端末からメールがきた事を示す、メールが届いた。

 

[金が届いた。受け取りにこい]

 

「仕方ない……金を受け取るついでに買いに行くか……」

 

自分の家のドア開ける。

相変わらず濁った空気だ……これもなにもかも、あの「米蘭島」で起きた事件のせいだ。

崩壊液がジェット気流に乗ってこの世界の多くの空気を汚染したのだ……

 

そのせいで低高度でしかレーダーは機能しなくなり、誘導装置も意味をなさなくなり、大空を飛ぶ戦闘機や爆撃機はその価値をほぼ失った……

 

「フッ……」

 

子供の頃見ていた飛行機の絵本が懐かしい……確かあの時、自分はSu-47の造形が好きでよく乗りたいと言っていたかな……?

 

まぁ、そのあと起きた責任のなすり付け合いが元で発生した第三次世界大戦によってその夢は潰えてこの俺は、この地上に縛り付けられることになったというわけなのだから、お笑いもいいところだろうか?

 

スペアタウンの見慣れた街中を通る。

ここはかつて第三次世界大戦の後、持ち主が分からなくなったこの土地を纏めて掻っ攫う形で手に入れて一種の自治区の様なものとなっている……らしい。

 

俺がこの町に住みついているのは、ちょっと仕事の為だ。

出張先が遠いから、そこの寮で住み着いている会社員と似ているかもしれない。

 

この町の解説に入ろう。

このスペアタウンはイエローエリアというくくりの自治区だ。

自治区……と言っても、行政といえる警察や軍隊、果てにはサービス業をしてくれる様な所なんて、この街の中心部にある危険な仕事を請け負いその半分の報酬を受け取って生活の住居を貸してくれるという「トレーダー」いう施設しかない……

 

この街は傭兵と犯罪組織の溜まり場なのだ。

俺は資金集めや情報欲しさに「トレーダー」に送られる仕事を手伝っているが、が「トレーダー」そのものがやっている仕事には加担していない。

というよりもできない。確かに、そっちの方が稼ぎはよくなるのだが、その分足がつきやすいし、なによりも「トレーダー」の本業の方はあまり好きではない。

そして、繰り返しなるが俺はこの町にいるのは仕事で行く必要になっただけだ。

 

私が「トレーダー」の代行の仕事をするのは、その仕事をするための金の為だ。

他に理由はない、そうだらしが無い言い訳を自分の中に並べながらバイクに乗り「トレーダー」の施設に向かった。

 

15分後

 

露店商のテントが並ぶその中央に緑色にライトが点灯していて少し薄気味悪いが最新を感じさせるビルの様な施設に私はバイクを駐輪場に停めた。

 

「IDを」

 

「これでいいか?」

 

PKPの固定マシンガンで見張りをしているゲートの近くのタッチパネルに数字を入力する。

 

「よし……OK。どうぞ、Mr.フレーヴェン、報酬がお待ちです」

 

「ありがとう」

 

軽く手を挙げ私は施設の中に入る、そこには、まぁ……外からでは想像もつかないであろう、光景が広がっていた……

 

おい!!この人形は幾らだ!?

……140ダイヤだ、ランクは3だからな、安くしてやるよ。

へっ……買った!!

……嫌だ!!!やめて!!誰か!!助けて!!!

 

やめて……これ見てよ、私……

お〜や、こりゃあ心が躍るねぇ……この人形は"改造"し甲斐がありそうだ……売ってくれないかな?

……フン、俺のダチをぶっ殺した奴の癖に、悪びれもしねえでコイツは指揮官、指揮官とほざいていたからな、事の重大さを教育をする手間も省けた、安く売ってやるよ100ダイヤでどうだ?

いいねええ、悪くない……ほら、おいで……君の事を僕しか見れない様にしてあげるから

い、嫌だ……指揮官……助けてぇ……

 

酒場の空気やパーツの買う時の怒号はどこでも変わらないと感じるがこれは特に酷い。

 

スペアタウンの元締め「トレーダー」の本業はこれだ、表向きは大きいPMCに頼るにはコストがかかり過ぎたり秘密裏に物資を運搬するのが通常だが、"本業"は違う奴らはグリフィンの見捨てられた人形や行方不明の人形を回収し、この様に所属コードを解除して、ここの住民や民間組織に売り付けるのが実態だ。

 

最初のうちは鉄血の量産型にラブドールみたいな機能を付与させて客の"ニーズ"に合わせた物を販売していたが、1年あたり前から鉄血が人類に反乱を起こした。

 

当然、第三次世界大戦と米蘭島で起きてしまった事の"掃除"に忙しい政府はその防波堤として鉄血が反乱を起こしてから次々と保護区域の人々を見捨てる様に引き揚げたのに対してグリフィンと言うPMCは人類を守ると言う誓いを守り通した組織に事態の収拾を依頼した。

 

結果はまぁ、良かった方なのだろう……これにより政府は"掃除"に専念できる様になったのだから……

 

その中の代理戦争じみたことでI.O.P製の人形達も回収しやすくなり、コイツらも鉄血の人形と同じような改造をして鉄血より高値で売りさばかれるようになった……

 

さっき売り捌かれたのは銃のモデルからして、M21とナガン狙撃銃だろう..,

 

ライフルは売れやすいからな……と思いつつ、依頼を受注するフロアにたどり着く、IDを提示して以来金を受付から受け取る。

 

「よう!ユーリ!!」

 

突然知り合い話しかけられる戦術人形を連れた男……仕事仲間だ

 

「ケネスか、どうした?」

 

「ユーリ、前の仕事であんたの銃やばい音してただろう?パーツが合うところ探しといたぞ?」

 

「ACRのか?……見つかったのか?」

 

「あぁ、案内するぜ」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

コイツの事は嫌いじゃない、むしろライクの部類に入る気も合うからな。

 

「ホラ、これだろ?」

 

「あぁ、間違いない。このパーツなら整備できそうだ……これをくれ」

 

「30ダイヤだ」

 

「少し、高いな……セットで買うから安くならないか?」

 

自分が買う予定以外のパーツのボルトフォーワードアシスト、チャンバー、マガジンスプリングス、ハイダー、そしていくつかの5.56ミリ弾丸もテーブルに置いた。

 

「そんなに買ってくれるなら……60で結構だ……」

 

「ありがとう。あ、後からはお礼のチップだ」

 

10ダイヤほどパーツ屋の店員に渡して、その店を後にする

 

「わざとだろ?」

 

「当たり前だ」

 

そう当たり前……本当は他にも保守部品のストックが欲しかったので買おうとしたのだがそれで纏めて買うから安くしてからは基本的に悪印象だ、だからこそ後から、追加で買って安くする、おまけのチップも忘れてはいけない。

 

その為、本来100ダイヤが消える予定だったが70ダイヤで済んだ、その余ったダイヤで食料も買える。

 

「おい、ユーリはいるのか!?」

 

食料を買いに行こうとすると受付に呼び止められる。

 

「なんだ、依頼はまだ先だろう?」

 

「その依頼が来たんだよ、お前宛にな……内容はコイツだ」

 

自分宛に書かれた手紙を読んでみた。

 

ーーー

ユーリ

 

今の生活が満足か?

 

自分の正義……いや、夢すら果たせない程のこの掃き溜めの様な、場所に押し込められて。

 

たしかに今お前がこんな所で良心に苛まれるのは私達に原因がある……だが、釈明はしない……そんな事しても人類は救えない……むしろ守る事すら出来ないだろうからな。

 

だが、貴様の人生を奪ってしまった事は認めなくてはならない、だからこそお前にチャンスをやる、8日の夜21時……貴様らの言う灯台で待つ……来るかどうかお前次第だ。

 

もし、お前がこの誘いを受けるのなら貴様にしか出来ない仕事を任せたい、前金は払っといてやる、来るかどうかお前次第だ……"犬鷲"

 

クルーガー

 

ーーー

 

コイツと一緒に前金も支払われている……500ダイヤも……

 

「……」

 

「受けるのか?どう見ても怪しいぞ?」

 

そうだ。

普通は受ける方がおかしい。

 

「……まぁな、だが、罠にしてはこれだけの前金を払う理由は無いだろう……それに」

 

「それに?」

 

「この手紙の送り主は呼び出す程度で姑息なことはしない……」

 

そう言って私は準備する為に「トレーダー」後にした、8日は今日だ。

 

 

 

 

ーーー

 

22時57分

 

 

「灯台」にバイクを停めるここはよく「トレーダー」のボスが来る際に、花火をで知らせた事があり、その時の光景が灯台に見えたと言う逸話から「灯台」と呼ばれているのだ。

 

周りに誰もいない。

今なら問題ないだろう。ユーリは端末を動かして、数年前に自分を助けてくれた”あの方”に連絡を入れる。

 

「”生き餌”に食いつきました。……はい、わかっています、ええ。承知しております、すべてあなたの手筈通りに」

 

通話が切れる。

本当に”あの方”の予想通り、クルーガーがこっちに食いついてきた。

あの時助けてくれた時といい、”あの方”は本当に予知能力というものを持っているのかもしれない。

 

「クルーガーか……」

 

それなりに懐かしい名前だ、昔はこの国の政府の内務省の軍人をしてて……今では、確かグリフィンの社長だったか……

 

俺が軍で仕事していた時に奴とはそれなり縄張り争いを繰り広げていたな……まぁ、あっちが突っかかってきた様なもんだが……

 

大方、裏に保安局が絡んでいた様な案件だったから、遺恨が残りやすかったな……

 

「元気そうだな?ユーリ」

 

「お久ぶりですね?クルーガーさん」

 

予定通り、予想通りクルーガーがやってくる。

隣にフードを被った護衛らしき人物がいた……体格からして、女性……年齢は17、8歳と言う所か……

 

「考えはまとまったか?」

 

「”断る”と本来なら言う所ですが……悩んでます」

 

「ほう?」

 

「たしかに、グリフィンに所属すれば、貴方の語る様な理想に私は近づけるんでしょう……だが、以前貴方に敵対した私を仲間に入れるなんて、周りの受けがよく無いでしょう?暗殺される確率が高まるのはこっちとして避けていたい、これは基本的な人間の生存本能でもあります……そのことを考えれば……」

 

「受けない可能性も否定できないか……」

 

「グリフィンの事もう少し教えてくれますか?それで考えます」

 

そうだ……ここで決めるには情報が足りないと言わないと。

彼らは、”あの方”曰く、”しっかりと見極めなければならない”と言っていたのだから。

 

「良いだろう見せよう……だが見せるのはデータでは無い」

 

そう言うとクルーガーはフードを着た奴に攻撃の合図を出した

 

それを確認したフードを着た奴がが一瞬で目の前まで近づき……

 

「力だ」

 

ガキン!!

 

フードをした奴がいきなりナイフで切りかかってきたのでこちらも手持ちのナイフで防ぐ

 

ギチギチとナイフ同士での鍔迫り合いが起きている……コイツ、体が小さい割にはとんでもない馬鹿力だ気を抜いたら、押し倒されてナイフを喉に差し込まれてしまう。

 

「……!!」

 

ワザ腕の力を緩め、フードを着た奴の体制が崩れたその一瞬にかけ素早く後方に飛び退く、フードを着た奴は体重を乗せすぎたのか、体制が大きく崩れてしまいかけ慌てて体制を戻そうとしたタイミングで

 

「オオ!!」

 

ナイフで顔面を切り裂こうしたが距離が近づきすぎてしまい、切るのでは無く、殴る形になってしまった。

 

フードを被った奴は思いっきりクルーガーの所まで転がっていき被っていたフードが外れた

 

「痛ったー……」

 

「油断するなと言ったはずだぞ?”UMP9”」

 

「銃の名前……まさか?」

 

「はいはい、クルーガーさん、ホラ、怒らない怒らない!!スマイル、スマイル、そこお兄さんも!顔怖すぎ!」

 

「……これでは、道化だな」

 

茶色のツインテールの少女は口の端を釣り上げ笑っている、鼻を殴って鼻血を出している顔ではたしかに道化に見えてお笑いだ。

 

「銃の名前をした少女。これが、戦術人形か……」

 

「そうだ、コレがグリフィンの"力"だこの力でグリフィンは人類を守護するのだ、お前と”AK-12”が見せたあの時に私は確信した。この世界を救う力は戦術人形にあるとな」

 

この体格でこのスピードは人間ではあり得ない。

おおよそスピードタイプの人形……

ドイツのUMPの9ミリ口径のサブマシンガンと同様の名前を付けるとはお堅いところ変わらないらしい。

 

「相変わらず、馬鹿みたいに大きい目標立ててるよね……あ、気にしないで!!ユーリさん!貴方の呆れた顔は御尤もだから……ん?AK-12……?ねぇ、まさか、貴方がAK-12のパパのユーリ・フレーヴェンさん!?初めまして!!私、AK-12の持ち主さんと同じところにいるUMP9です!!貴方も家族だ!!」

 

いきなりUMP9が自分勝手に理解した、と思ったらさっきより早く、俺の手を掴み握手してきた。

 

それにしても"家族"か……グリフィンにいる奴らもそう言う考えで働いてるのか?それとも、クルーガーの様に暑苦しい、情熱を燃やしているのだろうか……

 

「……はぁ……飽きた。わかった、クルーガーさん貴方の提案に乗りましょう。」

 

「もう決めたのか?」

 

「貴方に付き合うのは面倒でしたが、スペアタウンにはもう用はありませんそれに……」

 

UMP9を見る彼女は先程まで浮かべていた殺意ある様な笑顔では無く屈託無い純粋の笑顔を見せていた。

 

「貴方のグリフィン連中がどんな奴か見てみたくなりましたよ」

 

「フン……それが本音か、良いだろう……採用だ」

 

パチンと指を鳴らすと輸送ヘリであるMi-24が現れる……初めからそのつもりだったのか……

 

「それで、私の仕事は?爆弾処理?突撃兵?それともBCとか?」

 

「……フ、ハッハッハッ!!!」

 

クルーガーは俺の質問を聞くや否や笑い出した

 

「どうしました?ついに笑える時期が来たなんて私嬉しいですよ?」

 

「エヘヘ!!ごめんね!!ごめんちょっと笑えて!!」

 

「もう、昔とは違うんだお前の仕事はな……指揮官だ」

 

「……フッ、そう来ましたか。人生って、面白い」

 

ユーリが不敵な笑みを見せたか……やる気は十分のようだな……駒は揃った、見せてみろ..,あの時私に見せた時の様な可能性をな……

 

ユーリ・フレーヴェン

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