────東ドイツ:国境
ドイツの国境沿いには例え、劣悪な環境でもコーラップス液の被害を避けられるのなら天国なのだろうと思いながら、
これから行われる潜入任務の為に東ドイツまでやってきたユーリ・フレーヴェンは運転をしており手を離さないで暇を潰せる事も他に見るものもない為、この国に入れるのはどのくらいの人数なのだろうと思いながら難民の行列を見ていた。
「次の方、どうぞ」
沢山の人を処理するのに面倒を感じる声が聞こえる。
チラリと前の方を見る、コーラップス液の遮断をしてくれて、国境の壁につながる検問所にたどり着くのはまだまだ時間が掛かりそうである。
「ねえ!にいちゃん!!
「────ん?」
自分が前を向いた時に、少年と目が合う。
後ろの席に座ってた戦術人形"ヴィジャス"の持っていたサブマシンガンのセレクターがAK特有の金属の擦れた金属音を立て、セーフティを解除して周りを見渡して暗殺や強襲を警戒する。
「新聞。買うかい?」
…今の発言と身なりを見る限りでは、新聞売りの少年らしい。
確かに車に乗って行列を待つのなら商売相手に事欠かないだろう。
「────買うよ。いくら?」
新聞売りの少年の表情が綻び、財布を取り出した瞬間────笑顔を繕いながら、金を取るフリをして吸い殻入れの近くにあるPL-15"レヴェデフ"に触れた…と同時に少年のバッグの中身を素早く盗み見る。
「30セント」
武器になる様なものは持っていない、釣り銭の為に取り出したらしい。
「"ヴィシャス"払ってやれ」
「────うっーす…アン?うへ、30セント丁度はねぇなぁ…50セントなら、あるわな。ハイよ」
「はい。新聞、お釣りは…えっと」
「クフフ…気にすんな。チップだと思いなさんな…」
ヴィシャスが新聞売りの少年の服の裾を正した。
女性として美しい肉体を持つ、ヴィシャスがこういう年端もいかない少年の頭を撫でたり、服をいじると事案にしか見えない。
しかし、ヴィシャスはこの服の裾を正した瞬間にこの少年が武器を持っていないか確かめていた。
「これでよしだ。頑張って売ってこいよ!…クフフ…あのガキ、中々のカワイコちゃんだったゼ…」
「キモ…」
ヴィシャスの気色さに隣に座っていたアキは露骨に顔をしかめながら思うだけに留めようとした己の感情をつい漏らしてしまう。
己の性癖を気味悪がられた哀れな戦術人形を尻目に新聞を眺める。
新聞には新ソ連でクーデターを計画したという政治家の一斉摘発が行われたと書かれていた。
パデルスィキの負けが相当響いたのだろう、カーター将軍を指示していた、所謂"保守派"と言える様な政治家は自分の身を守れる手札を失い、軒並み保安局にお縄になってしまった。
この件では、保安局やその尖兵であるヴィンペルらををたたえる様なプロパガンダが所狭しと書かれていた。
今頃、クレムリンではゼリンスキーは敬服の対象だろう。
新ソ連の国家英雄賞の授与もあるのかもしれない…この件のために相当な労力や犠牲を払った外務省を差し置いて…だ。
だが、それが政治だろう。
戦いはグリフィンや外務省、東ドイツのシュタージにやらせて自分は外でのんびり見学、そして頃合いを見計らって空軍が掃除しようとしたら、連絡不足で空軍の爆撃機が航空宇宙軍の戦闘機に吹き飛ばされたとか書かせたら新ソ連中が大騒ぎになりかねない。
そんな事をしているうちにユーリ達の順番が回ってきた。
「パスポートを拝見します」
係員の指示に従い、ユーリは国境に着く前から事前に受け取っていたパスポートを出した。
入国の目的は、正式な仕事の為国外から派遣された……という事にしてある。
「スロバキアからわざわざお仕事ですか?仕事とはいえ大変ですね」
「それが仕事ですので」
入国スタンプを押してもらい、ユーリ達は無事ドイツへと入国できた。
車はそのまま走り続け、ベルリンの駐車場に停まる。
車を停めるなりユーリは車のウィンドウを軽く叩き、"来てもいい"合図を出した。
合図を出してから、しばらくするとコートをきた太り気味な男が車にやってきた。
合言葉は"ビール"関連の発言だ。
「"安物のビールの店を知ってるかあ?"」
「"いや、知らない。教えてくれ"」
当たりだ。
後部座席のドアを開ける。それを確認するなり、コートの男は周囲をキョロキョロせず、自然に車に乗車した。
「ハンスだ」
「フレーヴェンです」
握手をすれば怪しまれる、言葉だけの礼を済ませてユーリ達は車を適当に走らせる。
「"あの方"に頼まれてパスポート用意したけど、使えたか?」
「ええ、使えました。でも、街中の監視の数はかなりの数です。そこかしこに視線を浴びた、東ドイツの諜報員の育成状況には恐れ入る」
コートの男は笑う。
「大方、機会を狙って報酬や身の安全を保証したがる。密告者 、コラボレーター。だろう。こうやって、俺たちと合流しても監視の強化はこれ以上入ってないだろう?」
言われてみれば…珍しい車を走らせているわけでもないから、外から来た獲物をどんな難癖で密告しようかという策を巡らせているのなら上手く撒くのは難しくないだろう。
「秘密警察のシュタージの動きは?」
「俺たちに向けた動きはない、どうやら今シュタージはそこまで意識を向ける気はない様だ」
それどころじゃない?監視相手の匂いすら収集する秘密警察がそこまで集中をする、という事はよほど政治的に重要な事が発生しているのだろうか?
「ウルリッヒが来ている。どうやら、ソ連の保安局の人員と会うつもりらしい…お前が助けた、あのウルリッヒ代表だ」
成る程…ソ連の諜報員がドイツの代表と会うなら、それは友好的ない意味でも敵対的な意味でも否応無しに意識が向くだろうな。
これはチャンスだ。
「ウルリッヒが来て、ドイツの監視が他のところに向いている今がチャンスですね。この隙にグリフィンの始末か、フローラの調査を済ませましょう。ハンスさん、あなた方が得た情報で確度が高いのはどちらの情報ですか?」
────ユーリ達がドイツに潜入してから、数日後
「こちらです。どうぞ」
鉄格子の向こう側にある、ドイツのブレーメン市政庁まで豪勢な車に乗せられて、面会室に案内された一人の女がいた。
女の名前はアンジェリア。
身体中がコーラップス放射線の浸食を受け、悲鳴をあげるかの様に爛れた火傷の様な傷を負っているが、瞳の強さは健康な人間の瞳と謙遜ない。
"モリドー"と呼ばれる、秘書官が面会室のドアを開ける。
面会室の中にはドイツ代表のギルダ・ウルリッヒが待っていた。
「遠路はるばるご苦労様。アンジェリア」
「お初にお目にかかります、アンジェで結構です。あなたほどの優秀な方に呼ばれるなんて思いもしなかった」
「それで、こちらがAK-12ね」
ウルリッヒとアンジェリアのアンジェリアの挨拶を拝見して、AK-12も丁寧な動きで頭を下げる。
「働きはお父上から聞いてるわ」
「父ですって?」
「あら?ユーリさんはあなたの事を娘と話していたわよ?なんでも屈指の精鋭だとか」
「…そうでしたか。恐縮です」
内心「あの、親父め」とAK-12は毒づいた。
きっと、ベオグラードでの一件で護衛された際に暇つぶしでユーリは有る事、無い事を色々言ってくれたに違いない。
「もちろん、あなたがシュタージからお父上を仕留め損なった話を聞いています」
「────それは」
AK-12とアンジェリアは全身の血液が凍りついたものを覚えた。
「そのおかげで、今私の命がある。これも、どこかの誰か書いた何かのためにシナリオなのでしょうね」
AK-12は一瞬だけ、だが確実に暗い表情で床を見つめた。
清潔なタイルの上に絨毯が弾かれているなんの変哲もない床がその時だけ、真っ赤な血がぶちまけられたように見えたからだ。
そんなシナリオ誰が書いたか知らないが、本当に書いているならそいつに言ってやりたい。
あの泣きながら「殺さないでください」と懇願する大学生を素手で殴り殺したり、ようやく仲良くしてくれた兵士たちの背中を撃つなんてことを、私にやらせる必要があるシナリオなのか?と。
「父の世話になったと思います。私のお話も色々伺っているでしょう。しかし、ここではAK-12という名前以外にも"ルシア"という名前を使っています。差し支えなければこちらの名前をお使いくださると私としても、助かります」
AK-12が出来るだけ礼儀正しく話し、コントのようなものを感じたアンジェリア。
「ルシア…アンジェさん。お名前を付けたのかしら?」
「ええ。そのようなものだと思っていただければ」
ルシアというのは、アンジェリア付けたコードネームだ。戦闘機のパイロットでよく使われるTACネームに似た表現かもしれない、ルシアというのはドイツ語で「光」を表す。
アンジェリアは以前、ユーリが"M4A1"に"レイラ"(※アラビア語で夜)という名前を付けたことをヒントにしてなるべく人形を人間に偽装出来るようにした試行錯誤の末、この結果になった。
「ウルブズ”チームも来たの…当然ね、今のアンジェさんの立場なら私も似たことをやっているでしょうし」
そもそもアンジェリアがこのドイツに赴いたのは、ユーリが”わざわざ”ロクサット主義”の顔役ともいえる、ウルリッヒを助けたからだ。
指示もあったが、アンジェリアはウルリッヒに合えばなにか掴めると思っていた。
ユーリ……彼は理由もなく人を傷つける事はないが、理由もなくロクサット主義者なんて敵を見逃す男でもない。
それとない理由でウルリッヒをこっそり始末することだってできたはずだ、だとしたら”彼ら”がウルリッヒを生かしたことのメリットがあるはず、アンジェリアそれが何なのか直接確かめたかった。
「あなたも人間なら、あの男…ウィリアムの行為を許さないはず」
「当然よ」
ウルリッヒは即答した。
「それを行動で示せますか?」
自慢できるわけではないが、アンジェリアは潜水艦基地の当事者の一人だ。
アイツらはあの謎めいた潜水艦の乗組員が乗せてくれなかったら……爆撃機の第一陣をSu-57で撃ち落としてくれなかったら、爆撃によって灰になっていた。
いつものことだが、自分は誰かもわからぬ黒幕に利用されている。殺しても構わないと思った黒幕と生かそうとした黒幕に。
口を開かなくても、ここでウルリッヒは口を開かなくても、数分間座れば目的は達成できる。
政治屋の常套手段だ、だからこそアンジェリアはハーウェルなんてクソジジイの命令であっても気乗りしなかった。
「出来る限りの支援を約束するわ。あなたが申し出なくても、私は協力するつもりだったけど」
だが、ウルリッヒの答えはアンジェリアの想像とは全く違うものだった。
「どうして?」
「……そうね、表向きの理由としてあなた達には恩を売っておきたい。本来の理由はあなたが良い人だと私が確信しているからよ」
良い人…?
「第三次世界大戦…いえ、それよりも前からこの世界には善意を持つ人が少なすぎた。だからこそロクサット主義がこの世界には必要なの、私を助けてくれた指揮官さんの様にね。ユーリさんや今もグリフィンに残ってくれたフォトンさんのことよ」
「分かります」
────みんな平等。
苦しい事が続けば続くほどそういうお題目を人は求めるし、私もそうだ。
ユーリはその平等そのものを恐れていた気もするが…なぜ、恐れていたのかアンジェリアはユーリの恐れを理解する事が出来なかった。
「でも、それを快く思わない人が沢山いる。この国でもね…だからこそ、あなた様な人が必要なの、新たな規則もって、この邪悪な世界を変える必要が」
それがウルリッヒの掲げる”新世界の輝きとなる"か、いかにも政治屋が言いそうなお題目だ。
だが、世界を変える力はこの先確かに必要なものになるだろうが…大きくなりすぎて不相応になれば、いつかその身を滅ぼす。
それは、アンジェリアが先の大戦で嫌というほど経験してきた事だ。
「どうして、ベオグラードにあなたが寄越されたのか…解った気がします。あなたは誠実だ」
政治家に似合わないと思えるほどに。
「分かって、頂けたら嬉しいわ。モリドー、アンジェをどこか休めるところに」
「────はい!わかりました!アンジェさん!」
ウルリッヒのたおやかな声にモリドーは元気よく答えた。
市庁舎にたどり着く前に二、三回、彼女と話したが、このモリドーという、秘書官はウルリッヒが懸念しているレベルで善意が少ない世界で希少とも言えるほど、ウルリッヒを純粋に尊敬している。
この感想は皮肉や誇張もなんでもなく、アンジェリアが第一印象で感じていることだ、ウルリッヒがモリドーを雇い入れる理由も頷ける。
悪いことはしないのだろうとは思うが…この純真さが逆に後々の仇になるのではないか?とも、思う。
…あれこれ、モリドーの事を考えたらドアからノックの音が聞こえてきた。
「あぁ、それからね」
「どうぞ」
ウルリッヒの許可をもらってドアから入ってきたのは背の高い金髪の男だった。
「首席、どうされました?」
金髪の男は見るからに大柄な体躯をしている。
明らかにトレーニングだけではなく、実戦を経験した先頭に適応した様なガタイであり、歴戦の戦士であるオーラを漂わせ、一瞬エゴールの姿をアンジェリアは思い出す。
「アンジェ、あなたの護衛はこの"ポップス"が担当するわ」
「私は逃げませんよ?」
私がウルリッヒだとして、護衛送る場合、複数人は寄越す。
それを一人、それも明らかに私が護衛として送りそうな基準を満たすであろう人材以上の護衛を寄越すならそれは監視役だ。
「単に安全を考慮しての事よ」
それはユーモアが過ぎるだろうと[[rb:AK-12> ルシア]]は鼻で笑うのを堪えた。
そもそも、私がアンジェリアの"護衛"と"監視"をしているんだから初めからこのお男の役割は奪われている。
「ポップスは元GSG-9の退役士官で戦場も経験し、ドイツの安全保障の職務では半年での実績を積んでる。あなたもこの街を動き回るのに事前調査をする時間は省きたいと思わない?」
案内役としては使えるかもしれないと、アンジェリアは多少思う。
しかし、GSG-9の管轄は警察だった筈。新ソ連もジュネーブ条約が遺跡署の宣言で一方的に破棄をした事を口実に年端も行かない少年、少女兵を人形育成の時間稼ぎの為に投入した事は知っているが、
ドイツも警察官すら戦場に送り込むなど、当時の第三次世界大戦の兵役の様相はいかほどなものなのかと想像もしたくない。
「戦闘力は確かに抜けて人形の方が有効かもしれないけど、街中の対処は現地の人間を使った方がよりスムーズにいくわ。そのための事務手続きも"モリドー"を使えばより便利になると思うわ」
「よろしくお願いします!」
モリドーが元気よく、頭を下げる。
「厄介な荷物が増えた」と後々AK-15の文句が私かアンジェに向かって飛ぶだろうなとAK-12は今から自分達の"護衛"となったポップスとモリドーを溜息を出さないようにする為にすぐ冷めるであろう観察した。
一同が部屋を去った後、部屋に残されたたった1人がポケットからキューブ型の端末を取り出した。
「────お前の言う通りだった。アンジェリアというエージェントがブレーメンやってきたぞ」
グリフィン基地
「M4、まだ帰ってこないね」
パディルスキでの一件から、M4A1がアリアたちに連れていかれてから、数か月が経った。
残されたAR(アンチレイン)小隊のAR(アサルトレイド)チーム、隊のA(アサルト)チームの隊長”M4SOPMODⅡ”は未だに帰らない、”M4A1”のこと心配していた。
「大丈夫ですよ、M4は帰ってくると言った。なら、きっとそのうち帰ってくるはずよ」
M4の代わりに再度チームを率いることになったRチームの”RO635”はそう答えると、同じ小隊の”STAR-15”もそれに同意するかのようにこくりとうなずいた。
彼女が局員から取り調べを受けてから数ヶ月経っている。
だが、局員からの取り調べというのは半月かかるのもあるらしい。それほど、パディルスキで私たちはルールを破ったのだ……そう考えると、ルールを破るというのは軽率にやってはいけないのだとしみじみ思う。
「うん……そうだね」
SOPMODⅡはROの言葉を聞いて、小さく頷いた。
「そういえば、聞いた?指揮官の話?」
「何の話?」
AR-15が気晴らし程度に持ち掛けた話題にSOPⅡの気を引く為に、何も聞いてない体でROが食いついた。
「フォトン指揮官、クルーガーさんからグリーンエリアの永住権のカードを貰ったんだって」
「ええ!?それは…凄いわね」
この基地は昔、今は退職した、”ユーリ・フレーヴェン”指揮官がグリフィンで使用していたが、今は退職に伴って後任についた指揮官”フォトン”がこの基地の管理をしていている。
そのフォトンがようやく釈放されたクルーガーから、パディルスキの件を評価されてグリーンエリアの永住権を示すカードを貰ったらしい。
「あれだけ凄まじい戦いをしたとは言っても…1年で、ねえ」
ROの言う通り、まだフォトンはグリフィンで働いてから1年は経っていない。
あのパディルスキの一件を切り抜けたゆえの正当な報酬といえど、グリーンエリアの永住権の入手ができるなんて良くも悪くもグリフィン中から注目されることには違いない。
「噂でも、なんであっても私達は今じゃ注目の的だよね」
「先週もまた、新しい人形がこの基地に配属されるらしいって話を聞いたわ」
SOPⅡの言葉で、AR-15は今までのことを振り返る。
昔はグリフィンのちょっと珍しい”金食い虫”扱いの戦術人形の部隊なのに、今じゃ英雄扱いだ。
毎日のように他の部隊の人形達から腫物扱いされる日々が恋しくなってしまう、基地だって4人の人形と2人の人間で補給も人員も資金周りも乏しい状態で細々と回していたのに、
今じゃ訓練する弾丸すら帳簿と格闘しなければならない状態から解放されるほど物資がこちらに回されるようになり補給に対して困らなくなったし、戦術人形も20~30人の大所帯で賑やかだ。
「テレビ見た?まだ、私達メディアのホットニュースになっているらしいわ」
それだけ以外にもグリフィンが鉄血に支配されていた地域もほとんどが解放され平和を取り戻したという事実が世間に与えた影響も大きく、マスコミからの注目も増えている。
満身創痍の状態とは言え、今のグリフィンにかけられている注目と期待は大きい。
「それで提案なんだけど、そろそろ私達ARチームの部隊の組みなおしをしたいの」
ROが話を持ち込むのに丁度よい雰囲気だと悟り、提案を持ちかける。
「あー、確かにずっとこの臨時メンバーだったもんね」
SOPIIもその意見には賛成なのか、うんうんとうなずく。
「このままでもいいとは思うけど…人にもあるように人形達にも適材適所があるでしょ?その観点で見るともっと、適切な運用が出来るようにチームをこの落ち着いている状況の内に整理したいの」
ROの部隊はSGが1人、SMGが1人、MGが2人、ARが1人。幅広く戦える半面、特化した相手には苦手な器用貧乏部隊。SOPⅡの部隊ははARが2人、SMGが2人、HG1人、決定打に欠ける部隊だ。
「そうだね。私もそう思っていたところだよ」
「決まりね」
ROは満足げに微笑むと、部隊編成の変更の準備を始める。
「まず私の部隊にいるショットガンのDP-12とマシンガンのKord、RPK-203なんだけど、あの子たちで別の部隊を作るわ」
「うん」
確かに別の部隊にして運用した方が、ショットガンとマシンガンというオーソドックスな部隊になる。惜しむべきはハンドガンで夜戦での視界確保や衛生兵としての役割を務めていた戦術人形HS2000がパディルスキの戦場で戦死したことだろう。
「そうなると、私の部隊は私と、AUGしかいなくなるから。こっちにMP7とACRを寄越してほしいわ」
「ええっ!?」
それはちょっと厳しい相談だと、SOPⅡは驚愕の声を上げる。自分の部隊の戦力は半減してしまう。
確かに任務の性質上、仕事を回されるのはROのチームの方が多いのは知っているし、今すぐまともな戦力として運用したいならSMGとARのオーソドックスな構成で戦いたいという意図も理解できる。
「私の部隊がX95だけの2人組になることは考えてくれてるの?」
「一応、本格的な任務まではRチームが担当する。あなた、人形のお友達を何回もとっかえひっかえしているんだから、前に部下にしてた人形を再雇用するなり新しい人形を雇うなりいろいろ方法を見つけなさい」
「投げやりすぎるっ!!」
あまりにも雑な提案に、SOPIIも憤慨するがROは涼しい顔で聞き流れてしまう。