「ハンスさん、そっちで掴んでいる情報の中で確度が高いのはどちらですか?」
「"フローラ研究所"だ。あそこはかなりのパラデウス達が工作をしている。こっちで先に動きを調べておいた。確認してくれ」
ハンスから封筒を手渡され、封を切り中身を確認する。
封筒の中身の資料には施設に入る為の方法や、追跡を振り切るまでの一連の状況の説明など、調べられる限りのものが記載されていた。
「いつから始められます?」
「今すぐできるさ。フローラをやったほうが俺たちに大きな得が得られるだろうな」
冗談の様な速さだな、とユーリ達は思った。
もっと柔軟に準備をしてから潜入を始めると思っていたが…
「準備してたんだ。武器は持って来てるかい?」
「はい」
そう言うとユーリはトランクの中を開けると"AM-17"が4丁入っていた。
「"AMB"の方じゃなくてよかったのか?」
「9×39ミリの亜音速弾"サブソニック)は東ドイツじゃ、余り手に入らないとと思って」
ハンスの質問にユーリはなるべく安定して調達出来る、5.45×39mmを使用する"AM-17"を選んだと説明した。
「シュタージからくすんでやってもよかったが…まぁ、そっちの方が都合がいいか」
ユーリはSCARライフルの様な左右両方から作動させることができる、従来のカラシニコフとは毛色が違うAM-17のチャージングハンドルを少し引いて、安全のため初弾が装填されていない事を確認した。
「仕事の速さや業務の速さについては驚きましたが…こちらの準備はできています。始めましょう」
────東ドイツ:フローラ植物研究所
「はい、組合の方ですね。どうぞお通りください」
「ありがとうございます」
作業着を着て、大きめのバッグをぶら下げてユーリ達はフローラ植物研究所の警備に入場を許可された。
ハンスが用意してくれたブレスレット型の許可証、無論これは正規に発行してもらったものではなく…ハンスが予め偽造していた許可証だ。
そのまま一直線に歩いて受付にたどり着くと、自分達が潜入で情報を盗みに来た存在だと知らずに「ようこそ」と挨拶してきた。
「組合から参りました〜」
ヴィシャスが気の抜ける様な挨拶をして、もう一度許可証を通すが特に警報が作動しない。
「おイおい、終わりか?」
<連中は呑気だな>
無線から聞こえるハンスの声も皮肉が入っている。
確かにここまでヌルいとな。
<よし、ここまでは順調だが気をつけろよ。最近、この施設にシュタージが入り込んでいる。狙いは同じなんだろうが…協力し合えるとは思わない方がいい>
「シュタージ…Kか」
「K…あぁ、あの隊長にふざけた口を聞いたシュタージの男でしたっけ?」
アキはベオグラードの件を思い出していた。
「それにしてもご大層な花の数だ。これだけの植物を育てる余裕があるのかよ?」
グレゴリーが興味深そうに辺りを見回す。
その花は色とりどりの花びらが咲き誇り、中にはチューリップやバラまで咲いている。
「コーラップス液粒子の汚染によって、数多くの生物や建築物が変異や消失したが…植物は何かしらの適応力で生き残った、東ドイツも調べる価値はあるとこの国のお偉方は思っているんだろう」
「へぇ…俺たちも作ってみるか?植物研究科みたいな場所」
そんな施設を許しくれるわけもないし、外務省もそこまで予算も捻出できないだろう。
と、アキはグレゴリーの発言にため息をつき、しばらく歩いていると目的の場所に辿り着く。
「ここで別れよう。俺とヴィシャスはこの施設からデータを頂いてパラデウスとの関連を調べる。グレゴリーとアキはこの施設にエピフィラムが存在するか調査するんだ」
「了解です」
「分かったぜ」
────
───
「────ねえ、グレゴリー」
「なんだ?アキ?」
ユーリと分かれてしばらくした後、アキがグレゴリーに話しかけた。
「なんで、ユーリはウルリッヒを見逃したのかしら?」
「さぁな、"あの方"に何も言われない辺り納得できる理由があるんじゃねぇのか?」
「……そうよね」
「何が気になるのか?」
アキが目を一瞬だけ逸らして、重そうな吐息を吐く。
「いえ…なんだか、最近の隊長の考えがわからなくなって…」
「ユーリの何が言いたい?」
アキは恋愛に鈍感なパートナーを見る目でグレゴリーを睨むと自分の憂いを口に出した。
「最近の隊長と話すと…調子が狂う気がするのよ。そう…ドッペルゲンガーと話している気分で、不安なの」
「不安か…俺はユーリと再開した時、昔のアイツが帰ってきたと思った」
「帰ってきた?」
「他の奴よりちょっと無鉄砲で仲間以外の民間人を助けようとする、正義感の強いユーリがな。…まあ、お前はユーリと知り合う期間が俺やファリカよりは短いからそう思ったんだろうな」
「……」
アキは沈黙した、自分の知らない一面がユーリにあったのをしって驚いていたのだろうか?
「M4…ああいや、”レイラ”ってやつのおかげなのかね。予想が合ってるなら、俺はあいつに感謝したい。コーラップスの件は抜きにしてな」
「レイラね…あの人形、コーラップスの件を聞いたときは私…AK-12のように裏切ったかもしれないと思って怒りを抑えられる自信がなかった。でも、あいつ自身必要に迫られて使ったことは事実だし、なによりあの子自身があの兵器を使ったことを後悔して、怯えている。…冷たい言動を前面には出しているけど本質は優しい心を秘めているんだと思う」
アキは一度言葉を切ってグレゴリーの顔を見た。
「やった事は許されない事だけど、M4のユーリを愛するという目的は私は信じようと思うあの子を。人形を信じるのはまだちょっと…怖いけど」
アキはそれだけ言うとグレゴリーの先に歩いていった。
────
───
「見つけた、これだ」
ユーリ達はフローラ研究所のデータベースの施設を見つけて侵入していた。
「さーて、どんなお宝が貰えるのかねえ…」
ヴィシャスがUSB型のコードを取り出すとコンピューターの図書館のようなサーバーの一つのコネクタに差し込む。
「ダウンロードまでどのくらいだ?」
「弄られたことを悟られないように痕跡を消しながラ、データをコピーしてるからな。このUSBにコピーされたら引き抜くだけでいいが、10分は必要だ」
「10分か」
ユーリが呟きながら施設内の警備状況を確認する。
10分間も必要になると、見つかる可能性の方が高い。
「反逆小隊は10分もしないでここにたどり着くだろう。必要なデータを絞り込もう。キーワードにつながるデータだけコピーするんだ」
「キーワードは?」
「"パラデウス"、"エピフィラム"、"同志"、"武器"」
「了解」
ヴィシャスがダウンロードの速度を速めていく。
こういう仕事は本当にスピード勝負だ。
「そウいや、隊長」
暇なのか、ヴィシャスが思い出したかのように周りを警戒していたユーリに尋ねた。
「今回の任務、まタアンジェリアやハーヴェルが絡むと思いますかい?」
「絡む」
ユーリは即答で返した。
ハーウェルは歴史の立会人を気取っている、ならば今回現れたウルリッヒの元に必ず、アンジェリアは現れるだろう反逆小隊と共に…
ウルリッヒは餌だ。
本命は餌を利用しようとするパラデウスとパラデウスを押しとどめるために表に出張らなければならない…"グリフィン"という男だ。
「周知のこと聞いてきたな?どういう意図だ?」
「奴ラだ、オオカミか来た。ワタシが時間を稼ぐ」
「……分かった、少しだけ遊んでやれ」
────
───
「はぁ全く、アンジェリアの奴…」
AK-12は悪態をつく。
確かに割り当てられた、部屋は監視カメラだらけでため息しかつけなかったから外に出られてうれしいとは思う、
だがこんな花だらけの場所でパラデウスとの関係が見つかるのかしら?
というのは、いつもの事そんなことで私はイラつきはしない。
「どうして、そんなに嫌そうな顔をするんですか?先輩?」
問題はこの相方、RPK-16だ。
「嫌いだから」
「えぇ?酷いですよ。私達バディじゃないですか?先輩?」
「その"先輩"をやめなさい」
そもそも、こいつと私はそこまでロールアウトされた時期に差がない。
抜け目がない女だから、そのあたりは初めから知らないわけじゃないでしょうが?
「そうですか?でも、私は尊敬しているんですよ?”自分の父親”と仲間たちを殺す命令を迷いなく実行できるなんて────」
次の瞬間、AK-12の細腕がRPK-16の首を絞めつけ、持ち上げた。
「────それ以上は言わせない」
「ぐぅ……ふ、ふふ」
苦悶の声を漏らしながら、RPK-16はそれでも笑みを浮かべようとする、その表情が気に入らない。
「その顔…あなたにとって思い出したくない出来事なんでしょうね…」
「うるさい…」
AK-12はRPK-16の締め付ける力を強くする。
「…私たちは…人形ですよ?どうして、人間同士の家族関係…に縛られる…なんて…ふ、フフフ」
「─────この…!」
AK-12は声にならない声を上げながら、RPK-16の首に掛ける力をさらに強めた。
あともう少し力を入れれば、RPK-16の首はへし折れる、それでもRPK-16は弁明しようともせず、輝きのない瞳でAK-12を冷ややかに笑う。
「……ユーリさんの時のように殺しますか?先輩?」
「貴様っ……!────!?」
あと少しで、RPK-16の首がへし折られそうになったとき、AK-12は何者かの気配を感じ取りその手を放した。
「見つけた」
AK-12は瞼を開いて透過機能を最大限に活用、気配の主を見つけた」
「バレたか、バレずに済ませセたかったが」
「ヴィシャス……」
「おうヨ。遠路遥々ご苦労様だなぁ、観光かイ?」
AK-12はヴィシャスと向かい合う。
AK-12の機械的な瞳で睨まれてもヴィシャスは飄々とした態度でせせら笑っている。
それが返って不気味だ。
「それはこっちのセリフよ、ここに何しに来たの?」
「オイオイ、諸外国での任務は外務省の定番ダぜ?不審なのはアンタら保安局じゃないのか?」
「まさか外務省はここで何をする気なの?……もしかして、潜水艦であった連中と関係あることを?」
「そいつはご想像にお任せシヨウ。それに…用があるのは、お前さんじゃなくて、そこの短髪女だ」
ヴィシャスの腕がRPK-16に伸びたのをAK-12が食い止めた。
「何のつもりだ?さっきまで首をへし折ろうとしたじゃないか?…なあ?AK-12?」
「関係ない。そっちこそ…どうして、RPK-16を狙うの!?もう一度聞くわよ、どうしてここに?」
ヴィシャスの腕をAK-12を振り払った。
「アンタは外務省の差し金で来たの!?敵なの!?味方なの!?パパも来ているの?」
「疑問が多いナぁ。その必死さに免じて教えてやりたいが……それは言えないな。喋ったら、仕事にならない」
「近づくでも聞いてやる!」
ヴィシャスの肩を掴み、AK-12は鳩尾に膝蹴りを入れようとしたが、片足を直前にヴィシャスは地面に着けているもう片方の足を蹴飛ばした。
「お前も色々な場所で小賢しいことをしてきたんだろうが、悪イナ。小賢しさについてはワタシの方が上だ」
両足が地面についていない事でAK-12はそのまま転がりそうになるが、握力と腹筋の力で再度の膝蹴りを試みる。
蹴りを試みた瞬間─────ヴィシャスが片手でAK-12の膝を難なく止めて見せた。
「クフフ…いいねぇ、喰らいツクなぁ」
そのままヴィシャスがもう片方の手でAK-12の顔を掴んでそのまま押しのける。
「─────っ」
ヴィシャスがAK-12を押しのけた直後に音もなく現れたRPKがヴィシャスの背中に現れて取り押さえようとする。
だが、その一撃は空を切った。
一瞬でヴィシャスはRPKの背後を取り、そのままヴィシャスによってRPKの腕はひねり上げられた。
「思ったより大したコトないな」
「ええ、私は反逆小隊の中でも特別な能力は持っていませんので」
RPK-16はこともなげに傷ついた様子もなく、ただ薄ら笑いを浮かべて事実を口にした。
「そういう割には─────ということをした。これは、ドウイウことなんだろうな?」
「─────っ!?」
AK-12はヴィシャスのささやくような声で何を言ったのか聞き取れなかった。
だが、その発言はRPK-16一瞬だけたじろがせて、動揺したような表情を浮かべたのは見えた。
「オ仲間には…内緒でやっていたのかネ?…クフフ、アンタもAK-12のことは悪く言えないな」
そう言って、ヴィシャスはRPK-16から手を放して解放した。
解放されたRPK-16はその場で殴りかかるが簡単にいなされる。
「図星かよ?ほんの冗談のつもりで行ったのによお…残念残念」
「お前…ますます、生かして返せなくなりましたね」
RPK-16がだれにも今まで見せなかった怒りのような表情を見せて、殴り掛かる。
AK-12も加勢するが二人の攻撃はヴィシャスにかすりもしない。
「速い…!」
この速度、恐らくハンドガンタイプの戦術人形だとAK-12は考えていた。
それもかなり性能を研ぎ澄まさ背れているほどのアサルトライフルのAK-12やマシンガンのRPK-16ですら追いつけない。
「オ。もう、こんな時間か」
ヴィシャスが腕時計のアラームが鳴ったことを確認して、AK-12の拳を受け止めながら呟いた。
「こうなったら……」
「まて!そいつは!」
RPK-16がこらえきれず、カバンに隠し持っていた自分自身の軽機関銃を取り出し、セレクターを解除するために安全装置に指を触れた瞬間─────ヴィシャスはその機関銃を蹴り飛ばした。
「おい!ここは、火気厳禁だぞ?お前モだ!AK-12!」
「知るか!!」
AK-12もライフルを取り出して発砲した。
だが、ヴィシャスは宙返りしてそれを回避した。
「こいつ!私のライフルの銃口を!」
「ワタシの動キより早く武器を向けないと避けられるゼ?」
ヴィシャスは内心で胸元のジャケットに入れていたそれを取り出した。
「見せてやるヨ。ワタシの武器をな」
─────パシュッ!とサイレンサー 減音器の音と共に弾薬がAK-12の腹に命中した。
この銃捌きは明らかに烙印システムで繋がった銃でないとできない芸当だ。
「……アンタも火気使ってるじゃん」
「仕方ないだろ?お前らが安全を守らないからコウナルんだ。シッカシ、防弾チョッキを着て、素体も防弾、7N21貫通弾使ってない…とはいえ、亜音速調整された9ミリ弾丸は"重い"。安物とはとは違う、どうだ?衝撃が体中に染みるだろう?腹に当てたからなぁ、痛いに違いないさ」
「……クソ。ハンドガンに、ここまで、されるなんて…」
「─────ハンドガン?」
AK-12の焦りをヴィシャスがせせら笑う。
まるで見当違いの標的を狙った獲物を眺めるような笑いだ。
「確かに私は9ミリとは言ったが、"ハンドガン"なんざ一言も言ってねえぞ?」
ヴィシャスが先ほど使った銃を取り出して見せつける。
「私、"ヴィシャス"っていう名前がどういう経緯でつけられたか言ってたっけ?いや、お前らが間違えたんだから言ってねえよな?」
「そ、その銃は─────」
ヴィシャスが使っていたのは"ハンドガン"ではない、"サブマシンガン"だった。
そして、ヴィシャスが持っていたサブマシンガンはAK-12やRPK-16…AK-15に酷似していた形状をしていた。
「PP-19-01"ヴィチャーズ"…?」
「─────惜しい、ほぼ正解だ。だが、違う。こいつはそれをにアップ・グレードさせたサブマシンガン"PPK-20"だ」
「ヴィチャーズ(高潔な騎士)ではなく、ヴィシャス(悪意のある奴)…人形の名前の由来は類音後違いのネーミングか!」
ヴィシャスはAK-12には目もくれず、RPK-16の方に再度歩み寄る。
RPK-16は発砲するが、銃口が狙うよりも先に避けるように動くヴィシャスはまるで銃弾を避けるように接近する。
「さあ…て、そろそろ拝ませてもらおうじゃないか?その、アンニュイに隠された本性をさ…」
"ヴィシャス"改め"PPK-20"が"RPK-16"にダットサイトに映り込むレティクルを合わせ、引き金を引こうとした刹那────
「そこまでだ、嬢ちゃん」
花園周辺にサブマシンガンを構えた兵士たちが現れて、ヴィシャスに銃口を向ける。
「また火気厳禁なのに銃ヲ持ち出してるよ…それ、正気でやってる自信アルかい?シュタージさん達?」
「ここで暴れまわるお前に対処しない方が正気じゃねえよ」
ナンパ風のエージェントがヴィシャスの背中に拳銃を突き付けた。
「ああ、そうだな。ワタシはお呼ばれしてないようだからここは踵を返して帰るとシヨウ」
「帰れると思ってるの?」
「ああ、帰り道を作ってくれたからな」
ヴィシャスが笑う、そして警報が鳴り響いた。
────火事です!火事です!スプリンクラーを作動します!職員は安全のため、避難してください!
AK-12やRPK-16、そしてヴィシャスが発砲した硝煙がスプリンクラーに検知されたのだ。
突然なった警報に一同は驚く。
そして次の瞬間、一瞬のうちにヴィシャスを囲んでいた兵士を3人ほどを目にも止まらない速度で蹴り飛ばして、包囲の穴が出来た。
そして、その隙をついて素早く逃げ出した。
「逃がしてたまるか────っ!」
AK-12は透視をさらに強め顔認証で徹底して追跡した、だが……
「うっ!?ああっ!?うっ!?ぐっ!?」
AK-12は突然、眼を押さえて苦しみ出す。
透視で追跡しようとした、その正にそのときスプリンクラーの放水が降り注いだ。それは、ヴィシャスだけではなく、放水の水滴に映し出された無数のスプリンクラーをも追跡してしまったのだ、それはAK-12の視界に予想だにしない負荷が一気にかかる。
「だぁから、言っただろ?ここは火気厳禁ダッテさ。アンタの親父さんにらよろしく伝えとイてやるよ」
ヴィシャスの姿がスプリンクラーの豪雨の陰に隠れ、雨が止んだときにはその姿はあたかもいなかったように忽然と消えていた。
────
───
「お助け下さい!!(´;ω;`)」
<やだよ>
早速、SOPⅡは依然雇っていた人形たちに連絡を取っていたが、そんな頼みを首を縦に振るような人形はいない。
「うえええん…」
「あの…その…気を落とさないでください」
X95がSOPⅡを励ました。
「X95、あんただけが私の心のオアシスだよお~…」
SOPⅡがX95に抱き着くが依然、SOPⅡの部隊の問題は解決しない。
一緒に戦ったことのある、"知り合い"はいても命を懸けて戦ってくれる"仲間"の数は少ないのかもしれない。
「本当にどうしよ…次の任務が指揮官に回されても2人じゃ、難易度跳ね上がるし…」
「新規の人形をスカウトするわけにはいかないんですか?ほら、この基地にも新しく補充される人形がちらほらいるみたいですし」
X95がAR-15の羽振りが良くなった、グリフィン基地の話題を振ってみる。
「ダメダメ、配属された段階で指揮官が部隊を編成しちゃったからスカウトも厳しいよ。ただでさえ、パディルスキで人形はほとんどやられちゃったしさぁ」
「そうですか……」
SOPⅡは再度、腕を組んで唸る。
「こういうのはどうです?前回の作戦で部隊を失った人形の生き残りを採用するのは?」
「秩序乱流作戦の時と同じように?」
X95が頷いた。
確かに今回のパディルスキ攻防戦では多くの…本当に多くの人形が破壊され修復を待っている状況だ。
わずかに生き残っただけの人形もたくさんいる…いくらか再編されたとは聞いたけど…あぶれていない人形がいるかと聞かれたら…
「分かった、X95のアイデアでやってみる。ちょっと指揮官に聞いてみるよ。再編は指揮官に報告入れたって、ROも言ってたし何人か回してくれるかもしんないね」
よし、そうと決まればまずは部隊の再編制を依頼するために指揮官の所にいこう!
その頃、この基地の指揮官を任されているフォトンはハーヴェルと連絡を取っていた。
「まさか、君が生きて戻ったのは本当に驚いたよ。グリフィンの指揮官君」
「ハーヴェルさん…の支援のおかげですね」
フォトンは随分無理のある声色で、ハーヴェルに「さん」をつけた。
それは当然だろう、フォトンはパディルスキの任務でタリンの凄惨たるパラデウスの行為と潜水艦基地での激闘で二度と味わいたくないと思うほど死にかけた。
こんな”依頼”を受けてだれがご機嫌でいられるものだろうか?
そもそも、航空爆撃というのは敵に攻め込まれる前にやるのが常識だ。それなのにいざ、入り込まれてから爆弾を落とすという事はハーヴェルは俺たちをエゴール事から消そうとしていたんだろう。
「とはいえ、君は本当によくやった。タリンやパディルスキでの戦い戦い以外にもあの、"子供達"やOGASの面倒を見てくれる点も評価している」
用済みなら、消す。カーター共とこいつらには大した違いなんてものはない。
あの基地はどうなったんだろうか?爆撃で多くのところが吹き飛んだ記憶があるのだが。
「あの基地はヴィンペルが管理することになった。正直にいってあのパラデウスの技術はどの国の政府が持っていてもろくなことにならない。パデルスィキで例の遺跡がなんらかの作動をしたと検知したが…それもほんの一瞬だ」
子供のネイトやOGASをここに押し込んだのはそれが理由か。
「そうですか…それと、申し訳ありません。M4A1は…」
「あぁ…分かっている。仕方あるまい、誰も彼もが生きて帰れる保証はあるまい…要請した爆撃機が何故か航空宇宙軍に撃ち落とされる悲劇もあった…しかし、その事を追求すれば、国際的によくない状態になる…厄介な奴らだな"外務省”も」
まさか、M4A1は死んだことになっているのか?
だったら、前に来た役人はなんだ?
「────え?えぇ…」
グリフィンに返してもらう前に宣誓書にサインしたときに言われた、アリアと呼ばれる女性兵士の言葉をフォトンは思い出す。
────今回の事を根掘り葉掘りと聞きたい奴らが沢山いるでしょう。
今回の戦いがどれだけ辛かったか…それを話すのはあなた達の好きにしなさい。
でもね、忘れないでよ?
今回の作戦で私達の事まで話したら…アナタが発した言葉をかき消すためなら手段は選ばない。
ペテンにするためにアナタの信用を地の底まで沈めるかもしれないし、アンタ以外にこの宣誓書を書いたヤツや接触したヤツも皆殺しにするかもしれない。
でも、しょうがないわよね?
だって、アナタがしゃべったせいでワタシ達が死ぬなんて嫌だもの?
理不尽だと思うなら勝手になさい、でもここでアナタ達を助けてやったのは私たちだとということを忘れるな。
「何者かの思惑が交錯しているにせよ、我々はこの憎悪の連鎖をなんとかしなければならん。違うかね?」
「”新世界の輝き”とかいうものの為ですか?我々の上にアンタ方の爆弾が落ちそうになったのを輝きとでも?」
「あれは事故だ。そういうことにしておきなさい、君もまだ家族を養いだろう?」
このジジイ────!
ユーリめこうなることがわかっていたから、自分だけ先にこの泥舟から降りやがったな!
「今後も君の力が必要だ。この先、もっと困難な戦いが起こるかもしれない、その時はこの基地の力になってほしい。もちろん、報酬は弾むつもりだよ?」
ハーヴェルがそう言った後、フォトンは心の中で大きく息を吐く。
そう言いながら面倒な仕事を押し付けるんだろう?そして、邪魔や役に立たなかったらゴミに捨てるように見捨てる。
こういう、上辺だけの言葉で褒めて結局は弱者は徹底して見下している。
フォトンは難民から偶然ともいえる奇跡の中で指揮官の職を手に入れた男だ。新ソ連…いや、東欧での難民の扱いはひどいものだ。
暇つぶしで殴られるなんていい方だし、配給が自分に回ったタイミングで力づくで奪われたり、ひどい時は殺されて死体は放置、警察は何も見ていないふり。
殴るやつらは自分の正義を騙るかのように口々にこう言う「”ロクサット主義”がなかったころはもっと、生活に余裕があった。お前たち難民を入れたのは”ロクサット主義”のせい」だと。
「ハーヴェルさんがそこまで熱心に語るのは珍しい、ロクサット主義以外に何も打開策がないと思っているのですか?」
「世界中がすべてロクサット主義になり、世界が一つになればこういう醜い争いはなくなる思わんかね?」
そのロクサット主義で国民の生活が悪くなったからより弱い人間が迫害されているんだろう。
「だが、それを良く思わん人間は大勢いる。だからこそ、そういう輩は消えてもらうしかないのだ」
「で?そのよく思わない人間が何かしたからこうして連絡をよこしたんでしょ?」
如何にも「ご名答」といいそうな顔でハーヴェルが笑う。
「それで、送った物資はもう届いているかね?」
「ええ、届きました」
「それは素晴らしいな。それと…アンジェリアは今ドイツでウィリアムを追っている。君たちは裏で連絡を取りっているから事前に把握しているかもしれんが」
こうして、お咎めなしになったということはグリフィンと保安局は正式にパイプを得たということだろう。
ハーヴェルは続ける。
「あの潜水艦基地に似つかわしくない設備を見つけてね、その設備はドイツを示していた」
あまりにも姿形を見せないパラデウスがキッチリ製造場所を明記するとはかなり迂闊だな。
「こちらでまとめたファイルがある。そっちに送ろう。ああ、それからペルシかが君と連絡を取ってみたいと言ってたからいつでも連絡が取れるように」
いつでも?アポイントメントは入れないのか?ペルシカは?
「ああ、前任の指揮官君は相当ストレスをためていたそうだぞ?なにせ、夜中にかかってくるものだから睡眠時間が削れる削れる」
「ペルシカさんにはデリカシーを教えたほうがいいのでは?」
ファイルが届いた。…うん?結構多い枚数だな。
「大事なM4が帰ってこなかったんだ。文句も山ほど出るだろう。無論君はちゃんと説明するだろうが…世間話が過ぎたな、何か見つけたら連絡を頼むアンジェリアがすぐ動いてくれる」
通信が切れた。
「指揮官?今大丈夫ですかあ?」
ファイルを開こうとした瞬間、SOPⅡが現れた。
きっと再編の際に搔っ攫われた戦力をどうにか補充してほしいと直訴しに来たんだろう。