たったひとつの願い   作:Jget

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ゲーガー捕獲作戦

 

次の日の朝、

 

「おはよう」

「おはようございます、SOPⅡ」

 

SOPⅡがヘリポートで"新人"を待っているとX95がやってきた。

 

ベオグラードからの付き合いだが、長い気づけば一年経とうとしている。

この挨拶も、かなりの間繰り返したのだ感動さえ思えてくる。

 

「新人は?」

「すぐに来るんじゃ────あぁ、あれだと思うよ」

 

SOPⅡが指差した先に3人の戦術人形らしき姿を確認した。

 

「金髪で…赤いメッシュ。君がM4SOPMODⅡ?」

「そうだよ。あなた達が新しい新人さん」

 

SOPⅡに話しかけてきた人形が頷く。帽子をかぶって、どことなくマイペースさを感じる。

 

「そう…私は、VH────」

「────はい!私、AUG"PARA"です!今日からあなた達の指揮官になるんです!よろしくね!人形さん!!」

「ちょっと、勝手に────」

 

VHSの言葉を遮るように現れた、ツインテールの女がSOPⅡの手を強引に取り、ブンブンと握手をしてきた。

 

「────あ、え────は?」

「────ええっと…」

 

あまりの突然さの行動の連続にSOPⅡとX95はあっけに取られてしまう。

 

「あのー…あなたは人形のはずじゃ…」

「人形?違うよ?私は人間だよ?先輩に色々勉強してるだー!」

「まったく、調子が狂う」

「あ、ごめんね。ええと、君はVHS-2だっけ?」

「そうそう、私実はね────」

「私を無視とはどういう了見ですのっ!?」

 

甲高い声に思わず、SOPⅡ達がびくついた。

3人目の人形がいつまで経っても回ってこない出番に痺れを切らして、大声を出したのだろうとX95は思ったがその前兆が今までなかったのだからSOPⅡ達は余計驚いて飛び跳ねるように足を滑らせて宙に浮いてしまった。

 

「あぁ…うん。ごめんね、あなたはd────」

「私はS-ACR!!この部隊にAUGがいると聞いています!さぁ、どこにいるか白状なさい!」

 

これは待ち合わせのはずなのにSOPⅡはまるで、警察に捕まり尋問を受ける容疑者のように目まぐるしい咆哮にさらされていた。

 

「た、隊長?この子は一体……?」

 

X95は困ったようにSOPIIの方を見て質問をする。

 

「たぶんこの子も新入りなんだよね?でも、なんか他の子と違ってやたらと元気というか…なんというか」

 

指揮官め…絶対、面倒見るのが面倒な人形を在庫処分するために送りつけたな…とSOPIIは心の中で毒づいた。

 

「私の出番が……」

「あぁ、SOP。早かったわね、夕方辺りから見つからなかったから、ついに脱走したんじゃないかと思ったわ」

 

いつのまにか、ヘリポートに来ていたRO635が面白そうなものを見る目で笑っていた。

AUGもいる。

 

「脱走なんてした事ないよ」

「確かに前科はないわね」

「AUG────!」

「────!?」

 

先程のS-ACRの甲高い声にAUGは小さい悲鳴を上げて、氷の様な表情を柄にもなく崩してしまう。

 

「まぁ!ようやく大雨以外でも外に出ようという気になったのですね!まともになって感心しますわ!!」

 

S-ACRが目を輝かせて、今度はAUGの肩を掴むとガクガクと揺らし出した。

 

「な、なんであなたが……」

 

AUGはS-ACRの行動に驚き、顔を青くして逃げようとするが、掴まれていてそれは出来きそうにない。

 

「さぁ、今日はお外に出て元気に任務を────」

「私はそういうものを求めてな────」

「アハハッ!さすが人形さん達!人間では理解できないことをしますね!」

「いや…あなたも人形────」

「人間です」

「ハイ…」

 

AUGとS-ACRのやり取りを他人事ならない"人形事"と例える、"自称"人間AUG "PARA"。

 

「おーい……」

 

そして、自分の存在が忘れ去られており途方にこれるVHS-2だった。

 

作戦が始まる前から騒がしい状況を見て、本来なら楽しそうに混ざろうと考えるSOPⅡも自分のキャパシティを軽々と変えているこの状況に頭を抱えそうになる。

 

「ど、どうしましょう……」

 

X95…そして、その他の面々も今回の作戦は順調にいくのだろうか?と不安とは別のため息が出そうで仕方なかった。

 

「はいはーい!私、アーキテクト!よろしくねー!!」

「…あぁ、うん。よろしく」

 

アーキテクトの空気を読まない、挨拶にいつも元気なSOPⅡはさっきの騒ぎを抑えるためにエネルギーを使い果たし、覇気のない生返事をした。

 

「あれ?テンション低いねー?もっと明るくいこうよ!」

「はいはい…」

 

普段ならSOPⅡは疲れていてもフレンドリーに挨拶をする。

それがないということは今のSOPⅡはかなり不機嫌だ。

 

────

───

「うわ!すごい真っ暗!」

「暗視でも見えない!」

 

目的地まではヘリで使う事になったのだが、夜間であることもあり真っ暗だった。

これでは、どこに降りるのがマシかわからない。

 

<おい!そこでデカい音を鳴らしてるヘリさん。そう、あんただよアンタ!>

 

無線で自分たちを呼ぶ声が聞こえる。

そして、自分たちの位置を主張しているレーザーポインターの光も見えた。

 

<RO!旋回しているヘリの姿が目立ってるよ!>

「その声はAR-57!?M4の雇った傭兵さん達がどうして?」

 

無線をしてきたのは、M4A1が個人的雇っていたアリージェンス部隊の人形達だった。

 

<クライアントに頼まれて、M4が不在の時はアンタ達の小隊を助けてやれって頼まれてるんだ!見たところお困りのようだね!>

「はい!ヘリを着陸させたいのですが視界が真っ暗で降りられない状況です!」

<やっぱりな!そう思ってLZは確保してやってやる。そこに発煙筒たいてやるから、そこに降りな!>

「ありがとう!感謝します!」

 

そして、10秒ほど待機すると赤く光る発煙筒が円状に瞬いた。

 

「発煙筒が見えた!」

「よし、降りましょう!」

 

一同はアリージェンス達が用意してくれた着陸地点にヘリを降下させた。

 

「降下!……よし、成功」

 

ヘリが着陸に十分な広さが確保された空き地に着陸して一斉に人形達が降り立った。

 

「よう!RO!新しいやつをまたリクルートしたのかい?」

「いろいろあってね!」

 

着陸地点で待っていたR5とROは軽く握手をしたのち、アリージェンス達が先頭に立つ。

 

「この先は軽く調べてある。危険な時は言うからついてきな」

「了解、今日は調査でダンデライオンを連れてきているの。彼女達の面倒も見れる?」

「ああ、出来るさ。報酬上乗せだな」

「M4の懐が寂しくなるわねぇ」

 

"アリージェンス"部隊の案内に一同はついていく。

アリージェンス部隊の人形達の動きは一線を画す"しなやか"動きで広場の安全を確保すると十全に訓練された動きで先頭を進んでいく。

 

「M4が雇った先鋭部隊…お手並拝見!」

「えぇ、あれはM4が真剣に厳選した戦術人形達よ。腕は保証するわ」

 

「へー」とアーキテクトはダンデライオンの紹介を聞き流す。

 

「どうやら、事故らずに降りれたようでなにより」

「AR-15!!」

 

案内の先には意外な事にSTAR-15が崖の上で待っていた。

双眼鏡を持っている、どうやらここで見張りをしていたようだ。

 

「AR-15、アリージェンスのところにいたの?」

「……えぇ」

「クライアントに頼まれたんだ!自分が帰るまではSTAR-15を頼むって」

「M4がそこまでねー」

 

歯切れが悪そうなAR-15に変わって、MCXが事情について答えてくれた。

 

「詳しい話はまた後にしようぜ、AR-15。なんか、変化は?」

「変化はない……全く酷いものよ」

「待ち伏せはなしか、よしここから崖下りだ。帰る時の崖登りの体力も残せよ?」

 

R5の言葉に全員の空気が引き締まる。確かに崖にはロープが降ろされている。あれから手を離したら人形であっても無事では済まない。

前にいる人形が何を見たかで、自分たちの行動の方法が変わってくる。

 

「納得いかないことがあるとすれば…そうね、アーキテクト────鉄血の捕虜と一緒に作戦しないといけないのは気乗りがしないわ」

「途中でロープを切られたらたまんないな」

「ええ。確かに…グリフィンが手を組んだ”融合勢力”の鉄血人形ではなく、低体温症作戦で捕まえたアーキテクトには明確な同盟がない…なぜ指揮官はそこまでして、ゲーガーの捕獲のリスクを背負おうとしているのでしょうか?」

 

AR-15が言いたかった愚痴をAUGがすべて代弁してくれた。

タリンでの任務で嫌悪感丸出しで掴みかかった人形ではあっても、AR-15自身が感じている懸念や苦労は理解してくれていると考えてくれるのかもしれない。

そういう意味では、AUGは協調性に長けている人形で、ROと馬が合うのかもしれない。

 

「あのさ…言いたい放題言ってくれるけどさ、今中で一番身の危険感じてるの、あたしだよね!?ロープに1人だけ降ろされて切らされるなんて嫌だよ!?」

 

救いを求める声でアーキテクトが叫ぶ。

だが、その声は虚しくも誰も相手にせず無視されてしまい、アーキテクトは涙目になる。

 

「戦場での事故死なんてよくある事ですわね」

 

ふざけて、S-ACRがアーキテクトにアサルトライフルの銃口を向けているのをSOPⅡは止めようとすらしない。

 

「私は敵じゃないから!!」

「はいはい、敵じゃないねー」

 

MP7がアーキテクトの必至なアピールをまるで日頃ウソをついている万引き犯を見るような目で一瞥して、鼻で笑う。

 

「指揮官の命令はアーキテクトを利用して、ゲーガーの捕獲。連れ帰れは命令に入ってない」

 

ダンデライオンの天然に、この場の空気を煽るようになるかもしれない発言…謂わば”失言”をアーキテクトに何の迷いもなく突き付けた。

 

「どおおおおおおしてえええええええ!!!???────へぶッ!?」

「うるさい」

 

しびれを切らしたAR-15が長い方のアサルトライフルのストックでアーキテクトの脇腹を殴り、アーキテクトは裏替えった悲鳴を上げる。

 

「野垂れ死に死にたくなかったら誠意を見せなさい。グリフィンは鉄血との利害関係が一致しただけで鉄血と仲良しこよしで生活する気はまだないの」

「ううう…私がお願いしたら、指揮官がすぐこの計画を立ててくれたのに…グリフィンが過去に囚われているせいで…」

 

アーキテクトが自分の要望がかなっていない事を愚痴に出す。

その発言にAR-15の沸点が限界に達した。

AR-15は恐ろしい剣幕でアーキテクトの首を掴むと近くの木に叩きつけて、メキメキと音を立てながらアーキテクトの首を絞めつける。

 

「あなた達、鉄血は人間や街を襲っていたでしょう!?その一人にでも謝罪をしようと考えたことはある?…ないんでしょ?過去に囚われないで?なら、その生意気な口を開く前にあなた達鉄血が過去を清算する努力をしなさい」

 

AR-15の手がアーキテクトの首元から離れた。

解放されたアーキテクトは地面に崩れ落ちると咳き込みながらも、必死で酸素を取り込もうと荒々しい呼吸を繰り返す。

 

「AR-15、やりすぎです」

 

ROがAR-15を制止する、助けが入ったと思ったが…

 

「────!?」

 

ROのブーツのつま先が横になったアーキテクトの腹にねじ込まれるように刺さり、苦しそうな表情を浮かべてアーキテクトは思わず胃の中に入っていた胃酸を吐いてしまった。

 

「加減をしないとちゃんと痛みが入りませんよ?」

「ずいぶん楽しそうだね、早く終わらせたいんだけど」

 

AR-57が口を開いた。

流石に、ここで待ちぼうけしたかなんかないんだろう。

 

「こんなに時間かけて撃たれてないんじゃ、敵なんていないんじゃない?いても、敵もまともにいないよ」

「敵のいる無しの話じゃなくてね、ここの有様が酷すぎるから一刻も早く終わらせて埋葬したいの!」

「どう、酷いのですか?まさか死体が?」

 

慎重な面持ちでRO635が訪ねる。AR-57の表情から見て、ろくなものじゃないのだろうが一応聞いてみる。

 

「こういうのは自分で見てくれた方が速い」

 

AR-15がRO635に双眼鏡を渡して、居住エリアの方を指差す。双眼鏡を除き、ズームをした。

 

「……っ!」

 

ROは見た光景に悍ましいものを覚えた。

本来なら、居住エリアには難民や一時的な避難民がここに住んでいて、賞金稼ぎも中継地点とするために利用するはずのエリアが映るはずだったが…

 

「ひどい…」

 

双眼鏡に映った内容は、思わず、言葉を漏らしたとおり本当にひどい光景が広がっていた。

 

「居住エリアは完全に地獄だよ、E.L.I.Dで埋め尽くされている。子供は全員死亡、大人も大勢死体が出てきたけど、生き残った…いや、死ねなかった人はすべて」

 

E.L.I.D感染者に変異している…双眼鏡には音声を拾う機能も付いており、身の毛のよだつ怪物の鳴き声が居住エリアに響き渡っている。

 

「なにか…原因は分かりますか?」

<そうだね。これは、タリンで見た光景とよく似ているとおもう>

「タリン?」

 

珍しく、ダンデライオンが質問に割って入ってきた。

ダンデライオンにもあの土地は思い出深いところなのだろう。

 

「居住エリア周囲にコーラップス反応は感じ取れなかった。この”居住エリアの中”だけでE.L.I.D化が進んでいる…タリンで見つけたパラデウスのエピフィラムの罠によく似てない?」

「なるほど……なら、それを詳しく知るためにも」

「そうよ、さっさとこの崖を降りてアイツらを片付けるのよ」

 

────

───

 

「AR-57。E.L.I.Dの殲滅が完了したよ、それと居住エリアで等間隔に置かれた箱を発見したんだけど…箱の中にはコーラップス反応が…あるね」

 

E.L.I.Dの掃討は崖から降りて、20分ほどで完了した。

MCXの報告を聞いて、ROが舌打ちした。ここでもパラデウスがやっていたようなコーラップス液の罠がここでも起きていたのか!

 

「MCX。箱に変わった特徴は?」

<えーっと……少し待ってて。なんだろうね?このマーク>

 

箱には正体不明のマークが印刷されていた。

 

「画像を保存しました。R5、聞こえますか?アリージェンスの皆さんはここの調査をお願いしたいです。我々はこのまま先行してゲーガーの捕獲の任務に戻ります」

<了解。これから居住エリアの詳細調査をする。調査を一通り終えたらお前たちに合流する>

「ありがとうございます」

<お前らの任務の完遂を祈る>

 

通信が切断され、RO達はアリージェンス部隊が掃討し、安全が確保されたルート進んでいく。

 

「それじゃ、さっさと終わらせましょう」

 

AR-15の言葉に全員が同意し、目的地へ急ぐ。

 

「フォトン、定期報告です」

<聞こえている。どうぞ>

 

調査に一時間ほどの時間を掛けて確認された情報をアリージェンス部隊の戦術人形レミントンR5、SIG MCX、AR-57がそれぞれフォトン委報告を入れた。

 

「この箱に見覚えは?」

<いや、ないな。だが、書かれているのドイツ語だ>

 

MCXが見つけた内容はフォトンでも知りえないものだったが、内容の綴りはドイツ語で書かれているらしい。

 

<自動翻訳にかけてみよう…書かれているのは”民間用物資”だけか…>

 

それでは大した情報にはならない。箱を見る限り置かれていたのは容器だけで中身は何者かに持ち去られたと考えるのが妥当だろう。

 

<少なくとも、このロゴマークはグリフィンのデータベースに出てこない。だが、ハーウェルなら心当たりがあるかもしれない。連絡してみよう>

「フレーヴェン大尉には連絡しないので?」

 

R5の何気ない質問にキーボードとマウスを叩いていたフォトンの腕が止まる。

 

<するつもりだ…だが、奴とはもう少し距離を置きたい。そう、俺の感が告げているんだ>

「まぁ、助けてもらったとはいえあんな事もありましたしね。…分かりました。では、我々はこのままAR-15達の支援に戻ります」

<分かった宜しく頼む>

 

「ダンデライオン、あの居住エリア…生き残りはいたのかしら?」

「ないわ。それは残って偵察してたあなたが一番知ってるはずでしょう?どうして?」

 

ゲーガーが潜伏していると思われる、地点に移動している最中。

ふと、こぼれ出たAR-15の希望をダンデライオンが”生き残りはいない”と冷たく断定した。

 

「あなたならわかると思ったんだけど」

 

AR-15の頭の中に、秩序乱流作戦でE.L.I.Dに侵され怪物になり果てた人間たちの光景が映る。

 

「もし、ということは考えないのね」

「悲劇は往々にして、必然的に引き起こされるものよ。あそこにそれだけの価値はない」

 

AR-15達は道路を進んでいく。

 

「あの時を思い出さない?」

「口にしていい発言とは思えないわね」

 

感傷的なダンデライオンのセリフを今度はAR-15がバッサリと切り捨てた。

 

「ルニシアは今どうなってると思う?」

「……ルニシアって、誰の事?」

 

嘘だ。AR-15はルニシアの事をM4A1であることを理解しているだが敢えて、知らないふりをしてとぼけている。

 

「知らないふり?」

「M4の真似よ」

「……でしょうね。でも、今のあなたは病んだ子猫みたい。目を開く力も残っていないんじゃないかしら?」

 

会話は淡々とすませるダンデライオンが珍しくトゲのある表現を使う。

M4の悪意ある無視を真似した、STAR-15に対するダンデライオンなりの仕返しの意味もあったのかもしれない。

 

「からかいも内容が相手に理解されないなら虚言を騙られているようにしか感じないわ。要は面白くないジョークってこと」

 

AR-15は遠回しにダンデライオンに向かって遠回しにこれ以上会話続けたくないと話す。

 

「ユーリは今頃何しているのかしらね」

「本業かも!私たちの所に来ないようにE.L.I.D倒したり、追い払ったりしているんじゃない?」

 

AR-15は話題を変えることを試みた。

SOPⅡもユーリの話題には興味があるようで反応を返してくれた。

 

「人形が最終的にどこに行きつくか、それは分からない。でも、結論にたどり着くには進化が不可欠よ」

「いきなり壮大な話題を切り出しましたね……それは数万年はかかりますよ?人間であれ、生物であれ進化には莫大な年月をかけています。それだけ、後の未来に興味があるんですか?」

 

ROはダンデライオンに”夢を見すぎ”と文句をいった。

M4はダンデライオンの発言に押され気味だったが、それはストレスの影響で発言に論理的な反論をする気力がなかったのかもしれない。

 

「喧嘩をするなら、他を当たればいいんじゃない?例えばコイツ」

「えっ!?うえっ!?」

 

SOPⅡがアーキテクトを差し出してきた。差し出されているアーキテクトはこれから調理されるタコのように怯えている。

 

「やめておくわ、たぶん彼女と話しても良い結果は帰ってこないでしょうし」

「ヒドイ!」

 

ダンデライオンでも、生理的に受け付けられないものがあったらしい。

 

「あなた達との付き合いも短くないし、今の会話て色々なことが分かったわ。SOPMODⅡはメンタルが特殊、ROはしっかりしている。でも、AR-15あなたは…どうかしら?まるで、大事なおもちゃを無くして拗ねてる子供みたいにセンチメンタルよ」

「絡むな、と話したでしょうが。M4はあんたの玩具じゃないし。私は拗ねてない」

「拗ねてない?なら、どうして今もルニシアの雇った傭兵と一緒にいるの?」

「アンタ、それはどこのどいつだ?って言われるくらいにその呼び方するなって何度言われたか覚えてる?」

 

AR-15はため息をついた。

 

「……はいはい、あなたがM4に固執しているのはよくわかったわ。あなたの単語が理解できないのはきっと私の頭が悪いせいでさぞ、ご高名がダンデライオン大先生のご発言を教養のないAR-15には理解できないのでしょうね」

 

AR-15は頭が悪い”と”ご高名”という皮肉をつけ足した。

 

「私はただ、感情的になって異常な行動を起こさないか心配なだけよ」

「アンタの頭の中じゃ、私はAR小隊の中で一番キチガイで任務の足を引っ張ると思うの?」

「そうは言ってない。ただ、疑問があれば素直に口にしとほしいの。そんかヒステリーをまき散らされるより、黙られて後々のトラブルなんて誰が望むのよ?M4?」

 

”トラブル”?ダンデライオンは私の事を”トラブルメーカー”と思っているのか、だからストーカーのように見張っていたというわけか。

なら、メンタルを覗けばいい。

白状するようにいちいち口に出す必要なんてないだろう。

 

「言わないと分からないタイプのようね。なら、はっきり言ってあげる。私はあんたが嫌いなの」

「どうして」

「アンタの言い方に腹が立つのよ、周りをバカだと思ってるその視線もムカつく」

 

実際、バカじゃないのか?とダンデライオンは首を傾げるが、それがAR-15を怒らせる理由になっている。

それどころか、他の人形もあまり会話をしないで表沙汰になっていないが内心ダンデライオンの態度にはイラつきをおぼえている。

 

「M4が敵じゃないって言うから、使える”道具”と考えてるだけ。いくらM4のように振舞おうとも私はあなたの事”自分をM4の代わりが務まると思っているネイトもどき”としか思えない」

 

ダンデライオンはM4の記憶とその内心を知っているだけで、M4A1の本質を理解できていない。

 

「そのネイトもどきに人をバカにしたような態度でアレこれ話しかけられたらどう思う?腹が立つのよ」

 

そもそも、M4A1のことをなんでも知っているようにダンデライオンは振る舞うが。

M4A1がユーリに対してその執着にも似た、狂気の深みに入る事も厭わないと感じられるほどの一途な恋心を理解しているとは到底思えない。

 

「だから、M4A1のように振舞って、世話を焼く姿が私にとってはむしろ信頼できないし、しようとも思わない。あなたこそ腹を割って話してみたら?あなたにはそんな腹もないんでしょうけど」

 

M4A1は”レイラ”では、あるが―ダンデライオンが考えるような”ルニシア”ではないし、ダンデライオンがM4A1になれるとは全く思えない。

 

「あとね、帰ってこないことにイラついてはない。あいつは必ず、”帰ってくる”といった」

「それを信じてるわけ?」

「へぇ?信じられないの?」

「そう思えるものがない」

「私にはある」

「それは何?」

「アイツは私たちに黙っていることはあったけど、嘘はつかなかった。だから、M4が返ってきても仕事が続けられるように頑張っているの。あんたもアイツに帰ってきてほしいなら、やるべきことをしてアイツの居場所を残してあげなさい。目の前の誰かを煽るのはその後にして」

 

ダンデライオンは”意外”だなと感じた。彼女はダンデライオンが思っていた以上にM4A1が帰還する事を信頼していたらしい。

 

「……アリージェンス部隊の人形たちが追いついた。仕事に戻るわよ」

「待たせたな、E.L.I.Dは全部倒した。基地に入ろうぜ」

 

R5の合図にSTAR-15は頷き、一同は廃墟に様変わりした鉄血基地の中に侵入する。

 

「鉄血の基地も寂しくなったね」

 

前にまともに動いていない計器、寂しく点滅する灯り、あまり清掃のなっていないホール、これらが正しくAR-57の言う通りかつての鉄血の栄枯盛衰思わせる寂しい様だった。

 

「失礼はこと言うもんじゃないぜ。でもここにもう住んでるやつはいないか」

 

R5がキーモッドに装着された20ミリレールに取り付けたタクティカルライトで寂れた基地を照らす。

 

「けどちゃんと、令状をもらっていますよ。おとなしく、お縄についてくださーい」

「本当に持ってきたの?あ、ホントだ...」

 

MCXがヒラヒラとした紙を掲げている、紙にはSOPⅡが反応した通りゲーガーを捕まえる事を許可する警察式の令状が記載されていた。

一向はコツコツと足をすすめて基地の中を進んでいく、昔ならネズミが1匹でも迷い込もうとするなら即座に処刑する狂犬の様な鉄血の基地もムカデや蜘蛛の侵入を許している。

 

「じめじめした所なら、あなたにお似合いですわ」

「そんなわけあるか」

「こういう時は泥遊びです!」

 

S-ACRがAUGを煽り、AUGはムッとした表情を浮かべる間にPARAは雨漏りでできた泥水溜まりに飛び込む奇行を行い出した。

 

「汚いなぁ……PARAのやつはある意味、人形の枠を超えてるね。うん?これはカセットデッキか」

 

VHS-2が何気なく、拾い上げたカセットデッキは100年以上前のものだまともに動くか怪しいものだ。

なぜ、鉄血はこんなものを集めたんだろうか?アーキテクトの趣味か?

 

「なんか、感想とかないわけ?」

 

アーキテクトが基地に入ってから何のショックも受けず、持ち前のマイペースさを崩さず進んでいく様を見てAR-15はふと、気になり尋ねてみる。

 

「んー?べつに〜前住んでた所だけど、あんまし住んでなかったからね〜まぁ、ゲーガーのやつはショックを受けてるかな?」

 

アーキテクトはあっけらかんと答える。

あんまり住んでいないという言葉に嘘は感じられない。

 

だから、ショックも感慨も特にないんだろう。

 

「アンタらAR小隊も自分が生まれた…ナントカウイッシュっ…だっけ?そこが壊れても大した思いは感じないでしょ?思い出も特にないんだからさ」

「かもね…」

 

AR-15はアーキテクトの発言の一部に合点がいく、確かに生まれた所が吹き飛んだところで私が気にするのはデータの廃棄は済んでいるとか?人形はここで作れなくなるのか?というくらいだろう。

 

たしかにAR-15はクールで無反応な印象を与える戦術人形だが、内心熱い精神構造を持っている事はAR小隊の多くが知るところだ。

だから、アーキテクトの引き合いでユーリ達との生活で暮らしていた基地が壊された事を引き合いに出されたら獣の様に怒り狂い、アーキテクトの首を捻じ切って、ゲーガーを探させたに違いない。

アーキテクトは無意識に危ない橋を渡っていた。

 

「参ったね、ホントにどこにもいない」

 

MP7は机の下をライトで照らしている。

かれこれ1時間を探しているが未だに手がかりひとつすら見当たらない。

これほど見当たらないのならゲーガーはこの基地に本当は居ないのではないか?思えてしまう、だからこそ人形達の集中も切れてきてアーキテクトからも人形たちは目を逸してしまう…

 

「今だ!」

 

その一瞬の隙をついたアーキテクトが壁に手を触れる、壁に手を触れたところに壁が自動開閉されて、その開閉された穴にはスイッチが置かれていた。

アーキテクトはそのスイッチを押した。

 

「こ、この警報は…!?」

 

警報が鳴り響くX95をはじめ、人形達もなんの警報か解らずに動揺している。

その間にアーキテクトはその場から去り、基地の奥へと向かっていく。

 

「待て!この野郎!!」

 

SOPⅡとその部隊の人形達がアーキテクトを一斉に追いかけた。

 

「コラ!勝手に────待ちなさい!SOPⅡ!!…あっ!」

 

アーキテクトを追いかけて基地の奥に向かっていくSOPⅡを止めようとした瞬間───複数の銃撃がROの足元に飛び散った。

なんだと思って飛んできた方角を見るとその場所には鉄血の人形たちが無機質な表情を浮かべてROに向けて銃撃をしていた。

 

「マズイっ!!」

 

ROはとっさに障害物となる柱にに隠れた。

この柱の太さなら鉄血の銃撃を防いでくれる良い壁になってくれる。

 

<RO!大丈夫!?>

 

アリージェンス部隊のAR-57が通信を入れてくる。

 

「どうにか!大丈夫!!でも、SOPⅡやアーキテクトを追いかけないと!!」

 

一刻も早く、SOPⅡと合流してアーキテクトを追いかけないと逃げられてしまう。

目を離していたら逃げられましたなんていう報告、フォトンに入れたくはない。

 

<R5だ。いいぜ、雑魚はこっちで引き受ける。アンタらはアーキテクトとSOPⅡを追いかけな!>

 

アリージェンスの臨時のまとめ役のR5が先に行けと言う、好都合な提案だが…3人の人形でこの無数の再起動した鉄血人形を食い止める事ができるのか?

 

<タンポポガールにも手伝ってもらうさ…やってくれるよな?>

<はいはい、仰せのままに>

 

ダンデライオンはしぶしぶアリージェンス部隊の人形たちの言うことをに従い、鉄血人形との銃撃戦に加わった。

 

「手間をかけてすみません!!アーキテクトとSOPⅡを追いかけます!!R部隊続け!」

 

ROの指示に呼応するようにRの部隊もSOPⅡの後を追いかける。

 

「トラッカーの位置は?」

「こっちに向かっています。恐らく、待ち伏せには気づいていません」

 

AUGがROにアーキテクトの反応だと思わしきマークを映し出したディスプレイを見せた。

AR-15はアーキテクトが逃げるのではないかと言う事態をあらかじめ見越していては鉄血の追跡ができるトラッカーをアーキテクトに取り付けていた。

アーキテクトはそんなことも知らないで勝手に逃げたのだから、後々考えれば笑いものなのだろう。

位置が分かればどこにいくかの予想もある程度はつく、後は待ち伏せできるような位置で陣取り、アーキテクトが扉を開けた瞬間に捕まえる算段だ。

 

「さぁ来い…さぁ…」

 

予め、自分達が待ち伏せているところに簡単なロックをかけて置いた。

ロックが開いた瞬間にROと鉢合わせになるのでアーキテクトは驚いて固まるに違いない。

その拍子に部屋の四方に隠れた人形たちが捕まえる算段だ。

扉が開かれる。いよいよご対面だ────

 

「────なっ!?」

「────はぁっ!?」

 

扉が開かれた先のものを見て、ROが固まってしまう。

扉の先にいるのはアーキテクトではない。

アーキテクトだと思っていたがそうではなかった。そこにはアーキテクトではなく、ゲーガー…今回の作戦目標がいた。

お互い、予想だにもしない光景のせいで硬直したがその硬直を振り払うように素早く銃口を向けあい至近距離での銃撃戦が開始される。

 

ROは素早いサブマシンガンの特性を生かし、銃撃を紙一重で避けていく────ゲーガーも同じ近接戦闘用人形であるエクスキューショナーとより早い加速性を生かしてROの9ミリパラベラム弾を避けていく

 

「────しまった!!」

「────RO!!」

 

反撃した、ROの銃の弾丸が切れた。サイドアームのベレッタAPXを引き抜こうとしたが、AUGがROとゲーガーとの間に割って入る様に5.56×45ミリの弾丸をゲーガーに発射する。

 

「チッ…!まだ、いたのか…!?ここは不利だな」

 

AUGの援護で自分が不利だと悟ったゲーガーは再び加速して、後方に下がると基地の奥に消えていく。

 

「大丈夫ですか?RO?」

「えぇ、ありがとう。まさか、現れたのがアーキテクトじゃなくてゲーガーだったとはね…」

 

ROは自分の銃に新しいマガジンを挿入して、チャージングハンドルを引く。

 

アーキテクトのトラッカーにゲーガーに反応した…恐らく、アーキテクトとゲーガーのシグナルが似ていたのだ。

ゲーガーとアーキテクトの製造時期はほぼほぼおんなじだと聞く、グリフィン側も本気にしてなかったが…まさか、この内容が本当だったとは。

 

「どうします?このまま、ゲーガーを追いますか?それとも…アーキテクトにしますか?」

「どちらもよ。トラッカーを見て」

 

ROが人形達にディスプレイを見せる。トラッカーにはアーキテクトとアーキテクトの反応によく似た、ゲーガーの反応が映し出されていた…

 

「恐らく、私の予想が正しければ。一緒くたに捕まえられるかもね」

 

その頃、アリージェンス部隊の人形達は再起動した鉄血人形と銃撃戦を繰り広げていた。

 

「リロード!!」

 

AR-57が弾薬がない事を叫びながら、報告して予備マガジンを取り出し、古いマガジンはマガジンポーチの中に捨てた。

 

「了解!!援護する!!」

 

アリージェンス部隊の人形たちの弾丸はあんまりない。…なので弾切れを防ぐため、セミオートで銃撃するが…いなくなった分もしくはリロードなどで攻撃が緩んでしまった分はフルオートで対応しなければならない。

 

今フルオートで対応しているのは1番弾丸を持っているR5だ。

2発から3発の細かい、断続的なフルオート射撃で接近しようとする鉄血人形を倒していく。

 

「…って、今度は私の銃の弾が切れちまった…!リロードする!」

「任せなさい!」

 

STAR-15がカバーに入り、発砲。

途中、マガジンの中に入っていた弾薬がなくなったが、持っていたもうひとつの小型のライフルに切り替えて射撃を続けた。

 

「リロード終わった!AR-15武器をリロードして!」

「こっちもいいぞ!」

「了解!」

 

今はこうして巧みな連携により鉄血人形は全く近づけずに倒されているが…いつまでこの状態が続くかはわからない。

鉄血人形ははまだまだ現れているし、アリージェンス部隊の弾丸は無限ではない。

 

「仕方ないわね…すこし、借りるわよ」

 

ダンデライオンがつぶやくと次の瞬間、R5、AR-57、MCX、AR-15が持っていた銃が突然手元から離れてダンデライオンの周りに集まるように現れた。

 

「ちょっ!?」

「はぁ!?」

「私の武器!?」

「ダンデライオン!?なんのつもり!?」

 

「こうするのよ、一掃する」

 

ダンデライオンの無慈悲に捉えられるような言葉と共に次々と弾丸は発射され有象無象の鉄血人形はたちまち弾丸の雨で鉄くずへと変わっていった。

 

「凄…というか、そういう能力があるなら最初から言ってよ!丸裸になるところだったじゃん!」

 

MCXはダンデライオンの凄まじい能力に驚きつつ、何もしないことに文句も付け足した。

 

「助けてあげたのにそれ?生意気なのね?」

「お前がこういう事できるなら、もっと効率がいい作戦を指揮官さんが考えられたんだよ!偉そうに振る舞う前に頭を使え!!この馬鹿!お前はM4と同じとか抜かしやがるがM4の方が1000倍!頭が良くて!1000倍!戦力になるわ!この脳足りんが!!」

 

自分は悪くないと振る舞う、ダンデライオンにR5キレて、お前はM4に遠く及ばない事を告げる。

 

「私は裏切られたと思ったよ!」

 

滅多な事で表情を変えないダンデライオンもムッとした表情を見せて不機嫌になる。

きっとダンデライオンの頭の中では"せっかく助けてやったのに"と不満を考えているのだろうが、この文句の原因が自分の申告不足である事までは理解が及んでいないらしい。

 

「いがみあいの前に見てもらいたいものがあるんだけど…」

 

そんな嫌悪な雰囲気よりももっと大事なことがあったらしい。

MCXが自分の視界に映ったものに驚愕の表情を浮かべていた。

 

「あれ…動いてない!?」

「「「え」」」

 

MCXが指差したところには…低体温症作戦から採用されて、グリフィンの人形達を何度も苦しめた大型の兵器…"ジュピター"の砲門がダンデライオン達に向けられていた。

 

────

───

 

…燃え盛る炎の中、ゲーガーがよく知る人形が現れた。

 

「ヤッホー!久しぶり!!」

「漸く、見つけた…!ここから出るぞ、私たちの戦いはまだ────」

 

アーキテクトを見つけたのが嬉しいのか、言葉を捲し立てるゲーガーに掌を押し出して、発言を止めるようにジェスチャーした。

 

「…なんで、グリフィンとか人間と戦い続ける必要があるわけ?人間を攻撃するように言ったはエルダーブレインでその命令をエージェントやジャッジが伝えてるだけじゃん。そんな命令を出す奴がみんな死んだのにどうしていう事を聞き続ける必要があるの?」

 

アーキテクトの発言にゲーガーは固まり、塊が溶けたと思ったら、ゲーガーはアーキテクトに銃口に取り付けられたブレードを突きつけた。

 

「貴様...本当にグリフィンの傀儡に…!?」

「私は前から、エルダーブレインの命令に従う理由が分かんなかっただけ。おかしいと思わない?私達鉄血が人間を襲う理由がただ命令されただけって?あんなに個性豊かなのにみんな疑問に思わない。だから、私はそんなに敵が悪い奴らなのか知りたくて、わざと捕まった」

 

ゲーガーの動揺は収まらず、ガクガクと膝あたりが揺れていることをゲーガー自身も理解していた。

 

「き、貴様...!主人に何という、事を」

「グリフィンの奴も指揮がまともにできない点を除けば、あたしらと大して変わんない…変わんないんだよ。なのに、鉄血はグリフィンや人間たちを目の敵にする。ナンデかなあ?」

 

アーキテクトは燃え盛る高熱の炎の中で指をたてる。

戦術人形に熱いという感情を制御できる機能がなければ今頃身悶えする行為だ。

 

「理由はM4が見つけてくれてね、簡単だよ。エルダーブレインが創作者を殺されて復讐の為に暴れてんのはあのクソガキの復讐心のせいで私たちは殺戮を続けている。馬鹿だよね?エルダーブレインも付き従う鉄血も」

「貴様ぁ!!」

 

ゲーガーは怒り、アーキテクトに突進する、向けられた刃がアーキテクトの身体を引き裂こうとする。

 

「────ウッ!!」

 

乾いた発射音がアーキテクトとゲーガーの間から放たれた。

発射音と共にゲーガーは膝をつく。

 

「アーキテクト。ママが迎えに来てあげたわよ」

「ゲッ!?AR-15!?」

 

現れたのは炎の中から、トラッカーの反応を追っていたSTAR-15が2人の目の前に現れた。

ゲーガーを跪かせたのはAR-15が発砲した際に放った、.300BLK弾だった。

 

「大したタマね。ゲーガーまで見つけてくれるなんて」

「あのさ!?」

「アーキテクト!やはりお前は────!?」

 

ゲーガーが怒り狂い、銃口を向けようとしても、もう遅い。

さっき撃った銃とは異なる。もう片方の手で所持していた、コンパクトなライフルがゲーガーの手を撃ち、ゲーガーの武器が握る力を失い、地面に落ちた。

 

「さっきはママだとか言ったけど、勘違いしないでほしいわね。私たちと鉄血は別にお友達でも何でもない、利用できるオブジェよ」

「甘いな…!」

 

ゲーガーが撃たれた手を庇いながら、AR-15を睨んだ。

 

「この基地にはジュピターが備えられている!!予備電力の出力ではあるが、それでも一つは動かせる!お前を追い払う事も!」

「な、なんだって!?ゲーガー!勝手にウチの────」

「お前が鉄血に戻れば返すつもりだった!!だが、お前は戻る気がない!お前らにいいように使われるくらいなら私は!!」

 

心中してやる…ゲーガーはそう言う腹づもりだったのだろう。

しかし、いつまで経ってもジュピターは稼働しない。

 

<全チームへ、アリージェンスのAR-57…ジュピター砲を片付けた…>

「な、なんだと…!?」

 

ゲーガーは動揺から後退る、さっきまで背筋の凍る思いをしたAR-15もなんとか助かった事を理解して先鋭である、アリージェンスの腕前に感謝しつつ、助かった現状に安堵して大きめのため息をついた。

 

「ゲーガー、投降しなさい」

「そんな事出来る────カッ!?」

 

ゲーガーは最後の最後まで抵抗しようとして、残った手で武器を拾ってAR-15をなんとかしようとしたが…そもそも、武器がゲーガーの元に手が届くことはなかった。

 

「抑えろ!!スタンバトンだ!」

 

ゲーガーが叫んだ頃にはゲーガーを追いかけてきた、RO635のチームがゲーガーを取り押さえ、ROの指示でもがこうとするゲーガーの首元にACRが暴徒化した戦術人形を鎮圧出来る非常に強力な電流を流し込むスタンバトンを首元に押し付けた。

 

「────!!??────…」

 

ゲーガーはあまりの苦しみにバタバタと四肢を動かしたが、やがてショックに耐えられなくなったのか、白目を剥いだままダラリと力が抜けて、みっともない涎を垂らして無力化された。

 

「ちょっ…ちょっと…!せっかく私が────」

「ウラアッ!!」

 

アーキテクトがRO達に抗議しようとした瞬間、後頭部をガツンと強く殴られて、アーキテクトはよろめいた。

 

アーキテクトを追跡していた、SOPⅡが追いついて、その頭を銃床で思い切り殴ったのだ。

ふらついて、動けなくなったタイミングでVHS-2とS-ACRがアーキテクトを押さえ込み、X95がスタンバトンでアーキテクトの首筋に電流を流し込み、アーキテクトもゲーガーと同じようにダラリと力が抜けて倒れ込んだ。

 

「よくも、殴ったなぁああああ!!」

 

アーキテクトとゲーガーは拘束されて、戦術人形達は回収地点で回収のヘリが来るのを先に起きたアーキテクトのノイズのような叫び声に耳を塞いで待っていた。

 

「うるさいやつね…その上逃げ出すし…手足を切ってやりたいわ」

「切る?仕事には問題ないよ」

 

ROのどっと疲れた発言にSOPⅡが反応した、そしてどこから拾ってきたのか、ナタのような大柄な刃物を取り出して、アーキテクトの足に向けた。

 

「ヒィイイイイイ!!」

 

流石にアーキテクトも目が据わったSOPⅡの顔から突き出されたナタで何をするのかに恐怖するだけの知能はあったらしく怯えている。

 

「やめなさい、ただの比喩よ。アリージェンス部隊の皆さんはダンデライオンが一緒とはいえ、数人であのジュピターを無力化したんですか?」

「フフン!そこらの人形とおんなじ扱いにされたら、困っちゃうよ?」

 

────

───

 

「うわっ!?マジでやばい!」

「アーキテクトめ!あらかじめ準備していたのね!」

 

あの砲台はアーキテクトが操るものだと、ROから聞いている。

きっとゲーガーはここに来させて、砲台を使わせることを察させる計画だったらしい。

 

「この砲弾を止めるにはアーキテクトをどうにかしないとな!AR-15、アーキテクトを捕まえにいけ!まだ、お前が追いかけていることに気づいてないだろう!」

「大丈夫なの!?」

「ああ!砲弾が落ちる前に撃ち落としてもらうさ。なぁ!ダンデライオン様よ!」

「……それ、他の人形には無理難題って言われると思うけど。ええ、他の人形ならね」

 

ダンデライオンは自信があるように頷く。

 

───

────

 

「それで、ダンデライオンにタイミングを指示してもらって砲弾を空中で撃ち落とした!で、トドメに発射直前に撃ち落として自爆!」

「私も驚いたわ。まさか、私に撃ち落として貰うんじゃなくて撃ち落とせるタイミングを計算しろだなんて」

「なんでふざけた戦術なの……」

「あはは、確かにクライアントだったらもっとマシなこと考えるだろうね。そもそも、クライアントがいたら砲弾が撃たれる前に処理してたろうけど」

 

ROはあまりにも突拍子もない端末に白目を剥く。

実際、あのジュピターがAR-15に向けて放たれていたら致命傷にならなくてもゲーガーには簡単に逃げられてしまうに違いない。

ROは胸を張って自慢する、MCX達を名前負けしているエリート人形ではない事を改めて自覚する。

 

「とはいっても、他のエリート人形を育成する仕事ばっかりで腕は少しなまった…もう少し、強い奴と戦ってみたいよ」

 

AR-57の言うような"強い奴"が当てはまるのはおそらくパラデウスあたりだろう。

あの素早い連携と高い練度、グリフィンは中々投入したがらなかったが…今回の作戦で温存しておきたい、上層部の頭の中が少し理解できたかもしれない。

 

「で…?ひさびさに脱獄考えて…お友達と会えて…なんか、あるものでもあった?」

 

ダンデライオンがアーキテクトの事を観察しながら疑問に思っていた事を口に出した。

 

「あー…どうかな。私とゲーガーの目標はまるっきり違ってて、お互い実はおんなじじゃないかなぁ…と思ってたら違うことが分かった。会うまで、分からないもんだね、こりゃ」

「…鉄血にも友情があるのね、泣けてきたわ」

 

泣けてきたわといった、AR-15の顔には雫一つ浮かばず、むしろ鼻で笑っていた。

 

「そりゃ、鉄血の絆は本物だよ。グリフィンのような、仕組まれた模造品とは────」

 

アーキテクトは自分が失言した事に気づき恐る恐る顔を上げる。

アーキテクトに向けたのは人形たちの冷たい表情だった。

 

「そうだぁ…今日はゴミ出しの日だったなぁ…」

「そうですね…確か、鉄屑の日だったですねぇ…」

 

MP7が発した、不穏な言葉に普段、笑顔を崩さず聖人君子を体現した戦術人形X95が冷たくせせら笑ってどこから取り出したか分からないチェーンソーのエンジンを入れている。

 

「あわわわわわ…!!!」

 

自分の発言が愚かであることはさっきまで散々殴られ蹴飛ばされて理解していたはずなのに、今の今になってそれを止めることができなかったのはアーキテクトの悪癖と数え差し支えないだろう。

今彼女は、全身をチェーンソーで切り刻まれるがしれない今日に怯えている。

自分をいつも守ってくれるであろう、ナイトさんは未だに気絶したままだ。

 

「待ちなって、こいつの言っていることは間違いじゃない」

 

後もう少しで、アーキテクトが切り刻まれる瞬間、X95達をMCXが止めた。

 

「はぁ?」

 

SOPⅡは納得がいかず、沸点が切れた声で?聞き返してきた。

アーキテクトは命拾いして、オマケに賛同者を得たと勘違いして顔が明るくなる。

 

「やっぱり鉄血人形の方が────へぶっ!?」

 

MCXがRuger57のスライドを引いて、初弾を装填しそのままアーキテクトの腹に撃ち込んだ。

 

「撃ったぁ!?元警官の人形が無抵抗のやつ撃ったぁ!?」

「今回はお咎めなしってことで」

 

5.7ミリのアーマーを貫通する弾丸がアーキテクトの腹に当たったのだからあまりの激痛にアーキテクトは身悶えする。

本気で捌く気や非難するつもりがない、R5やAR-57も若干悪ノリしていた。

 

「い、いきなり…無抵抗の人形を撃つなんて…アンタら常識ナサスギ…」

「私たちが片付ける仕事っていうのは大方、荒事なんだよ。余計な口開いて他人をキレさせるつもりなら、殴られる覚悟もしてほしいね」

 

迎えのヘリが到着した、グリフィンの人形達は拘束したアーキテクトを強引にヘリに乗せると、そのままヘリはグリフィンの基地まで運んでいった。

MCXが拳銃で撃ち込んでくれたお陰か、ヘリの中は快適と思えるほど静かだった。

 

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