たったひとつの願い   作:Jget

114 / 116
異なる視点

フォトンが遅刻寸前の学生のように汗水流して"ミネルバの梟"という名前のバーに駆け込む。

バーの中は慌てて開いたドアの音に驚いたり、マナー悪く入ってきたフォトンを迷惑そうに睨みつけていた。

バツが悪そうに周りを見渡したいた所────ドガッ!!机を蹴り飛ばす音がバーの中に響いた。

音の正体は明らかに関わるとヤバそうな女が「文句あるのか?」という棘のある視線で睨みつけていた。

 

「マナーが悪いな」

「ここでは正しいマナーなのよ、フォトン君」

 

そそくさと目を逸らす客を掻き分けてフォトンはテーブルを蹴った女の座っている席の正面に座る。

 

「アンタがアンジェリア?」

「まぁ、そんなところよ」

 

女がニヤリと笑う。顔すら合わせていない女だけどなんとなく雰囲気で確信した。彼女がアンジェリアだと。

 

「随分息を切らしているわね…何か飲む?」

「ジンジャエールが欲しい」

 

アンジェリアが指でパチンと鳴らしてウェイターを呼び止めジンジャエールを注文した。

 

「お店の入り方だけど、さっき私以上にマナーがなってないわね」

「悪い…だが、ようやく顔を合わせることができたのに、実感がわかなくてな」

「どうせ、イメージと違うからよ。仕事柄よくある話よ」

 

ウェイターがグラスとジンジャエールが入った瓶をフォトンのテーブルに置いた。

 

「外に反逆小隊の人形を待たせたんだけど、挨拶した?」

「まぁな」

「それが私の全戦力よ。そっちは?」

 

フォトンは瓶の蓋を栓抜きで開けて、中に入っていたジンジャエールをグラスに注ぐ。

 

「AR小隊と404小隊、そしてダンデライオンだな。後は…」

 

ダンデライオンの所まで言いかけて、フォトンの言葉が詰まった。

 

「後は?」

「M4が雇っていた傭兵どもだ。誰の命令でやって来たかは知らないが…役には立つだろう。サーの支援もある」

 

アンジェリアから、続きを促されてなんとか言葉を捻り出した。

本当はユーリ達も戦力ではあることを話したかったのだが…彼の話していた"アンジェリア達は信用しない方がいい"と言う言葉が頭によぎりつい、隠してしまった。

 

「サー…成る程、アイツに会ったのね。見るからに胡散臭いでしょ?特にあの、誠実さを装った態度…不愉快よ」

「アンタはそう言う男が嫌いなのか?」

「そう言う男に何度も痛い目を見せられたのよ」

 

アンジェリアの忌々しげに物語る口調から彼女がどれだけ嫌いなのかという背景を物語る。

 

「アイツはアンタに何の仕事をさせたがってる訳?」

「多分、アンタと同じだ。アンタもパラデウス絡みの件の仕事をしているんだろう?」

 

アンジェリアはアタリだと言いたげにフォトンの言葉を鼻で笑い、湖畔色のウイスキーを氷の入ったグラスに注ぐ。

 

「なんかヒントになる話はあるか?」

「さあね、私も今行動を始めた所だからね…でも、取っ掛かりになりそうな所は何個かあるわ。アンタ、ウルリッヒの秘書がパラデウスのスパイだって知ったら驚く?」

 

…それは、初耳だ。

命令書にはそんな情報が入っていなかった。サーがモリドーの正体の是非にこだわる理由はそこか。

 

「名前はモリドーっていう女よ。先週、ブレーメンでそいつを逃してしまったわ…今度はそいつを捕まえて情報を吐かせてやりたい」

「…アンジェリア、俺は多分、そのモリドーの手がかりになる女を手元に持っているかもしれない」

 

そこまでフォトンが話すとアンジェリアの雰囲気が荒っぽいものから冷たい空気に変わった。

 

「何?」

 

アンジェリアの瞳は暴力的な物に変わり、返答次第ではフォトンを力ずくでも情報を引き出そうとする一歩手前のように感じる。

 

「似ているのは顔だけだ。名前はマハリアンという名前で、少なくとも一月はこのベルリンのポーン村でずっと活動していた。ちゃんとしたデータもある」

「そう?でもあらかじめ言わせてもらうけど…潜入と偽装はモリドーの得意分野よ」

 

アンジェリアの空気がさっきよりマシにはなったがそれでも余談は許さない雰囲気だ。

 

「私はともかく、1年以上付き添われていたウルリッヒを簡単に騙しているし、反逆小隊の最新のスキャンでも見抜くことができなかった。信用しない方がいい、私だって、そのか弱そうな態度に騙されたわ」

 

戦術人形のスキャンやアンジェリアすら騙せる、新型のネイト…ということか。

そして、アンジェリアはそのネイトにまんまとやられてしまった、彼女の警戒する所はそこか。

 

「今、ダンデライオンが彼女の事を精査しているけど、それでも見破れなかったら警戒した方がいいかもな。何かわかったら逐一報告する」

 

アンジェリアはため息をついて頷く。

彼女は「何かわかったら」や「時間が空いたら」という"もし"という約束が好きでは無い。

 

「まぁ…ダンデライオンの演算能力ならなんらかの手がかりは得られるか…でも、変な希望を持たない方がいいわよ。パラデウスはそこに漬け込むのが得意分野だから」

 

アンジェリアの雰囲気がさっき、店であった時に戻る。少しは納得してくれたと考えても良いだろう。

 

「肝に銘じておく。しかし…ウィリアムはここで何を企んでいるのやら」

「教えてくれる奴がいたら、すぐにでも聞きたいわよ。でも、時間が無いことだけはわかる」

 

アンジェリアは椅子にもたれかかりお手上げと言いたげなポーズをとる。

 

「助けが欲しかったら連絡して欲しい。出来る限りの事をしてやる」

「はいはい、ありがとう。でも悪いわね…そういうのはあまり期待しないことにしてるの」

 

アンジェリアは酒を飲み干すと、席から立ち上がり、ゆっくりとフォトンの隣に立つ。

 

「俺の首でもへし折りたいか?」

 

アンジェリアはフォトンの冗談に軽く微笑むと飲み干したグラスをジンジャエールのグラスの隣に置く。

 

「いいえ。やめておくわ」

 

アンジェリアは外をチラリと見た。

どこにいるか分からないが、外から感じる殺気だけはヒシヒシと感じる。

フォトンの言葉通りにへし折ろうとしたらそれよりも前に自分の頭が吹き飛ばされかねないと、確信した。

 

「俺を殺すのが怖いんだな」

「そういうことよ、私を恨んでいる奴は山の様にいるからね」

 

このドイツでアンジェリアの信頼できる人間は本当に少ないんだろう。

そこまで考えて、フォトンはジンジャエールの入ったグラスをアンジェリアのグラスに軽く当たると同じように一気に飲み干した。

 

「話はこれで終わりか?」

「ええ。…会えてよかった、ユーリがアナタを後任に選んだ時はエゴールみたいな奴だと想像したんだけど…実際話してみると、どうしてアナタが選ばれたのか分かった気がしたわ」

 

エゴールか…確か、パデルスィキでの戦いで無線だけ聞いた。あの、傲慢そうに力を見せてつける態度を今でもフォトンは嫌いに思っていた。

 

「…俺はその、エゴールに似ているのか?」

「少しね。でも、その少しが彼にとって本当に重要だという事を改めて理解できたわ」

「そうか…なら、俺とエゴール、どこが似ているかは…また、改めて聞かせてもらうとするか」

 

フォトンが席から立ち上がり、店を出るとアンジェリアが通信機を軽く叩いた。

 

「話は終わったわ。仕事を再開しましょう」

 

────

───

 

『コーラップス治療の最先端を結集した治療薬”イズン”は現在、現在政府の認可待ちです。ですが、我々ガラテアグループのイズンの効果は本物であり、認可された暁には多くの方が治療を受けられるでしょう』

 

アンジェリアとフォトンがバーで話をしている頃、AR小隊とアリージェンス部隊は画面のテロップから流れる、代表と思わしき医者の発表に市民は歓喜の声を上げる様を見ていた。

 

「治療薬がまだ、一般的に販売されると決まったわけでも無いのにあんなに喜ぶわけ?あの女も実際は完成していないのに有る事無い事を吹聴しているに違いないわ」

 

さっきのタチの悪い悪徳商法を見たOts-14はニュースの内容に対して懐疑的だ。

 

「そもそも、そんなにすごい薬ならほかの国がもっと注目するはずだしね。イズンっていう、治療薬の事は知っていますか?フレーヴェン大尉?」

 

<ああ、イズンか。知ってる、あれの効力はすごいぞ>

 

AR-15の期待していた答えとは裏腹にユーリから”イズンの性能"に驚きの発言が飛んできた。

 

<ただ、まぁ…あれは、延命の時間が他より長いのと予防能力があるってだけで、治療薬ではないな……いいものではあるが。ウチはもっと安く作れるし症状次第でなんとかできる薬をもっている採用しなかったが、民間でこれ程のスピードが出せる事には、下見をしたいた外務省の要人は感心していたよ>

「そうですか…なんか、複雑ですね」

 

ユーリの言葉を聞いたAR-15の自分が考える嘘だらけの世界とは違った、与太話にしか聞こえないニュース内容が真実味があることに頭が混乱をした。

でも、だからこそあの嘘だらけの詐欺商品が横行しているのだろう。

実際の性能がクソみたいな銃でも前々から信頼性を獲得している、”AK”や”1911”という名前をプラスすれば、それだけで”信頼性”が高いとその武器に触れたこともない初心者はまず誤認する。

それと同じように製品の中にも実際の成果を出している”ガラテアグループ”の名前をつけ足せば、名前だけでも信用の証となり、詐欺紛いの商銀であろうが実際の性能を確かめなくても売れるということなんだろう。

再び画面に視線を向けた。

 

『グレイさん、ありがとうございました。続いてのニュースです、東ヨーロッパ各地のE.L.I.D感染者の数が一定数を下回ったことにより汎欧州連合と新ソ連との間を通行できる比較的安全な人道回廊の設置が可能ではないか?という意見がいくつかの専門家から上がっています。7年前までは汎欧州連合と新ソ連を通行することは絶望的との見方がされていました。しかし、5年前から感染者の数が徐々に減少する兆しを見せ始め…今の希望を持てる状況になりました。なおこの戦場では新ソ連の対E.L.I.D特殊部隊”ヴェル―クト”の関与がほのめかされており…ソ連外務省は事実を否認していますが、彼らの実力、規模こそ未知数ですが投入により、この状況に持ってこれたことはほぼ確実と言っていいでしょう』

 

「対E.L.I.Dの特殊部隊?────ハハッ、嘘に決まってるだろ?」

「本当にいたら、あのクソ難民どもはここに来るほど困ってないでしょ。そんなの信じる方が馬鹿を見るに決まっているわ」

<はは、耳が痛い>

 

今度は信頼できるニュースは信頼できるな、とAR-15は確信した。ヴェル―クトの強さは本物でE.L.I.Dを殺すことに関して自分の知る限り彼らの右に出るものは知らない。

でも、ベルリンの人間は”嘘に決まっている”とさっきのガラテアグループの発表を聞いていたAR小隊のように懐疑的な視線を送っていた。

 

「このニュースこそ、この国の人には馬鹿馬鹿しく感じる辺り私たちとあの人たちの世界は違うんだろーね。”こんなに強い特殊部隊なんて存在するわけがない”って」

<信じる信じないにしろ我々が精進しないといけないのは確かだ。難民達が他の場所に逃げないといけないのは俺たちがもっとE.L.I.Dを狩れていないからな>

 

今のMCXの発言は、胸の中にストンと何かが当てはまる感覚を感じた。

そういうことだったのか。所詮人形も人間も自分の経験、物事を本当か嘘か判断することは出来ない、自分たちはコーラップス液の病気を治すことは出来ない。

いや…少なくとも今の状況では治すことが出来ないと半ば勝手に決めつけていたから、ガラテアグループの発表を信じることは出来なかった。

同じようにベルリン市民はE.L.I.Dをヴェル―クトたちによって駆逐しようと努力を重ねている戦場を見たこともない、そんなものの恩恵にあやかったことがないから彼らの存在を信じることが出来ない。

自分の事しか、見えない生き方をしたら、自分の見たものしか信じることが出来ないのかもしれない。

 

「銃を撃つだけの仕事に身を置きすぎたのかもしれないわね」

 

今回のベルリンの町中にいるだけで異なる世界と視点があり、それを理解することが自分の閉じていた世界を広げるということなのかもしれない。

 

「あら?お話し中だった?」

「AK-12…と、AN-94」

 

カラン、とベルの音を鳴らしながら開いたドアからAK-12とAN-94が出てきた。AN-94の猫好きは相変わらずなのかキャットフードを持っており、道端の猫にばらまいていた。

 

「無償で餌を上げるとがめつくなるわよ」

「これしか趣味がないんだ。しょうがないだろう」

 

Ots-14の忠告にAN-94はムッとして少し強めの語尾で言い返した。楽しみを邪魔された事に文句を言えるくらいに成長したことをAK-12は内心喜ぶ。

 

「その酷い恰好は何?なんで町中で戦闘用の装備をしているんだ?」

 

やはり突っ込まれたか、フォトンが時間に遅れるということで慌てて出ていくものだから自分たちが町中で着るための服を着る時間がなかった…なんて言い訳は通用しないだろう。

アリージェンス部隊だって、グリフィンで着用しているようなPMC用の服装ではなく、ちゃんと街中でも普通の女性にしか見えないラフな格好で整えている。

 

「潜入任務は初めてでして…こんな大きな町の任務は特に」

 

どう言い訳しようかと悩んでいたら、ROが助け舟を出してくれた。

さすが、頼れる代理殿だ。Ots-14は心の中で感謝をした。

 

「そう?でも、早いうちにマシな服に着替えたほうがいいわよ。特に私のような、最強のコーディネイト!…を目指すのよ!」

 

AK-12が鼻を高くして、自慢のスーツを見せつけ、人形達が絶句。その後ヒュー…っと、寂しいそよ風が音がミネルバの梟の前を通り過ぎた。

 

「あら?聞こえなかった?なら、もう一度言ってあげる!!最強のコーディネイ────」

「黙れ」

 

大柄な戦術人形AK-15がミネルバの梟から現れAK-12の頭を殴り、強制的に邪魔した。

その時に発せられた強烈な打撃音にAR小隊とアリージェンス部隊に人形達は顔を苦くする。

 

「何すんのよ!このゴリラ!」

「お前の騒音は周りの注意を引きすぎる」

 

────なんですって!?この筋肉デブ!!

────うるさい、乞食

 

「あらあら、また喧嘩を始めてる…久しぶりですね、アリージェンス?」

 

騒ぎに巻き込まれたくないのかエスカレートしていく二人を避けるようにに、ミネルバの梟からRPK-16が出てきた。

 

「おう。久しぶりだな、RPK-16。で?止めなくていいのか?」

 

R5はついに怒鳴り散らしながら髪の引っ張り合いに発展していた、AK-12とAK-15を指さす。

 

「アレは放っておけば、勝手に解決しますよ」

「本当かねえ…」

 

呆れた様子でR5はため息をついた。

確かに二人の口論はヒートアップしているが、命を奪い合うほどではないから彼女達にとっては日常的な光景なんだろう。自分たちアリージェンスの日常も人によっては危惧される場合もあるかもしれない。

 

「そっちの進展はどうなんだ?」

「まあ、あまりよろしくないですね。店の中にいるアンジェの様子を見ればすぐ予想が付きますよ」

 

「成程、お前らはよっぽどこの国で嫌われることをしたんだな」

「それはもう、私たちは”反逆小隊”ですので」

「おお、こわい」

 

RPK-16の鳥肌が立ちそうな笑みにR5は不穏な気配を感じた。

ユーリ達が忠告した”アンジェリアをあまり信用しない方がいい”という言葉が現実味を帯びているのを感じるほどに。

 

「それにしても、人間というのは脆いものですね。いつ市販される決まってもいない”治療薬”の為にあんなに希望を抱くなんて。もし、あの治療薬に何か問題があって中止されるようなことも考えもしないんでしょうね」

 

RPK-16はもし、治療薬が水泡に帰す瞬間を見る最悪な状況が来ること自体を待ちわびているようだった。

 

「そこはしょうがないんじゃない?だって、人間は人形じゃないもん。腕がなくなったら、替えを交換すればすぐに動かせる人形は体の方で便利になったとしても、人間はボタン一つで記憶はなくならない。人間と今の人形がどれだけ似ているように作られても人形と人間の悩みは全部同じにはならないよ」

 

”人形と人間の悩みは全く同じにはならない”、そういったのはSOPⅡだった。たまたま近くにいたから、聞こえたのかもしれない。

 

「人形は腕がなくなったら、替えを交換すればすぐに動かせる…まさしく、そのとおりですね。ところで、M4SOPMODⅡ…テセウスの船はご存じで?」

「え?全部入れ替えたら同じ船じゃない…で合ってる?」

「……ご存じなんですか?」

 

RPK-16はさも意外そうにSOPⅡが教えた。

 

「私が育ててる教えてくれたよ」

「ちょっと、いつのまにか誘拐犯になったの?SOPⅡ」

 

SOPⅡの隣にいた、ROがそんな話は聞いていないと詰め寄ってきた。

 

「本人と役所の同意はあるよ!?…そうだ!話の続きしよ!」

「はい。だからこそ…入れ替えの利かない、人間の肉体は純粋だと私は言いたいんです。もし、人形が人間の体と同じように替えが利かない瞬間、初めて人間の気持ちが理解できるのではないでしょうか?」

 

要約すれば、RPK-16は「人形は所詮は機械に過ぎないから、分かり合えない。でも、人間の体を持てば、人間の感情を理解して分かり合うことが出来る」と言っているのだ。

 

「RPK-16さんは色々考えているんですね…」

「必要なのは人間の身体なの?」

 

RPK-16の持論に対して、ROは関心を示し、SOPⅡは「目指している方向に」疑問があった。

 

「おい、話は終わったわよ?…何?何が起きているのよ!?」

 

ミネルバの梟から出たアンジェリアが帰ることを告げよう要した瞬間、店の外でAK-12とAK-15によって荒れていた路地の光景を見て黄色い悲鳴を上げた。

 

────

───

 

「待っていましたよ。アンジェさん」

 

アンジェリアはガラテアグループの所有地に建造されている、周りのビルより少し大きめなビルの玄関前に大人というには少し幼い青年が立っていた事に気が付いた。

 

「こんな状況じゃあ、なければあんたみたいな坊やを連れて行きたくなかったわよ」

 

いくら、やるときはやるJの部下であるとはいえ…アンジェリアの基準ではまだまだ子供だ。こんな罠だらけな仕事を手伝わせたくなかった。しかし、Jの部下…いや、彼の名前のライトというべきか、ライトの一向に引き下がろうとしない強情な態度の前にアンジェに根負けしたのだ。

 

「連れってくれて、ありがとうございます。アンジェさん!」

「”さん”は要らない」

 

アンジェリアため息をついて、ビルの中に入っていった。

 

「今の態度はアンタのせいじゃないから、気にしなくていいわよ」

 

AK-12があっけにとられる、ライトにジェスチャーをおくった。

 

「だから、男との関係もなかなか続かないのよ。それを何度、改めろと言っても聞きやしない!だから、嫁の貰い手もいやしない!おバカな女よ!…あれ?この話面白くなかった?」

「あ、いえ…その」

 

ライトはAK-12のマシンガントークに少々押され気味だった。そもそも、AK-12の冗談交じりのトークに対してまともに取り合うメリットはないので、ライトは今現状できる中で、一番正しい判断をしていた。

 

「じゃあ、いきましょうか」

 

AK-12がたちがビルの中に入るころには、アンジェリアは受付を通り過ぎホールの真ん中に立っていた。階段か、エレベーターどちらを使うか考えているんだろう。

アンジェリアはビルの天井を見つめて眉間にしわを寄せた。

 

「よくもまあ、ドイツ人もあのレオーネの釈放を許したもんだわ。しかも、療養施設で治療すら受けられるなんてね」

 

レオーネ、反逆小隊がベオグラードで捕まえたパラデウスの協力者でエピフィラムを使って、テロを画策しようとした危険人物だ。”サー”の情報によると彼女は拘束された後、しばらく刑務所に収容されていたが、つい最近になって釈放されたらしい。

 

「シュタージや政府が彼女を釈放するメリットとは、いったい何なんでしょうね?僕が思うに…あ」

 

そこまで言って、ライトはまずいものを見たように頭を掻いた。

 

「ベルリンテレビが来ていますね。僕、ちょっとベルリンテレビに見つかっちゃあいけないんです」

「確かに諜報機関の人が新人の間にテレビ局に目を付けられるのは大きなミスだと思うけど…」

「あー……そのですね、自分とベルリンテレビとの間に問題があるわけじゃあないんですけどね。すみません、とにかくテレビ局のスタッフは撒いてくれませんか?」

 

彼とテレビ局の間に何があったのだろう。アンジェリアはそう考えながら、レオーネが療養を受けている階に行く方法を階段に選択して階段を上っていく。

 

「────あれ?気のせいだったかな?」

 

先ほどまで、インタビューをしていた女性の一人がライトのいる方向に顔を向けたが、そこには誰もいなかった。

 

「どうしました?」

 

さっきまでベルリンテレビのインタビューを受けていた、グレーヘアーの医者にも技術者にも見える美女が振り返ったインタビュアーの女性に問いかける。

 

「ああ!いえ、すみません!取材を続けますね…ええと、確か」

 

インタビュアーの女は慌てて、マイクを構えなおす。

 

「(見間違いだよね?)」

 

だが、その女は確かに感じたのだ。見つからない様にいそいそと階段を駆け上がっていくライトを……。

 

取材がいったん休憩に差し掛かり、さっきまでインタビューを受けていたグレーヘアーの美女がトイレで手を洗っていた。センサー式のハンドソープディスペンサーに手をかざすと、手にクリームが落ちてきた。

 

「アポなしは困るのよ。ソ連のアンジェリアさん」

 

さっきまで自分が入っていた、トイレのすぐ隣のトイレから扉が開き中から、アンジェリアが現れた。その位置は丁度、グレイのすぐ後ろだ。

 

「あら?私の事を知ってるの?”グレイ”、もしかして"お友達"から聞いた?」

「あなた今、ドイツでは有名人よ?…知らなかった?」

 

グレーヘアの美女、”グレイ”の態度は余裕だった。後ろの方は全く見ず、鏡越しにアンジェリアを見つめて世間話をするかのように余裕の態度を示すとペーパータオルで濡れた手を拭き、ごみ箱に捨てる。

 

「質問に答えなさい、なぜレオーネを受け入れた?奴は”テロリスト”よ」

「私にとっては”患者”だからよ。助けが必要なら受け入れる、それは医療従事者の常識なの。知ってる?」

「クソ喰らえよ」

「兵士が病院に乗り込んで患者を医者毎殺す話は聞かない話じゃないけど、きっとあなたのような人達なのね。気に食わない相手なら、やってはいけないことにすら手を出す。恐れ入るわ」

 

アンジェリアはユーリのことがよぎった。舌打ちをして、グレイを睨みつける。

 

「残念ながら、私は”色々普通な女性”じゃないの。助けが必要なら助ける、それが望まれないことでもね……もし、あなたが指名手配されても怪我をしたら、私が助けて見せるわ」

 

グレイはファンデーションとルージュで化粧をした。さっきまでの、美女が化粧でより魅力的な女に変わっていく。

 

「そのようね、フローラ研究所でレオーネを公然と出入りしていたのはベルリンでアンタだけのようだし、疑われても仕方ないと思わない?」

「医者が生物部門の専門家に会うことなんてよくあることだと思うわよ?あなた達スパイが他の国の諜報機関と”お話”をするようにね」

 

グレイは今度は飴を取り出し、口にくわえた。

アンジェリアにはグレイの一挙一動すべてが自分を煽っているように見えた。

 

「あの人のやった事の是非はともかく…彼女の才能は本物であることは保証するわ。私はそういう才能ある人間はもっと、援助されるべきとも思っている、今よりもっと良い世界を作るためにね」

「その良い世界って”パラデウス”が世界を牛じる事?」

 

グレイは鼻で笑い、トイレから出ようとしたのでアンジェリアが反射的に彼女の腕を掴む。しかし、グレイは表情を全く変えずにアンジェリアが握った腕を見つめた。

 

「その腕、修理した方がよさそうね?」

 

グレイはポケットから、名刺を取り出してアンジェリアに手渡した。

 

「アンタ、医者じゃなかったの?」

「機械技術も兼任しているわよ?義手や義足で悩む患者が本当に多いからね」

 

グレイは自分の胸元にある、名札を指し示した。そこには医師と書かれていて、その下には機械技師と書かれていた。

グレイは名刺を渡した後、あっけにとられた隙を突き、義手を軽く振り払うとそのまま立ち去った。

我に返ったアンジェリアが飛び出た先に、グレイの姿はもういなくなっていた。

 

「やられましたね」

 

もうひとつのトイレの方から、RPK-16が出てきた。奇襲の際のバックアップのつもりだったが…グレイの方が一つ上手だったらしい。

アンジェリアが名刺を眺める。

 

「これからどうします?アンジェ?」

「いつも通りよ。手当たり次第に突き回って、奴らの反応をうかがう」

 

アンジェリアはグレイの名刺をしまうと、次の目的地に足を運んだ。

彼女が足を運んだ先はレオーネが療養を受けている部屋だった。レオーネは車いすに座って腕に巻かれたギプスをただぼんやり眺めていた。おそらく、自力で立ち上がる事すら無理な話だろう。

 

「面会許可は取ってないはずだけど…」

「取ってたら仕事にならないのよ」

 

レオーネの後ろにゆっくりと音も立てずにアンジェリアが現れる。

彼女はまるで、療養中の患者ではなく、死ぬほど痛めつけられた後の囚人のように見えた。

 

「グレイのことを話しなさい」

「お前はアイツらの怖さを知らないのよ」

「そう言われると楽しみになるわね」

 

グレイへの恐怖とアンジェリアへの恐怖に板挟みにされてレオーネは完全に震えあがっていた、

だがそんなことはお構いなしにアンジェリアは彼に顔を近づける。

 

「グレイと私の腕を折った人形はよく似ているわ…だから、私は何も話さない」

 

アンジェリアは時計を少し見つめた。そろそろ、レオーネの看護師が返ってきそうな時間だ。

 

「また来るわよ」

「結構よ、もう来ないで」

 

アンジェリアは、レオーネの部屋を出る。レオーネは背中の汗が真夏の太陽に当てられたかのようにぐっしょりと彼女の病院着を濡らしていた。

 

────

───

 

「おかえりなさい。アンジェリアはどうだった?」

 

セーフハウスに戻ると、ダンデライオンが手を振ってフォトンたちの帰りを出迎えてきた。

 

「俺の首をへし折ろうと考えるくらいには元気だよ。色々、厳しそうな状況だったけどな。そっちはどうだ?」

「さっきポーン村の整理が終わったころに丁度目を覚ましたわ。たぶん、混乱するんじゃないかと思うから…これを」

 

ダンデライオンがお茶を持ってきた。ほんのりとリラックスできそうないい香りがする、こんな上等なお茶をダンデライオンがお茶を淹れられるとは到底思えないので────

 

「失礼なこと考えたでしょ?」

 

…ダンデライオンの冷たい目線がフォトンに突き刺さる。彼女はこんなことで怒る女だったろうか?ともかく、お茶は恐らくサーの人形が入れてくれたんだろう。このお茶で彼女が落ち着いてくれればいいのだが。

ペロサが後ろ手に開けた、ドアの先にソファーに座っていた”聖女”の姿があった。

 

「…ロビン?」

 

フォトンは若干その潜入の際に利用した偽名で呼ばれた事にに申し訳ない気分に浸った。

 

「本当は違う名前だ。でも、君が望むならそのままの名前で呼んでくれ」

 

フォトンはそう言って、”聖女”に申し訳なさそうな苦笑いを浮かべた。それを見た、”聖女”は彼個人は悪い人間ではないという印象を抱く。

 

「お前の名前を知りたい、名前は?」

「”マハリアン”…」

「”モリドー”では、なく?」

 

”マハリアン”は首を左右に振って、否定した。

 

「疑わしいわね」

 

Ots-14はその否定こそが疑わしいとして、マハリアンを睨みつけた。

マハリアンはOts-14を見て、おびえた様な眼差しでフォトンの方に視線を戻した。

 

「そうか…知らないのか。なら、次の話題をしよう。お前はポーン村で感染者を治療した、あれはいったいどういう仕組みなんだ?」

 

マハリアンは少しうつむく。フォトンはそれが答えられない質問なのかと思ったが、違ったようだ。

彼女は顔を上げると、口を開いた。

 

「血……」

「え、なに?」

「…血を使っているんです。私の血を与えれば、感染者の症状が回復するんです」

 

マハリアンの血を与えれば感染者を治療できる。彼女の口から発せられた言葉に全員が衝撃を受けた。

フォトン達も予想していなかった、方法が彼女の治療の正体だった。

 

「原因は分かりません。ただ、たまたまそれが出来ると知っていたから…治療を」

 

マハリアンが言うには、彼女自身もなぜ出来るようになったのかは分からないらしい。

偶然出来た治療法だが、その効果は絶大だった、現に聖女と崇められている。でも、崇められた理由があまりに非常識的な話だったので誰も話せなかったのだろう。

 

「ユーリ。この話を信じるか?」

 

フォトンもさすがに自分の許容量を超える衝撃的な話だったのでユーリに相談した。パラデウスとは別の卓越した技術力を持っている、彼らなら何か知っているのかもしれないと思ったからだ。

 

<血を与えて…?まさか、すまない…少し時間をくれ。リーダー!ちょっと話を────!>

 

ユーリが自分の周りにいた誰かに話しかけて通信が切れた。彼らにも心当たりがある話なのか?

 

「指揮官。ちょっと話したいことが────」

 

ダンデライオンが何か相談したいことがあって、部屋に入りマハリアンと目が合った。するとダンデライオンを見たマハリアンの姿が恐怖で震え始めた。

 

「…嘘つき。────噓つき!!」

 

マハリアンのポツリと呟いた”嘘つき”という単語いきなり大声に変わった。そして、テーブルに置かれてた訓練用のダミーナイフを手に持つとダンデライオンにゴムの刃の切っ先を向けた。

 

「あなた達の思い通りにはならない!」

 

ダミーナイフを向けて、突貫したマハリアンにいち早く反応したのはMCXだった。

 

「────クッ!」

 

MCXはマハリアンの持って行ったダミーナイフの一番振りずらい位置に体を向けると、そのままダミーナイフの持っていた手首を掴む。

 

「────!?」

 

掴まれたことにマハリアンはビックリしてMCXの方を向いた瞬間────MCXがマハリアンの顔面にもう片方の手で張り手を入れる。

張り手が入ったことでマハリアンが後ろに飛びそうになった瞬間、MCXに握られた手首が引っ張られて元の位置に戻ってくる。

その瞬間、MCXが腕を伸ばして”ラリアット”を食らわせ、マハリアンの顔が再び顔面に激突、そのまま勢いよく地面に叩きつけられて、マハリアンは再び気を失った。

 

「ふう…」

 

普段気の抜けた態度のMCXから、放たれた一瞬のマーシャルアーツの出来事を見て、部屋にAR小隊とフォトン、そしてダンデライオンは固まってしまった。

MCXはマハリアンが落としたダミーナイフを拾ってまた悪用されることがないように服の中のポケットにしまった。

 

「やりすぎたかな?R5」

「脊髄へし折ってなきゃあ、誰も気にしねえだろ。…だろ?指揮官」

 

フォトンが無言でうなずくのを見ながら、ダンデライオンは、床で気絶しているマハリアンに近づく…

 

「さっき、このマハリアンっていう人にメンタルモデルが出来上がったのを確認したわ。つまり、彼女のハッキングていう覗き見が出来るけど…どうする?」

「倒れた彼女にやるのは忍びないが…頼む」

 

ダンデライオンがマハリアンの頭に手を触れると、すぐにその情報を読みとりを始めた。

 

<すみません…お待たせして…どうしました?何かあったんですか?>

 

ユーリがフォトンの通信に戻ってきた。

ユーリは静まり返ったことを不思議に思っている。

 

「いや、気にするな。それで?何を話していたんだ」

<ああ、そのことなんですけどね…血を使って治療薬にするという話なのですが…そのやり方は我々にも心当たりがあります>

 

ユーリはフォトン達にそう言った。彼の言うとおりなら、マハリアンは彼らと縁がある存在なのだろか?

 

<もし、よろしければ。こっちで、預かりたいのですが…>

「ダメだ。彼女は誰かに利用されるのを嫌っているように見える。彼女を渡すのはまだ無理だ」

 

膠着する。彼らの機嫌を損ねる行動をしたくなかった、でもそれ以上にフォトンはマハリアンを守ろうという意思の方が強かった。

 

「彼女から得られる情報は必ず、一語一句伝える。だが、彼女を渡すわけにはいかない」

 

フォトンははっきりと言い切った。そんな彼に対して、ユーリはしばらく考えた後、口を開いた。

 

<…分かりました、いいでしょう。あなたに任せます、ですがこちらからもお願いします。どうか、彼女を絶対に助けてあげてください>

 

あっさり、フォトンの頼みは了承され、通信が切れた。

思ってよりも簡単に説得できたことを安堵しつつもユーリの言った”絶対に彼女を救って欲しい”という言葉が妙に気になっていた。

 

────夜中、眠っているマハリアンの元にAR-15は現れた。

マハリアンの隣には眠っているように彼女のメンタルモデルを調べているダンデライオンの姿があった、Ots-14がマハリアンの隣に座った瞬間、ダンデライオンの瞼が開く。

 

「どういうつもり?」

「私もコイツの中身を見る。あんな啖呵を切った以上、私たちも腹を括らなきゃいけない。アンタこそ分かってる?ノロノロ動いていい話ではないのよ!?」

 

ダンデライオンは少し考えた表情を浮かべて、渋々納得する。

 

「分かった。でも、取引して」

 

”取引”?ダンデライオンが要求していることが分からなかったが、とりあえず聞くことにした。

ダンデライオンがAR-15に向かって自分の考えている条件を話した。

 

「はあ、分かったわ。それで手打ちにしましょう」

 

今度はAR-15が渋々納得する番だった。AR-15はダンデライオンの助けを借りてマハリアンのメンタルモデルに侵入した。

AR-15がメンタルモデルに侵入したころ、たまたまトイレに出掛けたSOPⅡがマハリアンの元に向かったOts-14の後を追いかけてのを不審に思い追いかけてきたのだ。

 

「ダンデライオンはマハリアンのメンタルモデルを除いているとして…Ots-14は何やってるんだろう?まあ、いいや。ちょっとお邪魔するよ」

 

SOPⅡが取り出したのはマジックペンだった、SOPⅡはOts-14の顔に何かした後、続いてダンデライオンの方に狙いを定めた。

 

「SOPⅡ?」

 

声を掛けられたSOPⅡは無言で振り向く。

あまりの突然な振り向き方に声をかけたAR-57が逆にギョッとした表情をみせた。

 

「あ、AR-57。どうしてここに?」

「いやいや、巡回。SOPⅡこそ何やってんの?」

「へへ!いたずら。これ見せたら子供が喜ぶかなって」

 

SOPⅡがピンク色のかわいらしい携帯を取り出していたずらを施したAR-15の顔の写真を撮った。

 

「へへ、後はダンデライオンだね」

「まあ、待ちなって。もっといい方法がある、これをこうしてこうやって…ほら、これならみんな、驚くよ」

 

SOPⅡを窘めるかと思いきやAR-57は逆に悪乗りしてダンデライオンになにかしらの細工をした。

 

「起きた時が楽しみだね」

「確かに」

 

部屋を後にする二人が悪ガキのような笑顔をしていた。

 

────

───

 

その頃…中国では

 

「「「ギィイイイイイイ!!」」」

 

蒼色の髪をしたM4A1に向かって6匹のE.L.I.Dが一斉に襲いかかってきた。

 

「────!」

 

M4A1がまず先頭の1匹の突撃を銃のハンドガードで受け止める。続いて、死角に回り込んだ2匹目のE.L.I.Dが奇襲を仕掛ける。

 

「フンッ!!」

 

ハンドガードで受け止めいたE.L.I.Dを力ずくで引き剥がす、そして右足を鞭のようにしなやかに動かして、回り込んできたE.L.I.Dの方向を見ないまま勢いよく蹴り飛ばした。

 

「────ガギャッ!?」

 

蹴り飛ばされたE.L.I.Dが何かしらの壁に激突し、悲鳴を挙げた。

 

「ヤアアアッ!!」

 

M4A1が勢いよく回転すると、彼女が纏っていた炎も釣られて回転し、巨大な炎の竜巻が発生するその竜巻は自然災害で発生するような火災旋風を思わせるほど勢いが強かった。

 

「「「────ギィッ!?」」」

 

突然発生した炎の竜巻に全てのE.L.I.Dがあっという間に巻き込まれた。

竜巻が止むと、竜巻を起こしていたはずのM4A1の姿はどこにもいない。E.L.I.Dたちは耳や目を凝らし探し始める、しかし小石一つの物音さえ見逃さすつもりはない、でも何処にも姿が見えない。

たまたま、頭を動かした瞬間、コツンという軽い感覚がE.L.I.Dの頭に走った、何の気なしに振り向くと、M4A1が音も立てずに忍び寄り、E.L.I.Dの頭のすぐ後ろにライフルのニヤリと笑って銃口を突き付けていた。

 

「はい、さよなら」

 

無情なセリフと共にカチリと、引き絞られたライフルの引き金の金属音が鳴る、そのすぐ後に放たれた弾丸が怪物の頭を蒼色の炎を共に円状に切り裂いた。

頭部を失ったE.L.I.Dはそのまま倒れ込み、二度と起き上がる事はなかった。

 

「残り5体…ね」

 

残りのE.L.I.D達はM4A1の姿が見えたことで再び一斉に襲い掛かる。

 

「Fier Wall」

 

しかしその攻撃は全て突如として、出現した蒼炎の壁によって阻まれる。

 

「ギィイイイイッ!ギィイイイイッ!!」

 

ほとんどのE.L.I.Dが炎を浴びて後ろに下がるが、1体のE.L.I.Dが蒼炎の壁を無理やり突破しようとしていた。

しかし、M4A1は特に何もすることはなく、じっ…と突破しようとするのを見つめていた。

ようやく、前足のような、前腕が蒼炎の壁を突破しようとしたその時には前腕だけしか残っていなかった。

 

「かわいそうに、この炎を無理やり超えようとするからこうなるのよ」

 

M4A1はゆっくりと近づいて、残った腕を踏み潰した。

ガチガチと歯ぎしりを立てたE.L.I.D3体が彼女に向かって唸り声をあげた。まだやる気らしい、どうやら彼らは"痛み"という概念すら忘れてしまい、敵に向かって飛んでいくことしか考えられないのだろう。

健気な姿に思わずM4A1はため息をつく、ただし…これは同情から来たものでない、相手の力量も把握できないE.L.I.Dを馬鹿にしたため息だ。

 

「死になさい」

 

M4A1は銃口を向けて引き金を2回引いた。

撃ち出された2つの弾丸は2体の怪物の額を貫き、一瞬で引き裂き燃えカスに変える。

 

だが、2つの弾丸を引いた瞬間、残りのE.L.I.Dの一帯が首元めがけて一気に飛びかかる。一秒もしないで彼女の首元に爪が食い込むほど素早い飛び込みを────

 

「あくびが出るわね」

 

あざ笑うかのように一瞬で体を捻って軽やかに躱し、爪は空をきった。

 

「レッスンしてあげるわ」

 

お返しと言わんばかりに今度はM4A1がE.L.I.Dの潜り込むように飛び込み、E.L.I.Dの頭めがけて勢いよく腕を振る。彼女の手にはアイスバイル状の刃物が握られていた。

 

「────ギッ!?」

 

刃物の刃がE.L.I.Dの首の脊髄に突き刺さり、M4A1がアイスバイルを引っ張るとそのまま肉が脊髄ごと、簡単にえぐり取られていき────

 

「レッスン終了よ」

 

首から上と体の2つに分割された。

M4A1がアイスバイルを捻り、抉り取られたE.L.I.Dの頭と彼女の顔が相対した。

 

「あら、"Ice to meet you"…なあんてね」

 

M4A1は"Nice to meet you"と"アイスバイル"を掛け合わせたダジャレを口にした。

 

生き残ったE.L.I.Dは先程、M4A1に蹴り飛ばされたE.L.I.Dだけだ。

自分を蹴り飛ばした女を今すぐ食い殺してやろうと立ちあがろうとするが何故か身体が持ち上がらない。

 

「無駄よ。あなたの首は…もう、とっくに折れているんだもの」

 

M4A1がライフルを最後の一体の頭に向けた。

 

「言い残す言葉は?」

「ギギギ…」

「それじゃあ伝わらないわね」

 

M4A1が引き金を引くと同時に、頭部を貫かれた最後のE.L.I.Dも消え去った。

戦いを終えた彼女は満足げな表情を浮かべ、ふぅと息をつく。

そして、彼女が手にしていたライフルを手放すとライフルは光の粒子となって、消えた。

 

「さっさと仕事を終わらせましょう」

 

門番を倒して、今度こそ仕事に戻ることが出来たM4A1は厚さが3メートルほどある巨大な扉の取っ手を掴み、難なく自分の腕力のみでこじ開けた。

 

「いたいた…やっぱり、コイツが原因だったのね」

 

扉の奥に進んでいくと、巨大な建造物が並んでいた。

まるで何かの工場のように様々な機械が設置されており、それらは全て起動しているようで煌々と光を放っている。

これだけ見ると何らかの発電所か何かに見える、中央に置かれている不気味な死体と今にでも溢れかえりそうな緑色の粒子を除けば。

 

「昔の人間も良くやるわよねえ、”使えるから使ってみた”とかどういうことよ?確かに、ケータイやコンピューターが何がどういう理屈で動いているのか理解しているのを承知で使っている人はそうそういなんでしょうけど…それでも、”壊れたら直してくれる”という前提があって成り立つものでしょに…どう思う?○○○○○○○さん?」

 

M4A1は近くにあったコンピューターらしきものを動かしながら、真ん中の死体に話しかけていた。

返事はない。死体は喋れないし、動くことも出来ないのだから。

 

「問題を解決する前にやる事、やっちゃいましょう」

 

最後にキーボードの一番大きいボタンを押して、透明なカードを2枚取り出して機械の挿入口に入れた。すると、コンピューターの画面上にメッセージが表示され、次々と文字が浮かび上がっていく。

その文字列は言語でもなく、ましてや数字でもない。

見たこともない言語で、M4A1はそれらの意味を理解しているようだった。

しばらくして、差し込んだ透明なカードが金色チップをつけて、帰ってきた。

 

「フフ…呪われた遺跡か、面白いカードになりそうじゃない…Goodbye,Mr.Monster(サヨナラ、怪物さん)

 

M4A1は金色のチップがついたカードを見て笑みを浮かべ、暗号らしきプログラムを打つとさっきまで輝いていた光と粒子たちが次々に消え始める。

 

────

───

 

『これは…』

『どうした?』

『コーラップス濃度が急激に低下しています』

『なんだと…』

 

外にいた、兵士たちは突然収まっていくコーラップス濃度に困惑していた。喜ばしいことではあるのだろうがどうして、こうなったのかその理解の範疇をたやすく超えていたから。

 

『あの女がやったのか?』

『分からん…』

 

M4A1のこといい、今回の任務は分からないことだらけだ。謎しかなさすぎて、頭の整理が追いつかなくなりそうだ。

 

『彼女との通信は?』

『入ったという報告っきり、なにも』

『チッ』

 

兵士の一人が珍しく舌打ちをした。それはイラつきと不安が入り混じったような音をしていた。

 

『回収に行くべきでは?』

『中継器が効かなくなるほどのコーラップス濃度だぞ?俺たちの装備でも入り込んだら怪物の仲間入りだ。入るなんて、まともじゃない』

「あら?まともじゃなくてごめんなさい?」

 

突然現れた、声の主はM4A1のものだった。彼女はいつの間にか、彼らの目の前に現れにっこりと微笑む。

 

「ちゃんと終わったわ、原因は未だに稼働していた遺跡がコーラップス液を貯め込んだせいだったようね。放置してたら、貯め込んだコーラップス液が溢れかえって2度目の米蘭島事件が起きていたに違いないわ」

 

『笑えない。ということは何とかなったんだな?何をした?』

「簡単よ、遺跡のスイッチをオフにした」

 

さらっと恐ろしいことを言ってのけた。

確かに言うのは簡単だが、それをするには相応の技術が必要なはずなのだが…。

この女にはそれがあるらしい。確かにこいつはとんでもない奴だ、と彼らは思った。

 

「終わったんだし、帰りましょ」

 

M4A1はキューブ型の端末を取り出す。

 

「私よ、任務成功。回収班、応答を乞う」

<こちら、回収班。コーラップス濃度の激減を確認した。よくやってくれた>

 

端末のディスプレイに自分たちが乗っていた潜水艦のオペレーターの顔が表示される。

 

「部下たちを集合場所に送り届けた後、私はドイツ、ベルリンを経由して帰る予定よ」

<ずいぶん、アンタだけ遠回りだな。どんだけソーセージ食いたいんだ?それともビールか?まあいい、所定時刻に遅れるなよ。以上>

『それで、中で何をみた?』

 

兵士の1人が"遺跡"から外に出た、M4A1に内部で何があったのか訪ねてきた。

 

「中心に着くまで残骸、残骸、残骸よ。中心にたどり着いた時に門番らしいE.L.I.Dが居たから…今後はその辺りも念頭に入れたほうがいいかもね」

『帰ったら、検討が必要だな』

「オオォ…!」

 

身の毛のよだつ唸り声が聞こえる。その声を聞き逃さなかったM4A1と兵士達はうめき声の主を捉えていた。

 

「しつこいわね。嫌われるわよ」

 

M4A1が腕を組みながら愚痴を述べて、見据えた先には仕返しをするつもりでやってきたのか、

遺跡の周りにうろついていたE.L.I.D感染者達が彼女達に向かって唸り声を上げて、近寄ってきた。

 

「切り抜けましょう」

 

M4A1の手の周辺に粒子が発生、集まった粒子からM4A1"URG-I"だと思われるライフルが現われる。

彼女がライフルのグリップを掴み、E.L.I.Dに向かって銃口を向ける。兵士達もその動きに合わせて、ライフルを構えた。

 

「お見送りは…お呼びじゃないわ」

 

蒼色の銃の引き金を引き絞る、銃口から飛び出た銃弾を眩くばかりの光を伴った蒼色の炎が包み込み、炎は弾丸の回転に呼応する様に周りだし、弾丸の周囲にいたE.L.I.Dを瞬く間に切り裂き燃やし尽くしていく。

────銃弾が通り過ぎた頃には、50程いた、E.L.I.Dの数は10にまで減ってしまった。

 

「意外と効くのね」

 

弾丸の周囲にいたE.L.I.D達は真っ黒に焼け焦げ、細切れの肉片と化していた。その肉片からをへばり付いたガムの様にチロチロと蒼い炎がしつこく燃やしていた。

 

「この数なら、負けるわけないでしょう?あなた達の力…見てみたいわ」

『あぁ、見せてやる』

 

M4A1が兵士達の方に向き、二ヤリと笑う。「間引き」した敵の処理が終わったから好きにしろとでも言いたいのだろうか?

E.L.I.Dが襲い掛かってくる、兵士の3人は迫り来るE.L.I.Dに向けてライフルを撃ち放ち、1人は剣を抜き応戦した。

 

『どうだ?お前ほどじゃあないが、実力はあるんだ』

 

3秒で6体のE.L.I.Dの頭がライフルの弾丸に撃ち抜かれ────4秒で4体のE.L.I.Dの頭が剣によって跳ね飛ばされた。

 

「本当に凄いじゃない。見直したわ」

 

彼らの人間離れに近い圧倒的な迫力ある一瞬の戦闘の一部始終をすべて見逃さなかった、すべてのE.L.I.Dが消えるとM4A1は少し意外そうに、驚いた顔をしていた。

そして素直に兵士達の実力を素直に拍手までして楽しそうに喜び、称賛した。

兵士達は少し意外だった、褒めてくれることは嬉しかった、最初はM4A1は自分たちのことを厄介者のように扱っていたし、その態度をしても文句を言わせないほどの強大な実力を持っていたから。

 

「ユーリもこれくらいの強さを目指すんでしょうね」

 

M4A1から、”ユーリ”という男の名前が出た。

─────ユーリ・フレーヴェン。兵士の一人が新ソ連外務省対E.L.I.D特殊部隊ヴェルークトの部隊長のことを思い出す。今はドイツに潜入して、工作員"グリフィン"の始末とドイツで見つけた"少女"の救出任務を実行中だったはず。

 

『ユーリというのは、ヴェル―クトのロシア人の事か?』

「あなた達でも有名なの?」

 

M4A1はまた、驚く。

まるで「知っていたのか?」と言いたげに、「知っていたのか?」と聞きたいのは兵士たちの方なのだが…

 

『有名というほどではないな。”ウチ”じゃあ珍しいロシア人だからな。外様だけど、結構使える奴だよな』

 

兵士は納得がいったように話を続けた。彼らの認識で”使える兵士”という認識らしい。

 

「彼、排除対象の人形を見逃したことがあるって聞いたわよ?それって重罪でしょう?その上、対象はコーラップス液の爆弾を使ったんでしょ?」

 

どこかわざとらしいセリフだ。なにか、探りを入れているように感じる。兵士はあえて気にせず、話を続ける。

 

『その話題か…やっぱり知っている奴は少ないんだな。実は排除の命令をあの方は直前に取り消しにしたんだ。命令に背いてないし、寧ろ遂行した側だから、罪に問われないんだよ。まあ、人形の方を生かすことを決定した際は揉めたらしいがな…』

「だとしたら、あの方はとても有効な選択をしたでしょうね」

 

M4A1はクスリと笑った。

 

「私、その人形がどれだけ働けるかを報告するためにここに来たの。まあ、結果は”アタリ”よ」

『自信があるようだな。しかし、お前の言葉ならあの方も信じるだろう』

 

M4A1の言うことが本当であれば、その人形は貴重な戦力になるかもしれない。

話を続けているうちに、回収地点に辿り着いてしまった。ここに回収用の潜水艦が来るまで、あと6時間はかかる。ここで、ただ雑談などして時間を潰しても良かったのだが、そうするには自分たちはずいぶんと大きい音を響かせすぎた。

 

「オオォ…!」

 

身の毛のよだつ唸り声と何重にも折り重なった足音が聞こえる。E.L.I.Dが群れを成して、こちらに向かってくる音だ。

 

「帰るときすらサービス旺盛ね。全く、ここは高級リゾートだったかしら?」

『昔はそうだったんだろう。…来るぞ』

 

M4A1が皮肉に兵士がまた違った趣ある皮肉を返すと、兵士達は戦闘態勢に入り迎え撃つ準備をする。

E.L.I.Dの姿が見えた、殺戮と血肉に飢えた凶暴な獣の顔がさらに醜くなった醜悪な顔をした化け物たちのお出ました。

 

『始めよう』

「そうね、教えてあげましょうよ?喧嘩を売る相手を間違えたらどうなるかって」

 

蒼い炎がM4A1の周りを舞い踊り、その炎は彼女の背中にまとわりつく。

炎が4枚の機械の羽に形を変えると、羽から蒼炎が勢いよく噴き出された。蒼炎の眩い光は夜の漆黒を白夜に変えるかの如く美しく照らし出し、全てを輝かせた。炎の輝きが強くなり、頭部にも炎が現れ一対の鋭角状の角のようなアンテナに変化して彼女の頭に装着された。

 

「────フウウウウウゥゥ…!!」

 

彼女の唸り声と共に”変身”した姿はただでさえ2メートルほどの身長を持つM4A1の姿を更に大きく見せてまるで、神話上に存在したドラゴンが人の形をしたように錯覚させた。

彼女は人ではない人の形をした蒼い光を放つ怪物に見える。

 

「あの世に案内してあげるわよ。死にぞこないの皆さん」

 

M4A1の手にはもう"AR-15I"が握られていた。

彼女が引き金を引くと、銃口から蒼炎が溢れ出す。その瞬間、怪物たちが狂ったように飛び掛かってくる、皆殺しの準備は万全だ、この時点でE.L.I.Dたちは逃げるべきだった、しかしE.L.I.Dはおろかで突っ込むことしか知らない馬鹿共だから逃げる事すら忘れている。

M4A1にとってはこれは防衛線という名前の一方的な虐殺にすらならない、ひき肉機に自ら飛び込んでいる馬鹿の始末でしかない。

そんな馬鹿に掛ける情けは持ち合わせていないし、容赦などする気はない。

奴らは全部ここで死ぬ、それがここの場所にのこのこやってきたE.L.I.Dの達の運命だ。

 

 

────6時間後

 

港の水が大きく、揺らぎ巨大な潜水艦の姿が海から浮上する。

浮上した潜水艦の中から、兵士が降り、港に到着した事を確認するとM4A1たちが待っている地点にやってきた。

回収地点には自分たちに気が付き手を振るM4A1と兵士たちが待っていた。

 

『待ったか?』

「待ったわね。"あの方"に渡しておいてね」

 

回収にやってきた兵士の発言に疲れ気味の表情を見せたM4A1は透明のカードを兵士に手渡した。

 

『了解、コイツはしっかり渡しておく。にしても焦げくせえ街並みだなあ、何やったんだ?』

 

回収地点は辺り一面が真っ黒になっていた、まだチロチロと燃えている炎がここで大規模な火災に相当する出来事があったことを物語る。M4A1は肩をすくめ、 素知らぬ顔を通す。

 

「大きい花火があったのよ。もっと早く来れば、あなた達も楽しめたはずよ」

『そうかい、俺もみたかったよ。俺たちはこれからアイツらが潜水艦に入ったらこのまま、帰投するつもりだが、お前はどうすんだ?潜水艦をドイツにまで寄らせるとかじゃないよな?』

 

M4A1は、蒼い髪を掻き上げ、風に煽られた髪をなびかせながら、 その答えを口にした。

 

「大丈夫。手間は取らせないわ、こうするもの」

 

"こうする"そう言った、M4A1の瞳は聞いたこともない様な電子音と共にキラリと発光した。

すると、彼女の背中と腰にそれぞれ機械仕掛けの羽が粒子と共に現れて、装着される。

 

「遅くなる件は"あの方"に伝えてあるのであしからず。ドイツでビールやソーセージを買うつもりなんて、当初の予定ではさらさらなかったんだけど、食べたくなったから買って帰るわね。お土産代は経費で落としておいてね!!」

 

M4A1は矢継ぎ早にお土産の話とそれにかかる経費の話を終えると、

背中の羽が蒼色に輝き糸に引っ張られる様に空に飛び上がり、一瞬だけ空中に滞空────そのまま、ドイツの方向に身体を向けると戦闘機の様な速度で一瞬で飛び去ってしまった。

 

『アイツ…飛べるのか?』

『最後まで、俺たちを驚かしてくれる女だぜ』

『女?アレは怪物だ、常識を軽々と超えて来る怪物だよ』

 

一瞬で消えた、M4A1の姿にまたしても驚かされた兵士たちは飛び去った、彼女のいた空をしばらく眺め────そして、潜水艦の中に搭乗していった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。