たったひとつの願い   作:Jget

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運命の変化

コーラップスで崩壊した緑色の空の中、蒼い流星のような光の線を残しながら、空を飛ぶM4A1は通信をしていた。

 

 

<アクセスコードを>

「アクセスコード"ヴァイキング"蒼色の乙女(ブルーレディ)から、アドミニストレーターに通信を希望」

 

無線の相手から「少々お待ちを」と言われて、10秒くらいの少々の後、"あの方"と繋がった。

 

「中国の件は片付きました。やっぱり遺跡が動いてた」

<すでに報告は受けて、あちらの党にも説明はしている。これから、ドイツか?>

「はい」

 

なるほど、クルーがもう説明してくれたか。

 

<海峡沿いにそって進めば安全だ。今の世界、コーラップスで汚染された海をパトロールする海軍はいない>

「現地の工作員との連絡方法は」

<いくつか拠点が置いてあって入り口でキューブを見せればいい。位置は送った>

 

位置情報が送られる。今、ユーリ達はブレーメンからベルリンに移動している……か。なら、行き先はベルリンだ。

 

<それとお前の"エンペラー"から言伝があった。合流場所は普段の"ショックゾーン"で合流したいと言っていた>

「了解、合流できなかったら私に連絡するようにとお伝えお願いします」

<任せておけ、お前の大切な"娘"なのは承知している>

「ありがとうございます」

 

M4A1は時計を見た。

ユーリと合流するにしろ、その後"エンペラー"と合流するには急がねばならないようだ。

 

その頃────ドイツでは今夜中となっているこの時刻…フォトンはダンデライオンが纏めたファイルを読んでいた。

書類を読むとポーン村は設立が勝手にされたと言うわけではなく、ちゃんとした手順を踏んで行政から認められた難民の支援組織だったようだ。

 

「怪しい所はないな…」

 

続いて、アンジェリアが調査していたブレーメンの資料に目を通す。

難民にいい顔をしながら、国民が貧困に喘ぐと言う、よく聞く矛盾の不満が爆発した結果ばかりが目に映ったが…そのうちの一つ…植物研究所の調査結果に目を奪われた。

植物研究所はコーラップス液を一時的に保存して開花と共にコーラップス液を撒き散らす、エピフィラムの研究をパラデウスからの資金援助で行っていた…と報告書に書かれている。

 

「なら、このポーン村の扱いはパラデウスの隠れ蓑に仕立て上げたと言う認識の方が正しいか…?」

 

植物研究所もドイツ政府の公認の組織だ。

パラデウスはそういう公の機関にも根を張っている様だ、よくフィクションで聞くようなアンダーグラウンド系のテロリストの行動は彼らは最も簡単にやって見せている。

────なるほど、サーや保安局があそこまで手こずるというのも無理はない。

 

「ダンデライオンの調査結果の重みも大きくなるよな…」

 

ここでダンデライオンの調査結果でパラデウスはどんな組織と連んでいることも分かれば…グリフィンはパラデウスとの距離を簡単に詰める事ができるかもしれない。

…無論、これはあのマハリアンのメンタルモデルにパラデウスのデータが入っている事が前提になるが…

 

「────フォトン!」

 

扉が前触れもなく強い勢いで開かれ、AR-15とその彼女に腕を引っ張られてダンデライオンが自分の部屋にやってきた。

 

「どうした…って、"2人とも"何をやったんだ!?」

 

入ってきたAR-15とダンデライオンの顔を見て、夜遅くにノックもしないで侵入してきた事を諌めるとか、勢いよくドアを開けきたのでうるさいとか、そう言う話よりも先に出てきたフォトンの第一印象がそれであった。

だが、そんなフォトンの反応はお構いなしにAR-15は息をぜぇぜぇと切らしながらこちらに詰め寄ってくる、相当急いでいるんだろう。

 

「フォトン?なんですか?」

 

どうやら、フォトンは肩を上下に痙攣させて今にも笑い出しそうなのを必死で堪えている様に見える。

その堪える行動の原因を理解できず、AR-15は何故笑うのを我慢しているのか、理由を求める。

 

「重要なのはわかって…ククッ…でも、その前に自分の顔を…フフッ…見た方が…いいぞ」

 

フォトンが必死に笑うのを堪えながら部屋の中にある鏡を指差した。

 

「は、はぁ…」

 

AR-15達は指さされた鏡を覗き込んだ。すると、2人の顔がみるみると焦りと怒りが入り混じったものに変わりワナワナと震え出す。

 

「な、なによ!?これはー!!??」

 

AR-15の顔はマジックペンで犬の顔を模した落書きをされており、ダンデライオンはまるで顔が歌舞伎で付けるようなお面と同じくらい真っ白になっていた。

 

「…これ、だれ?」

 

ダンデライオンの「だれ?」と言う言葉には鏡が写って人形が誰なのか分からないくらい酷いのか、それともこんな顔にしたのはどこの誰なのかと言う言葉なのか?

どちらにせよ、ダンデライオンはAR-15以上に自分の状況に珍しい人間らしいキレた表情を見せた。

 

「────やっと綺麗になったな」

 

顔の様子が分かった2人は洗面所で15分くらい顔を水で洗い何とか顔を元通りになった。

元通りになり、ようやく落ち着いて報告できる様になったのでAR-15は改めて毅然な態度でフォトンにマハリアンのメンタルモデルでダンデライオンと何を見たのか報告する。

AR-15の報告によると、メンタルモデルにはモリドーがエピフィラムを利用して難民を殺した場面やウルリッヒ一緒になり変わった場面を見つけたらしく。

やっぱりモリドーはマハリアンと言う名前でコッチを騙しているのではないかと言う結論が出たらしい。

 

「…そうか、なんて事だ」

 

どうしてAR-15がダンデライオンと一緒にマハリアンの記憶を覗いているのかは聞かないことにした。

しかし、アンジェリアの忠告が現実味を帯びたことが事には多少ショックだったようだ。

 

「────ユーリ、話せるか?」

<はい、構いませんよ>

 

ユーリの通信はあっという間に繋がった。

フォトンが時計に視線を映して観察すると、時計は午前の3時を回っている。

まだ、起きてくれているのか?それとも、ずっと前に寝ていて連絡に備えているのだろうか?いや、そんな疑問よりも今はマハリアンについての進展を話さないと。

 

「AR-15がマハリアンのメンタルモデルにモリドーの記憶を読み取った。残念な事にマハリアンはモリドーらしい」

<ふむ…>

 

ユーリはその事を大して驚いておらず、むしろ何か似たような事を知っていると言いたげな態度だった。

 

<ダンデライオン、君もAR-15と同じ結論かい?>

「…実際はAR-15とは少し違う可能性を想定しているわ。ユーリ、あなたと同じ懸念を抱いているわ…気に食わないことにね」

 

ダンデライオンはパデルスィキに見せたようなユーリを露骨に嫌う態度を見せつつも、「お前と同じ考えだ」と同意した。

 

「マハリアンのメンタルモデルは混乱していてね…電気の灯りがついたり消えたりするように記憶の中身の入れ替わりが激しいの。人形の記憶を保存できるバーチャルモデルっていう機能があるんだけど…もし、モリドーとマハリアンが同じバーチャルモデルを使っているのなら…モリドーの記憶が偶然見えたのも否定できないわね」

<フォトン、前にタリンで自分がレイ…M4のメンタルモデルの中に入ったことがあるのは覚えていますか?自分もその時にM4のものとは全く違う複数の記憶を見たことがあるんです>

 

────成る程、とフォトンは舌を巻くと同時にアンジェリアに伝える前にユーリに話を通しておくのは正解だった事を再認識する。

 

<ダンデライオン、俺の予想ならモリドー以外の記憶も見つけたんじゃないか?>

「ええ、鋭いわね」

 

モリドー以外の記憶か…なら、モリドーとは思えない記憶を抽出してそれをマハリアンに確認を取るのもいいだろう。

 

「話は決まったな。ダンデライオン、AR-15。それぞれ保存した記憶を動画にして表示してくれ」

「了解」

「しょうがないわね…」

 

AR-15とダンデライオンが保存した記憶を動画ファイルに変換してアップロード、アップロードされた動画端末に送られたのを確認するとフォトンはその動画を再生する。

AR-15の映した記憶はマハリアンと同じ顔をした女…要はモリドーやポーン村から逃げる際に付け狙ってきた小柄なナイトの号令で一斉に部下のネイトやパラデウスがエピフィラムが入っている爆弾を起爆させ、次々とベルリンの街がコーラップス液を汚染させていく地獄絵図の光景が広がっており、それを見たモリドーが高笑いをしている内容だった。

 

<気味の悪いやつだ>

 

ユーリは明らかにその性根が腐ったようなモリドーに嫌悪感を感じており、AR-15がマハリアンがモリドーだと断定したくなるような気持ちも理解した。

続けて、ダンデライオンの保存した記憶だ。

ダンデライオンはマハリアンの過去の映像以外にもマハリアンと同じような声をした少女がコーラップス液のテロで咽び泣き、その声を聞きつけたパラデウスによって捕まった光景が映る。

そのあと、パラデウスによって人体をネイトに変えられ、パラデウスのモルモットにされる記憶だった。

 

「────」

 

あまりの悲惨さに言葉が出ない、これがマハリアンの記憶という確たる証拠ない、しかし、この映像が存在する以上この記憶と同じ目にあった犠牲者が確かに存在しているのだ。

 

<マハリアン…彼女がモリドーあるかについては置いて置くとして…パラデウスの目的が分かった。奴らの目的は"完全免疫体"です>

「完全免疫体…」

 

完全免疫体…確か、ロクサット主義の提唱者で有名なレザー・ロクサットが日本で見つけたコーラップス液の影響をまるで受け付けない少女だった気がする。

噂でしか聞いたことがないが、フォトンも知っている存在だ。

それを探し出すためにパラデウスはあちこちでコーラップス液のテロを行っており、今度はこのベルリンで…

 

<勝手な奴だ…こんな事を平然と行う、パラデウス…許せないな>

 

ユーリの顔は無表情に近しいものだったが…その声は確かに怒りを孕んでいた。

 

「あぁ…でも、これからどうする?」

<考えはある、少し雑なやり方になりますけど>

 

次の日────

 

「えぇ!?ベルリン中でテロですカ!?」

 

フォトンが今いるメンバーを全員集めて、今ある結論を話した。

あの後、ユーリの仲間も交えて色々検証した結果、

「このテロは確実に起きる」という結論で纏まった。

 

サーの人形達はパニックと見間違うくらいに驚いていたし、

404小隊はあまりの規模に言葉を失っていた。

AR小隊も時間がない事を理解して焦り見せていた。

アリージェンスの傭兵達は仲間同士で何か相談をしており、意見をすり合わせしているように見える。

しかし、こうやって人形達を集めたのは各々の反応を確認するためではなく現場の人形に「あまり時間はない」と言う認識を持ってもらいたかったからである。

 

「時間が少ない以上、素早く動きたい。ペロサ、なんとかここと…この施設とあぁ、そうだここもだ!頼む、サーに査察をする許可書を用意してもらえないか?」

「もちろんです。すぐにサーも用意してくれるでしょう」

「UMP45。材料は用意してあるから今すぐ、爆弾を処理するための液体窒素の作成に取り掛かれ、ミスで共倒れになるリスクを排除できる」

「そうね、リスクは少ない方がいいわ。特に重大な時こそ」

「アリージェンス。こっちで予想したテロの被害予想地点の施設の調査をしてくれ。行動をする時にとにかく先手を撃ちたい」

「了解、すぐに始める」

「AR小隊とダンデライオンはマハリアンを守ってやれ、今回の要は彼女かもしれない」

「分かりました」

 

フォトンの命令で皆がそれぞれの行動を取り始めた。ちなみにユーリ達は既にダイレクト・アクションの準備を始めているらしい。

彼が要求したことは次の日には全て達成されていた。

許可書を持ってきたペロサがやってきた。

 

「フォトン指揮官、サーから通信が」

「繋いでくれ」

 

ペロサがグリフィンと通信を繋ぐ、ホログラム上にグリフィンの姿が映る。

 

<すまないな、忙しいだろうに>

 

グリフィンが口を開く。

 

「いえ、それよりも…許可書の件ありがとうございます」

<その事で話がある。まずはこのニュースを見て欲しい>

 

ニュースにはマハリアンのメンタルモデルに映し出されたのと同じ光景の映像がニュースが映し出されていた。

その上、この施設は自分が許可書を欲しいと頼んだ場所でもある。

 

<このニュースは今から15分前に流れた映像だ。君が送ってくれた映像とほぼ一致する。これは大きな発見だ、フォトン。マハリアンがモリドーかの検証を置いておくにしても、彼女はテロを事前に予言できると踏んでいる。いずれにしてもウィリアムは動き続けるだろう>

「だから、許可書を作るのを許してくれた…と?」

<それもある>

 

許可書を作る理由をいちいち説明するので時間を食うつもりで会話を求める訳ではないだろう。

フォトンはこれから切り出されるであろう"本題"に着目した。

 

<君の依頼した箇所については許可証以外にも私個人から色々口添えしておいた。面倒臭がる役人も君を見ればすぐに色々"気を使ってくれるだろう"…頼むぞフォトン>

 

許可証をもらって最初に解除をするのに励んだのは地下鉄だった。

地下鉄を先に調べた理由は極めて単純だ。

"通勤ラッシュの時間が近いから"、ユーリが地下鉄の爆破の映像を見た時、数とパニックの規模からすぐさま「通勤ラッシュを狙う」と仮説を立てたのだ。

爆弾の解除はアリージェンスが事前に調べた上で作られた地図のお陰で爆弾の位置まで出来るだけ素早く進むことが出来、爆弾も404小隊に作らせた液体窒素で素早く処理した。

これで一安心────そう思った時、爆弾解除に「どうしても」と言って付いてきたマハリアンが「まだ残っている」口にした時は流石に全員焦った。

事実、マハリアンが示した所を探してみると本当に爆弾は存在したので、404小隊もAR小隊も戦慄を隠すことはできなかった。

 

次に向かったところは隔離壁だった。

始めは守衛達も門前払いしようとしてきたが、許可証を見せるとあっさりと自分達を招き入れた。

ユーリ達、ヴェルークトの隊員達には万が一に備えて、隔離壁の外壁で防御を固めてもらっている。

配電室に招き入れられたペロサはマハリアンの"予言"が今回の鍵になることを確信していた、しかし…どうして現実になるのか、その疑問に答えが出せなかった。

 

<配置についたか?>

『はい』

 

ユーリ達や工作員達は隔離壁の周りの階段や橋の所で待機していた。

壁の外には忌々しい感染者の姿が溢れかえり、反対側はまるで危機感のない兵士達が棒立ちに近い状態で警備をしていた。

 

『どこもかわんねぇな。隔離壁ってさ?』

 

そう言っていたのは自分と同じ箇所の防衛をしているヴェルグ3だった。

 

『…ああ、そうだな』

 

ユーリは視線を向けず、ポツリとつぶやいた。

いつもなら、その後に自分の背中に刃物を突きつけられているのに危機感がないのだとか色々自論を並べるはずのユーリが今はとても静かだ。

 

『グリフィンのM4って言う人形の事…まだ、気になるのか?』

『気づいていたのか……』

 

ユーリの身体がほんの少しだけ緊張で固まった。

図星らしい。いくら身内になれたとしても彼女は秘密のベールで覆われている。

いくら人形といえどそれがどうしようもなく不安で…何が起きているのか確かめずにはいられない気分だった。

 

『確かにカワイコちゃんだと思うがよ、お前がそこまで執着すんのも珍しい…なんでだ?』

『それは…俺にも分からない』

 

そりゃ困るぜと、ヴェルグ3はぼやこうとしたが執着する理由はその"分からない"そのものだと理解し、あえて見守るのが面白いと思ったのかそれ以上は口にしなかった。

 

『そういや、再開したらなんていうんだ?"俺を待たさせるなんて承知しない"ってか?それとも────』

『いい加減にしろ、大体お前は────』

 

ユーリがいつものように日頃の勤務態度の悪さもまとめて叱りつけようと、その時────

隔離壁の外で連続した爆発音が児玉して2人の間に緊張が駆け巡る。

 

『…本当に始まりやがった』

『予言は本物だったって事だ』

 

黙々爆発で立ち上る煙を見て、ユーリは恐怖や焦燥より先に苛立ちを覚えた。

犯行を防ぐために自分達が見張っていたはずの隔離壁で先手を取られるなんて、自分の無能さに腹が立つ。

 

『チッ…行くぞ』

 

ユーリにしては珍しく舌打ちをして、強化装備のブースターなど戦いで使う機能をオンにした。

 

「────オオオオッ…」

 

身の毛のよだつような唸り声を上げながら、今にでも爆弾でヒビの入った隙間から隔離壁の中に入り込もうとするE.L.I.D達。

E.L.I.Dの一体が瓦礫に手を触れた瞬間、その手が瞬く間に斬り飛ばされた。

斬り飛ばしたモノの正体を探ろうとして後ろを振り向いた瞬間、そのE.L.I.Dの後ろにユーリが現れて回し蹴りを食らわせ勢いよく蹴り飛ばす。

 

『うるさいな……俺は今、機嫌が悪いんだよ…』

 

蹴り飛ばしたE.L.I.Dを一瞥して苛立ちを含んだ、ため息をつく。

他にも爆発音を聞きつけたE.L.I.D達が次々と隔離壁を崩そうと列をなす。

ここを真面目に守っていなかった警備兵ならこの惨状を見た直後、恐怖に負けて気を失っていたかもしれない。

だが、何度もこの化け物達と何度も戦ったユーリは答えの出ない複雑な感情を幾らぶつけようが誰にも咎められない格好のやつが見つかった事、ほんの少し、100%中の0.1%だけ、巡り合わせに感謝しながらさっきE.L.I.Dの腕を切り落とす時に使った、長刀を握り締めると壁を壊そうとするE.L.I.D達に向かって勇ましく飛び掛かった。

 

 

 

 

隔離壁が爆発した頃────

本来、ヴェルークトの支援に回るはずのAR小隊やアリージェンスの傭兵達も隔離壁を守るための戦いに出ようとしたその最中────

突如としてパラデウスの部隊が現れ、次々と壁の反対側から爆発で脆くなった箇所に攻撃を加えて来たため対処に追われていた。

 

「────パラデウスっ!?本当に来たっ!!」

 

SOPⅡはマハリアンの予言を想像程度にしか留めていなかったようで、本当にマハリアンの予言通りに現れた事に驚いていた。

 

「帰れっ!このパラデウス!私達はE.L.I.Dも抑える仕事あるんだよ!」

 

とはいえ、これしきでSOPⅡの戦意は喪失するわけはなく、寧ろ間が悪く来た事の方を怒りに変換して、集団で迫り来るパラデウスの兵士達をフルオートで薙ぎ払う。

 

「────新型め!」

 

ROは初めて見る斧を持ったパラデウスの兵士の対処に手間取っていた。

身の丈はどの高さがある大柄な斧を持ちながら、機動力が高いROに追随するスピードを持つ新型はROに取って身に余るような強敵だ。

 

「こうなったらっ!」

 

振るわれる斧に逃げ回るより、懐に潜り込んだ方が早いと理解したROは斧を振り上げられた瞬間、素早く潜り込み、勢いを殺さずそのまま自分の体重を乗せたタックルを食らわせる。

 

「────!」

 

ROのタックルをくらってそのまま地面に仰向けの状態で新型のパラデウス兵が倒れ込む。

立ち上がるまでの一瞬のチャンスを逃すまい、1秒でも早くトリガーを引き絞ろうとするROはサブマシガンのグリップを握ると、照準を見ないまま引き金を強く引き絞った。

ROの射撃は新型のパラデウス兵の装甲を突き破り、金属音と肉が入り混じった音が聞こえ…弾丸がなくなりホールドオープンした時にはパラデウス兵は事切れていた。

 

「はあっ…!はあっ…!」

 

激しい戦闘で自分の体内が熱を発しているのを感じたROは自分の体内に蓄積された熱を排出して、より冷たい空気を取り込むことができる口呼吸で体内の温度を調節した。

3秒ぐらいで冷却が終了して周囲に意識を向けるとまだ銃撃戦の音があちこちで鳴り響いている、特にSOPⅡが苦戦していそうだ。

ROは額にかかった汗を拭った後、弾切れのマガジンをマガジンポーチの中に捨てて、ベルトに差し込まれているマガジンホルダーから新しいマガジンを中に差し込み、ボルトリリースボタンを押した。

 

「こなくそっ!」

 

破産具合がそれほどひどくなかったエリアには抜かりなくとどめを刺すためにパラデウスも結構な数でやってくる。

その対処はRO達の手伝いに回されたAR-15に役目が回った。

でも、それとは別に持ってきたマガジンを30発入るのスタンダードなマガジンではなく、M4が持ち込んだこともある60発入る長いマガジンか、100発ほど装填できるドラムマガジンを持っていけばよかったと悔やんでいた。

とはいえ、AR-15の選択全てが間違いという事ではなく、自分の持ち出した外務省の特殊弾薬は嬉しい事にパラデウスの兵士に効果は抜群だったようで、

自分がいつも打ち込んでいる弾丸の半分未満の弾丸で敵は倒れていく。

推測ではあるけれど、彼女の今持っている弾薬でここは持ち堪えるだろう。

 

『思ったより、多いな!』

『確かにな!』

 

ユーリとヴェルグ3は外務省は壁に向かおうとする、E.L.I.D達を粗方片付けた所で壁にヒビを入れかねない大型のE.L.I.Dが現れたので対処をしていた。

ユーリが勢いよく飛び出して、跳躍した。

狙いはもちろん、大型のE.L.I.D。

長刀を真下に突き立てると、強化装置のブースターをした方向に蒸して、勢いをさらにつける。

 

『ヤァアアア!!』

 

大型のE.L.I.Dの頭上から勢いよく長刀を突き刺して、パワードスーツ"カリエス"のブースター機能で勢いを更につける事でさらに下の肉を力づくで抉る。

長刀の刃が大型のE.L.I.Dの股まで届きその巨体を真っ二つにした。

 

『よし…!デカいのは片付いた。こっちは手が空いた!厳しいやつはいるか!?』

<ロシア人!こっちに手を貸せ、前に追い払ったパラデウス────は、早いっ!この速さは!?>

 

無線から聞こえた工作員の1人が救援要請と共にバイタル・ロストをしたという甲高い電子音が流れる。

ユーリはA-545のマガジンを取り出すと新しいマガジンに差し込んだ。

先程、倒された仲間と1番近いのは自分だ。

つまり、自分が次に狙われる────

そして、工作員は殺される直前"早い"とパラデウスと口にした。

なら、ここでテロを起こそうする輩のパラデウスがこっちに対する切り札というつもりで投入したと考えるのが最も妥当だろう。

 

────シュッ!と凄まじい勢いで白色の何が飛んでくる。

 

「────!」

 

ユーリは強烈な悪寒を感じて、身を捻った。

こちらに飛んできた刃物が肩を掠めて、小さく金属音が流れる。

肩から感じるチリチリと火に炙られる感覚は少しでも反応を遅らせていたら、お前の腹に大きい穴が空いていたという、死神から警告の様にも感じた。

 

『フォトンを追跡していた奴か……』

「2人目ッ!いや、もう1人いるなッ!アハッ!」

 

獲物を狩ることに高揚を感じた声がしたのと同時に、刃物がフワリと浮いて、巻き戻ったテープの様に戻っていく。

ユーリはその行き先を注視する。

視線の先に、まるで重力に反転するように浮遊しているネイトの姿が写っていた。

 

『新手のネイトっ!』

「ネイト?量産品と一緒にするなよ!アタシは"ナルシス"!お姉様の為にこの壁をぶっ壊しにきたのさ!!」

 

自らを"ナルシス"と名乗ったネイトは、ユーリ達の"ネイト"という発言を怒気を入り混じらせた声と狂気の入り混じる瞳を向けた。

どうやら、次の標的をユーリとヴェルグ3に定めた。

ユーリとヴェルグ3が対峙いていた頃────

アリージェンス人形達は複数のネイト達と交戦をしていた。

1発撃つ度に動き回る、そんなお互いが何度も交差する様な先鋭同士の戦いは側から見たら、奇怪にも見えて、第三者との介入で呆気なくお互いが仕留められてしまう様にも見える、集中具合だった。

 

事実────ネイト達の感情のそれは推量れないものだったが、アリージェンスのエリート人形の集まりでも、こうでもしなければ死ぬのは目に見えており、

第三者の事をいちいち考えられる余裕もない。

 

「こなくそっ…」

 

処刑のように振り下ろされた白いネイトの大鎌がAR-57の髪に触れて、大きく舞い上がる。

────今のは危なかった。

独白に似た死の感覚を気力で押さえつけて、AR-57は自分が持っていたサブマシガンから手を離して即座に腰部のベルトに取り付けたホルスターからピストルを引き抜いた。

ピストルを引き抜いたのは距離が近すぎて銃口を目の前にいるネイトに向けられなかったらだ。

 

「くたばれっ!!」

 

短く、されど甲高い射撃音が数発程、鳴り響く。

ネイトが"撃たれた"と気づいた時には更なる5.7ミリの弾丸がネイトの腹を引き裂き、前のめりに倒れた。

 

「くそっ…こうなったら」

 

苦戦をして、追い詰められ始めている事を自覚したAR-57は動きながらR5とMCXに目配せを送る。

彼女達も考えている事は同じたったようで、すぐに頷き返した。

────同意は得られた。

このタイミングで使いたくはなかったと内心毒づきながら、あらかじめ説明書で記載された手順に従って、虚空に手を翳した。

 

「────"来い"っ!!」

 

こうやって、手を上げている最中でも攻撃を避けているので声にも命を危機が迫っているほどの必死さが窺える。

 

掛け声が鳴り響いた直後────体が突然、粒子に覆われた。

あまりにも突然の現象に何が起きたか、AR-57も一瞬だけ固まってしまう。

ネイトもAR-57を覆った粒子がなんなのかを理解できなかったが動きが止まった事を攻撃のチャンスと見て、一瞬で距離を詰めて鎌を振るった。

 

「────あ…れ?」

 

しかし、振るわれた鎌はAR-57に触れる事はなかった。それどころか、振るったネイトの腕が消えていた事を理解する。

ネイトは先程首を刎ねようとした相手に視線を戻す。

視線の先には、先程までPMCの様な必要最低限の装備をした格好から、純白を基調とした3色のトリコロールカラーのバトルスーツを纏ったAR-57がいた。

 

「あはっ!?あははっ!」

「こけ脅しを…っ!?」

 

思わずの当人すら予想しない展開はAR-57も笑うしかなかった。

ネイトはこの時点で腕が一本取られた事をまずいと思うべきだった。

惜しむべきはこの時点で後悔しても遅いという事だろう。

ネイトの腹に鈍い感覚が走るのと同時に自分の体が何故か、違う位置にいた事に混乱する。

そして背中に打撲の痛みを感じるよりも前にネイトは一瞬で現れたAR-57の膝蹴りを受けて死んだことも分からず頭部が潰れてしまった。

AR-57がネイトの顔を潰した膝を下げる頃にはさっきまでアレほど煩かった戦闘音が一気に静かになり、10体ほどいたネイト達も死体に変わっている。

 

「QBZ-191!コイツは触れ込み以上の凄さだぜっ!」

「M4!こんないいものを持ってるなら早く貸してくれればよかったのに!」

 

自分の周りに集まった、R5とMCXもAR-57と同じトリコロールのバトルスーツを身に纏っていた。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

カッカッカッ、と焦燥のような面持ちを浮かべながら必死に階段を登る。

ここなら、良さそうだ。

マハリアンは高台下の様子を見下ろした。

確かに壁に爆発は起きたが、壁にヒビが入っただけでまだE.L.I.D達は1匹も中に入れていない。

壁を壊そうとしたパラデウスをグリフィンが抑え、入り込もうとするE.L.I.D達をユーリ達、工作員が必死に押しとどめているから、

連続する金属音が鳴り響く。

あまりにも連続した音の数が多かったのでその金属音がする方向に視線が自然と向いてしまう。

その金属音の正体を見て、マハリアンは凍りついた。

 

金属音音の正体は自分の夢に何度も出てきた処刑人のナルシスの姿だったから。

 

「オラオラ!はやく死ねよ!」

『くそっ!』

 

そのナルシスと2人の兵士が戦っていた。

ナルシスは浮遊する8本の刃を自由に動かして、ユーリ達に飛ばしており、2人は飛んでくる刃を巧みな連携でギリギリ、弾いていた。

何度も何度も、切り裂かれかけてユーリ達は危険な状況に置かれており、

死ぬのは時間の問題だろう、とナルシスは焦らずゆっくりと苦しめてやろうと慢心していた。

事実、今のユーリ達はナルシスに目立った有効打を与える事はできていない。

刃物を防ぐだけで精一杯だった、一撃入れようとしたらユーリとヴェルグ3どちらが確実に死ぬ。

だからこそ、ナルシスも慢心をしている。

とはいえ、ナルシスは最も大事な問題に気づいていないまま慢心をしていたのもまた、事実だった。

 

『隊長…!』

『そうだ…あと少し…!』

 

そして、ユーリ達はその大事な問題に気がついていた。その問題が露呈した時彼らの決定的なチャンスとなる。

2人はその大事な問題が露呈する決定的なタイミングを待てばいい、ヴェルークトがこう言う乱戦で"よく経験する"出来事を待てば…

 

「ハハッ!お前達なんて視界にさえ入ればこんなに弱かったのかよ!全く!笑いが止まんない!」

 

笑い声を上げながら、飛ばしたり戻したりしていたナルシスの後ろに"それ"は現れた。

小さな唸り声が児玉する。

ユーリ達が足だけすれ違いざまに切り裂いて体の上だけが残ったE.L.I.Dがさながらホラー映画のようにズルズルと腕力だけで地べた這いずりながら、ナルシスの足元に近づいてくる。

一方のナルシスは目の前のユーリ達を狩る事に夢中だったので、その接近を許してしまった事に気づいていない。

 

「────オオオッ!」

 

ナルシスの足にE.L.I.Dの手が絡みついた。

その手はまるで油断した[[rb:生者 > いきもの]]の魂を[[rb:掻 > か]]っ[[rb:攫 > さら]]う死神の細腕にも見える。

 

「────!」

 

ナルシスの足にE.L.I.Dの手が絡みついた事でナルシスはギョッとして足元のE.L.I.Dについ、意識を向けた。

その瞬間、さっきまで自分に向かって飛んできた刃達が取り付けられた糸を外されたようにフラッと落ちていく。

 

『隊長!』

『────ああ!!』

 

この瞬間を待っていた。

ユーリは爆発一歩手前、限界ギリギリまで押さえつけていた腰部のブースターの出力を解放させる。

 

『────!クッ!』

 

この加速はパチンコの紐を限界まで引き切ったボールを同義だ、つまり凄まじい一瞬で想像を超える加速を叩き出す行為で────

その加速から発せられるGは己の肉体を自分から引きちぎるように感じられて、喉が内部から締め付けるような感覚が走り、口から入れる酸素が全く肺に入らない。

1メートル進む毎に耳鳴りは酷くなり、意識はどんどん遠くなる。それでも、この一瞬のチャンスを無駄にしない為に必死に根性で意識の手綱を握りしめる。

 

「このっ!?────ハッ!?」

 

ナルシスがE.L.I.Dを振り払う頃にはもう、ユーリとナルシスの距離は30メートルも離れていない。

加速もどんどん速くなり、2秒もしないで自分の目の前にやってくる。

 

「さっ!?させるかっ!!」

 

ナルシスも自分の状況の深刻さを理解できないわけではなく、さっきまで飛ばしていた刃物を自分の盾代わりにさせる事はできる。

この距離で刃物を戻すのにかかる時間は1秒も掛からない。

残った1秒で盾を作ってその場凌ぎ、そして戻した刃物で接近してきた男をバラバラにする。

まだ、なんとかなる────それは、ナルシスの理想の範疇でしかない。

現実は……ヴェルグ3が放ったPKPの弾丸によって刃物の帰還が妨害されると言う展開だった。

 

「────な、あ…!?」

 

あまりにも計算されたコンビネーション、自分の行動を全て読み切った上での的確な対処、自分がそんな事が出来るわけがないと"タカを括った"結果────そのしっぺ返しが今ここにきて、代償を払うハメになった。

ナルシスはここで1秒の無駄にした。

でも、ナルシスはまだなんとかしようとして────ここで自分の最もやってはいけなかった弱点が発覚する。

ナルシスの最もやってきてはいけない行為────それは鋭く飛んでくる刃物以外、何一つとして武器を武器を持って来ていなかった事だ。

せめて盾やナイフがあればほんの少しの可能性でその場凌ぎできたかもしれないのに、ナルシスは自分の傲慢故にそれをしなかった。

そのツケを今ここで払うハメになった。

 

「────く、くるなっ…!」

 

もう、ユーリは…目の前にいる。

ナルシスは命乞いで最後の1秒を無駄にした。

後ろに下がればまだ、他に屯していたE.L.I.Dを使ってその場凌ぎしたかもしれなかったのに…ナルシスは自分の傲慢さのツケを払うハメになった。

もう一度言う、ナルシスは今武器を持っていない。

つまり、自衛の手段が存在しない────無防備だ。

 

「来るなって……!?」

 

ユーリは身体をブースターの威力を殺さないまま身体を傾けて、右脚を持ち上げる。

痛みで股から上が全部引き裂かれそうだ、しかしその痛みはむしろ失神しそうになる自分を目覚めさせる良いきつけになって、むしろ心地がいい。

 

『────ここでっ!』

 

ユーリが吠えるような唸り声を上げる。

ナルシスの瞳とユーリの瞳がバイザーのスクリーン越しに目が合う。

一方は恐怖から逃げ惑う瞳、一方は痛みを堪えながら決定的な一撃を決める強い瞳。

 

『────ハアアアアアアッ!!』

 

ナルシスの脇腹に、ユーリの全体重とさっきまでの加速を乗せられた右脚が振り子のように叩きつけられる。

────ミドルキック。

空手では中段回し蹴りともよばれる蹴り技の一つ。

主に相手の腹部を蹴る為に持ち入り、内部による衝撃を主体とする技。

本来は左脚で蹴ったほうが肝臓にダメージを入りやすいのだが、あえてユーリは右脚で蹴ることを選択した。

その理由は簡単、ナルシスの右腕を蹴る為で、ナルシスはさっきの戦いで右利きであることを見抜いたユーリが腕ごと再起不能にするためだ。

ナルシスの重量はユーリの想定未満だった、つまり軽すぎた、それなのに重心は全くブレない。

[[rb:能力 > スペック]]としては、理想なバランスではあるが今回はそれも仇になり、ツケを払うハメになった。

なぜなら、そのブレない重心のせいで衝撃は右から左に全て響いてしまい、左腕にもダメージが入ってしまった。

 

「ガッ!?」

 

衝撃でナルシスか唇から吐くような声が漏れた。

全身の全てが潰れてもおかしくないほど強力な蹴り

────それだけで終わらせるほどユーリは緩くない。

寧ろ、ここからが本命────!

脚部からレーザーを帯びたブレードがチェーンソーのように回転して勢いよくナルシスの右腕を容易く斬り裂くそして、続けて右の脇腹もを抉る。

 

「────アッ?ギッ!?ギャアアアアッ!!ヤ、めて…!」

 

金切り声にも似た、命乞いを含んだ悲鳴。

狩人気取りのネイトは死を恐れぬモンスターに自身の傲慢さのツケを払うハメになった。

車に撥ねられたようにゴロゴロとナルシスはゴロゴロと転がっていく、真っ二つになるより前にユーリの蹴りの衝撃で飛んで行ってしまったのだろう。

地面を何度もバウンドしながら、最後は倒壊しかけの家屋に激突し、建物は崩れていった。

 

『────』

 

ユーリも蹴り飛ばした反動が自分に返って来て、空中1周ほど回転して地面に倒れた。

 

『────隊長!ユーリ!』

 

すぐさま、ヴェルグ3が駆け込んでユーリを担ぎ上げる。

 

『…大丈夫』

 

ユーリはヴェルグ3の肩を叩いて、大丈夫だと振る舞う。

 

『やったな…!』

『あぁ…』

 

視線の先にはナルシスが倒されたことに動揺して、徹底するパラデウスの兵士達が見える。

ユーリは困憊する気持ちをなんとか押さえつけて親指を上げてニヤリと笑う。

強敵のナルシスを倒したことをユーリ達は喜んでいたが、それ以上に喜んでいたのはマハリアンだった。

フォトンがなんとか息を切らしてマハリアンのいた高台にたどり着き、目があった。

これまでずっと怯えていた、マハリアンの顔に希望が灯っていた。

 

「指揮官さん…あの壁、まだ立っています!壊れてない!!」

 

自分がずっと起きる、逃げられない、恐ろしいと思っていた事が遂に、現実でなくなったことにマハリアンは歓喜した。

 

マハリアンが喜んでいる理由はあまり考えることはフォトンにはできなかったが、マハリアンが立ち直った事には同じように喜びを感じていた。

 

「お前の気持ちはちょっと俺にはわかんないが…」

 

フォトンは下を見た、壁の下の左と右で必死になってみんなが頑張った結果は、予想を────悪夢を越えられる、自分達の努力は無駄ではなかった。

立ち向かった事が今回は成功という結果を生んだ。

 

「取り敢えず、お前の見た悪夢は変えられる。それが分かったのはいい事だな」

「はい!この悪夢は変わる!変えられる!」

 

マハリアンは遠くで飛び交う砂塵を見つめた、パラデウスの姿はもう見えない。

壁もまだ立っていて、崩壊の兆しも見えない…マハリアンは改めて、自分の運命が変わった瞬間の余韻が冷めていない。

 

「大体、お前は色々悲観的で────」

 

そこまで言いかけた時、フォトンの視界に白い光が見えた。その白い光は真っ直ぐ、マハリアンの首元目掛けて飛んできているのが見えた。

 

「────マハリアン!!」

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