ユーリ達が襲撃の事故処理を済ませた頃、
鉄血がまだ闊歩する戦域で一つの決着が付いていた。
「なぜ…明らかに私の方が、人形としては優秀なのに…」
「経験、反応、訓練。それらで私し及ばなかった、それだけだ」
左肩を抑え、苦しそうに呻く416をわざとらしく上から目線で、M16A1は見下ろしていた。
地面に落ちていた自分の、M16A1の半身であるアサルトライフルを拾い上げる。
「いつもそうよ…M16A1。殺せるのに殺そうとしないくせに……隙だらけで、偉そうに……!あんたにとって、私は一体何なの…!?」
…はぁとM16A1がうんざりしたようにため息を吐く。
「やれやれ、そんなに知りたいのか?もう一度教えてやろう、416。お前は私にとって何でもない」
416に帰ってきたのは冷たい返事だった、M16は呆れたような態度で言葉を続ける。
「分かったか?価値もなければ、興味もない。全くもって何でもない……ましてやお前が私のせいで不幸になろうが、知ったこっちゃない。M4A1の動きを参考にして見切ったところでもともと性能差が埋まるわけもない、そんな”弱者”にどう興味を持てって?」
「……弱者ですって?」
「私に碌な傷もつけられない奴が弱者といって何が悪い?」
M16は類似語を3種類に分けて、わざとらしい態度でその言葉の重要性を表すように吐き捨てた。
「だから大嫌いなのよ、M16……!どんな時でも何もかも知ったような顔をして…これっぽっちも…弱みを見せないんだから!」
「…ふん」
先程まで冷徹な雰囲気から打って変わり感情的になって416がM16A1に叫ぶ、恐らくこれが本来の彼女だと言わんばかりだ。
「完全に無感情な人形などいない。だからこそ厄介なんだが…」
M16A1は416に背を向けて語りだす、416の手元にはまだ銃が残っている。
「私の帰りを待っている者がいるのでな、急がねばならん。だからそこをどけ、416。お前だって…私と本気でやり合いたくない筈だ」
「なるほど。それがあなたの弱点なのね、M16…そんなにM4がかわいいの?……でも、おあいにく様、彼女はあなたに守ってもらうほど弱くなんてないし、そのうち面倒を見られるようになるのはあなた……」
416が意地の悪い表情を見せる、それはまるで…
「…黙れ」
「……私の事は眼中にないんじゃないの?戯言して、聞き流せばいいじゃない」
M16が強い殺気を放ち416の胸ぐらを掴み近くの壁に押し付ける。
「……身の程が分からない奴が言い訳するなよ。いいか、今日のことは教訓として覚えておけ。さもないと、お前のAIを自殺という答えしか出せなくしてやるぞ」
「アンタも、その突発的な事を控える…べきね…さ、もない、と…」
どうやら416の行動に限界が走っていたらしく、捨て台詞を言う前に倒れてしまった。
電力が切れたらしい。
416をほおって、移動しようとしたタイミングで……
「チッ、416の後始末をつけに来たなんて言うなよ…UMP45」
「ふふ、撤退しようと思っていた?そうは思えないけどね?だあって、そこの箱まだすごい武器があるんじゃないの?」
物資を纏めて拠点を去ろうとした時、入り口に待ち受けていたのはHK416と同じ部隊の人形であるUMP45だった。
「それはな、お前らのために準備したものじゃないんだ…どう思うよ?」
「それは同感まあ何というか、私たちも今仕事を終えて帰る途中なの、だからついでに416を迎えに来ただけよ」
「まったく大したもんだ…たった数人で、独立して行動できるだなんて」
やれやれと言いたげにM16は壁にもたれかかる
「この辺りの任務なら、9ひとりでも十分よ。416には十分働いてもらったから、"休暇"を与えただけ」
「それで休暇中に、私の足を引っ張りに来たってか…フッ、そんなことをするのはお前らだけだよ、404小隊」
M16の皮肉を鼻で笑うような笑顔で流し、UMP45は続ける。
「安心したら?416だってあなたを殺しはしない、ただちょっと気に入らないだけよ」
「ああ、分かってるよ。だから命だけは助けてやったただろ?」
「だから、こちらもあなたの命だけは助けてあげるの。まあ、ここであなたを始末する羽目になっても”それ以上に強い”M4A1と戦わないといけないしね」
もし、ここでM16がHK416を殺していたら、例えM16であってもUMP45には殺されていただろう。
「ハッ、そりゃ助かった。取引成立だな」
「ただ、その状態じゃ、今帰っても、命を落とすことになるだけよ」
M16の足元見てUMP45は嫌な笑顔を浮かべる。
「16LABの技術を甘く見るなよ。そう簡単には死なないさ。それより45。今回の任務で…何か分かったか?」
「ほら、もっと近寄って(雨が降った、平原に。)」
UMP45が施設内に入り、傍受されないレベルの小さい声で話し続す。
「雨?平原?…どういう意味だ?」
「U1500から1700の近距離まで潜入して入手した通信記録よ。検索結果は合計で41960個。そのうちあれに言及し基本戦術の常識に合わない文字列は――興味があるなら、この比較図を見て。さらに重要なのは、その後彼女がしようとしていることで…」
「おいおい、マルチタスクモードに入らないでくれ」
凄まじい速度言葉を読み上げるUMP45にはM16は付いていけなかった。
「その小さな脳みその中に、誰でも分かる言葉を詰め込むことはできないほど、違法物資で詰まってのか?」
「あるいは、あなたたちを”生み出した者”なら、この意味が分かるかもね」
「どういうことだ?」
M16の講義をスルーしてUMP45は帰り支度を済ませる。
「ふふっ。お先に失礼するわ。もしグリフィンのメンツに会ったらこう言っておいてね…」
「お前らはもう死んだって言えばいいんだろ?」
404は存在しない小隊、生きていたと言う事実は存在してはいけないのだ。
「ふふっ♪そういうこと。それじゃ、また今度」
「はぁ…今度がないことを祈るよ。このクズども…」
それを聞くとUMP45は笑い出た
「ふふふ!!アッハッハ!!!」
「何がおかしい?」
何故UMP45が笑い出した理解できないM16は問う
「ごめんごめーん、あんたの言葉が面白すぎる…アッハッハ!!」
「だからどうしてだよ?」
だんだんM16も因縁を付けられたこともあって、声が強くなる。
それを聞くとUMP45は笑い出すのをやめ
「アンタ…いや、アンタ達AR小隊の評価はもう、私達以下よ!!もう、部隊がないってよりも酷い!!正真正銘のゴミ部隊!!!」
「何だと?」
UMP45はM16の少し驚いた顔見るや嘲笑い。
「アンタ達AR小隊はねぇ…ペルシカの任務を失敗した時から、アンタ達のことを気に入らない連中が今か、今かと付け狙う連中の目に止まってさ…」
「まさか…部隊は」
「あぁ、大丈夫。部隊は無くならないよ?でも、アンタ達はもうグリフィンのシステムをほとんど使えない…」
「まぁ、作戦に必要な情報くらいはくれるんじゃない?でもさぁ…"あんな事"しまくったんだもんねぇ?当然だよねぇ!?」
UMP45がM16の胸ぐらを掴み、大声で嗤いながらM16を罵倒した。
M16も流石にショックだったのか、近場の壁に寄り掛かった。
「ざまぁみろ、M16。416に散々粋っていたアンタの姿、最高にダサかったよ」
UMP45が首をかっきるポーズをして消えるように、その場からさる。
UMP45が見えなくなるのを確認したM16近場の瓦礫に座り込み、今更流れる人口血液の傷口を抑えた。
「ちくしょう……416の奴、M4A1から動きを覚えやがって……致命傷スレスレだっての…」
次の日……
昨日別の任務があるといって、別行動をとっていた416が肩を抑えながら基地に戻ってきた。
しかし、基地はまだ完全にグリフィンの求める稼働状況に至っておらず修復用の機材も昨日起きた、イントゥルーダーの襲撃で順番待ちになっていた。
「……っ」
「これで弾丸は取り出せたわ、後は代用の内部フレームのパーツが弾丸の衝撃で歪んでいるからペンチで矯正して……」
「いっだ!!??」
M4A1がやると同時にいきなり、ペンチで内部フレームの歪みを正しい位置に矯正したので416から悲鳴が上がる。
痛覚をカットする前にすさまじい痛みが走り、416が悲鳴を上げた。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃないわよ……痛みで殺す気?M4SOPMODⅡが鉄血を痛めつけることに快感を覚える異常者っていうのは聞いてたけど、あなたから移ったんじゃないでしょうね?」
「整備をするっていったんだから、その時点で痛覚は切るものでしょ……でも、随分とやられたわね。416……そっちで、何かあったの?」
「別に……少し、しくじっただけよ」
「そう……」
M4A1にはそれがなんとなく嘘だと分かってしまった。
言葉の裏に何かを隠している、そんなように感じた。
「これでいいわ」
処置が済んだ肩をM4A1が軽く叩く。
「そのようね……時間を取らせたわね」
416が自分の銃を持って立ち上がる。
なにか、さっきまで会っていた416の雰囲気と違うものを感じる。
「もう行くの?他に手伝えることってない?」
「結構よ……。後の作戦はUMP9とG11が手伝うから……私は、他の仕事をしているわ」
416はM4A1を見ないで手を降ると、基地を出ていってしまった。
「何かショックな事でもあったのかしら?」
416がいなくなった後からも、
新しいグリフィンの掃討部隊が次々と空軍基地跡に降り立ち、戦力がまとまり出したのを確認する。
「頭数が揃ってきたな…」
「はい」
そして先ほどのイントゥルーダーの襲撃に関するデブリーフィングが終えた後、ヘリアンさんに呼び出された。
「指揮官、今日の任務を告げる……と言っても少し特殊だがな」
「特殊ですか」
「ああ。もともと任務を担当していた主力小隊だが、なぜか突然通信を切ってな、こちらでは連絡が取れないので、捜索に向かってもらいたい」
普通に考えられるのは、部隊がジャミング範囲に引き込まれて通信を遮断されてしまったと考えるべきだろうが……そうではなく、自ら通信を切った…それが気になるところだ。
「あと、今回のボスには気を付けてくれ。通信を聞く限りではイントゥルーダーは詭謀が得意に見える、現在のところ大反撃には出ていないが、偵察は慎重に」
「了解です」
数十分後……
ユーリは自分と同じ”あの方”の側の人間である知り合いに電話を入れていた。
<やあ、ユーリ>
「ああ。ソテュカ、そっちの調子はどうだ?」
<まあ、こっちもあまりいい状況じゃないわね……お前ほどではない、テロの件では、さんざんだったようだけど>
「まあな、大方グループ側がグリフィンの目を逸らすためにテロリストを手引きしたんだろうって……思うんだが、どうだろうか?」
<可能性はある。”グループ”は複合体の企業だが……その実、新ソ連の影響で弾圧された大量の少数民族の支援をしているのよね……それで?お前はそんな、分かり切ったことを聞くために電話を入れたのかしら?>
「そう言う話は対面でしかしないのは分かっているだろう?実は、ちょっと頼みたいことがあるんだ。俺が”あの方”の命令でグリフィンっていうPMCsに入っているのは知っていると思うが、今回とある鉄血のエリートを潰せと、命令が来て……その、鉄血にエリートというのが、これだ」
ユーリがM4A1とオープン回線で見せた、イントゥルーダーの顔を見せた。
「こいつ……どっかで見たことあるなと思ってな、元鉄血社員だったお前ならヒントをもらえると思って連絡してみた」
<ちょっと確認するわ……ああ、こいつか。確か、ウチが働いていたところとは別のAI部門っていう所の連中がこれに似た試作型を作っていたわね……確か、データがあったはずだから送っておくわ>
「助かる」
<いいのよ。私たちの負の遺産、迷いなくぶっ壊してね>
電話が切られた後に、データが送られた。
……なるほど、思っていたよりめんどくさい相手らしい。
ユーリがM4A1達が待っている小部屋に入る。
「よし、それじゃあ今回やる事を説明する」
元の部隊に合流するまではこちらの預かりになったUMP9とG11もブリーフィングに出席していた…が、
「ほーらー起きてよー」
「ねむぅい…」
「はぁ…」
ブリーフィングが始まるよりも前にG11が寝てしまったためUMP9が起こそうとし、STAR-15が聞こえるように大きめなため息つくのも無理はない
「G11には後で説明しよう、それじゃあこの映像を」
スクリーン上に3つの画像が映し出される。
1つは一昨日辺りに制圧したビル、2つ目はマップ、そしてもう3つ目が……
「あ、45姉」
「そう、君のお姉さんUMP45だ。どうやら自ら通信を絶ったあと、連絡が取れなくなったらしいそれが一つ」
居なくなったと知ったUMP9が取り乱すと思ったがそうでもなかった。
織り込み済みだったのだろう。
「2つ目はジャミング装置の解除、こちらはあらかたドローンを使ってジャミングの濃度を測った際に目印を付けた箇所通信が悪くなっているらしい……」
「ふむ…」
STAR-15はマップを確認して、メモを取っていた。
「3つ目は、一昨日制圧したビルを前線拠点に改修する事が目的らしい」
「工兵部隊の随伴は?」
「ない。どうも、他の鉄血のエリートの対策で出払っているらしい。基本的に投下される物資でやってくれとの事だ…しかもこれを2日以内にしろ、というのが上層部からの指令だよ」
恐らく、イントゥルーダーの能力がわからない故に電撃作戦でイントゥルーダーを破壊したいのだろう。
本来ならゆっくりやっても良いとは思うが民間会社故政府以上に世論の声に弱いのが特徴がここで浮き上がる。
どうにかしてグリフィンの有用性を多くの人に認知される必要があると見た、
「念のため伺いたいが、誰か工兵の資格を持つ奴は?」
「416が…持ってまーす…あは、あははは…ごめんなさい」
「嘘でしょ?AR小隊はM16が…」
……ふむ、これは弱った、工兵資格がないと戦術人形はその資格以外の事は出来ない、
416は修復が終わったら基地を出てしまったらしい。
「わかった、基地は私が建て直す。工兵資格は持っているし…な」
「おぉ…これで、問題はクリアだね!!」
「それで指揮官はまた危険に晒されるのよ?SOPⅡ…その自覚はある?」
SOPⅡが手を叩いて喜んでいるところにM4A1が釘を刺す。
「でも、大丈夫だよ!!指揮官も私達と何度も戦場に出てるし!!」
「4、5年前の昔ならともかく…人間の指揮官を持ってく事自体このグリフィンでどれだけリスキーな事か……はあ、もう少し416に待ってもらえばよかったかな……」
M4A1が顔を抑えて、後悔している。
どうやら、前線に出てこられるのが怖いらしい。
やっぱり、人間は人形から見たら身体的に頼りないと思われているらしい。
「足手まといかもしれないが、極力足を引っ張らないように努力する。……取り敢えず、この未だ不明瞭な区域に今回のやるべき事を確認しよう」
これ以上の議論は作戦後にした方が良いだろう、新しい画像を映し出す。
「こんな状況では話題に出すのは気が引けるけど、クルーガーたちにも共有する予定の今回のボスのイントゥルーダーに関する耳よりの情報を手に入れたので先に見せておく」
映し出された映像を見て、一同は驚愕する。
画像はソテュカが送ってくれたものだ。
「嘘でしょ……」
「す、すごい……これ、プロトタイプの設計仕様書じゃん!?」
映し出された仕様書にはどんな性能で作ってほしいのか、
どの場所で運用する予定なのか、
どんな点は妥協するのか、
と設計に求められている内容が事細かに記載されていた。
「見ればわかる通り、得体の知られていないイントゥルーダーもつけ入るスキがあるというは分かるだろう。……無論、ロールアウトの際にいくつかの変更はあると思うが、この基本的にはこの資料を参考にしてほしい」
「どこでこんなものを……」
「ああ、景気のいい友達がいてね。……さて、これで作戦はやりやすくなっただろう。改めて確認しよう。やるのは3つだ。ジャミングをまた取り除く事と部隊の捜索、一昨日辺りに新しく掃除した、壊れたビルを簡易的な前線基地に仕立て上げるこの3つだ」
これが成功すれば、立地の関係上イントゥルーダーも流石に無視できない戦局になるだろうし、指揮の向上にも良い。
「これが今回の行動指標、404はどうしたい?」
「うーん、45姉が不安だし…休暇も貰ったわけじゃないからサボったら何言われるかわかんないや……でも、ここまでサポートして何もしないなんて後々マズそうだし……45姉と416が見つかるまで手伝うよ」
「ありがとう、そうしてくれるだけでも助かるよ」
「まぁね!」
「……」
UMP9達とは何かしらの因縁があるのかSTAR-15は面白くない表情を浮かべた。
「善は急げという、1時間後に出撃しよう。それまでに装備を整えておくように」
合図を確認してそれぞれが解散して各々の準備にとりかかった。
……
…
「…?おかしいわね…」
「お姉ちゃんどうしたの?」
作戦の準備をするために基地の端末を弄っているM4A1が困惑しているのを見て、M4SOPMOODⅡが話しかける。
「弾薬の補給は出来たんだけど…予備パーツや夜間用の装備の購入が出来なくて……」
「そんな事ないよ…ちょっとどいて…?あれ……出来ないね。前まで、出来てたのにどうしてだろう」
「……何してんのよ」
そうこうしている内に後が支えてきたようで後ろに他の戦術人形が待っていた…
「あ…ごめんなさい」
いそいそと端末から離れると待っていた人形が必需品を購入していく…
「…おかしいわね」
「は?何が?」
「いえ、私達が買おうとして買えなかったのを貴女が買えたから…」
不思議だ…なぜ購入出来るのだろうか…
「プロフィール見たら?買えない理由がよくわかるでしょ」
馬鹿にしたような態度で戦術人形が去るのを確認してM4は端末からプロフィールにすると…
「これは…」
M4はプロフィール画面で確認すると……
”戦術人形の信用低下による購入制限”と書かれていた。
戦術人形はある程度問題を起こすと信用に制限が掛かる、制限がかかるとグリフィンのバックアップにある程度信用低下の度合いによって制限が掛かる。
今回、M4…いや、AR小隊にかけられた制限は……
「制限……最大?」
制限最大は緊急修復の使用禁止、随伴及び支援部隊の使用禁止、命令の拒否権の剥奪、宿舎の無料化制限、報酬のカットがある。
おおよそ戦術人形のバックアップに必要なほとんどが制限されている状況に置かれていた。
着実ではあるが、もう一度成果を上げなおしていたAR小隊にはあり得ないことだった。
「つまり…弾薬と電力以外の無料サービスがなくなった…と?」
「…はい、…本当に…本当に…ごめんなさい」
はぁ…と溜息を付き思わず、ユーリは頭を抱えてしまった。
これからのサービスがタダでは支えないとなると今は金を支払えばどうにかなるかもしれないが、今後の作戦に支障が出てしまうだろう。
「しかし…こんな事になるなんて、君達は一体何をしたんだ?」
「…ごめんなさい。たぶん、心当たりはあるんですけれど……それは後で、必ず話します。だから…」
そう言ってM4は私の手を強く握り
「……お願い。もう少しだけ、私たちを……信じて、お願い……します」
「……分かった」
正直今のところのAR小隊を見てもSOPⅡ以外は大きい問題を起こす…などとは思えない。
嵌められた線も考えられるが、それにしては他の指揮官達や戦術人形よ馬鹿にした声がそこ彼処に聞こえるし、M4A1自身にも心当たりがある様だ。
今回はサービスを使えるJS9達に人形に物資を買ってもらい、その分の料金を建て替える方針にした。
次からは命懸けの状況でも弾薬をケチる必要があるかも知れない。
作戦開始10分前……
「私たちは手筈通り、あなた達と一緒に戦いつつ……必要に応じたサポートする、といういつもどうりのやり方でいいんですか?」
JS9は珍しく、同じことを聞いてきた。
「ええ。それでいいわ、緊張している?」
「そうですね……なんていうか、ほら?」
JS9が親指で基地に居る別の人形たちを指さした。
明らかに、隙があったら後ろから撃ってやるって、雰囲気だ。
「先輩って、前に何をやらかしたんですか?……もしかして、捕虜とか民間人を傷つけたりしたのだったら、納得はできますけど、先輩がそういう度胸のある人形には思えませんし」
「あのね……」
JS9は生真面目で見込みがあって、向上心がある人形ではあるのだが……距離感というかジョークがどこまで許されるのか、まだわかっていないらしい。
M4A1はこれが、STAR-15やM4ASOPMODⅡに聞かれていたらどうなるんだろうか、とこめかみを抑えずにはいられない。
「私もJS9と同じ意見だ。彼女たち、何をしてあんなことになったんだ?」
「あー……その、いや…何か、その、悪いこととか、そういう事をした訳じゃないんだけどさ…」
ユーリは以前から知り合いの様な応対をしているUMP9に聞いてみる事にした。
相談されるとUMP9は後ろめたそうな表情だった。
どうも違うらしい、だとしたら?
「機密情報とかのリークでもしたのかい?」
「してないしてない……まぁ、45姉とかはざまぁみろと馬鹿にしてるけど、一番の理由としたら…」
「お前がAR小隊の指揮官か?」
UMP9が何かしら言いかけたタイミングで、出動時間ギリギリになって別の所属の指揮官が部下の人形を連れて話しかけてきた。
意図的にタイミングが悪いところでやってきたのかもしれない。
「えーっと。何か用でしょうか?」
「……お前は新任のようだが、グリフィンの理念はもちろん知っているよな?」
「確か、人類の輝きを更新せよ……。でしたっけ?あの、パクr…いや、極めて"人類"に対して有用な概念だと存じます」
いやぁ…危なかった、思わず火に油を注ぐ事になるところだった。
まぁ、それはそれとしてその指揮官は
「それなら、何故あの人類の汚れにしかならない人形を抱える?」
大方、AR小隊の事を言いたいのだろう。
目が…いや、身体全体の態度や引きつれている部下の人形たちの態度でよくわかる。
此方を侮蔑していた。
「彼女達が居なくなると私の人類の輝きの更新ができないから……と、回答させていただきましょう」
これ以上同じようなAR-15の時から言われ続けてきた議論を重ねる理由もない。
どうしてAR小隊の連中をクズ呼ばわりする理由を聞いても、「グリフィンに忠誠が無い証」だと一蹴されて教えてくれないのだろう。
「そうか。だが……」
相手の指揮官の人形たちが、いきなりこちらに銃口を向けてきた。
「……!!」
急いで、M4A1たちもその人形たちに銃口を向ける。
一触即発だ。
「どういうつもりか、聞いても?」
「警告だ。もし、お前がAR小隊を使い続けることで輝きが少しでもグリフィンの泥を塗るようならば……お前らを後ろからでも撃つ」
制圧された倒壊したビルの跡地にて…
「ふう、ようやくこのエリアの確保も終わった。あの、M4先輩?」
「なにかあった?JS9?」
「何かあるというか、何か起きるかもというか……さっきの私たちに銃を向けた連中、まだ私たちを狙っているのかなあって……」
無線を弄っていたM4A1の手が止まり、ゆっくりとされどすさまじい力でJS9の肩を掴んで自分の側に引き寄せる。
「せ、先輩!?私たち、人形とはいえ女性同士ですし、お国の体制を考えたらそう言う関係にはならない方が……」
「……変な妄想しないでちゃんと聞きなさい。ちゃんとした成果を認められるまで、グリフィンでは誰も信頼しちゃダメ。ここは、人類の希望みたいなアピールをしているけど、人間どころか……いえ、人形同士でも蹴落とし合いがはびこっているの。隙を見せないで、今のような味方を疑いでもしたら、それを口実に殺されかねない……実際、殺された奴を知っている」
「そ、そんな……じゃ、じゃあ先輩はどうして……」
「あなた達はここのまだ、勝手がわからない新人だからよ。覚えておきなさい……私は、他のグリフィンの人形を信用していない。あなたも信じるのは勝手だけど、騙されないように中止しなさい……いいわね」
「わ、分かりました」
M4A1はJS9の肩から手を放して、改めて下のフロアで待っているユーリに連絡を入れた。
「指揮官。最終階もクリアです。おおよそここに鉄血は居ないでしょう」
<分かった、それでは…始めるか>
普通に考えて、当たり前なのだが誰もいないビルに指揮官を招き入れて、邪魔な家具をどかす。
これからこの部屋をグリフィンの指揮施設にする為の前段階の事を行わなければならない。
「悪いな。負担を増やしてしまって」
朝言われた言葉がM4A1の中で、再び反芻する。
……足手まといかもしれないが、極力足を引っ張らないように努力する。
「足手まとい……では、ありませんよ。こうして、あなたは私たちが出来なくて困っているトラブルをいつも解決してくれるじゃないですか?」
「はい!そうです!指揮官は戦闘でも多少役に立つマスコットです!」
「JS9。この仕事が終わったら、正しい上司の敬い方を教えてあげるわ」
「あうう……また、失敗した」
ユーリがジャミング装置を弄って、解除に成功した。
そう言えば、M16姉さんたちを探していた時にも、デリーターのことを知っていたし、こういうことに強い人だったんだろうか?
「これで、大丈夫…でしょうか?」
「やってみよう、<よく聞こえるか?>」
<行けます>
漸く妨害電波を受けずロングレンジに電波をアンテナの設置と鉄血が使用していたレーダーと復旧に成功した。
60年前くらいの政府嫌いのアナーキーストが家を改造して作り上げる、秘密基地の様なものが出来上がった、
だったら無線の周波数も少しカッコつけたものにでもしようか?
いや、多少恥ずかしいな。
無線の確認をM4に確認してもらいグリフィンの要望通りに指揮施設を建設し終えたらもう時刻は夜の10時を過ぎていた、
戦場とは言え、これ以上1日の間に部隊を動かし続ける訳にはいかない、
部隊の捜索もジャミングの撤去は明日から始めても遅く無い、その為交代で見張りをして睡眠をとる事にした。
午前5時を回る。
「それじゃあみんな悪いけど、作業は私がやるから後のみんなは部隊の捜索とジャミングのクリアを頼むよ」
ますます分からなくなってくるそれが時間を経てば尚更だ、その元を立つ必要も出るだろう。
各々のメンバーが了解した後、ジャミングがあると思われる箇所に向かっていく、
「JS9。おそらく大破している人形を発見しました」
「私が確認します。64式は警戒をしてください」
64式短機関銃が発見した死体に、JS9が駆け寄る。
倒れた人形の銃から、IDが確認できた。
「ID確認。先導部隊で行動していたブルーフェニックスですか……先輩、先に展開していたブルーフェニックス部隊の人形の残骸を発見しました」
<了解。軽く状況を確認したら、こっちに戻ってきて>
「了解です」
64式短機関銃とJS9はぐるりと状況を確認した。
建物のあちこちに穴が開き、そこら中に散らばったパーツや人工血液がその戦闘の激しさを物語る。
「鉄血も手酷くやりますね……」
「まともじゃない」
綺麗に並べられて、目隠しされて滅多撃ちにされた残骸や一箇所に集まるには不自然な血液量から恐らく一度捕まってから情報を吐かされて後に処刑されたのだろう。
64式短機関銃の”まともじゃない”という言葉は言い得て、妙だった。
指や爪先など感覚の詰まる箇所を斬り落とされてる様子からそれが分かる。
JS9はM4A1たちといったん合流した。
「ひどい状況です。こんなことにどんな意味が」
「殺したかったんでしょうね。私たちを」
STAR-15は復讐なんだろうと吐き捨てた。
鉄血が人類に反旗をした際には、これと同じような状況がそこかしこに発生していたらしい。
どうして?それに、理由なんてない。
世の中、そんなものそんな諦観に近い感覚で報告の質問をSTAR-15は回答した。
「それで…?情報が吐されたとして…ブルーフェニックスは私達の情報を持っていたかしら?」
「…それはわからない、でも…それを差し引いて…シッ…!!誰か来たわ」
M4の警告を聞き、全員は一斉に自分たちが倒した鉄血の死体の下や、瓦礫などに身を隠した。
「何持ってる……ハンドガンなんて、サイドアームは足りてるだろ?どこで拾った?」
「カッコいいから、殺した奴から奪ったんだよ。戦利品として手柄の証明にもなるし、それにしてもこいつの持ち主の断末魔知ってる?泣きながら私達の慈悲に縋っていたよね?」
「探し物は後にしろよ、ここいらに残っているかもしれないクソどもを根絶やしにする必要がある」
どうやら鉄血兵のパトロールらしい鉄血兵の1人が持っているであろうハンドガンは、64式短機関銃に見覚えがあった。
「あのピストル…は?……私が、照合したときにスキャンした銃じゃないですか……」
「相変わらず鉄血の性根は腐っているわね……誰のかわかる?」
<データベースに該当あり、鉄血が持っているのはブルーフェニックスのM9の銃だよ>
それが本当なら消されたデータ座標もその鉄血兵が所持している確率は高い。
「敵数五人、一回で仕留めるわよ」
「準備OK、いつでも撃てるよ」
ここは鉄血兵が見当違いの所を探している隙に決めるべきだろう、そう判断したM4は同時にキルする事を指示する。
「今よ」
「銃で遊ぶよりデータベースを落と……」
一斉に放たれた5発の銃弾は全ての鉄血兵の頭部に命中し撃破される。
「…殲滅完了、データを探すわよ」
「…見つけたよ、お姉ちゃん。…クソ」
先程の吐かされて情報を喋らされた人形のことを思い出し、SOPⅡが悪態をついた。
「ひ、ひどい……」
さっきまで銃口を向けられていた相手とはいえ、SV-98もこの惨状には、被害者を憐れまずにはいられなかった。
「仲間はあんな形で殺されるし、敵はジャミングでウザい…嫌になる」
「ええ。全くよ、それにサービスも受けられないなんて…」
「そのくらいにしましょう。先導部隊の残した座標を取り出せたわ、それと…破壊された鉄血の端末からジャミングの位置もある程度が…」
まずはジャミングよ…とM4は部隊を先導した、怒りの眼差しを浮かべながら…
座標を頼りにジャミング施設を破壊するのは順調なものだった。
もうしばらく施設を占領をしようと思った矢先…
<…ふふ、M4A1、貴女なら来ると思っていたわ>
「イントゥルーダー…」
状況の確認のためか映し出されたホログラム越しにM4とイントゥルーダーは再び対面した。
<どうかしら?私の作った舞台のご感想は?>
「……そうね。あなたにふたつ言いたいことがある」
<おや、2つも?>
「先ず1つ。これは質問。……M16姉さんはどこ?」
<M16?…あぁ。実を言うと、彼女の居場所は知らないの。正直、そんなことどうでもいいしね>
イントゥルーダーは肩を竦めて答える、確かにイントゥルーダーはM16の存在は認識していたが、M16がどうしているかは何も言っていない。
「そう、私もあなたに期待なんかしてないから別にいいわ。それともう1つ……イントゥルーダー、あなたの舞台と演劇の出来は最低よ、きっちり出来の悪さの責任を取ってもらうから覚悟なさい」
<おやおや、出来るだけ悲惨さにこだわったっていうのに……どこがダメだったのでしょう?やっぱり、人間の死体も混ぜた方がよかったのでしょうか?>
「こ、こいつ……!」
「く……狂ってる……!」
JS9の言う通り、イントゥルーダーは狂っているとしか表現できなかった。
「あんたたちの目的は一体何なの?劇を作るのにここまでやるの?私達はもうあんたの管轄に踏み込んでいるのに、ジリ貧なのはそっちでしょ?なのに、反撃も攻勢にも出ないなんて」
<あら?何もせずにいるのが、逆に驚かしちゃいましたか。敵に、手の内を明かすのは愚かの極みですが…教えてあげますわ。わたくしが受けた命令は…>
イントゥルーダーは息をすうっと吸う。
<……実は何てことないのよ、ただ暇つぶしをしろというだけ>
「は?じゃあ、いまあなた達がやってるこれも?暇つぶし?それだけ?」
明らかに先程まで逼迫していた緊張が糸が緩む様に崩れていく、そしてだんだん怒りを覚えていく。
<あら?何かおかしかった?もし、エルダーブレインがお望みなら、あなたたちと楽しくお茶したかったけど。わたくしのところまで来ますか?…来れれば、ですけど>
「そんなことはたやすいことよ、イントゥルーダー」
M4がストックの長さを調節する。
「あなた、部下の躾がなってないようね。先遣部隊が残してくれた座標を既に解析したから、すぐにでも会えるわ、お菓子の用意をしておくのね」
<ふふ…じゃあ楽しみに待ってますわ。ですが、その前に……新しい、序曲を奏でなくては>
「何のつもり?」
イントゥルーダーの声色が嘲る様な声になり
<こちら、ブルーフェニックス。ファイヤーヘッジホッグに迫撃砲の要請>
「何ですって!?」
M4A1はロックされた座標を確認して驚愕する。
そこは今も指揮官がいる、改修された指揮施設なのだから…しかも今はもう生前者もいない、ブルーフェニックスを騙っている。
「ファイヤーヘッジホッグ!!攻撃を中止して!!こちらAR小隊のM4A1!!そこにいるのは味方よ!!」
<ブルーフェニックスからファイヤーヘッジホッグへ騙されるな、AR小隊は手柄を取るための嘘をついている>
「よくも!!!!」
<了解した、薄汚いAR小隊のビッチどもめ…相変わらず頭の中は自分の事だけなんだな>
ブルーフェニックスの警告なりすましたイントゥルーダーの声に誘導され爆撃準備が整って行く
<そういうな、AR小隊も手柄ないとピンチだからな>
<お前にも誰かを気遣う気持ちがあるんだな?AEK-999?>
<酷いこと言うなぁ>
偽りの声で慰められてもM4A1には何も嬉しくはない、急いでM4A1は指揮官に連絡を取る。
「指揮官!!逃げて下さい、イントゥルーダーが部隊になりすまして、貴方の居るところに、迫撃砲で攻撃させました!!」
<了解、すぐに……>
通信越しで爆発が響く。
<ああ…クソ!!きやがっ……>
突然甲高い音が聞こえたと思ったら通信が途絶してしまう、おそらく指揮施設が破壊されてしまったのだろう。
「指揮官?指揮官!!!」
<ウフフフフ!!!M4A1、情報戦とはこう言う事を意味するんですよ?>
M4A1の焦った声はイントゥルーダーの活力を漲らせた。
「イントゥルーダー…!」
<あら?これって、私が悪いのかしら?ブルーフェニックスでしったけ?彼女たちがあなた達の指揮官を逐一監視していたのに?むしろ、盗撮者を始末してくれたことに感謝……ではないのね?どこが悪かったのかしら?>
「……殺してやる」
滾らせたのはイントゥルーダーだけでは無かった。
……
金属の足音、銃声、砲声が響く。
ママ…!!ママ…!!
どうして、どうして…?起きてよ…!!
笛のような音がなり、近くの建物が崩れ落ちていく。
どこかで、母親の死を嘆く子供の声が聞こえる。
……ユーリ!!ユーリ!!
自分を呼ぶ父親の声が聞こえる。
……パパ…パパ…!こっち…こっち…
……声が聞こえたぞ!!誰か!!誰か!!いるのか!?居たら、近くの所を石か何かで叩くんだ!!!
腕を動かそうとすると、とっても痛い。
妹は、妹は何処に行ったんだろう……?
妹と一緒にパパやママにお弁当を渡すつもりだったのに……
……痛い…諦めちゃダメだ…
必死に痛みを我慢して、近くの壁を拳で叩く。
居たぞ!!瓦礫に埋まってる…待ってろ、今助けるぞ!!
1…2…3!!いまだ!!よし!!瓦礫を外せた!!
光が見える。
近所のおじさんが見えた。
そして、隣にパパの姿が。
……あ……ぁ…!!その子は私の息子です!!息子をこっちに…!!
パパに抱き寄せられる。
ここにいるのにちょっとだけ、驚いた。
パパは……お医者さんだったから。僕より、みんなを助けるために頑張っているはずなのに
……そうだよ、ユーリ…パパだ。
……妹は?
……大丈夫だ、避難している。
……あぁ…そんな!!オクサナ!!オクサナ!!
恋人の死を悲しむ、男の人の隣で機関銃の音が鳴り響く。
……キャーー!!
誰かが悲鳴を上げた。
……く、苦しい…助けて
……ソ連派の軍人達だ!!
……東の辺りからきたのか?それなら警察も皆殺しか……ここはもうだめなのか?
……こちら、Z-09。生き残りのロシア派の民間人が数名見つけました。
……この先の新しきソ連には不要だ、抹殺しろ
……し、しかし、これでは……子供だって
……これも新世界の輝きを更新するためだ。殺せ、ソ連に忠誠を示せ
女の兵士が戸惑っているように見える。
あの兵士さんは……新ソ連派閥のワッペンを付けていた。
……逃げるぞ、ユーリ、ついてきなさい…
すぐ近くで銃声。
……やめて!!私達はただ…
……どうして!!酷い!!子供を殺すなんて!!
言い訳も聞かず、問答無用に殺されていく。
その中に、私が知っている近所のおばさんの声も聞こえた。
……貴様らロシア人には虐げられてきた民族の怒りのメッセージを教えてやる!!
銃声がさらに広がっていく。
必死にパパの手を掴みながら銃声から逃げていく。
……ソ連派があちこちに!
……あいつ等人形を……!?
……戦術人形がおれたちを殺してる!!
……パパ!どうして、兵隊さんがこんなことを……!
……あいつらは私たちを殺して綺麗にしようとしているらしい、早くこの町から出ないと
今度は放送も流れた。
……我々は米蘭島以降、何の解決も出来ず、第三次世界大戦を引き起こした、無能なロシア政府人を抹殺して、新たなソ連をつくるのだ!!
……ママーーーー!!!
銃声がまた聞こえた。
さっき、ぼくより小さい子が……思わず、足をとめた瞬間……また、すぐ近くて爆発し床に転がってしまった。
……今ここに!!正義を成し、強く、たくましい新たな希望あるソ連を蘇らせれるのだ!!
カツ、カツと足音が聞こえる。
……まだ、息があるなんて。
うっすらとした、意識の中。
女の人の声が聞こえた。
さっき、戸惑っていた人だろうか?
……軍曹は人類の輝きを更新するために、古い人間は掃除しなければならないといってたけど……本当にこんな幼い子まで殺さないといけないことなの……?
カポンと、音が鳴った。
……お水よ。ゆっくり飲んでくださいね……ああ、これで私……縛り首ね。
「……う!!はぁ…はぁ…!」
自分を押し潰していた、瓦礫を何とかして退けて、倒壊した建物からユーリは何とか抜け出す。
酷い痛みだ。
しかも、過去のことをそのまま追体験したような夢も相まってさらに痛い思いをしている。
「チッ…照準が狂ってるな…」
幸いにも護身用のAK-102を見つけ出したことは出来たものの強い衝撃で明らかにエイムポイントがありえない位置に表示されていた。
恐らく…位置調整用のミラーが破損したのだろう…
「おい、動くな。動いたら、殺す」
などと考えて居たら、後ろからマズルを突かれる、まずい状況だ……。
「分かった」
「その銃を捨てな」
仕方なく両手を上げる。
全身が痛くて仕方にない。
「なぜここにいる?ここは戦闘区域だぞ?」
「そうだな……私がグリフィンの指揮官だからな」
声色は冷たいが声に聞き覚えがある。
「もしかして……君がAR小隊のM16A1?」