「さて、帰るか」
M16A1が倒したイントゥルーダーの残骸を死体袋に詰め込む、
この残骸はI.O.Pに送って、解剖するらしい。
まぁ、生きている状態よりはマシだろう……色々と。
「帰るのはいいですけれど、その前に私のダミー返してください」
「ああ、わかった……あれ?」
M4A1のダミー人形に入っていたユーリが元の体との接続を切ろうしているが……一向に戻る気配がない。
「どうしたんです?」
「ダメだ……全く、接続が切れない。一度、自分の体が置いてある場所に行ってみるしかないな」
M4A1はがくりと肩を落とした。
自分と同じ顔をした人形が自分の知り合いと同じ挙動するなんて、気味が悪い。
肩を落とすのは彼女の気持ちは最も的確な行動とも言える。
「それで……?どちらにあるんです?あなたの体は?」
「そこまで遠い距離じゃない。少し前までM16もそこにいた。歩いて20分くらいだ。走ればもっと早い」
「なぁんだ、寄り道しないで帰れる位置じゃないですか」
基地とユーリの身体がある拠点はちょうど直線上にある。
ダミーとの接続をきり、そのまま空軍基地に帰れるだろう。
「……そうね。指揮官が悪いわけではないので、すぐに体を返してもらえればそれでいいです」
中ば諦めたようにM4A1も納得してくれた。
劇場後を出て、後は自分の身体がある拠点に向かおうとしたところ、奇妙な光景に出くわした。
おびただしいほどの人形の死体……残骸の山。
その残骸は鉄血とグリフィンの人形で混じっていた。
一見すると鉄血とグリフィンでの戦闘で積み上げられたのか……と思ったが、鉄血もグリフィンも同じ方向を向いて死んでいる。
つまり、
この残骸の鉄血とグリフィンの人形達は同じ敵と戦って殺された、そういうことになる。
人形達の残骸がついている先には……不気味な雰囲気を漂わせている2人の人形が佇んでいた。
「なに……?なんなの……この人形は?」
鉄血とグリフィンの残骸から、双方の敵である事はわかる。
そして、その双方を相手取り皆殺しにしているから、手練れである事も分かる。
頭にコードが直結してる仮面をつけているから、人形であるということは分かる。
巨大なブレードと2丁拳銃をそれぞれ装備しているから中、遠距離戦闘は得意じゃないこともわかる。
しかし、彼女たちはそれ以上の独特な特徴が合った。
それは、雰囲気だ。
M4A1達が見た2人の人形はとにかく不気味に感じた。
2人組の人形が襲いかかった。
「くっ!!」
先に反応したのはユーリ(の意識で動いているM4A1のダミー人形)だった、ライフルの引き金を引き絞り、5.56ミリを発射する。
しかし、その銃撃が避けられる。
ユーリも同じように宙返りして避けようとしようとしたが、ある事を思い出して諦めた。
模倣機能があるとはいえ、宙返りはできない。
より正確にいえば、いま模倣機能を活用している本来の自分の体があるスペースで宙返りできるほどの広さがない。
「ま、マズイ!弾がっ!」
イントゥルーダーとの戦いで使いすぎでしまったらしい、弾薬が無くなっていた。
予備のマガジンも空だった。
その間にもどんどん、敵は近づいてくる。
「こうなったら……喰らえっ!!」
ユーリは迷いなく自分のM4A1アサルトライフルを仮面の2人に向かって投げつけた。
あまりにも突飛なやり方に、2人組の人形も面食らったらしく白い髪の顔面に見事当たり、大きくのけぞる。
「────そんなのアリ!?」
思わずUMP9の声が聞いたこともない裏声を上げてしまう。
「アリだ!今のうちに攻撃しろ!」
「そうよ!崩れた!」
M4A1がこの先にのけぞっていない方の黒い人形に発砲。
黒い人形はブレードをなるべく刃で自分の身を守るように構えて、弾丸を弾く。
「(今の動き……?)」
弾丸を手持ちの武器で弾く戦い方……その戦い方にM4A1はどこかで見たような違和感を覚える。
「隙あり!!」
この隙にM4SOPMODⅡが黒い人形を白い人形の元に蹴り飛ばし、グレネードランチャーの引き金に指を伸ばす。
M4SOPMODⅡの持っているグレネードランチャー用の擲弾は今装填されている最後の1発だけだ。
できれば1番大きい結果を出したい。
グレネードか爆発した。
「倒した?」
「そうじゃないみたい」
爆発してもクレーターできるだけで2体の姿はなかった。
だが、人工血液の血痕の跡があるため、ダメージは負っているらしい。
タタッと水が滴る音が聞こえる。
その後は……
「……しまった」
その音はユーリのすぐ後ろで聞こえた。
指揮官がユーリであることを見抜いていたらしい。
ユーリの動かしていた、M4A1のダミー人形が黒い人形に背中を突き刺されてしまった。
「し、指揮官!」
M4A1は叫んでしまった。
「あ、あれはダミーですから!」
「そ、そう、そうだった。いや、そうだけど!!」
JS9が思い出すようにダミーだとフォローを入れても、ユーリは接続が切れない状態なのだ。
ここで、大破しようものならどうなってしまうか予想したくない。
「そこから離れなさい!」
64式短機関銃が黒い人形に向かって発砲。
しかし、黒い人形はそれを意に介さず突き刺していく。
「……」
さらに今度は白い人形が躍り出て、二丁拳銃でM4A1達に襲いかかる。
「────大丈夫か?」
「……なんとか。助かったわ、M16姉さん」
「流石にお姉さんも働かないとまずいんでね……」
白い人形からの銃撃は直前でM16A1の背中のガンケースでなんとか防ぎきった。
あのガンケースには、盾としての機能もあるらしい。
「────まだだっ!!」
ユーリがダミーの腕を動かしてより深くブレード突き刺していく。
「あのバカ!何やってんの!?」
ユーリが危険な状態なのに、STAR-15は彼(?)の突拍子もない行動に困惑してしまった。
だが、この行動は意味を持ってやったものだ。
「────!」
さらに突き刺したことで黒い人形がブレードをなかなか引き抜けず四苦八苦している。
「動きが止まった?……今なら!!」
黒い人形が動けないウチにSV-98がバイポッドを立てて伏せ、姿勢を安定させると引き金を振り絞った。
「当たれ!」
SV-98の7.62×54mmR弾が発射されて、黒い人間の顔面に命中する。
「────!!??」
「弾が弾かれた!?」
あの仮面は対弾性能も持つらしい。
しかし……スナイパーライフルで使われた7.62×54mmR弾の威力を受け止めきれず、仮面が弾かれた。
「あ、あなたは……!?」
パキ、パキ、と音を立てて仮面の素顔が明らかになる。
その仮面の素性を見て、M4A1は困惑する。
「え、エクスキューショナー?」
仮面のしたの素顔は以前、自分が倒したはずの鉄血のエリート人形。
"エクスキューショナー"だった。
しかし、以前のような交戦的な雰囲気ではなくまるで糸に操られたマリオネットのように虚ろな雰囲気を感じる。
「……任務は達成した。帰還する」
「わかった」
「な、そのバッグは!?い、いつの間に!?」
STAR-15達が気がつかない間に、白い髪の人形がイントゥルーダーの入っていた死体袋を背負っていた。
「────あ!?ちょっ!待ちなさい!」
イントゥルーダーの残骸の入ったバッグを背負うとエクスキューショナーは今までの粘着していた戦いぶりが嘘のように迷いなく、ユーリに突き刺していた剣を放棄して、M4A1達から逃げ出した。
「……初めから、イントゥルーダーが目的だった?」
「あの姿は一体?明らかにヤバい感じだったけど……」
彼女達の考察に参加せず、M4A1がダミーの元に駆け寄る。
「指揮官!大丈夫ですか!?」
「あんまり……大丈夫じゃないな」
「確かにこれだけ、突き刺さっていれば……」
確かにここまで深く突き刺さっていたら、とても"大丈夫"な状況ではない。
だが……
「いや、こっちは……コツがいる差し方したから簡単に抜ける。問題は……」
ユーリはエクスキューショナーがなかなか引き抜けなかったブレードをあっさり引き抜く。
「問題は……大丈夫じゃないのは……わたしの、からだ……」
やっぱり、あの時貰った砲撃が聞いているらしい。
背中に凄まじい痛みを感じる。
エクスキューショナーに背中をやられたせいだと思っていたけど、さっき膝を着いた時に痛覚が繋がってない事がわかった。
この痛みは……あの時くらった砲撃の痛みが今になってやってきたものだったらしい。
ガクリ、と自分の意識とダミーの身体が崩れ落ちる。
意識を失う直前……近くで、自分の名前を呼ぶ少女の悲鳴が聞こえた。
……
…
「ほら、お水よ。ゆっくり飲んで」
夢の続きを見る。
自分を殺しにきたはずの兵隊さんから水筒のお水をもらっている。
さっきまで、ぼやけていた景色や感覚がはっきりしていく。
「よかった……持ち直してくれたみたいね」
兵隊さんがすこし、ほっとしたようにため息を吐いた。
「どうして……?」
思わず聞いてしまった。
ふつう、助けてもらったらお礼を言いましょうと、教えてもらったはずなのに。
「……私も、無理やりここに連れてこられたからよ」
兵隊さんが涼しくするためにヘルメットを外す。
この兵隊さんは、緑色の髪をした女の人だった。
「お父さんが捕まってね。しかも、聞いたことも心当たりもない……絶対にソ連派の連中がでっち上げた罪。それに、巻き込まれて私も捕まって、無理やり軍隊にされた……だから、私は他の連中のように真面目に仕事なんて、出来ない。むしろ、あなたが生き残ってこのどうしようもない、新政府派の連中を滅ぼしてほしいとすら思ってる……それだけよ」
ガシャン、ガシャンと音を立てて人形がやってくる。
あいつ等は……!近所の人たちを殺した人形たち……!
『配乗対象を確認』
「いいのよ、これは私の”お楽しみ”だから」
兵隊さんが僕と人形の間に割って入り、道をふさいだ。
『アレは非国民です。あなたの事情は関係ありません』
「生意気言うんじゃないないよ、人形が」
『下がってください、対象は非国民です』
「だめっ!────この子は!!」
渇いた銃声が響いた。
ぼくが、うたれる、はずだった……
でも、それより、はやく、ぼくのまえにあらわれた兵隊さんが……ぼくの代わりにうたれた。
…
……
「……う」
冷たい風が顔にあたり、瞳を開く。
「あ、起きた。先輩、指揮官が起きましたよ!」
起きた時に目があった、JS9がユーリを置いてきぼりにして病室を飛び出した。
そして、その数秒後にどたどたと騒がしい足音を立てて自分のM4A1が病室に飛び込んできた。
医務室か病院から知らないけど、静かにするべきだと思う。
「指揮官!ああ、よかった!すみません!本当にすみません……!」
「なにか、君が謝るようなことでも?」
「私が……みんなに嫌われていなければ、あの時味方から砲撃されるという事態を防げたはずでした……私が……私が、グリフィンの信用を稼ぐことが出来なかったから、このようなことになったんです」
今回、ユーリがこうして医務室の世話になったのは自分のせいだと考えてるらしい。
「君のせいじゃない。嫌われていることも含めて、君が悪いわけじゃない。私は、今回のことで君を責めない……でも」
「……でも?」
M4A1はユーリが他のことで起こっているのではないか?と身構えてしまう。
そんな姿をみてユーリはやんわりと微笑む。
「いや、君がこうして心配してくれることがちょっと嬉しかった」
「当たり前のことですよ」
「そうかな……?私にとっては、2人目だったよ。私を心から心配してくれた人形に会えたのは」
「そうですか……」
この後は、作戦があの後残骸はなくなったけれど、敵のボスの排除に成功したから作戦成功扱いになったこと、
エクスキューショナーの残骸を改修した謎の2人組の人形はグリフィンだけではなく、鉄血も攻撃したので第三勢力になること、
そして、これらも新しい脅威になることを端的に伝えられた。
「それとこちらは、お見舞いの品です。お時間ある時にどうぞ」
M4A1が手渡したのは、果物だった。
きっと、合成で作られているそれらしいものだろうが、果物なんて珍しい……もう何年も食べたことがない。
「それでは、失礼します。早く、お怪我が良くなるといいですね」
M4A1が出ると、今度はSTAR-15がやってきた。
「指揮官、お元気そうで何よりです」
「あ、ああ。君は……大丈夫なのかな?」
「どういうことですか?」
ユーリは申し訳なさそうに、手元のコンパクトを見せる。
すると……鏡に目元が真っ赤になったSTAR-15が映し出されていた。
「な、なあっ!?」
どうやら、STAR-15には赤くなっていたことが気が付かなかったらしい。
泣くような関係でもないと思ったが……それとも、そこまで心配してくれたんだろうか?
「と、とにかく!無事であったならそれでよかったです!じゃあ!」
ばたんとと音を立ててSTAR-15が病室を後にしたと思ったら、また扉があいた。
「それと!これ、お見舞いの品です!食べててください!」
STAR-15がスナック菓子を投げ渡すと今度こそ病室を後にした。
「やっほー!」
今度はM4SOPMODⅡが入ってきた。
なぜか、お見舞いのスナック菓子を食べている。
「あの後、AR-15がめちゃくちゃ怒られたんだよ」
「えーっと、ヘリアンさんとか。クルーガー社長に?」
ヘリアンさんはともかく、クルーガーはやっぱり変わっていないだなと思ったら……違ったらしい。
M4SOPMODⅡが首を振った。
「M4に怒られたんだよ。危ない真似するなって……」
「どういうこと?」
「あの後、砲撃された際にAR-15……怒っちゃって、後衛よりのなのに思いっきり前に出て突撃したんだよ、それで私たちはともかく他はその……おいて行かれちゃって、M4がどうにか周りを守りながら追いかけることになったんだ」
「……そうか」
つまり、M4A1は怒りという感情で仲間の命を危険に晒したことをSTAR-15にこってり絞られたのか。
「あの時はこわかったなあ……剣幕もすごかったけど、一番喋るのが上手い、STAR-15が完全に言い負かされちゃって……M4お姉ちゃんが、あんなに怖いことできるなんて……知らなかったよ」
頼りない、情けないと周りには言われているようだけど、こうやって部下を叱ることはできるのはやっぱり隊長としての適性があるんだろう。
さあ、最後に入ってきたのはM16A1だ。
このAR小隊の最古参と聞く。
「よお。死んでなくて何よりだ」
「それはこっちもだよ。妹さんたちが君のことを心配してた」
「当然だ」
M16A1は分かり切ったように、ヘラヘラと両手を振っている。
「妹たちが世話になったな」
「この後はどうするのか、I.O.Pやグリフィンは決めているのかい?」
「いいや。全くもって聞いてない。妹は”もし改めて指揮官を宛がわれるなら、ユーリ指揮官がいい”って、アンタをご希望のようだ……」
そうなのか。
でも、M4A1の経験上まともに指揮官と戦術人形の関係を気づけたのは私が初めてといっていたし、消去法で行くとしても一応の納得は行く。
「M4はな、お前のことばっかり話してるよ。よほど、アンタが気に入ったんだろうな」
「良かった……のか?」
「良くないね。私はそう言うの気に食わないだ」
M16A1がユーリの胸倉を掴んで、片方の瞳でこちらを見つめる。
表情にこそ出さないが、こちらをにらんでいるのは分かり切っていた。
「随分と上手にM4に取り入ったようだな?AR小隊を思い通りに動かすのは、相当気分がいいだろう?」
「疑り深いな」
碌に戦力もないのにクルーガーの裁量でAR小隊の都合につき合わせれた被害者だと、ユーリは言える。
お礼をしてもらいたいところだけど、ユーリは”あったら嬉しい”くらいにしかとらえていないし、
それを言わせない雰囲気がM16A1からはひしひしと感じられた。
M16A1なりに、M4A1達を守ろうとしているんだろう。
「私はお前を信じていない……あまり、私の妹に触れるなよ?」
「たとえ、彼女がそれを求めていたとしてもか?」
「当たり前だ、私はな……お前が嫌いなんだよ」
M16A1は、手を放して病室を出た。
気が付くと、M4A1やSTAR-15からもらったお見舞いの品すら取り上げられていた。
「まいったな……あのお姉さん、本気で俺が嫌いらしい」