たったひとつの願い   作:Jget

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新型戦術人形

 

「戦術人形KSG……グリフィン初のショットガンを採用した新カテゴリーの戦術人形か…」

 

社員にしては鍛え上げられすぎているサングラスをかけた男は手元の資料を見ながら呟いた。

 

「鉄血の攻勢の強化によって、グリフィンは予定していた地域や掃討作戦に遅れが出ています。だから、せめて新しい人形を配備させて顧客の目を晒したいのでしょう。……お久しぶりですね、エゴール」

「……久しぶりだな、ユーリ?」

 

いつのまにかの隣にいたユーリはサングラスの男に挨拶した。

 

「座っても?」

「もちろんだ」

 

ユーリはエゴールと呼んだ男の隣の席に腰をおろした。

 

「エゴール。久しぶりですね?奥様とお子さんは元気ですか?」

 

ユーリは懐かしい戦友にニコリと会釈を浮かべた。

 

「ああ、お前が助けてくれたお陰でな」

 

大男とエゴールはサングラスを外し、ユーリと同じように会釈を浮かべた。

 

M4A1達がKSGに向かって銃撃を開始する。

銃撃をされたKSGは身動き取ることなく、ただ直立に立っているだけだ。

 

「待って、撃つのをやめて」

 

……何か、おかしい。

違和感を感じたM4A1の命令通り、銃撃を止めるJS9達。

銃撃をやめた後、彼女達が目にしたのは銃撃で蜂の巣になったKSGではなく……

 

「無駄だ」

 

表情を変えず、同じように立っていたKSGだった。

 

「無傷……?」

 

無傷のKSGに64式短機関銃は驚愕する。

あれだけの銃撃だ、喰らわせたのは50発は上回っている。

それだけの攻撃でびくともしないのは、驚くのに十分すぎた。

 

<位置に着きました!撃ちます!!>

 

狙撃位置についたSV-98の無線が入る。

SV-98はスコープでKSGの胴体に狙いをつけて、7.62×45R弾を発射する。

スナイパーライフルの大口径なら、KSGにもダメージが入るはず……しかし、

 

「無駄です。このシールドがある限り無敵です」

 

SV-98の弾丸は腰部のアームから稼働したシールドによって塞がれてしまった。

 

「あの人形、遠隔操作でシールドを動かしているの!?」

 

M4A1は驚愕した。理由はもちろん、KSGが遠隔操作でシールドを動かしているからだ。

 

この世界でいう遠隔操作で動く兵器、という武器は確かに普及はしている。

ただ、遠隔操作で使う武器は演算能力……つまり、戦術人形が戦うためのリソースを大きく消費してしまう。

実際、鉄血のエリートスケアクロウが遠隔操作のドローンで一斉射撃をするがそれ以外の兵装は装備できていない。

だが、KSGという人形はショットガンという武器に加え、遠隔操作でシールドも動かすと演算力をパンクになりそうな事をやってのけている。

 

「今だ!」

 

KSGの号令で、彼女の背後から無数の銃撃が襲いかかる。

 

「逃げて!!」

 

M4A1の指示で一斉に散らばるように遮蔽物に飛び込み銃撃から逃げる。

 

「今のは……?LMG?」

 

この数秒に渡る長い連射による攻撃……間違いなくKSGの後ろにLMGの人形が控えている。

 

「KSGが耐えている間に、後ろのLMGが掃討する……それがコンセプトってことね」

 

……だから、戦闘ログは見れない理由をM4A1は納得した。

 

「全員無事?」

<な、なんとか……私はJS9と一緒にいます>

 

64式短機関銃から応答がある。

続いて、SV-98からも応答が来る、

 

<こっちも大丈夫です。でも、しばらくは顔を出せそうにないですね……特に私はスコープもちですし>

 

スコープの反射で位置をバレてまた集中砲火か……

 

「とりあえず様子を見るしかないのかしら?……うん?」

 

ぎしり、と足音を感じた。

どうやら、KSGがゆっくりと銃を構えたまま前進を始めたらしい。

 

「なんのつもり……って、嘘でしょ!?」

 

ゆっくりと前進したKSGが引き金を引き絞り、近くの障害物を粉砕し始めた。

アレを続けられたらこちらが丸裸になってハチの巣にされてしまう。

かといって、攻撃してもKSGには防がれるだろうし何よりマシンガンに押しつぶされる。

 

「まずいことになったわね……」

 

予想を超えた恐ろしさを見せるKSGにM4A1は背筋が凍る思いを覚えた。

 

……

 

「新型というだけあって、中々の硬さだ。PMCの傭兵どもにしては、だが」

「ええ。あの脅威は兵隊同士で撃ち合う環境ならではの話ですからね。迫撃砲やグレネードランチャーの飛び交う環境ではあの遅さは致命的でしょう」

 

商売人や他のPMC会社の役人がKSG達の防御力と制圧性能に驚嘆するなか。

エゴールとユーリは冷静に自分たちの経験則に基づく独自の見解を見せていた。

 

「傭兵どもは呑気なものだ。あの程度で我々、”軍隊”にも強気な姿勢で行けると思っているらしい」

「ヒドラ15体並べて面制する光景を見せさせたらさぞ驚くでしょうね。……しかし、よろしいのですか?正規軍の特別作戦大隊"KCCO"の大尉がここに来られるなんて」

 

ユーリが穏やか目な表情で今更ながらエゴールに警告染みたことを発言するが、それがユーリなりのからかいであることをエゴールは知っていた。

 

「普段はよくない……が、状況が変わってな。ここに視察をすることになった」

「状況ですか?」

「ああ、実は────」

「指揮官!ここにいたんですね!」

 

エゴールがユーリに視察の理由を説明しようとした時、

たまたま、自分を見つけたSTAR-15がユーリ達の下に近づく。

 

「お前の部下か?」

「ええ。STAR-15という戦術人形です。それで、AR-15は……もしかしてM4の様子を見に来たのかい?」

「ええ。最近調子がおかしいので……あの、笑いをこらえているこの方は?」

 

STAR-15は話している間にエゴールに気がついたのか、怪訝な顔を浮かべて尋ねてきた。

一方、エゴールは今まで聞いたこともないユーリの穏やかすぎる声色に、意外性のあるギャグを感じてしまい思わず吹き出しそうになってしまった。

 

「ああ、この人はエゴール。私の前の職場での知り合いなんだ」

「エゴールだ。正規軍の大尉を勤めている」

「せ、正規軍の!?」

 

STAR-15から、黄色い声が上がった。

確かに正規軍がいれば楽とは思っていたが、

まさか、正規軍の人間が本当に尋ねてくるなんて誰も思わないだろう。

 

「声は静かにね?一応、この人はお忍びで来てるんだからな?」

 

ユーリもエゴールがお忍びで来ているかどうかは妄想の範囲だ。

だが、「良くはない」と前置きで話しているんだから、あまり目立つ気はないというのは察しがつく。

 

「し、失礼しました……という事は、指揮官も……まさか?」

「ああ。ユーリも軍人だ。所属は違うがな」

「だから、あんなに……」

 

慌てて声のボリュームを落としながら謝罪するSTAR-15。

そして、STAR-15はなんでユーリという指揮官が戦場に出ていることをクルーガーやヘリアンが咎めないのかわかった。

元々、そういう仕事をしているのなら止める理由なんてない。

 

「しかし、ユーリ。お前の人形にこんな顔をされているということは、また何かやらかしたのか?」

「または言い過ぎでしょう?現地で銃を持って戦っただけですよ」

「なんだそんなことか……グリフィンの指揮官は存外に臆病なのだな」

 

STAR-15はエゴールとユーリが軽口を叩き合える戦友と呼べそうな親しい関係であることを認識し、

エゴールはグリフィンがやはり、人形頼みの組織である事を再認識した。

 

「虐めないでやってください、エゴール。ここにいるのは会社員です、殺し屋ではない」

「なるほど……確かに民間軍事会社だからな」

 

STAR-15を庇うようにユーリが弁護を入れた。

 

その時、ガキン!!と鋭い金属音が鳴り響いた。

3人が音のした演習場の方に視線を戻す。

 

M4A1がKSGに様々な位置から攻撃して死角を探っているらしい。

 

「苦戦しているわね……M4。指揮官、M4達は……KSG達に」

「動きは遅いが、不意打ちに耐えられるように360度対応できる即応性は中々だ。ユーリ、お前の見解はどうだ?」

 

困ることではないのに、ユーリも謎の困惑を感じてしまう。

 

「ええ、上出来です。ただし…私のM4A1が相手ならどうでしょうね」

 

M4A1は何度か、不意打ちを試みそのすべてが失敗したのを悟り、JS9達と通信を繋ぐ。

 

<どうでした?>

「ダメですね……全部シールドでふさがれてしまったわ。シールドに死角はなさそうね」

<負けってことですか?せっかくあなたの発言を信じたのに!>

 

声こそ普段と遜色ないが、内心JS9が焦っていた。

M4A1が自信をもって勝利を与えてやると言って、信じていたのに負けるかもしれないなんて言われたと思ったからだ。

 

「負けるとは言ってませんよ」

<でも、シールドに死角はないって>

「ええ。シールドに死角はありません。でも、大丈夫です。というより……」

 

M4A1がマガジンに新しい弾倉を装填した。

 

「むしろ、勝てる確証を得たわ……」

 

M4A1が少し、口角を上げた。

彼女の中にはKSG達を攻略する算段が出来上がってた。

 

「M4A1も他の人形と同じように終わりそうですね」

 

KSGが銃に12ゲージの散弾を装填する。

M4A1はこざかしくも様々な位置で攻撃し、シールドの防御をくぐり抜けようとしたみたいだけどすべて防がれてそれも徒労に終わった。

 

「……最高峰の技術で作られたAR小隊もこの体たらくとは」

 

どの人形たちもそうだった。

こんな頼りないショットガンは簡単に倒せる。

そんな奴らを私は全員自分の力で倒した。

M4A1も結局は他の人形と同じだったのだろう。

 

「……あれは?」

 

次の障害物を破壊するために狙いを定めた時、M4A1がその姿を現した。

他の人形では使い物にならないと判断して自分から動いたか。

 

KSGは銃口をM4A1の進行方向に向けて発砲。

ギリギリで散弾が外れてM4A1は次の障害物に身を隠す。

 

「ちっ……」

 

KSGが舌打ちして、M4A1の隠れた障害物を破壊する。

だが、破壊した障害物にもうM4A1は隠れておらず奥の方に走っていた。

 

KSGがゆっくりと歩き出し、追い詰めようとする。

追いかけている最中、メンバーから単独行動は危険ではないかと警告を受けたが無視した。

逃げた獲物を追いかけない方が無能だ。

 

「来た…」

 

M4A1は自分の足音がする方に振り向いた。

ぎしり、ぎしりと追いかけるKSGはこの袋小路に追い詰めたと考えているのだろう。

M4A1は素早く端末に表示されたマップを確認する。

自分の予想が正しければ、後少しで……

 

「追い込みましたよ。M4A1」

 

曲がり角を曲がろうとした瞬間、M4A1の銃撃が飛んでくるがシールドでガードし、そのままM4A1の正面にたどり着いた。

 

「随分な出来ですね」

 

M4A1が口元を拭いながら、シールドの反応速度を褒めた。

 

追い詰めた。

無駄な抵抗をする様にM4A1が今度は頭に向かって発砲したが、シールドで防ぐ。

視界を覆ってしまったが、この位置ならショットガンの散弾を避けられるはずがない。

 

「終わりです、M4A1」

 

KSGがショットガンを発砲する。

破砕音が響き渡り、M4A1の銃撃が止んだ。

 

「……これで、M4A1も大人しくなって……いない?」

 

さっきまで正面にいたはずなM4A1の姿が見当たらない。

よく見ると、M4A1の背後にあっあ左の壁が爆発している。

 

「まさか、さっきのM4A1の攻撃は爆発を隠すためのフェイク?」

 

あらかじめ、時間になったら起爆するC4爆弾をセットしていたらしい。

あの銃撃は時間稼ぎだったのか。

ここにきて、悪あがきとは随分と陰湿な人形だ、M4A1というのは。

 

「(なるほど、こうして遅延行動をとって引き分けで終わらせるつもりですね)」

 

小賢しい手を使う。

指揮を使う人形とは小賢しい手を使う事を人形をいうらしい。

 

「なるほど、さすがは指揮をできる人形。他よりも頭が回るようですね」

 

M4A1は破壊した壁の奥に逃げ込む。

思っていたよりも、狩りがいがある人形を前におもわずKSGの口角も吊り上がってしまう。

 

また、追い詰めたと思ったらその壁が爆破されてその奥に逃げ込んでいく。

 

「……まだまだ、時間がかかりそうですね」

 

M4A1は仕切りに端末で時計とマップを確認して、何かを待っているらしい。

演習終了までは、まだ半分ほど時間は残っている。

なら、M4A1は何を待っている?

 

その答えは、M4A1の仲間が送った通信で明らかになった。

 

<M4!KSGの仲間のLMGは全員倒しました!>

 

突如として、SV-98が報告の無線を入れる。

 

「……何かあったの?」

<いや、その、実はLMGの人形が3体と思っていたんですけど……実は4体いまして>

「なるほど……それは、私のミスね。ごめんなさい、でも全員倒したのね?なら……残りは」

 

M4A1はニヤリと笑って、KSGを指差した。

 

「あなた1人倒して、ゲームセット(試合終了)ね」

「まさか……あなたが逃げ回っていたのは……?」

「ええ。あなたをお仲間から引き剥がすためです。仲間を守られたらLMGたちの銃撃で私達の詰みですから」

 

M4A1にとって厄介だったのは、KSGではなく彼女に守られたLMGだ。

大容量マガジンからの制圧は人形達の動きを容易く押しつぶす。

そして、LMGを守るKSGがその厄介さを底上げしていた。

 

でも、KSGが離れてさえすれば、機動力の高い人形による接近戦や意識外の長距離の狙撃が通用する。

 

「近づいたり、弾丸が十分バラける場所に陣を取ればLMG相手に戦いようがあるそれに、あの重装備だと気づいた時には間に合わない、予想通り倒すことができた……と言う事ですよ」

「なんだと……!」

 

KSGはショットガンをM4A1に向けた。

たった1人で戦術が崩壊する事はないと言う話があるが、それは違う。

たった1人の活躍で戦術が崩壊することがそうそうなくて、たった1人の怠慢で戦術が崩壊する事は往々にあるのだ。

 

「なら、一体ずつ確実に始末するだけだ!一対一なら、盾を持った私を突破なんてできない!」

 

KSGが発砲する。

M4A1は発砲される前に隣の、オブジェクトに身を隠した。

 

「一対一なら……ね」

「……そう、ならその自信」

 

オブジェクトからM4A1が現れる。

彼女の顔は、耐え切れるかと?不安げな表情ではなく、決まりきった勝利を確信する様に笑んでいた。

 

「その無駄に大きい盾ごと木っ端みじんにしてあげる」

 

M4A1が銃を構え、発砲。

当然、自律稼働するシールドに塞がれる。

 

「あなたには2つ欠点があります」

「欠点だと!?……それに2つ?」

 

KSGは自分のシールドに絶対な自信を持っていた。

欠点など、ありえない。

そう思っていた、あったとしたらその欠点に気づいてそれを実行するはず。

 

「その盾は素晴らしい反応速度です、隙がない。だけど、あなたはその盾の使い方をまだ理解しきれていない」

 

M4A1が片手でライフルを発砲、KSGのシールドに阻まれる。

今度は、開いた方の手でホルスターからFNX-45を引き抜き、シールドで守られていない、足元を狙う。

これも2枚目のシールドで塞がれる。

尚も射撃し続けるM4。

そして、ひとつめの弱点が暴かれる。

 

「ひとつめ、そのシールドが守れるのは2箇所だけ」

 

後ろが爆発する。

シールドが反応して、背中を守ったが胸に5.56ミリの衝撃が襲いかかる。

今爆発に反応したシールド、それはM4A1の銃撃を守っていたものだ。

爆発を守ったらライフルの弾丸は守れない。

 

「くっ……!」

 

思わぬ盲点を突かれて苦悶の声を上げる。

 

「もうすこし、慎重に追いかけていれば後ろのC4に気づけたでしょうが……私に集中しすぎましたね」

「舐めるな!」

 

KSGがショットガンをM4A1に撃つが避けられてしまう。

 

「くそっ!どうしてあたらない!」

「2つめの弱点をまだ話していませんでしたね……では、2つめを説明しましょう」

 

M4A1がKSGの攻撃を避けながら、そう話した。

 

「2つめ、これは簡単ですね。……単純に遅い」

 

遅い。

これは、KSGもM4A1も承知していた弱点だ。

だからこそ、このシールドがある。

だが、M4A1の気づいたことはそれだけではない。

 

「あなたはただ、移動する速度が遅いと思っている様ですが違います。あなたは単純にあらゆる動きが遅いのです」

 

M4A1があっさりとKSGの背後をとりとん、と背中を人差し指で触った。

KSGが蹴りを入れて、追い払おうとするがM4A1はそれを余裕もって受けて止めてみせた。

 

「な……!?」

「なんで遅い、人間の方が早い蹴りを出せますよ?」

 

KSGが手を振り払ってショットガンを向けようとしたが、その前にM4A1は違い場所に移動していた。

 

「きっとシールドの演算能力に人形の駆動系の信号伝達も使っているんでしょうね、さて……この調子で私を本当に倒せると思いますか?」

「……無駄だと言っている。現にM4A1、お前はこの盾を突破出来はしない!」

「なるほど、無駄ですか?」

 

M4A1は何か思う表情を浮かべた。

 

「では、そのシールドの状態を見てみたらどうです?」

 

カマかけだ。そう思ってショットガンを発報。

M4A1は初めて被弾したが、痛みよりも呆れが混ざってしまった。

KSGはそう思って確認していなかった……でも、M4A1にはきっちり見えているヒビが入っていき、悲鳴をあげるシールドの姿が。

 

「確認しませんか……それでは、宣言通り木っ端微塵にするとしましょうか」

 

M4A1が自分の素体の出力を上げた。

一気にトドメを刺すつもりらしい。

 

「────は、早っ!?」

 

一瞬でM4A1がKSGの左に回り込んで今までセミオートで撃っていたライフルをフルオートで発砲した。

シールドの自立稼働のお陰で命拾いしたが、もうその瞬間には右にいて、発砲が始まっていた。

 

「────くっ!?くぅううう!!」

 

KSGも己の演算能力をフル稼働して、必死に防御に徹する。

あの稼働はきっと長い間続けられない、自分の考えが次第にまとまらなくなっていくだろうが、狙えるタイミングになっていたら撃てば終わりだ。

 

「(そろそろかしら?)」

 

銃撃が盾を的確に攻撃で負荷をかけていく。

猛攻を加えながら、ヒビが大きくなるシールドを見ながらM4A1は後どのくらいで破壊できるか計算していた。

さらに嵐の様に攻撃を加え、その時は訪れた。

 

「取った!!」

「────た、盾が!?」

「宣言したわ。その自信を……その無駄に大きい盾ごと木っ端みじんにしてあげるって」

 

遂にM4A1がKSGのシールドの一つを破壊に成功した。

 

「ほう。確かに貴様の部下は凄いな」

「あんなM4……私は知らない」

 

観客たちはもう、声を失っていた。

そんななか、この荒れ狂う攻撃をエゴールは賞賛し、

M4SOPMODⅡ以上の攻撃にSTAR-15は驚いていた、

 

「ええ。最強ですよ、M4A1は……彼女自身にその自覚はないようですがね。だからこそ、彼女は向上心があり……そして」

 

そして……

あのタガの外れたようにイントゥルーダーを殴るM4A1の姿がフラッシュバックする。

 

「そして、危うい」

「お前はあの人形の強さには期待しているようだが……人形の本質にはどこか恐れを感じているようだな」

 

そろそろ、決着の時だ。

 

「ば、バカな!?」

「あなたは自分で敵を倒すことに集中しすぎている。LMGでこっちの動きを縛ったまではよかったけど、結局は自分の手で始末することにこだわりすぎている。LMGにも獲物を狩らせようとすれば、もう少し勝ちようはあったのにね」

「お前に何が……!?」

「分かるわよ。そういう、友達を知っているから」

 

友達、という言葉に、STAR-15がピクリとした。

 

「見返したいのはあなたの勝手よ。でも、これはチーム戦だからね」

 

KSGはM4A1の凍えるような冷たい声にびくりとした。

M4A1の表情は笑っているように見えた、決まり切った終わりを理解しているように。

 

「!?」

 

M4A1が接近する。

正面からだ、この位置なら外さない。KSGは僅かな希望にかけて、ショットガンを握る。

 

「せめて相打ちに」

「遅い」

 

もう、KSGが動いた時にM4A1はライフルを向けていた、残った最後の一枚のシールドがM4A1のライフルをはたき落とす、

だが、シールドが守れるのは一つだけ、M4A1はもうひとつFNX-45をKSGの顎に向けていた。

 

「ごめんなさい。あなたにチャンスはないわ」

 

FNX-45の45ACPがKSGの下顎を貫いてノックアウト。

もちろん、模擬用の弾薬だから死にはしないが死ぬのと同列な一撃をKSGに与えたのは言うまでもなかった。

 

「ほら、ちゃんとあなた達に勝たせてあげたでしょ?JS9?」

<はいはい。疑って、申し訳ございません>

 

得意げに笑うM4A1にユーリは複雑な表情を浮かべる。

 

「"AK-12"の事が忘れられないのか?」

「……どうでしょう。過去を解決できないのは愚か者なのでしょうけれど、私はその解決する術をまだ知りません」

「AK-12?」

 

人間たちの会話に人形が割り込むのはどうかと思ったが、思わず聞いてしまった。

案の定、エゴールに睨みつけれる。

 

「昔の……私の、昔のパートナーだったら人形さ、もういないがな」

「奴のことは忘れろ……奴らはただの人形だ」

「ええ」

「見た目を取り繕ったところで所詮は機械、道具だ。道具が傭兵以上に容易く裏切るのは道理、その程度の奴らに俺たち人間が怯える必要なんてない」

 

STAR-15にはあんまりな発言だが、それでもユーリにはほんの少しの励ましになった。

 

「近いうちに保安局が動きだす。グリフィンにも人形が送り込まれるだろう……最悪、お前を裏切った人形も送り込まれるかもしれない……今日、俺がお前に会ったのはそれを伝えるためだ」

 

続けて、エゴールがここに来た目的を話す。

そして、一枚のメモを渡した。

それには戦術人形"AN-94"というタイトルのメモだった。

 

「どうするかは貴様が決めろ」

 

訓練が終わり、すこしだけ自信がついたM4A1が廊下を歩いていた。

その時、通りすがりの観客に呼び止められる。

 

「お前がユーリの部下であるM4か?」

「え、えぇ。まぁ……」

「先ほどの戦い見ていたぞ。まさか、その見た目であそこまで荒々しい戦い方をするとはな。……確かに、ユーリが恐れそうな人形だ」

 

エゴールは少し誰かに重なる様にM4A1を観察した。

 

「あの……あなたは?」

「正規軍のエゴールという。ユーリとは昔の職場の同僚でな」

「え……?」

 

ユーリの知り合い?

その事実はM4A1に転機を感じさせた。

 

「ユーリの昔話に興味はないか?」

 

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