たったひとつの願い   作:Jget

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研修生の準備

 

S-09地区より、大きく離れた場所にある森林地帯で渇いた音が交差する。

 

この森林地帯地帯は、昔はキャンプ場として有名で海外からも知る人ぞ知るスポットとして有名だった。

そんな森林地帯も、鉄血の侵略により軍事基地に変えられてしまい自然豊かな森たちは鉄の要塞に汚されてしまった。

 

汚しているのは、鉄血だけではない。

この場所を奪還するために投入されてグリフィンの戦術人形たちの弾丸や薬きょう、榴弾……そして、撃ち殺された死体によって血と炎で戦場は赤く染まっていた。

 

<マシンガンめ!適当撃ちやがって!こいつは……>

<また一人やられた!鉄血の銃撃が激しい!進むことが出来ない!>

「側面に回り込んだ部隊が掩護する。十字砲火に注意しろ。そっちの部隊はどのくらいで着く?」

 

人形たちの視界がカメラを通して作戦中の指揮官たちは状況を把握し、そこから各指揮官たちが指揮をする。

 

その中にはAR小隊を指揮するユーリもいた。

ユーリは敵の拠点の構造からどこから増援を入れるかを推理し、そこに向かうように指示したAR小隊のカメラ映像を注視している。

 

<だいぶ鉄血達がいるところから離れたけど、本当にいるわけ?>

<指揮官の読みが正しければ……そろそろ、あれじゃない!?>

 

AR小隊のSTAR-15が疑い始めたころに、M4A1が何かを見つけて指さす。

見ると、防空壕ようなシェルター型の入り口から鉄血の増援が少しずつ

 

<おいおい、本当にいたよ。SOPⅡ!出番だぞ!>

<オッケー!>

 

まるで予言のように現れた鉄血を見て、M16A1は舌を巻く。

M4SOPMODⅡは待っていましたと、自分のライフル下部に取り付けられた”LMT M2039グレネードランチャー”を構える。

 

<発射っー!!>

 

グレネードランチャーの擲弾が発射され、爆発が響き渡る。

M4SOPMODⅡを援護するため、他の人形たちも銃撃を加えて制圧する。

数度に渡る爆発が響きわたり、爆発の煙が止み……様子を確認する。

 

新しく出てくる鉄血はいない……

 

「進みます」

 

M4A1がシェルターのハッチまで前進、ハッチを開いた時中から鉄血のレーザーが飛び交う。急いで、後ろに下がったお陰で銃撃を喰らったのはサイレンサーだけで済んだ。

 

<M4!?>

<平気よ!やってくれたわね。JS9!手榴弾を!>

<了解!くたばれ!鉄血!!>

 

さらにM4A1とJS9が入り口に向かって2つほど手榴弾を投げ込む。

ドカン、ドカンと4回爆発が響き渡り鉄血の人形たちの悲鳴が響き渡る。

 

<行くわよ!>

 

M4A1はサイレンサーを外して、ハッチを蹴り開ける。

中は鉄血の死骸であふれかえっていた。

生きている敵は確認できない。

 

<このまま進むわ>

 

ハッチを通して、中へ進んでくM4A1達。

途中で何体かの鉄血と遭遇したが、まさかここから侵入してくるとは思っておらず、先制攻撃で倒すことが出来た。

 

そして、そのままスナイパーが陣取っていた高所を奪うと、M4A1が無線を入れた。

 

<よし!裏とりしてやった!こっからは私らの番だ!>

<指揮官、予定通り高所を取りました!今からSV-98とSTAR-15が狙撃支援に入ります>

「了解、M4A1よくやった。……前衛部隊の戦術人形を指揮している指揮官に伝えます。そこでこちらの部隊が支援している。部下に撃たせなでください。」

 

ユーリがM4A1達の状況を把握し、他の指揮官たちにM4A1達を敵と間違えないように要請する。

 

「了解。こっちの部隊に伝えておく」

「他の指揮官様たちへの報告はこちらでやっておきますね」

「ああ。ありがとう」

 

 

秘書のカリーナが手伝ってくれたのはかなりがたい

 

要請が通り、M4A1達は味方誤射のリスクを回避しながら内部からの狙撃で機関銃の”ストライカー”、スナイパーの”イェーガー”といった守りに大切な人形たちが倒されたことでグリフィン側が押し始めた。

 

<C4設置>

<起爆して、起爆!>

 

前衛部隊の1人、”デーウーK5”が要塞の壁にC4爆弾を設置し粉砕する。

粉砕した壁からグリフィンの戦術人形が瞬く間に流れ出す。

 

荒波に襲われたように、鉄血人形が攻勢に呑まれていき掃討作戦は完了した。

 

<グリフィン側が目標拠点を確保した。作戦は成功だな>

「今回の目標は他の部隊が確保したか、分かる?」

 

確かに数だけ多いから、この掃討を作戦は合同で行われたものの、合同作戦はこの後提出する報告が大変だと気が重くなる。

少しでも他の指揮官との食い違い起きると、よく問い詰められる。

軍隊ではそうだったし、グリフィンでもきっと同じだろう。

正確な報告というのはそう言うものだ。

 

グリフィンの指揮官様たちと細部まで確認し、報告の齟齬がないことを確認し、全員がどっと張り詰めた空気から解放されたのは、午後9時半だった。

とっくに、終業時間になっているだろうし人形たちは寝ているに違いない。

 

「どうぞ。指揮官様」

 

カリーナが売店でお菓子を買いに行ってくるのに便乗して、買ってもらったサンドイッチをようやく口につけられるようになる。

 

「お疲れ様、カリーナそろそろ寝ようか?」

「そうですね……合同作戦は報告の手間がかかりますね、上の方はいいんでしょうけど、こういう中間管理層はできれば願い下げにしたい理由がよく分かりました」

 

付き合わせて申し訳ないと思いつつ、カリーナの願い下げをしたいという言葉にも納得感を覚えてしまっていた。

 

「付き合わせて悪かったな。でも、君が後方幕僚から指揮官になるときには役に立つよ……」

「私が指揮官様のようにですかー?」

「もっとお金が欲しいなら、出世して稼がないと。グリフィンのいいところは役職に応じて給料が変わることだからね」

 

カリーナがお金を欲しがる性格なのはユーリも知っている。

彼の妹が同じようにお金を欲しがっていたからだ。

妹はお金が自分を守ってくれるものと持論を持っていたが……隣にいるカリーナも同じように思っているんだろうか。

 

「相変わらず、祖国に懐疑的ですね。指揮官様は」

「密告してみる?」

「……やめておきます」

 

やめておく。

カリーナも現状、この国をいいと思っているわけではない。

 

「人類を守るのがグリフィンの大義で、そのために今日のような鉄血勢力追い払って保護地域を増やすにつれて明るみなった問題を見てしまいますとね……どうにも、新ソ連を信用できない人がいるのは否定できませんよ」

 

「確かに……1週間前の時なんて……」

 

最近のグリフィンは鉄血を相手に連勝を重ね順調に勢力範囲を広げている。

これによりグリフィンの就職希望者が増えたり、これまで庇護を受け入れられなかった人達を、ある程度保護領に受け入れる事が出来た。

 

村レベルだったここもちょっとしたビルが建設され都市まではいかないが街レベルの発展が認められているらしい。

しかし、受け入れる人を増やせば増やせる程明るみになった問題が増え、対処に追われる日々である。

1週間前はとっくに世界はすべてなくなったと思い、避難民は王国を作り上げて解放しにきたグリフィンの人形は住民から手厚い反攻受ける羽目になり、大損害だった。

 

AR小隊もあまりの住民の狂気乱舞っぷりにM16A1すらかなりのショックを受けていた。

 

それに……一月前にエゴールからもらったプロトタイプ”AN-94”も未だに引っ掛かっている。

思い過ごしであればいいのだが。

 

「カリーナ明日は休みだね」

「えぇ!!やっとゆっくり休めますよ!!ヒャホホホホウウウウ!!!」

 

休みなるとすごい喜びようだ、やはり仕事の疲れが溜まっていたのだろう。

 

「指揮官様はいつ休まれるのですか?」

「……大丈夫さ。ちゃんとまとめて休みを取れるようにスケジュール調整はしてある」

 

ユーリがカリーナにスケジュールを見せるとカリーナは感心してた。

新しい指揮官達の訓練もそろそろ終わる目処が立ったタイミングでスケジュール調整をしている。

任せられるくらいにまで成長したら、自分も少しづつ休みを取り、休息の時間を取る。

それが、心配なく休みを取れる秘訣だ。

 

「そう言えば、明日はM4さんとお休みの日が被りますね。何かやるんですか?」

「ああ、この日ね……」

 

この日はM4A1に強く誘われて街に行くことになった街のスケジュールだ。

どうやら、色々イベントをやるらしい。

上司を誘ってまでやるイベントってなんだと、考えていたら備え付けの電話が鳴り響く。

 

こんな時間に電話とは珍しい、それは置いておいてカリーナが電話に出る

 

「お電話ありがとうございます!!こちらグリフィン&クルーガーでございます!!ご用件は何でしょうか?!」

<内務省の者よ。そっちで指揮官しているユーリって指揮官に用がある変われる?>

「承知しました!それでは少々お待ちくださいませ!!指揮官様!!内務省の人が指揮官様にご用があるらしいですよ」

 

内務省?クルーガーがらみだろうか?

自分の事ではないないだろうな?と警戒しながら、電話を変わる。

 

「はい、お電話変わりました。ユーリです。」

<久しぶりね、アンジェリアよ。ユーリ。名前変えていないの?よく今まで生きて行けたものね>

 

聞き慣れた女性の声だ、確かに彼女とは知り合いだ。

だが、この女は内務省ではない……国家保安局の女だ。

ついにここまで嗅ぎつけてきたか。悪い予感しかしない。

 

「……そういう貴女は名前が多すぎるのでは?ですが、内務省を騙る必要はないでしょうに?」

<仕方ないでしょ?保安局って名前を出したら、私を叩き潰そうとするじゃない?まぁ、挨拶はここまでしよう。実はアンタに個人的に頼みたいことがあってね、電話したの>

 

アンジェリアは保安局に内緒で話したいことがあるのか?

 

「個人的?」

<ええ。保安局は関係ない。これは私の独断。預かってもらいたい人形がいるの>

<前に頼まれたあの子のことですか?>

<AK-12のことを警戒してるのなら、ちょっと違うわ。預けたいのはそいつより前のモデル>

「前?」

<そう、前の。ペルシカが軍用人形のスペックをちゃんと知りたいって。でも、AK-12の能力なんて晒せないでしょ?だから、戦闘能力を引き継がせる前のプロトタイプなら見せてやれるって訳」

 

ペルシカさんが見たいってことでアンジェリアが妥協案としてAN-94を送り、

送った先は当然自分が一番管理できる場所がいいからAR小隊になり、

そのAR小隊の指揮官様が俺であることをペルシカがアンジェリアに話したってことか。

 

<ウチとしても助かるのよ。政府に鉄血になんぞに苦戦するPMCに実力を見せつければ政府の評価も上がる、と上申したら即応じてくれたわ>

「いま、気になる発言が……」

<上にアンタのことは話してないから大丈夫だって……。私も”あの事件”は許してないのよ、とにかく……話は政府がクルーガーに通してある、近いうちにそいつを配属させる為の受け入れ準備宜しくね!!>

 

そう言って電話は乱暴に切られた。

 

「切ったよ……あの人。全く、何時も頼み事を勝手に押し付けてくるのは変わらないな」

 

思わず頭を抱えてしまう。

悪い予感をした時に的中するのは悪い冗談にしてもらいたい。

 

「指揮官様……さっきの人とお知り合いですか?」

 

カリーナが質問する。

 

「昔、よく面倒ごと押し付けてきた人だよ……また、面倒ごとを引き受けないと行けなくなった……私の休暇はまだ先の様だ」

 

自分の感情はっきりさせると。

いま、自分はとても警戒している。それだけだ。

 

時間は10時。

 

カタカタとキーボードタイプにした端末を操作しながら、今の自分の基地を把握する。

「この部屋は……よし、空いてるな。後は……生活必需品の配達も……何とか間に合いそうだ」

 

最悪、こちらを殺しに来ているかもしれない、刺客かもしれない人形の為に工面をしている自分は何なのだろうか?

という、矛盾の様な気持ちに陥りながら、”AN-94”という人形が来るための準備を進めていく。

 

本当は関わらない方が安全なのかもしれない。

でも、依頼を引き受けてしまったのならば仕方がない、警戒しつつとことんやってやろう。

 

それに……やり方次第では彼らをより安全な状況に持っていけるかもしれない。

写真立てを見る。

今生き残っている仲間たちと被害者……彼らは守らなくてはいけない。

これは、かつて隊長だったものの責務なんだ。

 

念のためあの方にも報告のメールを入れておく、あの方が今いるところは時差で16時くらいだ。

此方が夜中でもあちらでは失礼にならない。

あの方に協力したのも、あの方が俺を助けたのも100%慈善事業だけで働いていけるわけでは無いのだ。

AR小隊にも相談しようとも考えたが、断られた時に用意するプランを考え、実効に移す為の時間が無い。

 

「あの子より……前のか……どんな子なんだろう?」

 

業者に依頼のメールを送信し、持っていた端末を充電器に接続する。

 

「それよりもあの子、今でも元気にやっているといいなぁ……まあ、あの子なら今でものらりくらりとやっていけそうか?多分……そうだろう」

 

そんな事を考えながら指揮官は、ベッドに入り明日からの不安を抱えて眠りについた。

 

同時刻

正規軍基地

 

「通してくれる?」

「はっ!!」

 

IDカードを見張りに見せ軍の人形格納庫の中に入る、今日決まった事を"アイツ"に伝える為だ。

 

"アイツ"の個室にたどり着く、そこは窓は手が届かないくらい高い所にあり、部屋には簡易ベットと洗面器そしてトイレしか無い、独房とまるで変わらない個室に"アイツ"はいた。

 

「元気?」

 

呼ばれた人形がこちらに気づくと、ベッドに腰掛けていた彼女は素早く立ち上がり私にに敬礼する、楽にしていいと言うと敬礼を休みのポーズに変え、こちらの元気かと言う質問に答える。

 

「ボディ、メンタルモデル共に異常ありません。ご用件は何でしょうか?」

「あぁ、前に話した事…遂に了承してくれた所が出てね。明後日までに異動準備をしておけということを伝えに来たの」

「わかりました……あの……彼女は?」

 

申し訳なさそうな表情で人形が私に質問する。このやり取りは何度目だろうか?……事あるごとに彼女の同伴があるかどうか質問してくる。

ここまでアイツを執着するなんて最早依存だ、依存された方の感情は余りよろしくないだろう。

 

……しかし、昔のアイツもユーリにこれ以上に依存していた気がするが……やはり姉妹機同士、似ているのかもしれない。

それなら目の前のこいつの為を思ってあえて、突き放そうと考えるのも合点が行く。

 

「あいつは別の所で"パフォーマンス"をする事になっている。行くのはあなた1人よ、他には?」

「……いいえ、ありません」

 

人形の表情が若干曇る。

まあ、そんな対応だろうなと思いながら、所持していた端末の画像を彼女に見せる。

 

「このユーリ・フレーヴェンという男が一週間お前の担当の指揮官になる。あんまりコネは失いたくないの、あまり迷惑かけないでよ?」

「了解。AN-94は命令を受諾しました。」

 

さぁ、腕の見せ所よ?ユーリ・フレーヴェンさん……この面倒臭すぎる人形をいかに頼りがいのある人形に成長させる事ができるかが、あんたの命運を分けるかもしれないから。

 

精々1週間だろうか?

女は自分の依頼したことが失敗するなんてミリ単体とて思っていない。

内務省の女はクルリと踵を返すと格納庫を後にした。

 

 

次の日────

 

 

休日を利用して、M4A1とユーリは街のある場所を目指していた。

朝、”あの方”からの代理で返信が来たが、”心配ない”との回答だった。

目的の場所は人間がいないと入場お断りで、M4A1はその為に付き合って欲しい……と付き合ってもらうことにした。

 

「到着です」

「ここは、博物館?」

「ええ。実は私、こういうのに行きたいと思ってまして」

 

M4A1は困った顔で笑う。

実はM4A1はこういう、人間の文化ができる前の太古の存在にに強い興味を持っていた、

特に興味があるのは化石だ。

……太古の生物、隕石で滅んでしまった人類より前の支配者。

それだけでも魅力的なのに、姿は研究の発達で形を変えながら正確に再現されていく。

新しく更新される古代生物の姿をいつかこの目で見たいと思っていた。

 

 

「前にも話したんですけど、一度ここで門前払いされてしまって」

 

……なんて意気込みで、前の休暇も入ろうと頑張ったが……結局「戦闘しかできない人形が展示物を大事にできるわけない」と、門前払いだった。

 

「どこのひねくれた馬鹿(人形)がそんな印象を与えたのかしら?私なら、絶対に大事にするのに……」

 

ユーリに聞こえないよう、過去の出来事に愚痴を口ずさむ。

抗議はしたかったが、身内がM4SOPMODⅡ(アレ)の為全面的に否定できず渋々諦めることになった。

今はこの博物館に入れることを喜ばなければならない。

それに2人でこの場所に行きたかったというM4A1の内心をユーリは知らないし、悟らせないようにM4A1も注意を払っていた。

 

「わぁ……!」

 

入館の許可をもらって待ちに待った博物館に入ると出迎えたのは、ニジェールの”エオカルカリア”の骨格標本だった。

 

 

「すごい!本当にすごい!!」

 

M4A1は子供のように喜びながらエオカルカリアの標本を見回す。

ユーリが来歴を見るとどうやらアフリカのニジェールの肉食恐竜らしく同国から借りていた標本らしいが、第三次世界大戦で返す先がなくなってしまっているのでここに置いたままらしい。

でも、返す先を吹き飛ばしたのは新ソ連が採用した新型爆弾が原因だったはず、こういうのは借りパクという言葉な気もするが……M4A1には教えないでおこう。

 

「ウミユリって……こんな形をしているんですね」

 

一通りエオカルカリアを見た後、他の化石や展示物を拝見することになった。

草木の化石は存在すると聞いてたが、実際に見てみると思っていた以上にしっかり保存されており、地球の神秘を垣間見えた。

 

「これが古代アメジスト……!?す、すごい!」

 

地層の中の岸壁に囲まれて、そのまま化石化してしまったアメジストの宝石も見た。

この美しさならアクセサリーに似合うかもしれないと思い、ユーリは「結婚指輪につけてみたかたいか?」と聞いたが、M4A1は全く面白いと思わず、むしろ「それは邪道」と怖い顔で否定されてしまった。

 

他にも、包帯でぐるぐる巻きにされたものとは違うミイラ化された生物の展示品を見たり、古代の生き物はどういう生態系をしているのかというアナウンスをたくさん聞いて、満足したころには夜になっていた。

ユーリには関心の域を出なかったが、M4A1は非常に満足したらしい。

特にユーリの感想を聞くのがとても楽しそうだった。

 

今は博物館を出て、レストランで食事を食べている。

お金はM4A1が奢ってくれた。

彼女曰く、「連れまわしておいて、お金を払ってもらうなんてできない」とのことだった。

 

「なるほど、あの時見た化石を指揮官そう思っておられるんですね」

 

レストランで食事を食べているとき、M4A1に聞かれた感想をユーリが答えたら、M4A1はうれしそうにしていた。

 

「そんなに嬉しい?」

「もちろんです。だって、指揮官は展示物を”どう凄い”か話してくれるじゃないですか?普通の人はただ”すごかった”、とこの1単語で終わらせてしまうんですよ?」

 

確かに……自分の趣味をそれだけで終わらせてしまったら、”あ、興味持ってないんだな”と失望されてしまうだろう。

 

 

「その、今日は行きたいところに行けて嬉しい気分な時に……唐突で悪いんけど、昨日新しい人形の世話を見ることが決まった」

 

仕事の話か、M4A1は少しだけ気が重いと思いながらユーリの話に耳を傾けた。

 

「新人……いつからです?」

「それが……明日から」

 

M4A1の表情に渋さが混じる。

流石に早すぎると思ったのだろう。

 

「ま、まぁ……大したことはここの所ないですし……大丈夫ですよ」

「助かる。そう言ってくれると嬉しいよ」

 

今度のM4A1は嬉しそうだった。

感謝されることは嬉しいけれど、表情に出るほど嬉しい事なのだろうか?

 

「……あ、そうだ。新しくこられる人形はどういう感じなんですか?」

「そうだな、軍のちょっと複雑な部署から研修で送られる人形なんだ……とりあえず、これを────」

「あ、はい。軍の方も人形の面倒を見るなんてまた……え!?」

 

M4A1はデータをもらった時にあるはずのない心臓が飛び出しそうになった。

データには戦術人形"AN-94"としっかり記載されていたからだ。

 

「M4?」

 

────保安局の人形には気をつけろ

一月前に警告された言葉が今にも蘇る。

ユーリを手酷く裏切り、仲間の命どころか、武器を持たず命乞いすらした人間すらその手に掛けた人形のプロトタイプ……AN-94……

それが、私達AR小隊の元に、来る?

 

「……大丈夫か?さっきから、黙っているけれど」

「あ……いえ、はい!大丈夫です……!」

 

こんな時に動揺して、どうする!?M4A1。

むしろ、予め軍の関係者から情報を教えて貰ったはずだか準備をしてきたはずでしょう。

ここは、落ち着いた態度を見せなければならない。

 

「そ、その……軍用人形と聞いて露骨にメタルな形を想像していたんですけれど、普通の人形に見えて」

「そうか……確かにな」

 

ユーリは少しだけ口調が変わって、何かを思い出すような表情に変わっていた、

思い出しているのはAK-12だろう。

まだ、彼女にされた仕打ちから解放されていないんだ。

 

「グリフィンにいる普通の人形として接すればいいんですよね?」

「そうだね……」

 

AN-94ことは他のAR小隊は知らない。

幸い、予め私はAN-94の事を聞いている、私だけでも、ユーリの味方になる為には明日から来るその人形を警戒しなければならない。

 

「お待ちどうさまです。ケーキをお持ちしました。それと、いつもの通りの味付けをしております」

「え?本当ですか?ありがとうございます!」

 

デザートのケーキがやってきた。M4A1には店があらかじめ調整された味で出してもらっていた。

余談だが……M4A1はこの町に何度か足を運んでおり、ここのケーキを食べる常連なのだ

今は、待ちに待ったケーキを食べて楽しむとしよう。

 

「(AN-94……AK-12のプロトタイプ。どこまでAK-12と似ているか似ていないかにせよ、しばらくは今までとは違う試練が待ち受けるのでしょうね。)」

 

楽しいデートで終わるはずが、どこぞの空気の読めない軍隊の依頼人のせいで好きなケーキもビター風味のある味に変わってしまっていた。

 

そして、休暇が終わって次の日。

 

午前10時にグリフィンの飛行場にあるヘリポートに一台のヘリコプターが向かっていた。

ヘリポートにはこの基地の指揮官以外にも、監督官のヘリアンも来ていた。

この目で軍用人形がどういう手合いか確認したいらしい。

 

「しかし、貴官も安請け合いしたペルシカとその友人の要請によく付き合ったな」

「申し訳ありません。……しかし、依頼者の方はペルシカ教授とご友人だったんですか?」

「やはり知らなかったか……いや、謝る事ではない。貴官が断ったとしても結局政府が強引に話を通していたに決まっている。それにだ」

 

ヘリアンは軽く一泊置いて

 

「クルーガーさんは今回の依頼は受けるつもりだったらしい。コネが無くて困るのは、グリフィンだけではない、と言う事だな」

「成る程……」

 

グリフィンでは関わりきれない、メーカーと軍で何かしらの取引がある、と読み解けばいいのだろうか。

 

「まあ、いつもと変わらないだろうから気にするな」

「ありがとうございます……おっと、そろそろ来ますよ」

「ようやくお出ましか。今後も期待しているぞユーリ指揮官」

「承知しました」

 

自分たちで目視できるところまで、ヘリが近づいてきた。

3分後ヘリがヘリポートに降下した。

今回、ユーリたちが預かる軍用人形が降りてくる。

 

「……君かい?今日から配属されるのは」

「はい。指揮官、どうも。今からこの、AN-94は貴方の命令に従います」

 

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