「これなんかどう?ほら、見てAN-94……どうかな?」
M4A1がAN-94に洋服店で見つけたサンダルとフリルを見せる。
「サンダル……それとフリルか。フリルは兎も角そのサンダルの色の組み合わせが悪く見える」
「うーん。なら……こういうのは?」
M4SOPMODⅡはサンダルをAN-94に見せる。
「……成る程。これなら、悪くない」
中心街でAR小隊は洋服店でAN-94に似合う服を探していた。
何故こうなったのかそれはこの日の午前にまで遡る。
午前8時の
食堂でAR小隊のM4A1は自分達とは別の指揮官のところに所属しているFALに通信越しで相談をしていた。
<なるほど……それが新しくメンバーが増えて、軍用人形なのね>
「そうなの」
<そうなの、で済む話じゃないでしょ……なんで、軍のプレッシャーにも苛まれないといけないの>
「ペルシカさんはそこまで頭が回らないからね」
本当に頭は回らないのは勘弁してほしい。
しかも、こっちにはエゴールという人から「AN-94はスパイかもしれない」というタレコミまであるから余計に頭が痛い。
「距離も縮めるのにもいい機会と思うしかないのも事実ね……うまくいけば、軍隊の仕事からも貰えるかもしれない、という形で」
<今回の件は失敗したリスクに見合うわないでしょうが……もういいわ、責任はアンタらが負えばいいんだし。軍用人形様はまさか市内でのパトロール任務くらいはできるんでしょうね?>
「出来るわよ……問題は」
<問題は?>
「AN-94は持ち出した服装に軍服しか持ち込んでいないのよ」
通信越しから、AN-94に対しての盛大な溜息がFALからあふれ出た。
<だったら、服でもなんでもアイツに買わせなさい。軍服を着た人形が街中でふらついたら私たちにクレームが殺到するわ>
そう言うわけで、早速M4A1はAN-94のいる訓練場に訪れた。
「隣……いいかな?」
「どうぞ」
「ありがとう」
M4A1は自分の銃を構えて、ターゲットを狙う。
今回のコースは単純に動き回る敵を狙い撃つシュミレーションだ。
パンッ!パンっ!と次々敵を倒していき、敵を倒し得た後にスコア結果が出た。
「自己最高記録更新……」
いつもなら、ガッツポーズの一つも取りたいM4A1だったが先約していたAN-94の方がずっといい成績を取っていた。
まあいい、ここに来た目的はスコアを更新するためでもAN-94を打ち負かすためでもない。
「あの、AN-94……?ちょっといい?」
「どうした?」
「今日の午後さ……もし、時間があったら中心街でショッピングに行かない?」
「何故?」
「何故」と聞く当たり、明日の任務で誰を相手しているのは分かっても、どう思われるのか気にしないのは民間企業と軍隊の違いかもしれない。
それとも、グリフィンの名声を落としてやろうというスパイらしいいせせこましい妨害のつもりなのだろうか?
「明日は護衛任務でしょ?その時の服を考えた方がいいと思うの……」
「この格好でも戦闘の際には支障がない」
本当に何も気にしないタイプらしい。
「あ、あの、戦闘とかじゃなくて……護衛の時の市民感情への配慮が必要なの」
「市民感情への配慮?」
AN-94は「なにそれ?」と言いたげな顔でこちらを見つめている。
M4A1はこいつは大体の軍事組織でもやらさられるパトロールもやったことないのか?と疑いたくなった。
「うん、私達は軍隊とは違って軍事力を"サービス"として提供する企業としての側面が強いの。だから、そこで守っている人達に悪いイメージを持たれない為にも、その……正規軍の格好は警戒されるかもしれれなくて」
「そこまで恐ろしいのか?制服だぞ?」
「とにかく、お願い!!お金は後で指揮官が経費で落としてくれるから!!」
「……わかった、午前の訓練が終わったら一緒に行こう。」
「本当?!ありがとう!」
M4A1の勢いに押される形でAN-94は了承してくれた。
ショッピングの約束を取り付けM4A1は一応安堵した。
AN-94はM4A1は何故喜んでいるのか分からず、首を傾げていた。
午前9時
────
そして今、新しい服を買う為に中心街にM4A1とAN-94は街に繰り出していた。
「町と聞いていたが……随分と、静かだな」
「普段はもうちょっと活気があるんだけどね……」
いつもはもっと活気があった、しかし街中にAN-94が入り込むと突如として、街中の空気が一気に静かになりだしていた。
人々の表情も覇気が小さくなっており、まるでAN-94を極度に恐れているように見えた。
「どうしてここに軍隊が……」
「ここからは手を引いたんじゃ……」
「しっ……これを聞かれたら……」
「そうよ……皆殺しにされるわ」
AN-94を軍隊の人形と恐れて、いる市民をみて恐れられているのは理解できたが、どうしてかは分からず、ただ首をかしげるしかなかった。
しばらく、進んでいくとM4A1はAN-94を洋服店に案内する。
「いらっしゃいませー」
多少、気の抜けたバイトらしい人間の挨拶が聞こえて、AN-94はここは張り詰めた空気ではないことに多少、安堵感を覚えた。
店内を見回してみると女性用の洋服が多かった。そういうターゲット層を狙った店なのかもしれない。
「あ、エムさんだ」
店員はM4A1を”エムさん”とよび会釈する。
M4A1も店員に会釈する。ここの常連らしい。
「今日は連れの服を買いに来たの」
「へえ。お連れの方……あー、奥にいる、……え?どうして?」
どうやら、何らかのようで店の中にいたらしく空気の変わりように気が付くのが遅れていたらしい。
始めに入った、M4A1に対して気さくな挨拶を返したが……AN-94を見た瞬間、みるみると顔が青ざめていく。
「そ、その方は?ぐ、軍隊の方じゃないですか?……わ、私、何も悪いこと」
「知ってるわよ。あなたが悪い子じゃないってことは……だから、落ち着いて」
途端に怯えだす店員、そしてそれをどうにか宥めようとするM4A1。
その原因はおそらく自分にあるんだろうと思いながらも、なぜかは分からないので他人事のように見つめるしかない。
「でも、なら……なんで、軍隊がここに……」
「あの子、ちょっとしたトラブルで制服以外の服を汚しちゃって……代わりの服がないから制服を着てるだけなのよ」
「おい、M4A1。勝手に……」
「……いいから!」
「わ、わかった」
私は服なんか汚してないと抗議しようとしたが、腰をM4A1は軽く小突いて黙らせる。
AN-94は知る由もないが、M4A1はしばらくはこの店に通えないことにかなり苛立っていた。
「私もあの子も客で来たのよ。あなた達が考えるようなことはない、だから信じて!」
「わ、分かりました……」
店員には納得してもらえたらしい。……恐怖心が残ったままだが。
こうして、M4A1とAN-94は店内の洋服を見ることをようやく始めることが出来た。
「う〜ん、探すにしてもなかなか、あなたによさそうなのがないわね。AN-94は何か来てみたい服……ない?」
「私は……」
思いつかないとAN-94が呟こうとした瞬間、気付けばAN-94はそのワンピースを手にとっていた。
ハンガーにかけられていたワンピースのハンガーを取って店員に話しかける。
「あの……」
「いや、気になったから着てみていいか……って聞きたいのだが」
「ど、どうぞ!どうぞ!なんなら、無料で差し上げます!!」
「そういう訳には……」
とりあえず、AN-94は試着室に入って洋服に着替える。
「……M4、来てくれ」
「今行く」
店員ではまた怯えられる、どうすればいいかわからなくなったAN-94はM4A1を呼ぶことにした。
「どうだ?」
「ふーん、ワンピースか……。似合ってるわね、これにする?」
「分からない……だが……これが、気になる……欲しい、というのだろうか?」
「なるほどね……よし、なら次はこっちも着て」
AN-94は本当に自分を着飾る”おしゃれ”をしたことがないようだ。
M4A1は仕方ないな、と思いながら今試しで来ているワンピースに合う、靴下と靴も用意した。
「M4、着替えた」
「あら、いいじゃない」
M4A1が試着室のカーテンを開けると、そこには水色のワンピースとピンクのヒールを履いた、AN-94が出てきた。
「へえ、適当に選んだけど……やっぱり元がいいと何を合わせても似合うわね……」
M4A1はさっきまでの苛立ちも忘れて顎をさすり頷きながらAN-94を見る。
当のAN-94は適当に選ばれたことに不安感を覚えた。
「とにかく……明日の任務はこれで行けそうか?」
「うん、身体の動きも邪魔しない柔らかい布を使ってるし、大丈夫よ。それじゃあ、会計しましょう?」
レジにて、M4A1はAN-94が着るための洋服を会計に掛ける。
明らかに店員がAN-94と相手したくなさそうだったので、自動精算機で会計をすることにした。
「お会計は合計80ダイヤでございます」
「はい」
お会計でM4A1予め用意していたダイヤで、会計を済ませる。
洋服店を出る時まで、M4A1達は店員に恐れられたままだった。
このまま、人目につくとどんな目で見られるか分かったものじゃないから、一度人気の少ない空き地に立ち寄る。
「……ありがとう、M4A1。今日は助かった」
AN-94はお礼を言う。電子時計は時間は午後2時を表示していた。
「お買い物の感想はどう?」
「……コメントに困る」
AN-94もいきなり拒絶や怯えという感情を向けられると思っていなかったんだろう。
もし、自分がM4A1に気をつかってもらわなかったら街中の研修で何を言われたか分かったものじゃない。
「みんなが私を怖がっている。それは分かった。……でも、どうして私はこの町の人間に怯えられるか、それが分からないんだ」
「……ここは、少し前まで軍隊の統治下だったのよ」
そうなのか?とAN-94はM4A1を見た。
「軍隊がここの管理までするのは面倒くさいってことで、グリフィンに統治を委任した。今の事情よくあることでしょ?」
「それは知ってる」
軍隊や警察が抱えきれなくなった施設や街をPMCに委託して、間接統治をするの今の……新ソ連を含めたヨーロッパのスタンダードだ。
「私たちが代行したって、聞いた時……町の人は頼りなさを感じるどころか、みんなほっとしていたわ。どうも、軍隊の統治はあんまり良くなかったらしいわよ?気に入らなきゃ殴られたり、路地に連れ込まれて……その、乱暴されたりするのは序の口、上司に叱られた腹いせで殺されたりなんてこともザラだったらしいわ」
M4A1は空き地の無駄に目立つ汚れが目立つ壁を見つめていた。
あそこで暇つぶしのつもりで人が殴られたり、処刑されたりした涙ながらに訴える老婆の声がこれを見るたびに残響のように聞こえそうだ。
「……裁判には掛けられないのか?」
「裁判をするにも面と向かって犯人の前に出る必要がある。その時被害者はどうなると思う?陪審員も、検事も、弁護士も傍聴人も全部軍隊が用意した人間……味方なんていやしない、殺されるだけよ」
AN-94には、信じられなかった。
軍隊には規律があって、その規律を見出したら誰であろうと問答無用で処罰されるのではないのか?
「あなたはそういう怯えを与える格好をしている…ということよ」
「……私の勉強不足だった」
AN-94は後悔するように顔を伏せた。
M4A1には少し以外だった。
曲がりなりにも、軍隊にいる事にプライドを持ている人形だったから、ここまで話したら怒って掴み掛かられたり、詰め寄られるのかと思っていた。
でも、実際のAN-94は想像と現実の違いにかなりショックを受けており、意気消沈していて本当に銃撃戦以外何も知らない人形に見えた。
「(コイツ、本当にスパイなの?)」
これだけで動揺していたら、とてもスパイができるようにも見えない。
遠隔操作される以外で操られる以外には、悪意や損得勘定で裏切れるような戦術人形にはとても見えなかった。
「じゃ、ここの人を怯えさせないようにここの服を着ちゃいましょ?」
「……そうだな」
そういうと徐に服を脱ぎ出した。
「まって、どうしてここで脱いでるのよ?」
「どうした?着替えるだけだけど?」
ここで着替えるつもりだったらしい。
それを「何か問題でも?」とブラジャーもつけてない素肌を半分晒しながら首を傾げた。
「こ、ここでやったらあなたは間違いなくヘンタイよ!せめて、着替えは誰にもみられないトイレでやって!」
エゴール大尉の話した言葉を思い出す、
"奴は裏切りの人形のプロトタイプだ"
……プロトタイプであろうとこのAN-94にスパイなんて、とても出来そうにないと思う。
「着替えてきたぞ」
「……何かあった?」
トイレで着替えてきたAN-94は少し不機嫌そうにM4A1を見つめた。
「トイレ……」
「?」
「トイレが臭かった」
「あっ……うん」
空き地に建てられたトイレなんて1週間に1度くらいしか清掃されないだろう。
悪臭は当然だ、AN-94は服に悪臭がついたのではないかとM4A1を非難する目で見つめていた。
「それについては悪かったわ……でも、ほら……全然似合わないし、今は夏じゃないから一日同じ服を来ても────」
「────あ!お姉ちゃん!!」
快活そうな声で話しかけてくる金髪の人形。
それは、AR小隊の末っ子、M4SOPMODⅡだ。
「あ、AN-94!ちゃんと、普通の服持ってたんだ!」
「いや、M4に買ってもらった。次の仕事の為に」
「え?じゃあ、AN-94……軍隊の格好でここに来ちゃったの!?」
「そこはちゃんと、私が説明したから大丈夫よ、SOPⅡ……それに、今は普通の服を来ているから怯えられることなんてないわ」
M4A1の説明にM4SOPMODⅡは納得を覚えてくれたらしい。
「じゃあ!この後のパトロールも一緒にできるんだね!」
「そうね、怯えられなくなったAN-94と業務再開よ」
「え?これ、休みじゃなかったの?」
AN-94は思わず、休みのショッピングではなかったのか?と聞いてしまう。
M4A1は首を横に振った。
「立派に仕事中よ」
「……仕事中に服を買っていいのか?」
「大丈夫、パトロール中にお菓子や飲み物買うのと変わんないから」
「……そうか」
グリフィンは軍隊とは違って規律が緩いんだなと、呆れてしまった。
「ねぇねぇ!他にも回ってみよ?」
「わかった。どこに向かう?」
「せっかく合流できた私達も合流できたし、M16達に会いにいこー!」
「え?ちょっ?!引っ張るな!」
AN-94はM4SOPMODⅡに脇を抱えられ、そのまま中心街の真ん中に入っていった。
中心街
M4SOPMODⅡに連れてこられた先は中心街だった。
「おう、AN-94を連れてきてたのか、悪いな今交通整理中だ」
「はいはい、オジサン。ここは歩道ですよ、迷惑にならないようにどきましょうね……ダメ。完全にぐーぐー寝てる」
交通整理中……どうやら、歩道で横になってる酔っ払いの対応をしているらしい。
「起きんかい!この酔っぱらい!!」
AR-15が怒鳴っても……
「Zzz……」
変化なし。よくもまあ、こんなことに時間をさける余裕があるものだと感心してしまう……が、それも素行の悪い軍人が好き勝手されなくなったゆえのものであった。
「どうするんだ?」
「まあ、迷惑にならない所に運んで終わりでしょ?」
「ああ。そんなところだな」
STAR-15が寝ている酔っぱらいを背負って、近場のベンチに乗せて本当にこれで対応を終えてしまった。
さっきまでの張り詰めた空気は何処に行ったんだと思ったら、M4SOPMODⅡの無線が鳴り響いた。
「M4SOPMODⅡです!……え?うそ!?わかったすぐそっちに行くよ!」
急を要する事態らしい、M4SOPMODⅡは血相を変えてどこかに飛び出してしまった。
と緊急事態で飛び出して、判明した緊急事態はただの迷子探しだった。
AN-94が呆れたら、「事の重要性が分かってない」とM4A1に怒られてしまった。
どうやら、最近人身売買や人さらいの報告が相次いでいるらしい。
本屋
他にも本屋に納品される、新作の検閲もした。
ここは、細かいところもしっかりしていると思いきや
「あら、新作?……早いわね……。AN-94、いいの見つかった?」
などと思いきや、自分の好きな新作を見つけた瞬間立ち読みする始末だ。
一応、出版されるだけでも死刑になるロクサット主義の本を探さないといけないのではないだろうか?
「大丈夫よ。そもそも、そんなバカはここで検閲する前にバレてるって」
「それは……そうだけど、一応防波堤という認識くらいは持っているのかとおもって……うん?……この本は?」
AN-94は真作にしてはタイトルが古そうな本を見つめている。
「……?ああ、この本ね。宇宙人が地球を攻撃するという話よ……話は面白いけど描写がかなり気持ち悪いわよ」
「この本の登場人物の1人が、私に似ている気がするんだ……」
AN-94は本のページを見せ呟く。
「あぁ…このあたり?…成る程、確かに似てるわね……自分を知るいい機会じゃない?読んでみたら?買ってあげる」
「……よんでていいのか?一応仕事中だろう?」
「もう検閲終わったわ」
「え……あ、ホントだ」
とっくにM4A1は検閲を終えていた。
それこそ、自分が検閲するはずだった本も終わっている。
「凄いな……」
「慣れれば、あっという間よ。それに後ろめたいなら電子書籍で買うのもありよ」
「ああ……その手があった」
そう言って検閲した本は”すべて問題なし”、と評価した本を返して本屋を後にした。
本屋の仕事が終わった頃にはすっかり、交代の時間がやってきたらしい。
この後は別のグリフィンの部隊が町をパトロールするとのこと、
「今日も平和だったわね。あなたが軍服で来たことを除いて」
「それは悪かった」
からかっただけなのに、深刻そうな顔をするAN-94の姿にM4A1はなかなかの生真面目さを感じた。
家具屋
「基地に戻るまで、もう少し時間があるわね……今なら、街をもう少しリラックスして見て回れるわよ?」
確かに基地に戻るための電車は後30分かかるらしい、AN-94はM4A1の誘いに乗ることにした。
最後にAN-94はM4A1と一緒に家具屋に足を運んだ。
どうやら、同じ部屋の為に何か買うつもりらしい。
「この食器……いいかも……喜んで、くれるかな……?」
「贈り物?」
「ええ、好きな人に上げたいんだけど好みを聞く機会もなかなかないのよね……」
まあ、M4A1も戦術人形。
人の皮をかぶった第二世代戦術人形といわれても、中身は女の子だ。
色恋沙汰があっても許されるだろう。
「M4A1がその人をどう好きになったんだ……?」
AN-94には、誰かを恋愛的に好きになったという経験がない。
勉強もかねて、恋というのを知ろうと思い質問をした。
「ふう……」
M4A1は思わず、はあ……とため息をつきそうになって何とか、別のため息に変えた。
AN-94にスパイが出来そうにないけれど、保安局の上司に何の気なしに報告したら、私が指揮官のユーリの弱点として狙われるかもしれない……それは避けなければ。
「そうね……あなたは私がどういう人形って説明を受けた?」
「ペルシカ教授からは、自分なんかよりもとても価値がある人形だと。でも、会社からの情報を調べたらとても、今のお前とはかけ離れた評価だった」
どちらも間違いだったが、とAN-94は付け足した。
それってどういう評価なんだと思いながらM4A1は苦笑した。
「わたしが好きな人はそんな悪い評価をされた私だと知りながら、私の”助けて”というお願いを聞いてくれた」
「つまり……好きになった理由は命を救われたから?」
M4A1は頷いた。
「それがきっかけだと思う。でも、どうして?どうして、私のことを知っても手を差し伸べてくれたのかを知りたかった。そして、彼を知っていくうちに気が付いたら好きになったの」
「彼か……」
「女の子だと思ってたの?」
「あ……私にもそういうパートナーがいて……それが、まあ、女性型の人形なんだ」
AK-12か、とM4A1は直感でAN-94のパートナーを推察した。
私が思いを寄せているユーリが一番最初にパートナーにした人形……そしてパートナーを裏切った許されざる人形。
「その子、どんな子なの?」
M4A1が探りを入れて見たが、かぶりを振られた。
「悪い。そこから先は軍隊の機密に関わることなんだ」
「いいのよ。無理に聞こうとして悪かったわ」
「ありがとう」
やっぱりだめか。
でも、AN-94にパートナーがいて、それがAK-12かもしれないを知れただけでも幸先はいい。
「すまない。上手くはやろうとしているんだが……どうしても、力関係を誇示してしまう。私はコミュニケーションは……取ったことが無い、ただ言われたことを……し続けてきただけだ」
AN-94が目をそらす
「気にしないくていいよ……これから、みんなで学べばいいの」
M4A1がAN-94に肩に手をかけて、優しく諭す。
「……そういうものなのか?」
「そういうものなの、ねぇ……何か欲しいものとかある?」
「いや……さっきも服を買ってもらったのにこれ以上は、良くない」
「そう?それじゃあ……後はこれとこれを買って……」
「プレゼントするものが決まったのか?」
「ええ。あなたとの会話でいいものが思いついたわ、それじゃ代金支払ってくるね。」
「分かった、なら、私は入り口で待っている」
一度M4A1から別れ、手にかけていた紙袋の中を見つめる。
その中に自分が朝来ていた軍服が入っている。
そして、窓に反射する自分の姿を見つめる。これで2度目だ……支給品以外で物を貰ったのは
「……大切にしないと」
家具店を出る時、ふと……AN-94の視界にあの服や映った。
どうやら、お店の中でトラブルが起きているのか、店員が困っていた。
「お会計終わったわよ?……AN-94?」
「M4……あれ、トラブルというんじゃないか?」
「……そのようね、行きましょう」
買い物を終えたM4A1に中の様子の状態をうかがう。
M4A1も中の様子を見て、トラブルだと気づいたらしい。
もしかして、AN-94が噂になったかもしれないと、思ったAN-94は服屋に急ぐ。
「わ、分かりませんよ。私に保安局かどうかはなんて……」
「分からないですって?じゃあ、なんでここで見つけたって」
「何かあったのか?」
問い詰めている、黒髪の裏側に紫色の髪をした女性を仲裁する形でM4A1とAN-94が割り込んだ。
「あんたらっ……!」
女はAN-94とM4A1を見て何かが豹変した。
「……!」
「……!」
M4A1とAN-94はこの一瞬で変わったヒリついた空気に言いようのない、緊張感を覚えた。
何かを間違えたら、殺される……すさまじい、緊張感をプログラミングされたはずの感情で嫌というほど感じていた。
「あ、あの……さすがにお客のあなたでもお店の人に詰め寄るのはよくないんじゃ……」
「……ここの女性は本当にいい人だ」
先に動き出したのはM4A1だった。
なんとか、喉に異物が詰まったような気分で出来るだけ正常な会話を絞り出す。
「はあ?何のことよ?私は昨日電話で確認した服がないことを問い詰めてんのよ!そこの金髪が着ている洋服と同じ奴が見当たらないってね……」
「……え?」
だが、出ていた女の回答は拍子抜けだった。
まさか、クレームでここまでの剣幕を出せるのかとむしろ感心してしまったほどだ。
M4A1は安堵のような、反省のような気分に陥った後、口を開いた。
「お客様。申し訳ありません。あなたが求めている服を購入したのはあ我々です。急を要する事態でしたので、お客様の事情を無視してしまいました。つきましては、一刻も早く商品の確保に努めて参ります。ご連絡先をうかがってもよろしいでしょうか?」
「あなた、この店の何なの?マネージャー?」
「いえ……この町をの統治を委託されているグリフィンのものです」
「なるほど……自分のシマで買ってやったことの迷惑を誤っているってワケだ。それに連絡先……ね。それにかこつけて、グリフィンのサービス押しつける営業したら即電話番号変えるからね?」
「はい。承知しています。保証も兼ねて私の電話番号を提供します」
M4A1は自分の連作先を女に渡した。
女も電話番号をメモの切れ端に書いて、それをM4A1に手渡した。
「ご理解ありがとうございます。お客様、この度は申し訳ございませんでした」
そう言うとM4A1はぺこりと頭を下げて、店から出ていった。
そうして、店からM4A1が見えなくなった後、女ははあ、と緊張の糸を解きほぐすため息を吐いた。
「行ったか……もう、大丈夫よ」
「”アキさん”!わ、私たちはあなたの事に何も話してません!?」
「喋ろうが構わないわよ。何をそんなにビビってるわけ?」
アキと呼ばれた女は、服屋の店員の必死な弁明に”はいはい、分かった”とうっとうしそうに聞き流す。
「”アキ”さん!言われた通り、すべて話しましたし、録画も提供しました……お、お金は」
「忘れるとこだった。ほい、これが報酬よ」
女が店員に輪ゴムで縛られた紙幣の束を手渡す。
店の奥には、AN-94達が来たことを録画した監視カメラの映像が映っていた。
「んじゃあ、あたし帰るわよ」
「ありがとうございます。ほ、本当に軍人でないんですよね?」
「大丈夫大丈夫……アタシは軍人じゃない」
「ええ。アタシは軍人じゃない。保安局のせいで職を奪われた”元軍人”だっつーの」
帰路につきながら、アキは録画した映像を拝見する。
提供された録画映像を見ながら、アキはニヒルに笑る。
「しっかし、面白いもんに出くわしたわね。ユーリ隊長の足取りを追ってここまで来たら、AR小隊の人形と連絡先をもらえる幸運に恵まれて、ついでにようやく、尻尾を見せた
アキが懐に入れていた写真を見つめる。
それは、ユーリの部屋に立てかけられた写真と同じ写真だった。
「もう少しでまた、あなたの役に立てますよ。……フレーヴェン隊長」